美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

吉野石膏コレクションと福井県立美術館所蔵品と

本日までの展示二つについて挙げたい。

日本橋三越「吉野石膏珠玉のコレクション 愛と絆 高山辰雄『聖家族』&シャガール『逆さ世界のヴァイオリン弾き』その他
その他である『ダフニスとクロエ』の連作が見れたのは嬉しい。
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「五山」として高山辰雄、杉山寧、東山魁夷、加山又造、平山郁夫の作品が挙げられていた。
横山操が入っていれば「六山」だったな、と考えている。

鳩がいて花のある室内、静かに伸びる白い道、どこか宗元画にも通じる。高山のそんな絵を見る。

埃及の婦人像を描いた杉山寧。あおりの構図というのも面白い。
実際の伝世の木像を描いたのではなく、ナマナマしいリアルな感覚で埃及婦人像を描いたようにも見える。

自然風景の美しさを魁夷の作品で堪能する。桜の絵が二点あり、どちらも春のふわふわした感覚が思い出されてくる。

又造さんのシャムネコもいる。黒の毛が多い、青目のシャムネコ親子。
又造さんは徹底してシャムネコだけを描いたなあ。

平山のブルーモスクと法隆寺で一息ついてからいよいよ『聖家族』へ向かう。

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高山辰雄の静謐な世界が好きになったのは、間違いなく山種美術館の「坐す人」を見てからだが、そこへ完全にわたしを高山辰雄ファンに<した>企画展があった。
1993年6月に小川美術館でみた「高山辰雄『聖家族』」展である。
小川美術館へ出かけたのはこのあともう一度あるが、今でも『聖家族』が掛けられていた93年のイメージが強く、そのために『聖家族』=小川美術館に暮らす、という意識があった。
しかし今回の展示で吉野石膏のコレクションに仲間入りしていることを初めて知った。
ちょっと動揺とまではいかないが、驚いてはいる。
ただ、吉野石膏は美術品に対する理解と熱意あふれる企業なので、心配などはしていない。
むしろ今後『聖家族』を見る機会が増えるのではないかとも期待している。

26点の連作絵画は新岩絵の具の「黒群緑」を主に使用し、ところどころ薄い別な色を使っているが、それらは20年を経た今、わずかずつ変色し始めている。
ただ、変色して絵が劣化するというのではなく、逆に優しいなじみ方をしていて、絵にある種のゆとりが生じているようにも思われる。
絵は最初から『聖家族』ではあるが、この23年の間にもっと親密感が増したような、そんなイメージがある。
細かな感想は控える。
描かれた人々は、特別なポーズを取ったり表情を見せたりするわけではなく、ただ静かにそこにいて、家族を思いやる。
中にはどこかへお出かけした絵もある。時間も空間も定まらず、しかしながら常に親しい。
とてもいい気持ちになる。

『聖家族』はそもそも1976年の銅版画作品から始まっていたそうだ。
それが1993年にこのような大作の連作として世に出た。
そして23年後にまた少しばかり変化を見せて、こうして三越の会場で優しい空気を見せている。
とてもありがたいことだ。

会場では映像が流れていた。
『聖家族』の製作などについてのもの。それを見た。時間がゆっくり流れるような気がした。そうか、わたしも『聖家族』に影響を受けているのか。
今ならとても優しい表情を浮かべている気がした。

次にシャガールが現れた。
油彩画のカラフルな作品群を見ていると、自分も中空くらいなら浮かび上がれそうな気がする。ただ、シャガールが描く浮かんでいる人々はカップルなので、わたしはムリか。

42点の連作「ダフニスとクロエ」も楽しむ。リトグラフだから他に高知県立美術館のもみているが、こちらもいい色。
シャガールはタブローより物語絵の方が好きだ。いい心持で見た。


そごう美術館では福井県立美術館所蔵の「日本画の革新者たち」展をみた。
前後期の入れ替えが少々あるのでまた後期も見に行く。
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・岡倉天心ゆかりの画家たち
狩野芳崖 柳下放牛図 1884 のんびりした二頭の牛が可愛い。

芳崖 伏龍羅漢図 1885 羅漢の足元で龍がとぐろを巻きつつ甘えている。
西洋顔料を使うおかげで色彩が明るい。

橋本雅邦 天保九如図 1897 大体この「天保九如」はめでたいことらしいのだが、あんまりよく知らないのだよ。詩経の中から採られた言葉だと言うが、年号の「天保」もここからなのかな。
全然関係ないがこの言葉を見る度に常に南條範夫「天保九年の少年たち」を思い出す。

岡倉秋水 矢面 明治 天心の甥。老武士が甲冑に身を包み、刀を振りかぶる。矢が飛び交う戦場、射られたものもいる、兜を外したものもいる。いかにも明治の日本画な絵。

岡不崩 菊花図 大正 この人は後に本草学へ向かったそうだ。
様々な菊花が描かれている。
双幅にそれぞれ菊花と蝶や蛾が飛び交う。

菱田春草 温麗・躑躅双鳩 1901 「温麗」が課題だったそうだ。それで白と斑の鳩がいる情景を描く。鳩たちは薄ピンクの花を見る。やや茜色がかった躑躅を。

横山大観 1904年、アメリカに行ったときに描いた絵が二点並ぶ。
海 ―月明かり 暗い波。海のずっと奥に微かに青色のようなものが見えているが、それが月明かりに照らし出された水面だとすれば、なんという重さか。
薄い闇の中に月そのものも隠されてしまっている。しかしそれでも微かな月明かりは届く。

杜鵑 これはアメリカのサースビー姉妹の旧蔵品。ありがたくも大観のアメリカ滞在時に購入したそうだ。
杜鵑が小さく描かれている。空を風を切って飛ぶ杜鵑。
思えば大観は杜鵑の絵が多い。この人はとても動物好きだったそうだ。

春草 海辺朝陽 1906 三層に分かれた絵である。先の大観「月明かり」のような暗い海ではない。浪間は薄い青であとはどうしたわけか黄土色にみえた。
どことなく不思議なお菓子「シベリア」の色違いもののようにも思える。

大観 春秋図 1909 春には枝垂れ桜が咲き、菫が咲き、ツバメが飛ぶ、秋にはオオルリも現れ、楓も紅葉する。
日本には四季があっていいなあ、という気持ちになる。

大観 老君出関 1911 三幅 右に関が遠くなりつつある。中に老子が牛に乗る。左に金色の木々や民家が見える。いずれも大きな山脈がその向こうにある。
老子といえばどうしても「孔子暗黒伝」で赤を中国から連れ出し天竺へ向かった、それを思い出す。

下村観山 寿星 1915 金屏風、右には立派な1500歳の白鹿がさすがに眠たいのかすやすや。左には石に半跏する寿老。鹿の角先が少し赤いのも可愛い。

木村武山 日盛り(花鳥図)1917 凌霄花や立葵がけなげに咲く。明るい日の下で。

観山 馬郎婦観音像 1924 花鈿を眉間に緑色で描く。えくぼの位置にも。
この絵は薬師寺の吉祥天をモデルにしたそうだ。
花鈿を緑色で、というのは初めて見た。

武山 阿弥陀来迎図 大正 カラフルな来迎図。どの仏もみんな美人揃いである。

小林古径 竹生島(妙音)1900-1907 平経正が琵琶を弾く。彼は琵琶の上手なのでその音につられてか龍が出現するが、驚かしてはならんと思うたか白い煙としてそっと現れる。庭の松には藤が絡み、平家の公達の優雅な暮らしを思わせる。

今村紫紅 日蓮辻説法 1903 小町通りが人でごった返し。←現代とそう変わらん。 
燈籠が引っかかる木があるが、これがどう見ても木柱にしか見えん。
戦後すぐの景色、いや街頭テレビの時代にも思える。

速水御舟 閑亭 1914 かなりの坂と言うか階段を上った先にある。ここでくつろぐ。くつろぐためにはしんどいとか足が痛いとか文句を言うてはいかんのだ。

富田溪仙 越前紙漉 1926 ああ、いかにも溪仙らしい題材を好きなように描いている。間違いようのない絵。
水が本当に好きなのだなあ…

安田靫彦 天之八衢 1939 神話から取材。胸をはだける鈿女がいるが、古代において胸をはだけるのは相手を威嚇する、のだったかな。
隣の色黒くんはニニギなのか。

奥村土牛 晴日 1939 那須塩原のアカマツがどーーーんっ。いやもぉほんと。だからこの絵を見ていて「…松茸とれるよな?」と思ったのでしたる

川端龍子 花下行人 1940 白い桜が満開の下を往く人々。坐す人もあれば佇む人もいる。パラソルのひと、少女、軍人などなど。時代を感じさせられる。

前田青邨 鯉 1950-52 黒い鯉が三匹。なんだろうか。

堅山南風 O氏像 1954 土牛の肖像。南風は大観の肖像も巧かった。袴をはく土牛。しわしわ。たばこを吸うその眼光の鋭さ。力強いコッテ牛な土牛。

・戦後の日本画 
パンリアルの作品が色々ある。
正直よくわからないのだが、これはこれでいい。

三上誠 F市曼荼羅 1950 福井市の様子を虚実織り交ぜ描く。しかし一種の来迎図だともいう。

最後にまさかの岩佐又兵衛大特集である。
龐居士図 金谷屏風の一図。霊昭女の父を描く。妻が見守る前で竹細工。これが生業です。

三十六歌仙図がきている。12人の歌仙。1/3の御来場。
嬉しいね。

和漢故事説話図もある。
海辺に立つ貴人 波を見る。そばに佇む少年が可愛い。太刀持ち君。傘持ちもいる。

近藤師経と寺僧の乱闘 リアルなケンカである。坊さんの勝ち。乱闘・乱戦を描かせると本当にリアルでうまい。

額打論 東大寺、興福寺と額と言うか札が並ぶのを叩き壊す僧兵。

怪異出現 滝に悪霊…あれかな、悪源太かな。難波の次郎をトリコロスあれかな。

祇王 清盛の前で舞うところ。

夕霧 外には鹿ップル。一人ぼっち夕霧。庭の方をじーっ

琴棋書画 お琴を持つ少年が可愛い。振り向く主人になにかいいたそう。
釣するのもいる。いろいろリゾートぽいな。

布袋と寿老の酒宴 庭にはソテツ。お重もお酒も。盆山もあるしなかなか風流。

ああ、面白かった。

春草の「落葉」については次の機会に書く。
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