美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

日本衣装絵巻 ―卑弥呼から篤姫の時代まで

神戸ファッション美術館で珍しく和装の展覧会があると言うので出かけた。
イメージ的に神戸で和装というのはちょっとばかり「??」な気持ちで出向いたのだが、この内容がたいへん素晴らしいもので、神戸だろうが大阪だろうが京都だろうが「ファッション美術館」を名乗る以上はやはりこうした展覧会が開かれるのも当然だし、それ以上にこの企画展が開催されたのは幸いだと思った。 
イメージ (33)

「日本衣装絵巻 ―卑弥呼から篤姫の時代まで」
すごいタイトルである。
そして実際すごい着物がずらーーーっと並んでいて、まさに壮観、かっこいい景色が広がっていた。

展覧会の狙いは以下の通り。
「古代から日本人の衣生活は、外国文化を取り入れながら「和様の美」を形成してきました。埴輪に見る大陸文化の影響をうけた古墳時代から中国・唐風文化の舶来が感じられる奈良時代の衣装。宮廷文化と共に生まれた優雅な重ね着が象徴する平安時代。現代のキモノの形が明確に現れはじめるのは、室町時代以降とされています。
本展では、かつて春の京都を彩った「染織祭」に蘇った、古墳時代から江戸時代の復元女性衣装、8時代100領を一堂にご紹介いたします。染織の黄金時代とも称される当時、最高の技術をもった職人や研究者、有職故実が京都に集結し、史実を元に考証し、復元した傑作衣装の数々を、絵巻物を見るようにお愉しみください。」

復元ものだが、史実に基づいた丁寧な拵えのもので、素晴らしい出来だった。

そもそも「染織祭」とは何か。昭和6年から20年ばかり染織業の振興のために行われた行列祭だそうで、この復元衣装を見るとさぞや壮麗だったろうと思われる。
葵祭・祇園祭・時代祭にならび「京都の四大祭」と謳われたそうなが、日中戦争がはじまると自粛され、やがて記憶からも…という非運の祭りらしい。
20年というから戦後も行われたのかもしれないが、もうその頃は着物を愛している人も売り買いのタケノコ生活をしていたろうし、「戦後」が日本文化を殺しかけていたのだから、こういう祭も復活はしませんわな。
ただ、youtubeに映像が挙げられているので、かつての華やかな様子をそれで偲べるのはありがたい。


祭についての詳しい記録は
京都染織文化協会の「染織祭の歴史」に詳しい。

イメージ (34)

時代装束だけでなく、当時祭のパレードに使われた幟が何本もある。「やすらい花踊」「室町 女房の物詣」などの名称が見えたので、「時代祭」の一部が特化したものかと思った。

上古の時代から幕末までの衣裳の列びはまことに麗しく、これらが四月の陽光の下でしずしずと街中を歩いたことを思うと、奠都の後も滅びることなく生き延びた都人の心の強さに感銘を受ける。

奈良時代には唐文化の華やかさが海を渡ってこちらにも伝わり、前代とは違う嗜好も生まれ、化粧も変わり、髪型も変わった。
上古では前開きだった上衣も奈良時代にはベスト型に変わっているが、これはやはり唐文化の影響かと思われる。

染の技術も上がり、複雑な文様が作られ、技法も今に伝わらぬような手の込んだものがこの時代には多く使われていた。
無論庶民はそこまで手が回らない。地方に行くと都の風は遠く、やっぱり貫頭衣をちょっとどうにかしたようなものを着ていたようだが、ここに列ぶのはあくまでも都人の装束である。

そして都が奈良から京へ移り、鎖国し、国風文化が盛んになり、十二単が誕生するのだが、その時代の装束はなかった。思えば十二単を着るようなヒトは表を闊歩することなどないのだ。外出は牛車、外を己の足で出歩く女は庶人。

旅装束を見るといつも思うのは「安寿と厨子王」「かるかや道心」それに「山中常盤」。
彼女らはきちんとした旅装をしているが、一方で照手姫や梅若丸の母・花子御前のような「狂女」スタイルもある。

室町の女たちで街中に住まう者らは頭をターバンではないが、その時代以外では見られない特殊な形の布で抑えている。
あの名称はなんというのだろう。いつもいつもわからない。

桃山時代。辻が花の衰退の謎についても少しばかり展示がある。
随分前に丸紅が辻が花を復元したものを一般公開したと思う。
何故あの技法が急激に廃れたのかは謎なままだそうだ。

醍醐の花見のための装束が二点。色違いで文様も少しずつ違うが、かっこいい。
これを見て思い出すのが大和和紀「イシュタルの娘」。小野お通を主人公にしたマンガでは、お通が太閤から侍女たちの装束デザインを命じられるエピソードがある。
彼女のセンスの良さが示される話。

江戸時代の装束も並ぶが、こちらはわたしの好きな寛文小袖がないのが残念だった。

イメージ (37)

ところで自分がどの時代のどの装束を着たいかというと、わたしの場合は天平時代の貴女装束を身に着けたい、と常々思っている。華やかな染と織の装束。素晴らしい。
憧れは大きいまま、実行には全く移していない。
あ、時代コスプレは一度だけしたことがある。
池上曽根遺跡に隣接する大阪府立弥生博物館で弥生人の貫頭衣を…

うーーーむーーーー
せめて古墳時代の貴女スタイルがしてみたいな。

装束は全て前述の京都染織文化協会のサイトで見ることが出来る。
わくわくする展覧会だった。
本当にカッコイイ。
1/12まで。

常設では西洋のファッションが展示されている。
ロココから始まり1990年代までのもの。
わたしは1920―30年代ファッションに憧れているので、今回も「ああ、このコート欲しいなあ」といつもいつも思うものをじーっと見てしまった。
もう作るしかないのだろうか。かっこいいなあ。

目の保養になる展覧会でした。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア