美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

伊東深水が見た像(リアル) 美の軌跡・素描

伊勢半紅ミュージアムでも伊東深水の素描を愉しんだ。
こちらはスマホで割引画面を見せると100円割引をしてくださった。
ありがとうございます。
しかもよく出来た小さなパンフレットつき。
嬉しいわ。
前後期に分かれているが、始まった翌日にわたしは見に行った。
「伊東深水が見た像(リアル) 美の軌跡・素描」展である。
イメージ (82)

最初に深水の肖像画(油彩)がある。これはお弟子のひとりが描いたもの。
写真の深水によく似ている。
師匠の清方もそうだが深水も弟子たちをよく育てている。

子供時代の絵がある。枇杷を描いている。以前にも見たもので、やはり子供の頃から巧いと思った。

戦後の活躍期の素描から始まる。
昭和30年代の裸婦スケッチが数点。洋画家とは違う平明で和やかなスケッチである。
色鉛筆やパステルなどで着色されてもいる。
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舞妓のスケッチ 昭和40年代初期 横向きのオデコな舞妓ちゃんが可愛く描かれている。

深水はその時代時代を生きる輝く女性像を創造していった。とはいえ流行を追うばかりではない。常に最前線に立ち創造し続けることで旧きも新しきも取り込んでいった。

夜会巻スケッチ メモ書きを読み、やっぱり夜会巻というのは長髪で髪を挙げる人にはいいものだと思った。
よしながふみ「昨日何食べた?」でも夜会巻をする若い女がいるが、やっぱりかっこいいのだ。

紅衣 下絵と本画がある。モデルは京マチ子である。下絵は睫毛なしですっきりした顔。
本画になると睫毛もついて、頬もふっくらしてもっちりな可愛い女になっている。
胸元の飾りもついて、当時の京マチ子のキラキラしたいいムードが出ている。
昭和30年頃の絵なので、当時の彼女の出演作を拾うと…
少し前に「雨月物語」、この年には「楊貴妃」、翌年には「赤線地帯」などがある。

聞香 下絵 これもいい作品で、その下絵の一部をこうして目の当たりにすると、全体の構造がここからも蘇ってきて、見る側にもよい香りが伝わってくるかのようである。

「宗磁」のスケッチや大下絵がずらりと出ていた。こちらも昭和30年。
閉鎖されたままの村野藤吾の大阪・新歌舞伎座に本画はある。
上本町に機能移転しているが、あそこに絵があったかどうか。
女たちの手にはそれぞれ搔き落とし、青磁、白釉黒蝶文様の壺などがある。
中には東洋陶磁美術館、正木美術館などで見かけたものによく似たやきものもある。
とてもよく出来ていて、そのことにも感心する。
イメージ (84)

紅下し 下絵 下絵自体が墨と朱色で描かれている。
化粧直しのちょっとしたシーンを切り取る。
それにしても数十年前のこうした様子は艶やかだが、今の場所を選ばす化粧直しするジョシたちは絵にはならないな。

南方風俗が出ている。市川市で見たものの仲間である。
南圏画巻というシリーズもある。
ボロブドゥール遺跡、ジョクジャ(ジョグジャカルタ)の踊り、こうした絵を見ていると、本当にスケッチの面白さというものを感じる。

平壌の女性スケッチ 1944.5 チマチョゴリの女性が座す。民族服を着つつ、髪型はパーマも当てている。
70年前も現代もあまり変わらないらしい。

版画が出ていた。
現代美人集 第一輯 口紅 昭和初期、新版画の一枚。紅差し指の紅、それを塗ったばかりの唇。座布団は鹿子。
わたしは深水の新版画がとても好きだ。

慶応病院にて スケッチ メンテナンスで入院しているときのスケッチ。十年後ここで深水は没する。

それにしても深水は本当にスケッチが大好きなようである。
市川市、伊勢半と見て回り、思い出すのが師匠清方の随筆「続 こしかたの記」である。
疎開中の清方の見舞いにやってくる深水。
師弟ともに涙ながらに再会と無事とを喜ぶ。
翌朝、清方はいつも牛乳をもらいに行く道に深水を誘う。
深水はやがてその場の風景の美に魅せられ、一心にスケッチをはじめ、それに気づいた清方もじーっと深水のその様子を見つめ続ける。
ああ、いつ思い出してもいい話だ。

ところでこの展示は大方が鎌倉アートサロンの所蔵品で構成されている。
わたしが見て回っていると話しかけてこられ、丁寧な解説をしてくださる方がいて、もしやと思えば鎌倉アートサロンのご主人だった。
わたしはまた例によって無礼者・無頼漢の本領を発揮して好き勝手なことを口走ったが、歌舞伎の話まで出て、とても楽しい時間を過ごせたのはありがたかった。

伊勢半紅ミュージアムでは映像もうまく使っていた。
在りし日の深水とその家族等が映っていた。洋行する様子、孫らと楽しく遊ぶ姿、つり仲間たちと集まるところなどなど。
深水の展覧会は多く見てきたが、こうしたスナップショットは案外見なかったので、これは嬉しかった。

展示換えもある。いいものを見て、よいお話を聞けて、とても有意義な時間を過ごせた。

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