美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

春信一番!写楽二番!フィラデルフィア美術館浮世絵名品展

3つの館を巡回する「春信一番!写楽二番!フィラデルフィア美術館浮世絵名品展」もいよいよ最後のあべのハルカスで終盤を迎えつつある。
わたしは三井記念美術館で前後期を見たのに感想を書けず、あべので待った。
ありがたいことにハルカスは展示替えなしなので、一挙に見ることができ、印象もばらつかず、今回は書けそうな気になっている。
イメージ (15)

1.錦絵以前 浮世絵版画のはじまり
宝暦までの作品が15点並ぶ。

朝鮮人曲馬の図12 1683  馬上才の元気な様子を描く。今ちょっと調べたら朝鮮通信使が来日する際には馬上才もよろしく、と日本側から要望があったそうだ。
その起源は古く壬申の乱…うわ、この時点で千年前からの技芸ですな。

大森善清 「よろひ桜」より「紅葉狩」 1702-03  線の太い版画で、龍の顔した鬼と格闘するところを描く。龍顔の鬼を見るのはあまりないな。紅葉は手彩色だった。

初代清信 #2団十郎の鳴神上人と中村竹三郎の雲の絶間の姫 1715  けっこうしっとりと話し合う。この芝居も単純なようで「終わった後」が気になる内容。木原敏江は姫が上人を可哀想になり、帝を振ってこちらへゆく話を描いたが、わたしもそれでいいと思う。

二代清信 #2団十郎の不破の伴左衛門と初代菊次郎のぶれいの一かく 1734  不破が一かくの振袖を掴む。たいへん妖しい雰囲気がある。手彩色。一かくは立ち、不破はその場に座している。二人の視線の絡み合いがたまらない。

初代清満 #4団十郎の四郎兵衛忠信 1761  これは狐忠信でもあるが、足元に碁盤が転がっているのは碁盤忠信との綯交ぜかもしれない。

イメージ (14)

2.錦絵の誕生 春信の浮世絵革命
春信が随分並んでいた。

若侍の身支度 1765  花頭窓の前で世話をする女。桜がはらりと。

水売り 1765  これもよく見かける絵で、この時代にはこういう職業があったことを知るのにいい絵。

やつし葦葉達磨 1765-67  赤いのをまとい、川に浮かべた葦の葉に立ち、ふと陸地を見返る女。達磨伝説から。
<見立て>や<やつし>は状況コスプレとでもいうべきかな。
このほかにも三十六歌仙や与一の見立てものなどが出ている。

そうめん干し 1766-68  摺りが綺麗。素麺はやはりあくまでも細く細く…

綿摘み女と少年 1767-70  玄関先の二人。綿の摺りがとても綺麗。そしてこの後のシーンが「春画展」に出ている…ゲジ柄の猫が丸くなっている。

笛を吹く若衆 1767  秋から冬の夜、菊が咲いている。雪笹柄の振袖を着る。
背景の摺りが近代版画風な感じで、ちょっと意外な効果を挙げている。

後朝の分かれ(見立て羽衣)1767-69  思えば行為そのものより、こうしたところにときめく感性というのも日本人にはあるわけですわな。そしてそこに更に別な物語を重ねる。
背後の大きな衝立に富士山と三保の松原を描く。これでまず天女の物語を想起させる。
大きめの衾から出た女が男の羽織の裾を掴む。
なるほどうまいものだと納得する。

遊女と客(林間煖酒焼紅葉 1768  白居易の歌からの見立てものが江戸の庶民にも浸透している証拠のような絵。
火鉢に紅葉をくべる禿。優雅な遊びになる。

鼓を打つ若衆 1768  布袋の絵のかかる一間で鼓を打つ。その絵の方に春信の落款がある。床の間には赤い菊。廊下と床の間の平面性が狂っているのもご愛嬌。若衆の振袖にはユーゲント=シュティール風な蕨文様が入る。

お波お初 1769 湯島で乙女神楽をしていた二人を描いたとのこと。わたしはこの二人のことは知らない。初めてそうした女たちがいたことを知る。
お伊勢さんの間の山のお杉お玉は知っているが。

ここからはその追随者たちなど。
磯田湖龍斎 遠眼鏡を見る男女 1773  よく似ている。頭上に遠眼鏡で見ている遠景が浮かぶ。

歌川豊春 浮絵十二段管弦図 1767-69  御曹司のご登場でオーケストラ完成である。

絵師未詳 鴨を襲う鷹 1772-89  正面版筆彩  鴨がヤバい状況なのだが、この版画表現がとても面白い。どうなっているのかよくわからないが魅力的。

ここからは役者絵。
一筆斎文調 初代中村野塩の白拍子佛御前 1770  烏帽子を持ってやってきたところ。世をはかなんだ果てに。

春章 #2嵐三五郎の工藤祐経 1777 「已己巳己」イコミキを意匠化したものを着物に。

春章 初代仲蔵の寺岡平右衛門 1779  この初代仲蔵は大変な苦労人の芸達者で、一代でこの名を大きなものにしたのだった。この人の工夫でそれまでは山賊スタイルでもっさりしていた五段目の定九郎を、現行のようなすっきりした浪人者に変えて、人気役にしたことなどがある。
一ノ関圭「鼻紙写楽」の中に仲蔵を主人公にした一篇がある。

イメージ (19)

3.錦絵の展開 清長・歌麿・写楽 みずみずしい美人と個性的な役者たち
清長が長身の女を描いていた頃、京では応挙が写生重視の世界を展開していたのか。

清長 子宝五節遊 重陽 1789-1801  楽しそうな子供ら。公文だったか浮世絵の子供絵に特化したコレクションを持っていたのを見ているが、そのときも清長の子供らが元気そうで感じよかった。

歌麿の絵も有名どころが並んでいた。
歌麿は一枚絵の女もいいが、それよりも誰かと一緒にいるときの絵の方が何かしら物語があったりして、面白くなる。
カップルが黙って寄り添うだけでも「この二人、先はどうなるのだろう」と思わせもするし、子供と一緒だと情愛を感じる。

お七と小姓吉三郎 1803  江戸を焼いてしまうのだからなあ…

鳥文斎栄之 浄瑠璃十二段草子 1797-99  琴と笛との競演。こういうのを見るとやはり岩佐又兵衛の絵巻が見たくなる。呼び水になる。

写楽の展示について、これはもうハルカスでの展示が本当に良かった。
絵を並べるだけでなく、元の芝居がどんなので、その人間関係までチャート表で示すのだ。
これだとたいへんわかりやすいし、何故この描かれた人物が青くなっているのか、などがはっきりと理解できる。
今までにない、よい紹介だと思う。
だから見ていても楽しい。

イメージ (17) イメージ (18)

4.錦絵の成熟 北斎・広重 旅への憧れ・花鳥への眼差し
最初に英泉の美人画が三点。いずれも文政年間のもの。

北斎にも連作「東海道五十三次」があるのを知った。
日本橋、蒲原などが並ぶ。広重のに慣れているので不思議な感じがある。
「富嶽三十六景」からも数カ所。
その他、瀧巡り、名橋などのシリーズものも少しずつ。
雪月花もある。嬉しいな。隅田、淀川、吉野の三名所。
淀川の月、というのを見ると「淀の月手毬歌」というお菓子があるのも納得である。

国貞 大坂道頓堀芝居楽屋ノ図 1821  二階建て構造でみんなバタバタするのを描く。こういう絵はなんだかわくわくする。

国芳 風俗女水滸伝 百八番之内 林冲 文政末期  これも見立てもの。そういえば林冲は「豹子頭」という二つ名を持っていたが、着物の柄にすると…

岳亭 大坂天満宮祭礼之図 1833-34  賑やかな祭りの様子をロングで。天神橋が人で埋まり、花火がまるで火花のようになり、星は雪のようにも見える。行き交う船もインフレ状態。

広重の名所図いろいろ。
宇治川蛍狩りの図 1835-36  これはもう朝顔日記の舞台になるのも当然。

忠臣蔵八段目 1835-37  「道行花嫁」の方。綺麗な秋空をゆく母娘。

六十余州名所図会 阿波 鳴門の風情 1855  これは本当に綺麗な藍色が使われている。ベロ藍。綺麗なのに感心する。

江戸百からは深川木場と洲崎十万坪。どちらもいい絵。

どーーーーんと千社札を集めたものがあった。これが実にいい。
1830-68、いろんな絵師たちの手によるもので、連作有・単独有など様々。
オバケの絵もあれば芝居絵もある。とても楽しい。名前と花鳥の取り合わせもある。
色鮮やかで見ていて本当に面白い。自分もほしくなる。
猫の絵も多い。大黒さんの小槌にネズミ、忠臣蔵、

イメージ (16)

5.上方の錦絵 流光斎・長秀 ありのままに描く
京の合羽摺りがあった。

翠釜亭 翠釜亭戯画譜 1782  スイカに大根などの絵があり、大津絵の鬼の念仏も登場。

流光斎如圭 #2助高屋高助の黒船忠右衛門 1805  もっちゃりしたオッチャンである。そのあたりがいかにも上方のリアリズムなのである。

松好斎半兵衛 #3中村歌右衛門の花園みちつね 1806  「兼ネル役者」として名が江戸・大坂に残る大名優。わたしはこの絵師以外の歌右衛門の絵を池田文庫やヒゾルフ・コレクションなどでたくさんみたが、もうその時からずっとファンである。
いい役者ぶり。けっして容姿に恵まれたわけではないが、素晴らしい役者だったという。

蘭好斎 #7仁左衛門のから木政右エ門、初代嵐猪三郎  敵の似せ絵を見せて人探し中。

色々といいものを見せてもらい、とても楽しかった。三井で見たときより脳にスィーと入っていった。
最後に一番よかった絵を。
広重 富士川上流の雪景イメージ (20)

フィラデルフィア美術館、本当にすごいコレクション…
そしてHPで浮世絵みていたら「桜姫東文章」を描いたのがあった。国貞。
お寺の一室で再会し、「久しぶりだノ」と釣鐘権助が桜姫と仲良くしようとするところ。
桜姫、既に懐紙を咥えているのがいい。
こちら。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア