美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

物語をえがく 王朝文学からお伽草紙まで

根津美術館と國學院大學博物館とで同時期に物語絵を中心にした展覧会が開催されている。
近いところにある2館、わたしはどちらも大いに楽しませてもらった。
まず根津美術館の感想を挙げたい。所蔵品展である。
「物語をえがく 王朝文学からお伽草紙まで」
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九月に「絵の音を聴く」展を見に行き、そこでも所蔵する物語絵の素晴らしいのを拝見してときめいていた。
その時の感想はこちら

伊勢物語図屏風 8曲1隻 紙本墨画淡彩 日本・江戸時代 17世紀   屏風に様々な逸話の1シーンを描く。任意に見ても楽しいし、右から左へ順よく見ても面白い。
今回、昔男さんのおつきの侍童がとても気になり、彼を追いかけた。
「西の京の女」「富士見」「くたかけ」「ついに行く道」「竜田川」などにその可愛い姿を見せている。
わたくしなどはまめまめしい昔男さんよりも、いつまでもコリナイご主人の後をハイハイとついて歩いて、若くして愛怨・世の無常を目の当たりにする少年の方にそそられますな。
可愛く髪をまとめてくくり、昔男さんが好むご婦人方よりもなお愛らしいではないか。

ところで珍しいのは「くたかけ」が出ていること。
田舎の女の純情をバカにしてるけど、こういうやりっぱなしの男の真意を気づかず幸せなキモチでいる女の図太さというのも厭ではあるな。
それでクタカケはトコヨノナガナキトリのことだというが、絵を見るとそれではなく、むしろ狐らしきものが描かれている。ということは「管」(=クダ)=管狐にかけているようにも見える。そこでいよいよ田舎ということを示しているのか。
などと色んなことを妄想するのが楽しい。
全然関係ないが和歌の中に「姉歯」が出ているのを見て、色々と感慨深く思う。後には芭蕉も訪ねた姉歯の松。

伊勢物語図 板谷広長筆 2幅 絹本着色 日本・江戸時代 18世紀   庭先に犬、縁側にウサギ。えーと、これはどの段になるのだったか。

源氏物語図屏風 8曲1隻 紙本墨画淡彩 日本・江戸時代 17世紀   絢爛なのもいいが、こうしたあっさりもいいな。

源氏物語朝顔図 土佐光起筆 1幅 絹本着色 日本・江戸時代 17世紀   少女ら三人が雪だるま拵えてるのを見るところ。
以前は何も思わなかったが、橋本治の解釈本の中で、紫の上が源氏に手折られたことで彼女の素足は気持ちいい土の感触を味わえなくなった、という意味のことがあったのを読んでから、このように傍観者になるしかないのか…と思うようになり、ちょっと複雑な眼で情景を見てしまうのだよ…
まぁ尤も高貴の女人が雪だるま拵えたり、いうことはそもそもないわけなのだが。

源氏物語画帖 伝 土佐光元筆 1帖 紙本着色 日本・桃山〜江戸時代 17世紀   例の事件の立役者の唐猫ちゃんを貰い受けて、それを膝に乗せる柏木が、鬱屈を抱えたまま歌を詠むところ。

源氏物語図屏風 6曲1双のうち 紙本着色 日本・桃山〜江戸時代 17世紀   解説によると狩野派の人の手によるものらしいが、言われるとなるほど人々の描写が中国を舞台にした絵のそれとよく似ている。やや大きめの人物たち。力強い絵。

源氏物語画帖 伝 住吉具慶筆 1帖 紙本墨画淡彩 日本・江戸時代 17世紀
源氏物語図屏風 住吉具慶筆 6曲1双 紙本着色 日本・江戸時代 17世紀
色々と黙ってニンマリなシーンが。

源氏物語浮舟図屏風 6曲1隻 紙本着色 日本・江戸時代 17世紀   宗達周辺かというのも納得。「白楽天」の絵と同じような構図で大胆な構図でカッコイイ。金の舟に二人。
こんなカッコイイ構図の中でしめっぽい話なんかするな。いっちゃえいっちゃえ、な気分になるなあ。

曾我物語図屏風 6曲1双 紙本着色 日本・江戸時代 17世紀  右端の一部で十郎、落馬してこけてる。それを五郎が慌てて…こういうのを見ると五郎はやはり暴れん坊の弟だけに身体能力も高いけど、兄貴の十郎は確かにどんくさいよな、と思たりもする。
芝居などでも「矢ノ根」だと敵に囚われて生霊飛ばすしかないし、「助六」でも弟に指南されてのあれだし…女の方くらいか、達者なのは。

さて、工藤祐経の寝所に行くには遊女の手引きがありました。そして五郎が捕らわれるのは女装の武士・五郎丸に油断しての事。どちらもなかなか小奇麗でした。

平家物語画帖 3帖のうち 紙本着色 日本・江戸時代 17世紀   扇面で「鵺」の話が2面。与一の射った後のやんややんやの後の舞う男殺害などが出ていた。他に「錣引」「弓流し」それから「伝内教能、伊勢三郎に騙されること」…あ、あれか、阿波民部の倅の話か。
途端にわたしの中で「子午線の祀り」のあの情景が沸々と浮かび上がってくるのでした。

西行物語絵巻 2巻 紙本着色 日本・室町時代 15世紀   四歳児を蹴落とすDV父、寝室で衾に入りながら妻に別れ話を持ち出す夫、自分で勝手に剃髪。
佐藤義清から西行へ。
「玄奘三蔵絵」の山中の描写と似た感じの吉野山を遊行する西行。

蛙草紙絵巻 伝 土佐光信筆 1巻 紙本着色 日本・室町時代 16世紀   こういう目端の利く奴の成功譚は「How To Succeed」に至るまで面白おかしく描かれているが、やっぱりこれは庶民の夢なのかな。
さて始まりはお寺のところの牛が二頭揃って干してる布をもぐもぐ。布引どころか布喰いやないですか。それを見ていた男が布の行方を手柄顔に<推理>し、ドヤ顔をする。
牛の口から布が取り戻される。反芻機能があるからなあ。
そこから道が開くというのがまたもう…
しかしこういう目端の利く奴が重宝なのは確かで、蛙の化生もそこを見込んで話を持って行く。
で、お姫様の寝所の畳下からゲコッと大蝦蟇。双方共にヨカッタヨカッタの話。
情報力とそれを使用するテクニックは大事だよなあ。

玉藻前物語絵巻 2巻 紙本着色 日本・室町時代 16世紀   おお、詞書全編にルビが振られている!初めて見た!
やや稚拙な絵なのが可愛い。ここの狐は金毛九尾ではなく二股に分かれてるだけ。この程度では妖力低いでしょう。

賢覚草紙絵巻 2巻 紙本着色 日本・室町時代 16世紀   これはここに来る前に國學院でも見ている。珍しい。
わたしが最初に見たのは9年前に京博の常設で。そちらでは「日高川絵巻(賢学草紙)」。
感想と物語の概要はこちら
素朴な絵。
・宿でその娘のことを聞く・幼女を刺して逃亡・治療により命拾いする幼女
・日高川で逃げる男と岸辺の女・般若の顔の龍となる・鐘に巻きつく。
ここでは大蛇というより龍である。顔は般若。これは京博のそれと同じパターン。

酒吞童子絵巻 伝 狩野山楽筆 3巻 紙本着色 日本・江戸時代 17世紀   前述のあれとはまた違う。こちらは山楽の絵だという話。
豪華絢爛な絵巻である。伊吹山系。
頼光一派の支度中。次にはもう鬼の館にいる。椿咲く屋敷で泣く上臈たち。庭の築山には紅葉や萩が見える。四季の植物が混在している。雪の池も見える。
鬼の妖力によりこの異空間は四季が混在するのだ。
そして鬼の首を取る。飛ぶ首が頼光の星兜に噛みつく。
家来の鬼たちを惨殺する一味。無惨な斬殺である。真向唐竹割、胴二つ斬りなどで鬼の骨や内臓が見える。
岩佐又兵衛と共通する鮮やかさがある。

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非常にいいものを見てとても楽しく過ごせた。
本当に好きな世界なのだ。

次に青銅器の室であの可愛い饕餮、犠首・大口らにあいさつする。三体とも可愛くて仕方ない。

扇面歌意画巻をみる。百首百図。杜若などをはじめ高名な歌とその絵がある。
とても楽しい。
ほかにも光悦の和漢朗詠集、雁金屋兄弟の父・宗謙の新古今和歌巻などなど。

炉開きの茶会の設えがある。
冷泉為恭の茶味三老図、赤絵火馬文火入、備前の平鉢などがいい。
そして一つピカッと光るものがあった。
近づく前にわかる。ノンコウである。
赤樂宝珠香合 上から見れば大きな花のよう。倶利文5つで構成されている。ああ、可愛い。

良い心持で見て回った。12/23まで。
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