美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

小川千甕

東京で見て感想を書けず、京都文化博物館に行くのにも出遅れての小川千甕展である。
前後期で分かれているので見ていない分は確かにあるが、それはそれでいい。
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小川千甕は六角御幸町あたりの書肆の子で、実家は旧幕時代には貝原益軒の著作なども出していたそうだ。
徒弟として仏画を習いに行ったり、浅井忠のところへ洋画を学んだり、と若いうちから様々な分野・技法の絵の修業に励んでいた。
14歳頃に描いた仏画を見てびっくりした。すごくうまい。うますぎる。
やはり絵の達者というのは違う。
時代は違うが、安井曾太郎、手塚治虫の描いた昆虫画を見たときも、あまりのリアリズムにびっくりしてしまった。今回もその巧さに驚いている。
基礎が出来ているから後年の好きな線・自由な彩色も<頽れ>という感じはない。

浅井忠に学んだ「らしさ」の出た風景スケッチがいい。
水彩画で京都のあちこちを描くが、それが賑やかでない場所ばかりなのも面白い。
京の町ナカ育ちの少年がわざわざ「なにもない」場所を選る。

路地といえば京都の「ろぉじ」かと思いきや、彼はチマチマしたものは描かず、どこが「路地」やねんと言いたくなる道を描く。ちょっとこの辺りの命名の意図はわからない。
林道にしかみえない路地もあれば、おそらく左京区のだと思える路地もある。知恩院の手前のような感じ。
秋の神泉苑、小舟の浮かぶ舞子付近、薪を担ぐ人々のいる貴船風景などなど。

佐倉市立美術館にスケッチがたくさん所蔵されているのをみて、随分前の展覧会を思い出した。浅井忠らのもあったのではないかな。
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2.京都での修行その弐 日本画とデザイン

図案をいくつもみる。
アールヌーヴォー風味のものが少なくない。
ヨット、ウサギなどをモチーフにしたもの、大津絵をモチーフにしたものもある。
ここらが浅井忠ゆずりのような感じがある。
浅井忠は日本にアールヌーヴォーの魅力を広めた一人。

図案で鍛えられた成果というか、獣類之絵小皿というシリーズ物があるが、それがまたとてもいい。
ゾウ、ウマ、ウサギ、キツネなど。
浅井忠は戯画や可愛い童画風の絵も上手だったから、弟子筋の者もこうした絵付けがわるいはずがない。

ところで千甕も霞ヶ浦あたりが随分お気に入りだったようだが、竹内栖鳳と言い、洛中生まれの人がなんでまた東国のひなびた水郷地帯に深い郷愁と言うか愛情を懐くのかが、とても興味深い。自分らの育ちと全く無縁な鄙に好感を持つ…このあたりの心もちをわたしは絵を見るだけでは本当には掴めない。
もし話し合えるのなら、ぜひとも尋ねたいのはこのあたりのことかもしれない。

三幅をみる。東京では二枚だけの展示だった。
霞浦春光(右)、東海道(中)、筑波秋色(左) この中で特に気に入ったのは東海道の図。
往来を急ぐ人々、土手に上がり一休みする人々、様々な人間の姿がある。
一休みの連中のうち、月琴を持つ女がいて、これで大体明治中期位までの時代設定だと推測する。風俗考証を想うのも楽しい。

浅草寺の図 和やかでいいなあ。可愛い。童画のような愛らしさ・和やかな心地よさが生きている。
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3.東京、そしてヨーロッパへ
1913年のツアー。オランダ、フランス、ドイツ、英国、イタリー…
それぞれの国で受けた刺激を明るくダイナミックに描く。

イタリーの僧院中庭、インドの踊り子、ベルギーの牛乳売りの犬の車引き…パトラッシュまるまるやんか。

帰国してからも元気な絵を描いている。
そしてそのエッセイがかなり面白い。
ルノワールに会いに行き、そのことを書き残している。曰く「白髯がじじむさい」「死体のような老爺」「うふっと老人めいた笑い声を漏らす…
文体は違うが芥川の「枯野抄」を思い出した。

風俗画をいい感じで描いている。
千住大橋、清水寺の春、西洋風俗大津絵などなど。
三越のウェイトレス、乗り合いバスの女車掌、ダンサーなどなど。
わたしはやはりこうした童画風な作品がいい。
金魚と子供たちイメージ (47)
なんとなく幸せな心持になる。

4.縦横無尽の時代へ 日本画家・洋画家・漫画家として
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大公孫樹  これはなかなかきもちのわるい絵で、木の根もとにたくさんの絵馬が埋められていて、それらがみんな乳の出がよくなりますようにと言うもの。木はあくまでも背高く、人に無関心に伸びている。

仙人の絵が増えている。 不思議な闊達さを感じるものばかり。
鉄拐、黄初平らの元気さがいい。

西行桜を見る人々をロングで捉えた絵もいい。こういうのをみると、千甕が南画の方へ行くのも理解できる。
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5.昭和の南画家として
爛柯故事 二人の老人ではなく二人の同時に置き換えられている。

蘭亭曲水 にぎやかな様子をロングで捉えてそのいいキモチの会合を描く。
戦後になっている。

南画がその時代に合わないことを痛感する千甕。
日本画の滅亡もその頃に言われていたしなあ。むつしかしい時代の流れがある。
彼は最後に自画像を組み入れた大物の絵を世に出した。
楽只 楽しそうでいいなあ。

南画を見ているうちに思ったことがある。
絵本作家でイラストレーターの井上洋介。
彼の絵で多少グロテスクさを含んだもの、あれは現代の南画だったに違いない。

まだまだ言うべきこと・ 書きたいことも少なからずあるが、今回はここまで。
いい回顧展だった。
1/31まで。
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