美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

わたしの好きなシロカネ・アート

松岡美術館が今年で40周年を迎えたそうだ。
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わたしは内幸町と御成門の間にあった時代から通っているが、たまにあの不便な場所の変わった展示の空間を懐かしく思い出す。
そこでは相客があったためしがなく、いつも一人でコレクションを愉しんでいた。
上階から下を覗くと展示を控えている作品収納棚などが丸見えだったことも懐かしい。

ここへは愛宕山から歩くことも多かった。
NHK放送博物館と当時の松岡美術館はわたしの中ではセットだった。
これは山種美術館の茅場町時代にブリヂストン美術館がセットだったのと同じ。
今ではみんなバラバラである。
山種美術館はむしろ根津美術館とツレになり、松岡美術館は東京都庭園美術館とセットになった。

さて白金に移った松岡美術館では順調に時を過ごし、めでたく40周年を迎えての「わたしの好きなシロカネ・アート」展が開催されている。
思えば「わたしの」とはなかなか深い言葉である。
この「わたしの」は創設者の松岡清次郎の、でもあるが、我々観客の、という意味合いでの命名である。松岡が愛したもののうちから観客が随意に好きだ好きだと言うたものを集計しての展示なのだ。

古代オリエント、現代彫刻、中国仏教彫刻、ガンダーラ、インド、クメール彫刻、近代洋画、近代日本画、東洋陶磁などなど…
松岡清次郎というコレクターの豊かで幅広い嗜好を我々後世の観客は深く味わえるように、各室が丁寧な展示と説明と設えを施している。

松岡清次郎が美術館を開いたその理念がサイトに紹介されている。
「人はどんなに偉くなっても、やがて忘れられる。
 そこへいくと、古代の第一級の美術品はずっと後世に残る。
自分が集めたものを、未来の人々に鑑賞してもらう。これが私の夢ですよ」

いい考えだ、素晴らしい。
これを読むと、ある芝居の台詞を思い出す。
幡隨院長兵衛が旗本の水野邸に、殺されに行くのが予想されているのに出向こうとするときに、子分や家族たちに言うのである。
「人は一代、名は末代」
美術館が続く限り、松岡コレクションはこのまま長く残るだろう。

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・古代オリエント
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ここではやはり猫です、猫。聖なる猫の頭部。B.C.664-332。この同時代の中国では春秋戦国時代か。猫の像はなかったと思う。やっぱり埃及は猫ですな。

・現代彫刻
ここでも猫です、猫。よく働く猫。ジャコメッティの猫の給仕頭。賢くてかっこいい猫。

・古代東洋彫刻
松岡コレクションのガンダーラ仏で大いにその方面に惹かれた身の上としては、一つ一つの彫像にそっと甘言を囁かねばならない。
ああ、なんて素敵なことだろう…

仏伝図を見ると、かつての西新橋での松岡美術館の暗い廊下が蘇る。そっと小銭を供えていた人々。そのお金は松岡美術館からNHKに託され、歳末助け合い運動の募金になった。

インドのヒンズーの神々の像もいい。
丸い胸、豊かな四肢。跳ねる肉体。ここで見たことが学びとなって、後年の奈良博「インド・マトゥラー美術」展、東博「インドの仏」展に良い効果を生んでくれたのだった。

クメール彫刻を常時見ることが出来るのはここと東博だけ。
かつて大阪市立美術館の特別展ロックフェラー・コレクションのクメール彫刻に感銘を受けたことが蘇る。

陶磁器コレクションもとても豊かだ。
ギリシャのアンフォラ、クラテールの他は中国の陶磁器と少しばかり有田焼が出ている。
唐代の婦人像、舞女像、楽人像などは特に美しいフォルムを見せ、フィギュアの美を味わえる。

三彩、白磁、青磁、青花、と時代ごとの流行も見て取れる。
わたしは特に青花が好きだ。そして大きな法花にも喜ぶ。可愛いなあ。可愛いなあ。
清朝の豆彩、粉彩にくると転写式の洋皿のようにも見えてくる。いや、それよりもロマンティックな少女マンガの背景の花に近いかもしれない。
抹茶の集合のような色をした便もやはりいかにも清朝で面白い。

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・近代洋画
キース・ヴァン・ドンゲンを知ったのは間違いなく松岡コレクションで。もう本当にかっこいいなと思った。それでドンゲンの絵をもっと見たいと熱心に探したが、なかなか見当たらなかった。西洋美術館のドンゲンも松岡で見たより後だった。あれはわたしが西洋美術館に行くようになった後のある時期に購入したのではないかな。
今でも本当にドンゲンが好きだ。
1920-1930年代のオシャレな時期に活躍したドンゲン。素敵だなあ。

ここは印象派のいいのもあるが英国アカデミーの名品も多く所蔵している。
今回はポインターの「小さな災難」が出ていた。
好きな絵。青木繁「享楽」を思い出しもする。
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ポルティーリエ オリエントの少女 きりりっとした少女。

ヴラマンク スノンシュ森の落日 怖い夕陽やなあ。

ドンゲン 葦毛の馬、ノルマンディー 馬は一頭であとは牛が四頭なはずなのだが、中学生の少年のシロガネ・アート感想文を読むと、数が合わない…

ドニ 赤い寝椅子に横たわる裸婦 ピンクの膚が艶めかしい。
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ロート 腰かける裸婦 キュビズムの裸婦。…これ、パーツごとに分離したら「ロース」とか「カルビ」とか「バラ」「ハラミ」「タン」「ミノ」…
ごめんなさい。

日本画を見る。
床の間に川合玉堂「鶺鴒」がかかるが、しーん とした空間の中に小さな鳥がいて、それは大きな自然の一部なのだと知る。
だから絵の枠の外にも自然は続き、床の間は自然の一部を切り取った空間になる。

木島桜谷 孔雀 ザクロがなっている。どこかエキゾチックな空間。

ほかにもいいものをたんと見た。
そして昔の絵葉書のプレゼントがあった。とても嬉しい。
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ありがとう松岡美術館。
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