美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

古代エジプト美術の世界 魔術と神秘 ガンドゥール美術財団の至宝

もう終了してしまった展覧会だが、印象深いものを見ているので、簡素にだがその感想を挙げたいと思っている。
松濤美術館での「古代エジプト美術の世界 魔術と神秘 ガンドゥール美術財団の至宝」展である。
チラシが手に入らなかったので文字のみ。

スイスのガンドゥール美術財団所蔵の素晴らしいエジプト美術の数々が並ぶのだが、子供のころからエジプト美術に惹かれて、というのが素晴らしい。
環境の違いというのもあろうが、自分が小さいころに見た「エジプト美術」と言えば映像や画像ではあるがスフィンクスにピラミッドにミイラくらいで、映画でも古代エジプトを舞台にしたものは「ピラミッド」にしても「クレオパトラ」にしても怖いものだった。美の対象として見る以前に恐怖が先立っていた。
しかしこの財団のコレクションを作り上げたジャン=クロード・ガンドゥールさんは本物に触れて感動し、以後そのコレクターになったというから、やはり子供の頃には佳い本物を見て、恐怖ではなく感動を覚えるように仕向けなくてはならないわけだ。

書記学校の古代模型 2134-1785BC  三人の生徒と先生と。生徒は白板をもつ。先生は上等の鬘をつけているそうだ。ラジオ体操しているように見えるフィギュア。

前後を見分ける聖なる目のアミュレット 664-332BC ファイアンス  薄緑の綺麗な眼の形。

トト神、トキ、ヒヒの像やお守りなどがあった。
レリーフも色々。

シェプセスカエフアンクのレリーフ 2635-2155BC  着色された石灰石  この人の息子がレリーフに残る。若者の象徴の「サイドロックヘアスタイル」をしている。

呪いの人形 2134-1785BC アラバスタ―(トラバーチン/石灰華)  解説を読むとなかなかコワいことが書いてある。
これは破壊されずに残った貴重な一つそうだ。
しかし考えたら破壊されるべき筈のものが生き残るというのは、呪いや穢れを一身に身にまとっているのではないのか。
なにやら恐ろしい存在でもある。

展覧会はいかにも海外の財団のコレクション展という味わいが滲んでいて、興味深いものだった。
展覧会監修者のビアンキ博士の言葉なのだろうか、読みながらこの突き放され感がいかにも海外ぽくて、それはそれで面白い。

モントゥスと妻の像 1994-1785BC 花崗岩か  夫婦同サイズの像である。=同じ身分である証明。男女差別より身分差別が強い時代でもある。

ミイラのための仮面を見たヒトのではなくトキである。
金色に耀いていたのは金箔押し。マスク自体は木製。664-332BC 一万羽もトキをミイラ用に殺したのか。勿体ない、と思うのは現代日本人の考え方に過ぎないのか。

カバもナイル川にはおなじみの存在なので像もアミュレットもある。カバをこんなにも聖獣化して崇めたのはこの時代のエジプト人以外にはいないのではないか。

猫の像もある。先のトキと同時代であり、つまり猫もまたわざわざミイラにするために育てられていたのである。哀しい…

猫のアミュレットなどは今でも人気が出そう。
ヘマタイト、銀、水晶などが猫型に刳られている。黒猫、銀猫、透明猫。可愛くてならない。小さな猫背に月のついたのもある。
ブロンズの妊娠中の猫像などは一見したところ朝倉文夫の彫刻かと思うばかりだった。
お乳を飲む赤ちゃん猫の像も愛らしい。

神の子ホルスの関連が現れる。オシリス、イシスらのほかにネフテュスの像もある。
このあたりの人間関係というのか、敵対関係などの相関図は山岸凉子の作品から学んだ。
「イシス」。
それだからか、展示作品の解説にネフテュスのことを「ホルス生誕に<協力>」と書いてあるのを読んで「…ああ」と思ったりもするのである。
どう協力なのかは本当は知らない。やはり山岸さんの作品のような直接的な<協力>だったのかもしれない。

一方ホルスの息子たちを表すフィギュアがある。ジャッカル、ハヤブサ、ヒト、サル。
かれらをモチーフにした護符などは信仰心の現れ方がどうだったのかを知らせてくれるようで、なかなか面白い。

ハヤブサの彫像 1080-664BC ブロンズ  大変大きい。しかし嘴が可愛い。スゴイ緑青に覆われていて、とても綺麗でもある。

伏せるジャッカルの像 1080-664BC  これがまたカッコイイ。首にはリボン。
ジャッカルも人気で象嵌パーツや杖の装飾にもなっている。

そしてリアルな造形のスカラベ、蛙のアミュレットなどなど。
クロコダイルのアミュレットなどは可愛すぎて、海洋堂のフィギュアかと思ったほどだ。
野兎のアミュレットは耳がシャープに伸びた横顔なのだが、これには見覚えがあった。
ルネ・ラリックのカーマスコット”VICTOIRE"あれにそっくりだった。

装飾品もいい。
ハヤブサの頭部の草食金具がついた副葬のための襟飾 305-32BC  だいぶ近年になってきた。二つの頭がついている。細めでキラキラしていた。

アミュレットのネックレスもいい。15個のミニチュアがついている。色ビーズでつながれた動物たち。可愛いし、今首から下げてもへんではない。

とはいえいずれも副葬品である。
その副葬品のうち少しどきっとするものを挙げる。

ホルエムアケトの人型の棺 1080-664BC  象嵌された綺麗なものだが、これはイブ・サンローラン旧蔵品。エジプトの棺は彼の手元でどのような位置を占めていたのだろう。
昔、サラ・ベルナールは日本の仏壇に興味を示し、ジュエリーボックスにしたそうだが。

死者の書、鎮墓人形、棺の扉等々。エジプトロジーへの関心だけでない、美的なものとして愛するには、あまりに恐ろしくないだろうか。

ラメセス二世の胸像 1305-1185BC  たいへん立派な像である。立派な王だから立派な像なのか。桃色花崗岩だからぽぉーっと赤くなっている。

ほかには小ぶりなスフィンクスもあり、「魔術」はホルスの誕生についてはなるほどと思ったが、「神秘」は全体に漂い、見ごたえのある展覧会だった。
コレクターの眼の高さにこちらもつられたようである。
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