美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

千国コレクション 古代中国鏡の至宝

先般手に入れたチラシに魅せられて、ツイッターでも紹介したところ、やはり少なからずの人が同意してくれた。
このチラシである。
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加西市に住まう千石さんという方のコレクションで、今回その一部が兵庫県に寄贈されたことを受け、フルーツフラワーパークに新たに収蔵・鑑賞の場を設けることになったそうだ。
その前にこちらの兵庫県立考古博物館で一般公開という運びとなった。
1/5から1/24の期間での公開である。

場所はJR土山から徒歩15分とあるが、そもそもその土山という場所がどこにあるのかがわからない。
土山といえば東海道だと滋賀県になる。
国芳の「猫飼好五十三匹」では「つちやま」は白猫カップルの恋を邪魔するぶち猫が描かれ「ぶちじゃま」になる。
こちらはどうも山陽電鉄の駅からも徒歩25分とあるから兵庫県なのはわかったが、実感がない。
滋賀でも兵庫でも到底行けそうにないなとあきらめかけたところへ、捨てる神あれば拾う神ありで、@hikotaさんがお誘いくださって出かけることになった。
しかも赤穂の田淵記念館もプラスしての一日ツアーである。
本当にありがたい。またどこかへご一緒しましょう。
というわけで、兵庫県立考古博物館へ向かった。

「であいの道」という整備された道を15分ばかり歩く。大きな公園や新興住宅街、新しいお寺の間を貫く立派な歩道である。
そこここに歴史の道しるべがあるのもいい。
そして広大な博物館の領地内にたどりついた。
物見台もある、外観は古墳状の優れた建物である。
しかもなんと210円の入館料で、さらに@hikotaさんのお持ちのカードのおかげで団体料金160円になった。
ああ、まことにありがたい。

「千国コレクション 古代中国鏡の至宝2」
2ということは1もあったのか、そちらは知らぬ、無念なりよ。
しかしこの展覧会に来れただけでも本当に良かった。
この2だけでも大概「物凄い」内容なのですよ。
わたしはびっくりした。

これ、なにかわかりますか。
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名前は「緑松石象嵌鋸歯縁鏡」とつけられているが、それはあくまでも形状・形態による命名にすぎない。
なんとこれね、夏の時代の鏡です。
夏と言うたら商(殷)の前の伝説かと長らく思われてたあの王朝ですがな。
最後は幽王という皇帝が褒似という妖女にヤラレて国をつぶしてしもたという、あの夏時代の鏡やそうです。
紀元前17世紀、3700年前の鏡。
クラクラした。
わたしは戦国・前漢、特に唐代の鏡はわりと見てきているが、こんな古いのを見るのはもしかすると初めてかもしれない。
あの青銅鏡の立派なコレクションをもつ泉屋博古館ですらこの時代の鏡はないのではないか。
黒川古文化にも戦国以来の鏡しかないように思う。
たまたま二か月前の11月に泉屋博古館でも黒川でも古鏡を見たばかりなので、記憶に間違いはない。それぞれ感想も挙げている。
泉屋博古館はこちら
黒川はこちら

緑松石とはトルコ石のことで、緑青のせいで青くなったのではなく、トルコ石の色が今も残っているから青いのでした。その嵌め込みの象嵌部分ね。
この文様そのものが何を象っているかは説明もないし、わたしにもわからない。
武装した人々が円状に並ぶ様子にも見える。そうなると魔除けかとも思う。
この時代の鏡の用途については「姿見と言うより光り輝く反射を目的として考えられる」とあるから、それこそ魔除けもあり、権力のためのものでもあったろう。
魔を退ける力を持つ者こそが偉かった時代の話なのだし。

「青銅鏡としては最古級の例である」
本当にびっくりした…
戦国・前漢あたりから作られ始めたと思い込んでいたが、よくよく考えれば殷の紂王が妲己にヤラレてダメ王になった頃なども既に鏡はあったに違いない。
それがなぜ青銅器は残っても鏡が残らなかった・伝わらなかったのかはわからない。
「怪異な文様」と紹介されているが、この文様の意味も解き明かされない限り、怪異は怪異のままで活きている。

殷の鏡もあった。やはりぐるりは鋸歯文で、中央にぐるぐると文様がある。
コンパスみたいなので文様を描く器具があるが、あれに似ている。

二重構造の鏡が出てきた。戦国時代の三面。
孔雀石象嵌透彫二重体鏡
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背面のこの複雑な構造のものと鏡面のものとを別々に拵えている。
嵌め込みだからもう二重どころではないとも思う。
本当に複雑な構造のものを精緻に拵えている。
前代には可愛い饕餮くんと犠首くんをデザインした様々な青銅器を拵えていたから、こうした意匠のものを拵える技術はあったわけだが、一旦西周時代になった時点でちょっと大雑把になってしもたのが、よくもここまで復活したなとも思う。
尤も、殷も西周もたくさんの国が争ってた春秋戦国もそれぞれ別な文化を持っていたから、本当は一律に語ってはいけないのでしたな。

あと動物同士の噛みあう文様のや蟠龍文のもあった。いずれも細密描写の立体版。さそれらが二重体鏡。

前漢になると馬車や宴会の絵が出てくる。絵と言うても刻まれた絵。
ここでは彩色のよく残る鏡。樹下で宴をする人々、馬でやってきて、機嫌よく遊び、また馬で去ってゆく人々が描き・刻まれ・嵌め込まれている。朱色も大きく残っていた。
シンプルな描線の人々の顔も見える。小さい人物たちなのにとてもはっきり。
全く驚くものばかりみている。

鏡はやはり戦国・前漢あたりから本格的に造られているようで、その時代が「繁栄と興隆」の時代だったようだ。

大きな鏡は人間の内臓や心まで映し出し、小さい鏡は妖魔を照らし出す。
鏡の持つ力、そうしたことが信じられていた。
だからか、文様にも神仙世界のものが多い。

凄く丁寧・緻密な描写で作られた四神鏡が並んでいるが、一枚はどう見ても今出来のものでびっくりした。なんだろう、これは。ものすごいわ。
あまりに綺麗なので、どうやってこんなのを千石さんは…
ああ、答えのない謎がぐるぐるする。

内行花文鏡 これも中国の2000年前か。「内側を向く花弁型の幾何学文」と説明があるが、四枚の花弁はいずれも擬宝珠のようにもみえる。
周囲には正確なミリ単位の線が延々と刻まれている。
それにしても銀がよく残る。

日本で作られたものもある。この博物館のそばの大中遺跡から出土した弥生時代のがあり、その複製品も並ぶ。本体は破片だが、よくよくみたら小さい穴が二つばかり開いていて、わざわざ開けてまだまだ使うていたらしい。
よっぽど大事にされていたのだと思う。

重列式神獣鏡 後漢 これはたくさんの神様などが刻まれてて、ちょっとした寄り集まりになっている。中には「距」というどうもケムンパスの御先祖みたいなのもいるが、そんなくねくねのくせに柱になるとかどうとか。
ええー、ほんまかいなと思いながらも、まぁ神様の親族眷属だから耐震偽装はないか、とちょっと安心をした。
ついでにいうと、真ん中のチュウ部分はドームぽくて、ここからみんな出てきたのかもしれない。

画像鏡 後漢 踊る人などがいる。歌舞雑技か。後漢の小さな俑だとそんなのもあったからこういう文様もメジャーだったのか

鍍金対置式神獣鏡 後漢 金メッキがよく残って綺麗。これまたすごく細かい。
黄帝と句芒(こうぼう。ヒトの頭でトリの身)、伯牙の弾く琴を聴く鐘子期(ヒトの身体には見えないな)、彼らが浮かび上がっている。
イメージ (23)

盤龍鏡も二面。後漢 どちらも大きく口を開けている龍。一面は周囲がやや磨滅して平板になっていた。

いよいよ青銅鏡文化の華の時代と言うてもいい隋・唐の時代になる。
「華麗なる技と美」を堪能する。

四神十二支文鏡や海獣葡萄文鏡のいいのがずらりと並んでいる。
これを見るだけでも千石コレクションの尊さがよくわかる。
イメージ (19)

色々楽しませてもらった。
カメラ目線の海獣(海の獣ではなく、海の向こうの獣の意味)、案外真面目そうな十二支動物などや、朱雀と言うより孔雀なのや液体化した白虎もいる。
中にはセサミストリートに出てくるキャラみたいな顔の奴もいた。
みんなイキイキしている。

唐代の鏡の素晴らしさはもういまさら何を、というくらいなのだが、それでも言葉を尽くして語りたくなる。だが、果てがなくなるのも事実なので控える。
字も見事だし花もいいし、隙間なくビッシリから、わざと間を造ってみたりと様々な文様が出現する。
馬も走ればウサギも杵つきをするし、蔦の絡みあうのもあれば可憐な花も咲く。
一方で鎖帷子をまとった二重瞼の龍もいる。

正倉院にある金銀平脱螺鈿、螺鈿瑞花文の鏡などがここにもある。
白鶴美術館でみたものよりもっとよく残っているのに驚いた。
イメージ (22)
可愛すぎてドキドキする。よくここまで残っているのを持ってはったな。
他にもオウムをモチーフにした螺鈿のもあり、それがまた毛彫りでオウムをリアルに表現していて…

さてこちら。
イメージ (21)
実物大サイズ。
これにヤラレてここまではるばるやってきたのだが、最初のチラシに比べて実に小さいが、その小さい空間によくもここまで、と言うほどの細工が施されていて、もう本当に驚いた。
ラピスラズリもトルコ石、琥珀。
そして隣の緑の方の愛らしさにも絶句する。
こちらは緑ガラス、瑪瑙もついているようだった。
イメージ (33)

花文様に真珠らしきものもついた刀子もあり、本当に素晴らしいものをみせてもらった。
まだ眼の奥で煌めきが終わらない。
いいものを本当にありがとうございました。

ここでは1/24まで。
新たなミュージアムの開館をおまちしています。
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