美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

歌麿・英泉・北斎 礫川浮世絵美術館名品展 前期

浮世絵太田記念美術館で礫川浮世絵美術館の名品展が開催されている。
1998年にオープンし、2014年に閉館した美術館のコレクションである。
もう本当にあの美術館はなくなったのである。
太田で見ることでそのことを実感する。
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1998年のオープン直前、この太田記念美術館から春日駅前に新しい浮世絵美術館がオープンします、という案内をもらった。当時太田が出していた割引はがき、あれと全く同型のもので、一瞬「コレハナンダ」と思ったものである。
それで開館して早いうちに出かけて、スリッパをはきかえた途端、「(招待客以外の)初めてのお客様です」と声をかけられた。
そうなのか、なんだか嬉しいなあ。
そしてそれから何度も行ったが、覚えられていたようで、受付の婦人から「最初に来られた方」と何度か言われたりもした。
そんな記憶がある。

「歌麿・英泉・北斎 礫川浮世絵美術館名品展」
展覧会のタイトルどおり歌麿らと、鳥居派、歌川派ら幕末までの作品が並んでいる。


例によって好きな作品について、好き勝手な感想を挙げる。

歌麿 松葉屋内 八重菊 かつらき 1795 風呂上がりの遊女・八重菊。鉢巻を巻いている。この時代の洗髪の状況について色々知りたいことがある。こういう絵を見るとその疑問が蘇るのだ。

英泉 美艶仙女香 はつ雪や 1823 傘を差しつつ布をかぶる女。コマ絵は雷文の縁取りの中に二匹のわんこ。可愛い。
絵そのものは完全に化粧品ポスター。資生堂あたりが作っていてもおかしくはない。

北斎 富嶽三十六景 礫川雪ノ旦 1832 校合摺も出ていた。青一色。
この礫川の地に美術館を拵えていたのだから、ぴったりでしたなあ。

広重 江戸百 大はしあたけの夕立 1857 もお本当にこの雨の描写が素晴らしくてね。
摺りもいいし。わたしはやっぱり風景は広重がいちばんですな。

モノクロに個人が手彩色できるような絵があった。
師宣 上野花見の躰 1680 姫君観桜の宴 幔幕が張られた中で姫君は琴を弾き、そばの若い男は笛を吹く。盲人は三味線を弾いている。ここの家は向い蝶の紋所。
姫の琴に若い男の笛というのは浄瑠璃姫と御曹司のパターン。それで大体恋が生まれる。
ところで向かい蝶の紋は先般ここのブログで挙げた青梅の津雲家がそれ。また春になれば細かい写真を色々お届けしたいと思う。

師重 座敷の遊興 元禄 若衆が三味線を弾いているが、かれが人気ものなのか、腕がいいのか、みんな黙ってジィっと聴いている。

政信 きおひさくら 宇治の橋姫 渡邊のつな 羅生門の話というより大森彦七の話に近いような絵である。鬼女が綱に後ろから掴みかかる。綱はそうはさせじと相手の腕を掴みあげる。意外なくらい迫力というか動きのあるモノクロ絵である。

近藤清春 歌比丘尼 享保 二人の比丘尼と小比丘尼の三人組が歩く。箱には絵解き用の絵図が入れられている。売春が主な仕事ではあるが、やはり絵解きもきちんとする。
先年、龍谷ミュージアムでみた「絵解きってなぁに?」展は近年にないドキドキの展覧会だった。

あの展覧会でも三人組の熊野比丘尼がにこにこ歩く姿を描いたものがあった。
そしてこの絵では二人の女の着物には漆が、小比丘尼ちゃんには膠で溶いた金が塗られていた。

政信 風雅火鉢無間鐘 浮絵根元 元文末 二階はシルエットで喧騒が描かれている。
一階に女がいて「無間鐘」の現場。その様子を見た男が二階から小判を彼女に投げつける。
さてこの小判で女は足を洗うのか情夫に貢ぐのか。

豊信 尾上菊五郎の雲の絶え間姫 1751 この時代だと初代菊五郎らしい。元は京で女形、後に江戸で立役。この歴があるからか、現在に至るまでどちらも出来るのだ。
ふっくらした姫が刀を持って封印をきっと睨む。注連縄切りの直前。これは紅摺絵。

春信 丑の時参り 1765 呪詛する女だが、春信らしいカワイイ女。黄色の鳥居。そばの大木をじぃっ と視る女。川の流れもある。エンボス加工された着物。
怖い状況なのに春信だから可愛いになる。
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色や形に特色があるものがいくつか。

柳々居辰斎 雷紋飾枠洋風景画・東橋 文化後期 露草青を使った空は褪色しつつある。

国丸 化粧を落とす美人 1826 丸髷・眉なし・お歯黒、という既婚の女が扇面の中に描かれている。背後には様々な紋所が描かれていて意匠として面白い。

広重 東都名所 真崎暮春之景 1831 ベロ藍の綺麗な摺り。小さな梅も咲く真崎稲荷。小舟も出ていて、三人と船頭がいる。筏師もいる。
真崎といえば池波正太郎「剣客商売」の秋山大二郎が住み暮らしているところ。
鐘が淵に住まう父の小兵衛は、後妻のおはるを船頭に小舟で真崎稲荷の倅一家のもとへ向かう。
いいムードだなあ。

広重 近江八景之内 比良暮雪 1834 白い山と灰色のグラデーションの美。裾野の小さな民家の並び。水木しげるも描きそうな風景。解説でキュビズム風だとあるが、なるほど。

国芳 応龍 天保 羽ありで胴なしの龍。このタイプの龍は確か位が高いのだったかな。胴の長い奴より。
うーん、天使も顔だけのが位が高かったと言うけどな。
けっこう不気味なのが海上をゆく。

細木年一 諸工職業競 錦絵製造工程図 1879 働く人々。散切りもちょんまげも一緒に働く。明治やなあ。

英山 当世美人揃 ほんをとりのけしき 1813 回り灯籠のシルエットが盆踊り。床几に座る女。
この絵を見て思い出すのがここの所蔵で今回は出ない春画の連作ものの一枚。あぶな絵の直前の様子。
はーーー・・・もう見れないのだなあ。

春潮 青楼三式部 和泉式部 越前屋 唐土 1792 けだるそうに立兵庫の花魁が吐いたタバコの煙を目で追っている。先のことなど考えられないし考えても仕方ない。

そういえば時折浅草寺の門前を描く絵を見かけるが、ついついわたしは提灯を見て「松下幸之助寄贈のやないですなw」と思ったりするのだった。

北斎 忠臣蔵四段目 1806 珍しいことに赤穂城内の様子。顔世御前が侍女らと花を活けているところ。それが手前。奥には庭園が広がる。オモダカもさいた池。花菖蒲と並ぶ。
向こうから上使がくる。悲報を伝えに来る、その足取りは遅い。

国直 娼家全図 新版 文化 吹き抜け屋台風な構図。バタバタと忙しい。大勢の人々が何かしら働いたり行動したりしている。
かむろらもご飯を食べている。大鍋、大釜からご飯。台車に乗せている。

色のいいのが並ぶ。
広重 五十三次 蒲原 夜之雪 1834 
国芳 通俗水滸伝 花和尚魯知深 1827
どちらも大好きな絵。素晴らしい色彩美でもある。シックなものと華やかなものと。
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周延 徳川時代貴婦人之図 投扇興 1898 女二人がほぼ千鳥のように仲良く寄り添って遊んでいる。雅な遊びですわな。

芳幾 俳優写真鑑 仁木弾正 尾上菊五郎 1870 五世菊五郎の細面の顔がよくとらえられている。この人は後の六代目が生まれたとき「仁木が出来るツラか?」ときいたというエピソードがあるそうな。
しかし丸顔の六代目は実際のところ仁木を演じたのだろうか。

絵本と摺物などが並ぶ。こちらもいいものばかり。
春本の始まりのところなどもある。

英泉 四睡 虎意匠帯の花魁 1830 豊干禅師・寒山拾得・虎の四睡の見立て。楽しいね。

豊国 新吉原櫻之景色 五枚続き 1811 群像図。わいわい。お皿に乗る魚は怪魚ですなあ。

松井コレクションも今後どうなるのだろうか…
来月は後期。そしてそれを見終えると、もう機会はなくなるのだろうなあ。
そういえば礫川でみたー「菊慈童」、あれは前期後期にもリストになかったな…

観るのは楽しいが、悲哀もまたひたひたと押し寄せてくるのだった。
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