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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

大いなる遺産 美の伝統 屏風絵篇+国宝篇

大いなる遺産 美の伝統 屏風絵篇+国宝篇

いよいよ古美術である。ただし陶磁器は別項に書く。

池大雅の『離合山水図屏風』 文人画・南画というのがニガテである。しかし良いものは良い。
何面もの縦長の絵を屏風仕立てにしている。特にいいと思うものがあった。六曲二隻なので十二図ある。その内の『梅花書屋』は梅のつぼみを○や●でさらさらと描く。ほのぼのした空間だ。
『夏山浴雨』こんな雨なら濡れてもいい。『緑陰午睡』船上釣り人の居眠り。zzzというのが聞こえてきそうだ。気分が豊にのんびり広がる。『山陰放棹』屋根つきの船に蓑を着た船頭がいる。不意に果心居士の幻術の話を思い出した。
凄い絵がある。それを描いたのが果心居士で、彼は信長の元へ連れて行かれる。殺されかけたとき、その絵から水を座敷に溢れさせ、挙句自分も絵の中の船に乗って何処ともなく去って行く。彼は二度と世に出なかった。小泉八雲の『心』か『仏陀の国の落穂』かのどちらかにある話。
隣に立つご夫婦らしき人が語りあっている。
「池大雅はなかなか展覧会がないから、こう言うときでないとね」
「ホントにね。静かでのんびりしていいものね」
東京ではそうなのか。
わたしは先月京都で池大雅を見ていて、「絵より字の方が味があるなあ」などとほざいていたのだが。

鈴木其一『四季草花図屏風』 構図の巧さに感心した。右から、左から、中央から眺めてくださいと言われた。すると下地の金箔の加減で屏風の様相が変わって見える。面白いなあ。花も季節の流れる順に咲いているわけではない。好きな花もあるが知らない花が多い。
こういうときは自分の無知を反省する。白梅に始まり、藤、菖蒲、桜、牡丹、南天、白菊、薄、とりどり。左はピンクの椿、山吹、わらび?、黄芙蓉、青と白の紫陽花、朝顔、女郎花、烏瓜、蔦、黄菊・・・殿様の弟君にお仕えする『弟子』。師弟関係で主従。なんだか見てみたいと思う二人だ。

それから作者のわからぬ『波濤図屏風』 これを見るとボストン美術館所蔵の波濤図を思い出したり、クールベを思ったり、東映映画を思ったりする。基本的にあまり好みではないのだ。

『曾我物語図屏風』
異時同時図の面白さは、人物の行動を追うことでもある。
狩場の情景は酷いのでいやだ。熊も鹿も猿もウサギも猪も可哀想だ。
勢子はお揃いのユニフォームを着ている。三つの花弁のカタバミだろうか。
犬もわんわんいる。鷹も使うのか。富士山の裾野。何も語らず富士の山はそこにある。
右はただただ狩の場である。
左は違う。四条流の包丁術なのか、調理する姿も見える。こうしたとき、描く対象は前代であっても、ちょっとした風俗はその当時のものであることが多い。そこから当時の姿が見えもする。馬を休ませたり、蓬莱飾りが置かれていたり。
踊る男、鼓を打つ男。諸肌脱ぎでケンカする男たち。
人物描写にメリハリがある。表情がよく書き込まれている。動きも派手で面白い。しかし誰が曾我兄弟なのか。
松明を手にしているのが、とわたしはこうしたときの約束事を思い起こす。松明を手にして蓑を着ているのが兄弟だ。
しかし松明を手にした人物はあるが、彼らが十郎五郎かはわからない。
一人の人物に目が行く。深緑の地に千鳥の模様の着物を来た若い男。幔幕から若い子に呼ばれて出てくる。別なシーンでは女から館の外へ呼び出される。またあるときは誰かを止めようとあわてて飛んでゆく。
『彼』は一体誰なのか。
そして工藤はどこにいるのか。

不意に胸苦しく思いつめた。
曾我兄弟の物語は必ず正月の歌舞伎の演目に立てられる。これは決まりなのだ。歌舞伎の『世界』では曾我の『世界』があり、そこから二次創作が始まる。
江戸時代の人間にとって曾我兄弟の物語は常識だったのだ。
ところが今はどうか。曾我兄弟の物語をこれこれこうだと語れるか。
芝居や古美術が好きな人以外、殆どが知らないだろう。
神奈川県から静岡が舞台の物語だから像も建っている。しかしその地の人でも大磯の虎や化粧坂の少将や朝比奈などと言ってももう今では通じないだろう。
曾我兄弟を見るにはどうすればよいのか、何か読み物はあるのか。
大昔の講談社の絵本にはあっても、現代の絵本には無い。
小説でもそうだ。忠臣蔵はあっても曾我はない。
源氏物語を知る幼児がいても、曾我物語を知る大人は少ない。
・・・ちょっと泣けてきた。
いや、だからこそ、こうした場でこうした絵を見ることが有意義なのだ。
そう信じたい。

国宝に話を進める。

『源氏物語絵巻』の『夕霧』を見る。これを見るのは五年ぶりだ。五島美術館で日本中の源氏物語絵巻を集めた展覧会で見て以来。
この情景はとても面白いのだ。元の話を知らぬ人でも、何やら奥方に不穏な動きあり(亭主が浮気を・・・)と推理できるだろう。手前ではその一部始終をうかがう女たちが・・・ははは。

『紫式部日記』も出ていて、私が見たのは第三段。絵があると言うのは、実は凄いことだとしばしば思うのは、こんなときだ。つまり清少納言の『枕草子』は「春はあけぼの」くらいは誰でも言えるが、どんな話があるか知る人は少ないように思う。この紫式部日記だってそうだ。
内容もなにも知るものか。
しかし絵があると内容は知らずとも、なんとなく知ってる気になるものだ。それが凄いと思う。

書も色々とあるが、わたしは語りようがない。

『林檎花図』は畠山で見ているが、いつ見てもこの絵は愛らしい。本当に可愛い。
『鶉図』よりわたしの好みだ。
しかし見る私が勝手気侭なので、見られる側の国宝も気の毒だ。

『絵因果経』が出ていた。藝大所蔵分。これは湯木美術館で別な箇所を見ているが、こんなに長いものを見るのは初めてだ。前日に見たバークコレクションでは江戸時代の絵因果経が出ていたな。
林の中で説法している。托鉢したり弟子が増えてたり。


古美術が好きなので、ただただ嬉しい。
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コメント
この展覧会は絶対に行きたいので、行くまで読まないでおこうと
思っていましたが、結局最終の土日もキャンプの引率に行くことに・・・。

帰宅したら、又、遊行さんのレポを拝見して脳内鑑賞の旅に出よう。
読むだけでまるでこの目で見たような気持ちの高揚を味わえるので、
とても楽しみです。 それには先ず、無事帰宅できますように。南無・・・。
2006/02/24(金) 22:08 | URL | 山桜 #-[ 編集]
以前から思っていたのですが、山桜さんはもしや地域の子供さんたちを引率してキャンプや博物館を廻られているのですか。
(信濃の話や下町資料館の話などから)

うーん、すごいですね。私には到底むりです。
わたしは奥様方を引率してタウンウォークはよくいたしますが、ちびっこたちには縁がないです。
いや、そもそもキャンプが出来ない。

キャンプにつきものの怪談話ならエンドレスで出来ますが・・・。
2006/02/24(金) 22:48 | URL | 遊行 #-[ 編集]
はじめまして
あの白粉彫りってありますょね?
2009/02/04(水) 23:43 | URL | 咲弥 #-[ 編集]
Re: はじめまして
☆咲弥さん こんばんは
聞きはしますが、実物は無論しりません。
どうも実在しないようです。
http://www.geocities.jp/kitsune0418/mikirisetumei.html
こちらへ行かれる方がよろしいようです。
2009/02/05(木) 00:33 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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