美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

初期浮世絵 版の力・筆の力 その2

昨日からの続き。

  1  菱川師宣と浮世絵の誕生 −江戸自慢の時代

菱川吉左衛門 柿本人麿像 縫箔刺繍 1幅 慶安2年(1649) 千葉県鋸南町・個人蔵
なんと刺繍で拵えた人麻呂。ポーズはしっかりしてるが糸がだいぶ解れている。作者は師宣の父。地元に作品が残っているのだなあ。人麻呂の顔は見えなくなっている。

(無款) 『二十五菩薩功徳集』 墨摺絵入本 1冊 寛文9年(1669) 川口元氏蔵
なむ~なのは中国人。珍しいね。阿弥陀来迎図。

(無款) 『枕屏風』 墨摺絵本 上巻1冊 寛文9年(1669) 川口元氏蔵
遊女屋の三角関係ぽいなあ。二重瞼の遊び上手そうなお兄さんが得意の目ヂカラにモノ言わせて、柱に凭れてムッとする女にニヤニヤ。しかもその一方で別な女に着物を脱がせてもろうている。その出迎えの女とはまだ特に何もないけれど、ヒトのいないところでちょっと手を握るくらいは当然しているだろうね。

(無款) 『枕屏風』 墨摺絵本2巻合1冊 寛文9年(1669) 米国・個人蔵
貴人カップルのいちゃつきを隣室から伺う。

(無款) 『垣下徒然草』 墨摺絵入本 1冊 寛文11年(1671) 米国・個人蔵
28人の美少年・美青年役者の総覧本。男色趣味に則っての評判記。ページが開くのは市村竹之丞。本の刊行年からゆくと二代目かな。17歳頃。なかなかの美少年ぶり。これは馬琴旧蔵本。
そういえば馬琴の「近世説美少年録」は一巻の半ばまでは読んだが、あれも実は大概スゴイ話だったな…馬琴は真面目に勧善懲悪質実剛健を求めつつ、ワルを特別ワルに描くために筆を奮いすぎて、善玉の連中よりずっとイキイキしてたり面白すぎたりするのだよな。
これは大正から昭和初期の挿絵画家・伊藤彦造も同じで「憂国の絵師」とサインを入れるくらいの人なのに、真面目に描けば描くほど、異常な官能性が出たりする。
ファンとしては実はそのあたりが一番好きなのですよ。

菱川師宣 遊里風俗図巻 絹本着色 1巻 寛文12年(1672) 出光美術館蔵  
前半分を見た。外は雪で梅に竹が見える。廊下には緋毛氈が敷かれている。そこで遊冶郎が三味線をつま弾く。女は凭れてそれを聴くともなしに聴いている。
この気だるさがいいのだが、わたしには実感のない絵でもある。

(無款) 『吉原丸はだか』 墨摺絵入本 1冊 寛文12年(1672) 米国・個人蔵
坊さんが来た。女は何やら泣いている。女中があやしたりなんとかしようとするが。
坊さんと書いたが、ご隠居くらいなのかもしれない。
坊さんがゆける先は根津などの私娼窟なので(まぁ頭巾かぶればええか)

菱川師宣 『武家百人一首』 墨摺絵本 1冊 寛文12年(1672) 千葉市美術館蔵
師宣最初のサイン入り。真面目に武張った武家を描く。

(無款) 『絵入 おさな源氏』 墨摺絵入本10巻10冊 寛文12年(1672) 千葉市美術館蔵
(無款) 『絵入 曽我物語』 墨摺絵入本 12巻12冊 寛文11年(1671) 千葉市美術館蔵
どちらも物語本として読まれたようだ。草双紙くらいの感覚でいいのかな。

菱川師宣 『江戸雀』 墨摺地誌絵入本12巻合1冊 延宝5年(1677) 千葉市美術館蔵
京雀の江戸版。登城中の様子が描かれている。

(無款)菱川師宣 隅田川・上野風俗図屏風 紙本着色 6曲1双 延宝期(1673 〜 81) 千葉市美術館蔵
金屏風に上野から隅田川のちょっと上流までが描かれている。
右では梅若塚も見える。寛永寺に上野不忍池の弁天さんもある。
場所柄、坊さんが少年の手を曳くのをみかける。袴姿の少年。可愛い喃。
上野は桜なのだが隅田川は紅葉の季節で、舟にわいわい乗る人もいる。こちらは盲人の三味線弾きもいる。

菱川師宣 角田川図 絹本着色 1幅 延宝7年(1679) 千葉市美術館蔵
舞台の様子を描く。梅若伝説の「隅田川」の話。縄か何かで船の形を拵え、観念としての船をそこに出す。梅若塚の前に笹を持った(狂女スタイル)母親が現れる…
イメージ (18)

ここからは春本・春画の連作物の1シーン。とはいえ冒頭なので別にどーのこーのということはまぁないわけです。永青文庫の春画展が思い出されるね。

菱川師宣 『恋の睦言四十八手』 墨摺絵本 1冊 延宝7年(1679) 千葉市美術館蔵
ラヴィッツ・コレクション
タイトルからわりとはっきりと…立って首を寄せてキスし合う。

(無款)菱川師宣 衝立のかげ 大判墨摺絵 ※筆彩は後世 延宝(1673-81)後期 千葉市美術館蔵
この絵は少なくとも三軒のコレクションで観ている。手彩色で好きな色を付けるので、それぞれ別な作品にも見える。
わたしが最初に見たのは平木コレクションのだった。
イメージ (25)

(無款)菱川師宣 低唱の後 大判墨摺筆彩 延宝(1673-81)末〜天和期(1681-84) Lee E. Dirks 氏蔵
タイトルがもうほんと、それからして  で、 だから、こちらとしては  なわけですよ。
…感想は伏字ばかりにしておこうか。そういうわけにもいかないのでちょっとだけ書くと、手彩色で女の頬にも朱を走らせるのは観ているこちらの方が照れたりする。むしろ染めないままの方が冷たい官能性が高まるようにも思えるが、まぁこれはこれで。
懐に手を…なかなか楽しいなあ。

他にもこんな本が出ていた。
(無款)菱川師宣 『恋のみなかみ』 墨摺絵本 1冊 天和3年(1683) 千葉市美術館蔵
菱川師宣 『恋の楽しみ』 墨摺絵本 下巻1冊 天和3年(1683) 千葉市美術館蔵

杉村治兵衛 遊女と客 大判墨摺筆彩 天和〜貞享期(1681-88) シカゴ美術館蔵
面白い構図。さっさと立ち去ろうとする女に取りすがる客の男。未練がましいな。カムロは知らん顔。逆のパターンはよく見ているが、浮世絵でもこちらの構図もあるのね。

杉村治兵衛 遊女と客 大判墨摺筆彩 天和〜貞享期(1681-88) 米国・個人蔵
あらら、3P! まっ!わたくしとしたことがハシタナイww

(無款)杉村治兵衛 遊女と客 大判墨摺筆彩 天和〜貞享期(1681-88) 米国・個人蔵
一方こちらは二人だけでいちゃいちゃ。舌を絡み合わせながらお布団の中で色々と。

杉村治兵衛 遊歩美人図 大々判墨摺筆彩 貞享期(1684-88)頃 シカゴ美術館蔵
クリックしてください。イメージ (27)

これは着物に「杉」「村」の文字も入っている。着物自体は伊勢絵。なかなか粋ななあ。

菱川師宣 「よしはらの躰」日本堤 大判墨摺筆彩 天和期(1681-84)頃 菱川師宣記念館蔵
こちらは吉原への往来たる日本堤を行き交う人々に斑犬の姿など。ボテふりみたいなのもいるが、それがどう見てもサザエにしか見えないのだよ、籠の中に入ってるもの。
しかし解説ではどうも違うことが書いてあるしなあ。

菱川師宣 「よしはらの躰」揚屋台所 大判墨摺絵 天和期(1681-84)頃 公益財団法人
平木浮世絵財団蔵
裏方が描かれている。台所で御馳走づくり。なかなか本格的で、練り物も拵えている。大きな桶からは蛸とか鯛とか。サザエもある。

菱川師宣 「よしはらの躰」揚屋大寄 大判墨摺絵 天和期(1681-84)頃 千葉市美術館蔵
宴席なのだが、なぜか全員が困り顔。えーと…

次からしばらく物語絵。わたしは愉しい。
(無款)菱川師宣 酒呑童子 洞窟 大判墨摺筆彩 延宝(1673-81)末期頃 菱川師宣記念館蔵
洞窟の外での戦い。滝も見える。下っ端鬼たちを殺戮中。中には捕獲もあり。さらっとした絵だからそんなエグさも感じないが…

(無款)菱川師宣 酒呑童子 褒賞 大判墨摺筆彩 延宝(1673-81)末期頃 千葉市美術館蔵
鬼の首を御前に。

杉村治兵衛 女三宮とかしわぎのゑもん 大々判墨摺筆彩 天和期(1681-84) 東京国立博物館蔵
ここで目を惹くのは若い男女ではなく猫なのだよ。なんとこの絵では、あの猫は柱を駆け上がっておるのです。

杉村治兵衛 浄瑠璃十二段草子 吹上 大々判墨摺筆彩 貞享期(1684-88)頃 千葉市美術館蔵
笛吹いてコンバンハではなく、もうそれよりずっと後のシーン。敵に襲撃されたのを逆に討ち果たすところ。天狗たちも加勢に来ていた

他にも源氏絵、松風村雨、高安、敦盛と直実、伏見常盤などがありこの時代の人々がみんなこれらの話を知り、楽しんでいたことを想う。

菱川師平 春秋遊楽図屏風 紙本着色 6曲1双 元禄(1688-1704)後期 出光美術館蔵
ややヒトは大きめ。坊主頭の男と若衆が連れ立ってゆく。わくわくするなあ。左は遊女屋なのでまぁ普通に享楽的なのだが。

菱川師宣 地蔵菩薩像 絹本着色 1幅 貞享(1684-88)〜元禄(1688-1704)前期 大英博物館蔵
正直な話、こういう絵が突然現れるとちょっと意外な感じがする。しかし依頼を受ければやはりこうした仏画を描くこともあるだろう。
ただ、わたしは意外に思った、それだけ。
イメージ (26)

(無款)杉村治兵衛 獅子舞 大々判丹絵 元禄期(1688-1704) 公益財団法人平木浮世絵財団蔵
このお獅子、黒いな、やたらと。

まだ終わらないので続く。
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