美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

十月の東京ハイカイ録

十月の東京ハイカイ録でございます。

9日の夜から都内入りなんだけど、急遽その日の午後に京博にいった。
そう、「琳派 京の彩り」展の内覧会。
まことにありがたいことです。

プライスご夫妻もアメリカから来られてたし井浦新さんもテープカットされて、いよいよ拝見です。
少し前に箱根の岡田美術館の所蔵する琳派作品のブロガー内覧会に出かけて大いに楽しませてもらったけれど、今回は京博はじめ東博、出光、大和といった名だたる琳派コレクションを所蔵するミュージアムや個人コレクターの優品を列挙するとのことで、大きな期待でわーくわく。
まあこの期待は外れません。素晴らしかった。
抱一ら江戸の後継者たちの作品もありました。
さらには琳派にインスパイアされた作品を、ということでコシノジュンコのファッションショーがあり、これが本当にかっこよくてドキドキしたなあ。
タイムリミットを気にしつつ、目が離せなかった。

まあでも結局京都から帰宅したら、会社から帰るときより早く着きましたわ。
そしていよいよ新幹線に乗りにゆく。
大阪駅に着いたらJRが遅れておる。少し早めに出ていてよかった。
普通より快速の方が遅れなして不思議な現象やな。重たいコロコロもって快速に乗りにゆく。

東京からは送迎バスで定宿へ。
どうもわたしの間違いかなんかの手違いであまり好みではない部屋にはいる。おかしいなあ。

とりあえず明日からが本式の東京ハイカイです。
なお例によって、展覧会の個々の感想はまた後日。

十月十日、土曜。
朝から市川へ。先般本八幡に出かけ「ええ感じの町」と思ったが、今回も市川、感じええやないの。適度な活気と適度なさびれとがある。歴史的にもいいしね。

初めて市川市芳澤ガーデンギャラリーへゆく。
場所がイマイチわからんなと思いつつも歩くうちについた。ヨシヨシ、まだまだ歩けるぜ。

伊東深水の南方スケッチと永井荷風の展覧会。
これは息子さんの奥さんがこちらへとした分。
いいスケッチが多かった。
彩色は後からしたようにも思うが、スケッチのうまさを実感するね。リアルな風景と人々と。
それから荷風の愛用品とパネルでだが例の日記の抜粋。
これは今こそ改めて読むべきものやな。
それにしても荷風て180cmとはかなり大きな人ですな。
話は先走るけど、江戸博「浮世絵から写真へ」展に四歳の荷風の写真があった。一家の写真もあるから、永井家はけっこう新しいもの好きな一家だったのね。

お庭を少し見る。
萩にドウダンツツジに柿の実などなど秋の始まりやな。

勧められた木内ギャラリーにゆく前に近くの郭沫若記念館へ。普通の平屋の民家でコスモスや小さな花が愛らしい。
周恩来らとの写真もある。わたしは武田泰淳のからみから郭沫若に関心があったのだが、この人の恋愛関連にはちょっとあれやな・・・

さて、ここから延々と歩いて、途中に紫露草を見いだしたりしつつ、ようよう木内ギャラリーにつきました。大正初期の洋館。ここで村松さんの展覧会。
建物だけ写したいという申し出を快く受け入れてくださり、ありがとうございます。
ほんまに可愛らしい建物でした。

さて村松さんは20年ほど前に渡辺淳一「失楽園」の挿絵を世に送った人で、今回じっくり見せてもらいますと、もともとが官能性の強い作品ですから挿絵もおりおり色っぽいものになりましてな、中には英泉あたりの春画をちょっとばかり使ったものもありました。
これはしかしそうおかしいことでもなく、たとえば蜷川幸雄の芝居「常陸坊海尊」でも疎開中の教師が風の声に誘われて「虎と少将」のいる家に行くときにスクリーンに出てきたり、たなか亜希夫「かぶく者」でもありますわ。
ええ表現です。
少しばかりお話をいたしました。

館の人々から道を教わり、すぐ近くのバス道へ向かおうとして、不思議な洋館をみつけましたが、なんやろう。また調べなくては。

バスはすいすいと市川駅へ。

市川からとりあえず来た快速に乗ると、久里浜行。もういいや、でそのまま横浜。
横浜から乗り換えて元町・中華街。先に港の見える丘公園へ。

神奈川近代文学館は柳田國男展。その前に常設もきちんと見たが、これがやはり後後よかったな。
ちらりと谷崎「痴人の愛」のぞいたら、譲治が「蔵前の高等工業を出て」という設定なので、「そういうたらノーベル賞の大村智さんは隅田工業高校の定時制の先生だったな」と思い出す。
譲治は蔵前だから深川の隅田工業とは無縁。そんなことを思ったりするのも楽しい。

柳田展は生家の紹介から成果の紹介へ向かう。みんな出来の良すぎる柳田の松岡兄弟。
神秘体験の話(秘められた珠を見て感銘を受け、顔を上げると真昼に無数の星々を見て)などを読むと、これはよくそのまま育ったな、と思ったり。神隠しにも遭ったそうだが、泉鏡花の世界の住人になりそうな坊やですがな。
だから官吏になったのはむしろ良かったと思う。
オシラサマの現物が来ていて、怖かった。
鏡花の長編「山海評判記」では白山のオシラサマ教団が活躍するが、一方で柳田をモデルにした学者の家にオシラサマが来たのはいいが、令嬢のピアのを聴いたり、突然出没するので当初令嬢をおびえさせもする。
尤も、令嬢がフランス留学するからご一緒しますかと誘うと「参ろうよ」と答える闊達なオシラサマなのであるが。
そんなことを思いつつ、当時の雑誌記事を読まなくてもいいのに(大変小さい字だ)読んでしまい、例によって「厭なものに限って自分から見つけ出す」状況になる。

かなり時間をかけてみていて、出たのは四時。やばいね。
大仏次郎記念館が隣で良かった。(橋を渡るけど)
こちらは大仏次郎が若いころからバレエや歌舞伎やダンスに対し、深い愛情と理解と情熱を懐いていたことを示す展覧会だった。
特にバレエ・リュスに熱狂していたとは知らなんだ。
これは実に嬉しいニュースでもある。
そうなのか、それはとても嬉しい。しかもラ・アルヘンチーナ来日の際には夫妻はサインも貰ってる。
そしてここで大野一雄「ラ・アルヘンチーナ頌」の写真が現れる。
大野はこの記念館の喫茶室に毎日来ていたというから、なんだかそのことと併せて嬉しくなる。

それにしても大仏次郎は毎年のように「新刊」の出る人だなあ。
それだけ人気があるというわけですね。うむ。わたしも持ってるけどさ。

五時になりました。曇りというより小雨が降ってる。ベイブリッヂもチカチカ光る。
下へ降りて一旦馬車道へ。
実に久しぶりに勝烈庵に入る。先月かな、馬車道十番館のホンネキだと知り、ををと思ったのだ。20年ぶりくらいか。ロースかつ定食にしたが、キャベツも甘くておいしかったし、よかったよ。久しぶりにプロのとんかつを食べたという実感がある。

中華街へ向かう。
一体何年ぶりかな、中華街へ向かうの。今回の「横浜へ」の最大の目的というかこれがあるからこの日にした、という理由が「双十節」だから。
前に来たとき、獅子舞の華やかさ・爆竹のバンバン鳴る音と硝煙にクラクラ夢中になったのを思い出して、久しぶりにやってきたのさ♪
(後で調べたら1996年だった!)…歳月人を待たないぜ。
今回もホンマに夢中になりましたわ。
またもう獅子舞の巧いこと。雑技と同じく身軽でうまいわ~~
ああ、クラシックバレエを見るより、獅子舞が、雑技が、と思うわたし。
「MOON 昴」の逆をゆくねw
ドキドキしすぎたよ。2時間ばかり
間近について回り、爆竹ドーンッッッで心臓を躍らせ、獅子舞の動き、鉦や太鼓の凄まじい響きにときめき、マジでこれは体調に悪かろうと思いながらもついてまわりましたわー。
ツイッターで動画も中継したりね。惜しむらくは硝煙のにおいをもうわたしは感じ取れなくなったことか。本当に残念。
心臓と難聴は悪くなったけど、この興奮と喜びを捨てることは出来ない。
また中に14歳くらいの美少年を見出してね、とても幸せでしたわ、わたくし。

やがて獅子舞が関帝廟へ向かうのも追いかける。獅子の群舞。ドキドキは弥増すばかりですがな。いいもの見て機嫌よくフラフラになりながら帰る。


11日、日曜。
まず練馬へ向かう。中村橋ね。ついたらもう小雨どころか殆どやんでた。
シスレーを見たのだが、実はご本尊の絵よりも、セーヌ川の河川工学の研究や荒川との比較、更には同時代の井上安治の東京名所、またシスレーの作品にインスパイアされた日本の洋画家たちの作品の方が面白く見た。
これはもう完全に趣味の世界だから、シスレーには申し訳ないがわたしはそういう嗜好なのだとしか言いようがない。
そもそも近代洋風建築でも洋画でも果ては食べ物でも、それら西洋のものが東洋に入り込み、とうとうその地で現地化してゆく過程を見るのが好きで、すっかり現地仕様化したものほど好きなものはないのだよ。
だから東洋の現地に根付いた洋風建築、なじんだ洋画、家のおかずになった洋食、これらが好きだ。

小竹向原経由で明治神宮に直行。楽な時代になったもんだぜ。
先に大戸屋でランチ。生姜の濃いあんかけで野菜を食べるのが好きだ。
それから浮世絵太田記念美術館へ向かったが、ここでは去年閉館した礫川浮世絵美術館のコレクションが展示されていた。
泣ける。1998年開館した直後に出かけたら、「(招待客以外の)初めてのお客様です」と言われたのだった。
ここで色んなものを見せてもらったなあ……
もうこのコレクションは散逸するのだろうか。
春信の丑三つ参りの女の絵が特によろしい。
ああ。

表参道に出る。伊勢半紅ミュージアム。キスミーの口紅は1950年代の娘たちを彩った。
その時代に活躍した伊東深水のスケッチ。
昨日の市川市のと同じく南方のものもある。
そしてここで鎌倉の深水の素描を専門とした画廊のご主人から色々とお話を伺う。大変楽しかった。

時間の都合で一旦ここから白金台へ。
松岡美術館で好きなものをいくつか見る。見たかったものや見たことのないものがとりどり現れ、しかも昔の絵葉書をプレゼントまでしてはって、大変にありがたく思いましたわ。
わたしとしては内幸町時代の松岡でガンダーラ仏の美貌を堪能させてもらったものですからなあ。
猫のミイラの仮面、猫の神様、猫の給仕。
猫好きの夢でもあるコレクション。

庭園美術館へ。秋の虫の音がりーんりーんと大きくて心地いい。
オットー・クンツリ。
写真だけ見たら大野一雄かと思ったよ。
好みではないけど面白くてシンプルなアクセサリーがたんまり。
撮影可能なのもありニコニコ。
しかも今回初めて宮様の書斎に入らせてもろたり、姫様の金庫なども見せてもろたり。
ありがとうございます。

次に乃木坂へ。富士フィルムフォトサロン。岩崎一雄さんの捉えた祇園閣の写真展。
これが素晴らしかった。
自分でも祇園閣の撮影させてもらったが、プロの作品を目の当たりにするとまるで別物。
やっぱりプロは違う。それで建築の話も盛り上がり、更には何やら質問されるお客さんに「横シツながら」とその言われる建物の設計者の名を教えたり色々。
そして岩崎先生から喜八郎の藏春閣写真集をいただいてしまったのだ!!
誠にありがたいことです、本当に嬉しいです。
後日また先生の祇園閣のお写真の紹介を予定。
2月には大阪の富士フォトサロンに巡回するので友人らを連れてゆく予定。
あーいい気持ち。

六本木から銀座へ。三越のギャラリーで小村雪岱の挿絵などを見る。
吉川英治「遊戯菩薩」、矢田挿雲「忠臣蔵」、里見弴「闇に開く窓」、あとは仏画素描とカラーものなどが少々。吉川のは国立国会図書館のデジタルライブラリーにあり、ちらっと雪岱の絵らしきものが一瞬みえるが、そのページが開くことない。
雪岱の挿絵仕事の始まりは里見弴「多情仏心」からだが、あの作品ではコンテを使い、後の雪岱のパブリックイメージから遠く離れた作風になっていた。
しかしこちらは白と黒の婀娜でクールな画風で現代を描いていた。
ところで五年前に雪岱展を清水三年坂美術館で見ているが、そのときにこれら3作品が出ていた。うっかり忘れていた。なのに、「闇に開く窓」に関して、五年前と全く同じ感想を書いていた。
『雪岱の挿絵の最初の仕事は弴の「多情佛心」でこちらはコンテを使った作品だから、今日から見た雪岱の絵のパブリックイメージからは遠く離れている。』
・・・成長していないというか、この時点で完成されたというべきか。ははははは。


この日は終わり。

さて最終日の12日。
この日は早くから動かないとあかんのでバタバタする。
青梅に向かう。
青梅市美術館に行く前に観光案内所によると、屏風絵展というチラシがみえた。
徒歩数分というので向かう。
昭和の町を売り物にしているので色んな看板が楽しい。この寂れ具合がまたどうかするとマカロニ・ウェスタンのシケた町のようで面白い。
草まみれの家を発見したが、あれは廃屋で、目的の津雲邸は少し手前にあった。
・・・うわーーーーっである。
宮大工を招いて昭和初期に建てた近代和風の粋!!!
びっくりした。
建物を撮らせていただいた。あーびっくりした。
こんないいのがあるんやねえ。

屏風は上方絵が案外多い。岸駒の龍虎、西川祐信の美人、冷泉為恭に江戸の鈴木其一などなど。
螺鈿や蒔絵のいい工芸品もあった。

うーん、すばらしい邸宅、普請道楽は素晴らしい。
あんまりよすぎて、ここで予定時間全部を使い果たしていた。
とは申せ後悔なんかないよ。
ここから青梅市美術館へゆく。湯河原町立美術館のコレクションを見る。
竹内栖鳳がやっぱりよかったよ。
数え喜寿の時の「喜雀」の右隻の歩く不機嫌な雀どもが面白くてならない。
栖鳳のトボケたユーモアが楽しい。
ほかにもいいのを見て、やっぱり遠いけど来てよかったと思いながら12:05駅に着く。
まだ電車がいるので喜んでボタン押して中に入るが、なんでか知らんが12:07に出発。
助かりました。

日当たりのいい中、御茶ノ水へ。のりかえて秋葉原でご飯食べてから両国へ行く。
「浮世絵から写真へ」展。これがまた面白すぎた。
今年は幕末から開化の頃の浮世絵などが豊作の年だけど、これがまたそのお仲間で、実に面白かった。

リニューアルした常設展にもゆく。ちゃんと「蛇山庵室」の興行も楽しんで、浮世絵のいいのも見て、明治の町も歩いて、いい心持で上野へ出た。
東博のアジアの旅。まぁ楽しませていただきました。ありがとう。
好きなものが多いわ、やっぱり。

さてテクテク歩いて池のほとりの下町風俗資料館へ向かったが、5時半閉館の5時入館までが2分遅れでアウト。
「入れさせるか」という気概に満ちてましたな。
仕方ないので諦めて、近くのドンレミーのアウトレットに行ってお菓子を購入。
御徒町から東京へ。

今回のハイカイは予定外が多かったけれど、いずれもよかったなあ。
まさかのもしかの急遽予定変更ばかりだったけど、本当に良かった。
というわけで今月の東京ハイカイは終わり。
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