美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

恩地孝四郎展 形はひびき、色はうたう その2

続き。

II 版画・都市・メディア 1924–1945年

P92
浴後 1926(大正15)年2月22日 木版、紙 東京国立近代美術館
素肌にシーツを巻きつける裸婦。顔は見えない。至ってモダン。

P93
「美人四季」1927(昭和2)年 木版、紙 京都国立近代美術館
イメージ (66)
わたしが好きなのは「冬」の女だがボナールにこんなのがあったのを思い出す。1920年代のモダンな女。

P103
裸膚白布 1928(昭和3)年9月 木版、紙 ドゥファミリィ美術館
チラシにもあるが、寝そべる裸婦の図。薄く笑う女の顔、白い膚にポツンポツンと置かれた朱。とても魅力的だ。

P104
湖辺 1928(昭和3)年10月17日 木版、紙 ボストン美術館
裸婦が水の波紋を見ながら踊る。
この構図を見ると同時代の「都市散策者」たちがカメラで捉えた風景を想う。

「人体考察」シリーズ 1929(昭和4)年3月 木版 
部分を表現したものと抽象表現とがあって、なかなか面白い。
同時代の小出楢重が人体の一部分だけを見たときのある種の気持ち悪さ・違和感について書いたのがあるが、それを思い出した。
そして更にわたしはこのバラバラ人体をつなぎ合わせて一体のヒトになるのかどうかということを考えている。

P110
「ポーズ」の内 憩 1929(昭和4)年 木版、紙 府中市美術館
裸婦が座る。これは以前に府中の常設でも見ている。府中も見せ方のいい美術館だと思う。
この絵は他の作品と共に静かにこちらを見ていた。

P111
「今代婦人八態」 鏡 1929(昭和4)年 木版、紙 千葉市美術館
合わせ鏡で自分の髪の後ろ辺りを確認する。昭和初期の女の和モダンのよさがにじむ。

P115
帯 II 1930(昭和5)年 木版、紙 大英博物館
女の風情がいい。夢二と渡辺与平とを取り混ぜたような可愛い女で、それが立ちながら帯を結ぶ。何か小唄のようなものがそばにつく。

P127
帯 I 1930(昭和5)年 木版、紙 大英博物館
タテジマヨコジマのなかなかおしゃれな。

P128
帯 II 1930(昭和5)年 木版、紙 大英博物館
こういうのはやはりいい。

次からはわたしの大好きなシリーズである。
恩地だけでなく他の版画家も参加した「新東京百景図」から。
P116
「新東京百景」 英国大使館前 1929(昭和4)年 木版、紙 和歌山県立近代美術館
道路をフォードらしき車が走り抜けてゆく。疾走感はないが、モダンである。並木と歩道。人々が行き交う。わたしもこの辺りは案外好きで、かつてはしばしば訪れた。
東京の風景画はやはり江戸の昔から版画がいちばんいい。

P117
「新東京百景」 邦楽座内景 1929(昭和4)年 木版、紙 和歌山県立近代美術館
女の顔が大きくクローズアップ。客席の様子を示す。

P118
大東京遠望1929(昭和4)年 木版、紙 和歌山県立近代美術館
中央通を市電が走り、ビルヂングが伸びている。

P120
「新東京百景」 ダンス場景 1930(昭和5)年 木版、紙 養清堂画廊
ダンスホールの様子。昭和初期のダンスホールの隆盛は華やかだったという。
チケット制でダンサーと踊るのだ。ダンサーの中にはお茶を引くのもいて暇そうに座るのもいる。

P121
「新東京百景」 カフェー 1930(昭和5)年木版、紙 養清堂画廊
紅めの店内でエメラルド色の着物を着た女給が柱の陰から現れる。

P124
「新東京百景」 二重橋広場1930(昭和5)年 木版、紙 和歌山県立近代美術館
緑の濃い皇居、橋をじっと見守る男。

P125
「新東京百景」 日比谷音楽堂 1930(昭和5)年 木版、紙 養清堂画廊
夜の屋外ライブ。客席の背後からの眺め。この時代の流行歌といえば「東京行進曲」などか。

P129
黒葡萄切子鉢 1931(昭和6)年 木版、紙 和歌山県立近代美術館
王冠のような鉢。細かい切子が入っている。黒葡萄がガラスを越えてそのまま光るようだった。

P130
音楽作品による抒情 No.2 ボロディン「スケルツォ」1932(昭和7)年 木版、紙
音楽を絵画的に表現するのは難しい。演奏する様子を描くか、曲の主題を絵画化するか。
その意味では抽象画かもしくは音楽から浮かぶ幻想を絵にするかだと思う。
しばしばよい演奏を聴くと、脳裏に様々な画像が浮かぶ。わたしの場合は大抵が幻想的な情景だが。

P131
ノックダウン
1932(昭和7)年 木版、紙 
おお!かっけー!

P132
サーカス(ハーゲンベック・サーカスの印象)1933(昭和8)年 木版、紙 京都国立近代美術館
川西英の曲馬図を抽象表現にしたような趣がある。

P134
レモン白布 1933(昭和8)年 木版、紙 養清堂画廊
布も白と灰色で表現され、その質感が伝わるようでいい。
特にレモンの山吹色に近い黄色がいい。

P135
「今代婦人八態」 珈琲 1933(昭和8)年 木版、紙 千葉市美術館
シリーズものの続き。
小さめのコーヒーカップを持つ横顔。ぼうっとしている。
レースらしきものもそのそばにある。

P136 *ダイビング 1933(昭和8)年頃 木版、紙 横浜美術館(北岡文雄氏寄贈)
おおおーーっめっちゃかっこええ!!スク水の女が飛び込むその胴部分だけトリミング。トルソ状態とはいうまい。
どーんっと力強くさわやかに飛び込む。空には白雲。
ああ、かっこいいなー!早く夏になれ!!

P137
「今代婦人八態」 湯上り 1934(昭和9)年 木版、紙 千葉市美術館
こちらは結い上げた髪の女。浴衣、いや、湯帷子を着るその肩。

P138
「今代婦人八態」 新聞 1935(昭和10)年 木版、紙 千葉市美術館
こちらも和装。同時代の画家も婦人の新聞を読む様子を描いている。

P139
音楽作品による抒情 No.4 山田耕筰「日本風な影絵」の内「おやすみ」1933(昭和8)年[1935(昭和10)年]木版、紙 ボストン美術館
抽象的でありながら叙情的。こうした作品が好きだ。
ほかにもよいものばかり。
P142
音楽作品による抒情 ドビュッシー「金色の魚」
P143
サティ・小曲による抒情
などなど。

面白いものを見た。シリーズものの一つ。
打ち上げられた貝殻達、ヒトデなどにイカや魚らを従えて真ん中に海女さんらがいる。
なかなかかっこいいし面白い。
P144
海(3部作の内)左、中央、右 1937(昭和12)年 木版、紙 シカゴ美術館

中国に風景を撮影し、版にしたものもある。
それらはいずれもとても静かだった。
P161
白堊(蘇州所見)1940(昭和15)年 木版、紙 千葉市美術館
これが特に好きな1つ。白い壁に綺麗な装飾窓。そして姑娘の後姿。

作品集「飛行官能」からのものもある。
無機質な形の物体を平面的に描き、それらが一見脈絡もなく集合する。
版画だけでない作品。写真もそこに加わる。
ドライでシュールなかっこいい作品群。

P169
[失題]1943(昭和18)年 木版、紙
楕円形に近いようなボディの飛行機が黒々と画面の前面を押さえ、他方、白い空を背景に小さい飛行機が飛ぶのが見受けられる構図。とても印象的。この時期を考えれば軍からぐじゃぐじゃ言われての製作だろうが、それでもこのように自由でもある。

作品集「博物誌」もいい。版画家の撮る写真は色の濃淡が面白いようにも思った。

作風が少しずつ変わったとはいえ、本の装幀は時代を経るにつれいよいよよくなってゆく。
B30
『夢二抒情画選集 上巻』岩田準一編著 1927(昭和2)年1月15日発行 宝文館
書籍 うらわ美術館
コジャレた良さがある。岩田準一、こうした仕事もしていたのか。

B31
『槐多の歌へる』村山槐多著 1927(昭和2)年2月17日発行 アルス 書籍
この本も恩地だったのか…

B41
『コドモのソナタ』山田耕作曲 1928(昭和3)年9月15日発行 日本交響楽協会出版部 楽譜 うらわ美術館
ロシア構成主義風なまとまり方。タイポも面白い。

B43
『泉鏡花集』泉鏡花著 1929(昭和4)年2月18日発行 春陽堂 書籍
こちらは先のとは全く違う繊細な美しい装幀。
それぞれ作品の持ち味を生かしている。

B46
『双頭の鷲より赤旗へ 上巻』クラスノフ著、大木篤夫訳 1930(昭和5)年8月28日発行 アルス 書籍
これなんかもやっぱり構成主義。時代性もあり、最先端ぽく感じるのもいい。
ところで今更だが、この翻訳の大木篤夫はやっぱりあの大木惇夫だったのね。
言うなかれ君別れを…

イメージ (63)

III 抽象への方途 1945–1955年
戦後進駐軍が来たとき、恩地の抽象作品の応援したそうで、ここでまたもう一歩進んだ感じがある。

ただ、「廃墟」にしても「1947年の日本のカリカチュール」にしても敗戦後の風景が強烈な印象を齎しているのがわかる。
中空に浮かぶ裸婦はあくまでも倒れるように横たわるだけなのだ。
その裸婦の下には復興する日が来るのかと思われる荒れ方をした木々や岩が見える。
誰しもが敗戦そして廃墟とは無縁でいられなかったのだ。

観念的な作品が増えてゆくのを感じる。
P218
リリック No. 11 回想の中で 1951(昭和26)年 マルチブロック、紙
何か見たことがあるような…あ、「バケラッタ」だ…!!

四点の連作がいい。
P230-233
イマージュ No.7 黒猫(a)1952(昭和27)年 紙版、紙 大英博物館
イマージュ No.7 黒猫(b)
イマージュ No.7 黒猫(c)
イマージュ No.7 黒猫(d)
抽象と言うより極度に装飾を排除して簡易な線と色彩とだけで黒猫を表現した作品。
とても魅力的だった。思わずわたしは簡単なメモ書きをしてしまった。
黒猫の可愛さ・しなやかさ・怠け者さがよく出ていて、とてもよかった。

P236
女優像(京マチ子)1952(昭和27)年11月 木版、紙 和歌山県立近代美術館
ああ、いい女だな…この年は6本の映画に出ている。「雨月物語」はこの翌年の出演。

最後にこの時代の装幀をみる。
B75
『ビアズレイの生涯と藝術』式場隆三郎著 1948(昭和23)年2月1日発行 建設社
書籍
わぁ!式場のこの作品の装幀もこの人だったのか。そうか。去年市川市文学館で式場展を見たときにもこの本が出ていたはずだ。何やらうれしくもある。

あとは恩地孝四郎本人による詩集・画集などがあった。
本当に見応えのある展覧会だった。
とても時間はかかるが、ぜひとも見てほしい。
和歌山近美に巡回する。
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