美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

花と鳥の楽園―花鳥を表した絵画と工芸―

大和文華館「花と鳥の楽園―花鳥を表した絵画と工芸―」展に行った。
所蔵品に各地のミュージアムから良い作品をお借りしての展覧会である。
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泰西名画では花を描いてもそこにメメント・モリの思想が入っていたり、鳥を描いてもそれは静物画つまり「死んだ自然」で実際に死んだ鳥の絵だったり、添え物に過ぎなかったりで、なかなか「花鳥」そのものを楽しむという絵は現れなかった。
西洋では宗教画であろうとも、あくまでも人間本位だからそうなるのも当然なのだが。
風景画が風景画として単独で誕生した後でも、風景の中の花であり鳥であり動物であるため、自然の中に生きる花と鳥とはあくまでも脇役に過ぎなかった。

その意味で東洋は穏当に花と鳥の組み合わせを古代から喜んで用いた。
絵にも工芸品にもである。
それも時代により国により少しずつの変化があっても、基本的にごく近年まで「花鳥画」の概念は廃れなかった。

そのあたりのことについて大和文華館のサイトに詳しいことが記されているのでご一読を。

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花鳥文の隆盛
いきなり小さくて愛らしいものが現れた。

鳥型佩玉 周―漢 5点の小鳥たちである。明確に鳥だとわかるものから多分鳥だろうなものまで。あまりに可愛いのでついスケッチをした。「鳥は死、魚は生」という観念が東アジアから東南アジアにはあるが、そんなの飛んでしまい、ただただ愛らしい。

白銅海獣葡萄鏡 唐 海獣に葡萄のモチーフは西アジア由来のものだから、文化の流れを想う。

銅製貼銀鎏金双鳳狻猊文八稜鏡 唐 たいへん綺麗な鏡。所々にキラキラ。白銅がなんと綺麗なことか。走る狻猊、飛ぶ鳳凰、空には鳥、地にはザクロ。
金物なのに所々に螺鈿のような煌めきを見る。

銅製貼銀鎏金双鳳文八花鏡 唐 蓮も鳥も対になっている。花喰い鳥はササン朝ペルシャ由来で、唐でも花のままだった。
これが日本に来ると天平まではそのままだが、国粋文化が拡がる平安朝では、鶴に松になる。絢爛な唐からの伝来が可憐な平安で様相を変える。
その意味ではこの時期からわびさびの萌芽が少しずつ顕れ始めているのかもしれない。

銀製毛彫忍冬双鳳文輪花合子 唐 この忍冬文は唐草がササン朝ペルシャ由来なのに対して埃及のロータスが由来だとあるが、そのあたりの事をわたしも昔々学んだのだが、本当のことはどうなのだろう。伝播する時期にオリジナルも影響を受けていただろうし…
忙しい時期についついそうしたことを考えてしまう。

銀製鍍金の様々な盃やハサミなどがこの後も出てくるが、大方は地を魚々子文で埋め尽くし、そこにきらきら輝く花鳥を刻みつける。
折枝文と唐草文とがうまい具合に使われていた。

花鳥文の展開1 瑞鳥唐草文の広がり
東アジアの愛らしい花鳥

鳳凰唐草文軒平瓦断片 統一新羅時代の瓦がある。軒平瓦にしても軒丸瓦にしてもスタンプとして可愛い感じがする。

大好きな高麗青磁がいくつか。
青磁象嵌雲鶴文碗 べたっとした不透明な色が逆に1930年代のモダンな時代の色彩のようでかっこいい。

青磁陰刻柳鳥文合子 これがもう実に可愛くて可愛くてならない。べろんと枝を垂らす柳に止まる二羽の鳥、それを見上げる水鳥と魚。
可愛いなあ。シンプルな線ながら可愛くてならない。

平安後期の羽黒鏡が6点。文様はもう完全に和風である。「和風てなんだ」と訊かれたら「見たらわかる」と答えるのが王道な絵柄だった。

白磁印花牡丹文鉢 定窯 北宋 縁にかすかに雷文。これは伏せ焼きなので口べりが欠けたりするそうで、だからあとから覆輪をするそうだ。

このあとはいつもの人気者たちが並ぶ。
耀州窯のオリーブグリーンの瓶、金代の丸々した赤絵の壺など。可愛いわ。

花鳥画の隆盛
いい絵が多く出ていた。

蜀葵遊猫図 伝・毛益 遊ぶ猫
萱草遊狗図 伝・毛益 寝る狗
catdog.jpg
どちらも本当に愛らしい。
猫でも大人しいのがいれば、狗でもオケラをいじりにゆくのもいる。

竹燕図 馬遠 南宋  小さい燕の愛らしいこと…赤が効いている。
丸い頭に三角の嘴に赤いほっぺ。可愛いなあ。

花鳥画の展開1 水墨画との結びつき
墨竹、墨梅、墨蘭とシブいところを見た後、雪村の花鳥図屏風を見る。
これが本当の花鳥の楽園図で、たくさんの種類の鳥たちが楽しそうにそれぞれ過ごしている。飛ぶ鶺鴒が可愛く、蓮に近づく鷺たちがディズニーのキャラみたいなのも面白い。

叭叭鳥図 伝・狩野源七郎 三羽の叭叭鳥たちが目つきも悪くがーがーと喋り倒すのがいい。笹の生えた土坡で。

花鳥画の展開2 装飾性と写実性
梅花牡丹小禽図 孫億 1710 白い花が優しい。
花鳥図 山口宗季 1715 こちらもそう。二人は師弟の間柄なのだった。
琉球の絵師の絵は本当にここでしか見たことがない。

四季花鳥図押絵貼屏風 渡邊始興  色んなシーンが描かれている。泳ぐ亀、バッタとイナゴの対立などなど。

沈南蘋の野馬図がある。その弟子たち、影響を受けた絵師たちの絵が並ぶ。日本で絶大な影響を及ぼした南蘋の絵。

風牡丹図 鄭培 神戸市立博物館 すごく風が強くて花が揺れている。アブもふらふら。
こういう表現が生まれてくるのはやはり江戸時代にならないと無理なのか。

桐下遊兎図 伝・余崧 大きな桐の木の下にウサギが三羽いて、それぞれ大きな目をむいている。木の上には小鳥がいるので一羽はそれをじーっとみていて、一羽はそんな様子を見ていて、もう一羽は草の影からその二羽を見ている。ホウセンカとクコとが描かれている。秋海棠もある。可愛いなあ。

雪汀双鴨図 応挙 1774 これは新収蔵品。なかなかいい。

孔雀図 呉春 洛東遺芳館 おお、いかにも呉春のシックな孔雀。樹に止まる孔雀。池田に移住してから描いたもの。
洛東遺芳館の所蔵品が貸し出されている。また久しぶりに洛東にいかなくては…

雪芦鴛鴦図 景文 こちらも洛東から。なんだか嬉しいね。
付け立てで雪の陰影を描く。少し雰囲気が違っていて面白い。

花鳥図 景文 右は白と白に縁は薄紅の牡丹。よく肥えた雀が二羽。飛ぶものと葉陰にいるものと。
左は芙蓉と小鳥と蝶もいるかな。
緊迫感のない優しい、いい軸。やっぱりね、こういう花鳥画を見ると本当にホッとする。
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四季花鳥図巻 長山孔寅 泉屋博古館からきている。カマキリ、ユリ、ツワブキなどがある。
やっぱり四条円山派の花鳥画は本当にほんわかしていて、和む。
東アジアの花鳥画の良さはそこだと思う。

花鳥画の展開3 花卉図の隆盛
古木花卉図册 高鳳翰 1741 揚州八怪の一人、とあるが「…ああ、あの人か!」となったのはやはり絵を見てから。
色は薄いしやや粗雑とはいえ、それが却っていい。芭蕉を大胆に描く。右手がダメなら左手で。薄くとも、ザッパでも力強い絵だった。

花鳥・花卉図册 丁敬 1765 柚子か何かを描いている。隷書体で賛もある。

蔬果蟲魚帖 浦上春琴 1834 泉屋博古館 萌黄色の丸い実の植物がコロコロ。息子さんは温和でよろしい。

花鳥文の展開2 花鳥画との接近

螺鈿水禽文角盆 明 キラキラーーーー螺鈿で紫色に煌めくのを見たのは初めて。綺麗。

五彩花鳥文皿 清 景徳鎮窯 発色がいい。薄橙も出ている。花の色の変化がいい。

五彩花鳥文大鉢 清 景徳鎮窯 すごい細かい。

粉彩百花文皿 景徳鎮窯 おお、久しぶり。隙間なく花で埋められたお皿です。

年末のささくれ立った心を優しく包む花鳥画。ああ、いいものを見た。12/25まで。

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