美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ジョン・C・ウェバー コレクション

MIHO MUSEUMまで「ジョン・C・ウェバー・コレクション」展を見に行った。
往復4時間以上かかるが、行く価値のある素晴らしいコレクションを目の当たりに出来たのは幸いだった。

最初にジョン・ウェバーさんがどういった人かを紹介するコーナーがある。
トライアスロンの世界王者だということでその関連が展示されている。
本当にアイアンマンである。
氏のコレクションはこの数十年のものだが、パーク・コレクションのパーク女史とも親しいそうで、このチラシを見るだけでそのコレクションの佳さを大体想像できるようだった。
イメージ (5)

はじまりは縄文土器からだった。
火焔土器のお出迎えがある。
「おお、ジョーモン」という言葉が出る。(「マッドメン」エリザベス・バートン女史)
何か縁のところに4点の尖りがあるが、見たことのあるもので、しかも妙にわたしにはいやなかんじがある。うーむうーむ…わかった、「トリキ」だ。「鳥貴族」のキャラ・トリキでした。

縄文の鉢は縄文というより波文のようだった。しかも波紋。
思えば三島などは印花などで文様を拵えているが、「押す」「印す」というのでは縄文も三島も発想は同じなのかもしれない。

遮光器土器 定番のサングラスちゃんなのだが、胸に飾りが一つあり。顔柄のネックレスの様だが、これこそ「暗黒神話」のオオナムチのそれを思わせる形を見せていた。
腕には蛇が巻き付いている。

そしてその並びに鎌倉時代の蔵王権現像があった。やや寸詰まりの像で、背景の炎や当人のポーズはうねるうねる。
この並べ方はとてもかっこいい。

中国のやきものを見る。
白磁刻花蓮花文盤 北宋―金 白磁の見込みにキュートで大柄な花がパァッと開いて、茎も葉も明るく伸びていた。縁だけ黒にしていてそれが制限になるが、花が音楽を流していそうである。

青白磁刻花花文輪花鉢 宋 さすがに綺麗な色合い。見込みにそっと花が咲いている。

澱青釉盤 金―元 虫食いの小さいのが6つあるがそれが星のようだった。

室町時代の古い絵をみる。
楼閣山水図 伝・岳翁派 薄く月が出ている。薄暮の頃のような趣。

瀟湘八景図 土蔵栄崇 縦の軸もの。八景を全て一つに納める。白帆に降りかかるスコールのような雨。逃げてゆくかのような雁。

破墨山水図 如水宗淵 小さな塔もいい感じの配置。

蓮鷺図 金渓道人 二羽の鷺が佇む。頭上の羽が跳ね上がっている。敗荷はひどく薄墨で描かれているが、そこに口をきつく喰いしばった翡翠がいた。
鳥たちの気持ちのことはわからない。

芦鴨図 甫雪等禅 色が羽根に乗り、多少中国風な味わいがある。後世の南蘋派風とはまた違うが、やややかましい。

布袋図が二枚。
狩野正信の布袋は旅の途中にニッコリ。これはこの派にいる限り誰もが描く布袋。

雪村周継 こちらの布袋は破格というか、たいへん面白い顔を見せていた。
大きな袋の上に腰かけて、頭上の満月を見ているのだが、ぼーっとしたようでいても手の組み方もしっかりしていて、まるでバレーボールの最中のようである。
目つきはおかしいが、セッターまたはリベロとして活躍できそうである。

仏具類に凄いのがある。
銅版法華経 平安 非常に細かい文字でずらずらと法華経が記されている。8段x28行。
何が書いてあるのかと見た途端「無能」の二文字が飛び込んできた。
・・・ええ、まぁ、はい。

善導大師像 南北朝 椅子に座るが斜め向きの顔。いつもたいてい綺麗な顔を見せているが、今回のは中年のオヤジさんである。口元に5つの仏影が見えるのは、空也の「南無阿弥陀仏」の6文字に対抗するものか。ここで5つの影ということは「南無阿弥陀」で、大師自体が「仏」となるか。
へんなことを思いついた。五文字で「アウトロウ」とか「バガボンド」とかいうのは絶対にないが、たまには不平不満でもいいような気がする。
それと今思ったが、絹谷幸二の絵によく口から♪があるが、あれもある意味発想の根源は同じかもしれない。

地蔵菩薩像 南北朝―室町 香炉を持ち雲に乗る。シックな色合いだが、剥落も褪色もしていない。綺麗なお地蔵さん。

色紙いろいろ。
俊成三十六人歌合 尊円親王 南北朝 これはいい字。肥痩のリズムのいい文体。

石山切、光悦、一休のそれもある。

根来塗が並ぶ。
大きなものが並んでいた。
桶、瓶子、輪花盆、湯桶、杓子。
お寺で実際に使われていたからか、やたらと大きい。
中には正木美術館にありそうなものも並んでいた。

そしてその根来塗りがどのように使われているかを示すように、鎌倉時代の絵があった。
高野大師行状絵伝断簡 食事の時間なのか、根来の大きな桶を何人もで運んでいるところ。
根来塗りは黒漆の上に朱漆を塗り、それが剥落してゆくのが味になる。だからやっぱりこのように使いこなされたものでなければならないわけだ。

日本のやきものをみる。
朱彩壷 弥生時代 全体が赤褐色になっている。塗られたものなのか土にそうした成分があるのかはしらない。

桃山時代のやきものいろいろ。
黄瀬戸梅樹文鉢 可愛いな。油揚げのような色といい、見込みに可愛く梅といい。
他にも瀬戸黒、絵志野、鼠志野、織部などなど。いずれもよいものばかり。
好みは志野なのだが、織部の面白さと言うのもやはり捨てがたい。

高取透文台鉢 これはまた透かしが大胆で面白い。万華鏡のようだった。白磁だから透かし文も地味に見えるかもしれないが、このカタチの面白さは大きい。

伊万里のいいのも多い。花の外線を青にして中にまだ完全ではない朱が入っていた。
染付の山水図のものもいい。
波佐見焼の青磁も綺麗な色をみせている。
鍋島青磁南瓜文三脚大皿 ああ、いい刻み。そこに釉薬が入り込むのがまた綺麗。
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絵を見る。
源氏物語歌合絵巻 室町―桃山 白描で上畳の貴人と御簾の向こうの貴女との取り合わせになっている。

時代不同歌合絵 室町 こちらは豪勢な彩色である。御簾の貴女の次は右近vs小式部内侍、次は伊勢と花園左大臣だろうか。

源氏かるた 浮舟がいた。舟に乗っているからわかる。あとは玉鬘、御法か。

吉野櫻図 土佐光起 櫻は二種咲いていた。里桜と山桜と。川が流れ熊笹も生い茂る。型押しされたような櫻、胡粉で盛り上がるような櫻、どちらも見事。

寛文美人図 いかにも寛文美人。手には牡丹。黒地に肩や裾に大きな絞りが載る素敵な小袖をまとっている。

女形図 西川照信 美貌の女形!野郎帽子の下のやや面長な顔は今の鈴木保奈美に似ている。すっきりした美貌。シャープで綺麗。オモダカの絞りの着物が似合う。

遊女図 奥村政信 褄を取る手の愛らしさ。ふっくらと可愛らしい。

吉原風俗図巻 チラシにもなった。
イメージ (4)
上屋町の店に入るところ。炬燵が出ていて、そこに三組の男女が入っている。
しかし三組はそれぞれの相方にしか興味を見せない。そぉっと話し合っていたり、膝枕をしたり、「おい」「ふんっ」というのもある。
一方で壁際にはお茶を引いたらしい女たちもいる。
屏風で隔てての衾の二人。この座敷だけで三組ばかりが商売をしている。
イメージ (10)
一方、その隣は蚊帳が吊られていて、その中で二人だけ。こちらの方が高いわけです。
音曲や舞を楽しむ客もいる。また厨房も描かれていて、大忙し。大盥には新鮮な魚介。タコ、海老、活魚もいる。そばには犬たちがおこぼれにあずかろうと待ち構えている。
宴席の二階へ出来た順から運ぶ。
手水を使う男も描かれていて、衣裳部屋もみえる。
華やかな大見世の様子。

肉筆浮世絵をみる。
窪俊満の二美人、勝川春章の「暫」の扇面図、歌麿の「扇屋花扇」の扇面図、国芳の地獄太夫などがなかなか面白かった。

ウェバーさんは着物の蒐集もしていた。
狂言の素襖がある。波ウサギなので「竹生島」なのだろうが、このウサギたちは眉まであり、こっちむき・あっちむきで面白い。

火事半纏もある。まぁここらは外人さんは特に面白がるわなとにこやかに見たら、渡辺綱と茨木童子、「も組」などのいかついもので、やっぱりかっこいいのだった。
前期には「浪裡白跳張順」の柄の半纏もあったのか。かっこいいな!!

男物の長襦袢にはいくつかの絵が混ざっている。絵馬はわかるが「生写朝顔話」は表側か確認できなかった。節分、梅の絵もある。川の流れに琴柱もある。これは「朝顔」だとは言えない。彼女は確かに川と関係のある女で宇治川、大井川で大きなドラマをみせるのだが、娘深雪から女芸人朝顔になった彼女は三味線を弾いて歩くのである。

昭和になってからの銘仙がずらりと並ぶ様は圧倒的だった。
ウサギ木賊文様の白兎はなかなか可愛いし、稲妻柄、幾何学文様、抽象絵画文様!!
あーすごかった…

そして更にトドメのパンチがこちら。ミッキーマウス柄の子供向けの綿入れ。
イメージ (6)
レトロな電話を掛けるミッキー、蜂とミッキー。

蒔絵物も色々あり、ウェバーさんのセンスの良さに唸るばかりである。

近代日本画もある。
十和田湖 川瀬巴水 一曲屏風 巴水の絵とは思わなかった。なにか意外な感じがある。何故だろう。巴水のスケッチがそのまま本画になったような感覚がある。

山寺図 小島一谿 この画家は知らない。山形の立石寺。上部に寺、長く隔てる巌山、そして下部に広がる民家。

機織図 市原寿一 この画家も知らない。少し調べたが鳥取の方の人のようだ。わからない。
絵自体は近世風俗画の職人尽の機織屋を基にして描いているようだった。
機織り女の向こうに柳の絵の襖があるのだが、その襖から柳が女の腕に触れているようにみえる。
手前の女二人は縫い取りをしている。
正直に言うと、とても好みなのでもっと見たいと思う。
イメージ (7)

鳴門図 小野竹喬 妙な静けさがある。後年の竹喬の絵とはまた違う趣がある。北斎の摺物に金沢八景図があるが、あれと似たような不思議なシュールさが漂っている。
どこか牛島憲之にも通じる静けさ。

技芸図 安井曾太郎 朝鮮の妓生を描いている。体操座りをする若い女。

妻図 猪熊弦一郎 銘仙の羽織に洋髪のなかなかかっこいい妻であった。

日月五峰図 朝鮮王朝 民画ではないのだが、どこか稚気のある絵だと思った。
山から滝が流れて川になり海に至るのだろうが、小松均が描くような感じがある。
日本昔話のための童画にも通じるようなところもある。

会場を変えて、そちらでは中国青銅器などが並んでいた。
先史時代の壺、商時代のものは一つ、その後の西周時代のものが多かった。
どんどん時代が下がるにつれ文様が大雑把になってゆくなあ…

前漢の俑で珍しく大きいものがあった。「踊る婦人」と名付けられているが、前漢のものでこれだけ大きいのを見たのは初めて。
髪はひとまとめにしたものを後ろに垂らし、やや前屈で、長い袖を片方肩にかけている。その袖には少しばかりの朱が残る。

舞人の俑もあるが体の等身が少しおかしいので、もしかするとこれは道化なのかもしれない。

三彩の盤も出て、優雅な様子を見せている。

キリスト教圏の工芸品などもある。
ビザンチンの十字架、カメオレリーフ、イコン…
どうやらウェバーさんはビザンチン美術がお好きなようだった。わたしも好き。

それからレンブラントの版画や自画像などもある。
飽きることなく堪能させていただいた。
ああ、面白かった…

12/13まで。
巡回するのかどうかは知らない。
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