美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

ビアズリーと日本 3

長々と書いてしまうばかりだが、これもやはり展覧会の素晴らしさに溺れたせいだと思っていただきたい。

昨日の続きから。

ウォルター・クレイン エドマンド・スペンサー「妖精の女王」挿画と装幀 1896年だからまだビアズリーもこの世にいたころ。そのままビアズリーな絵である。
来春クレイン展があるので、その後とその前の仕事を堪能したい。
この時点では本当にそのまま。

チャールズ・リケッツ アプレイウス「クピドとブシュケの愛の物語」 何やらヤバい感じがする。官能的というかそれをもっとはっきり言った方がいいのか…

ちょっとばかりグロテスクなユーモラスさがある絵が出てきた。
シドニー・ハーバート・サイム 知らない画家だが、ティム・バートンの先輩みたいな感じの絵を描いている。

罪の花「マンドレーク伝説」1897  マンドレークとマンドラゴラて同じだったかな…いや勘違いしてるかもしれないか、わたし。アルラウネかなんかと。
今ちょっと調べる間がないが、死者の足元に咲くと言われる花がある。ここでは絞首の男の足元に花が咲いている。

20世紀に入ってからのサイムの絵は不気味&ユーモラスでブラックジョークもあり、なかなか楽しい。ティム・バートンの先輩とわたしは書いたが、特に「お化け動物」シリーズ?のがそれぽい。

ジョン・オースティン 「ハムレット」1922  なにかこれも見たことがあるような、と思ったら山口貴由だ…真正面顔の青年。葉隠覚悟がオジサンになったような感じ。

アラスターという画家は効果的に薄い朱色を使う。1920年代の画家。この時代のモダンさはなく世紀末芸術の中にいる絵だが、それだけに耽美的である。
モーパン嬢、サロメ、マノン・レスコー…構図がかっこいい。

ハリー・クラーク ポー「怪奇小説集」 やっぱりポーの小説にはハリー・クラークの挿絵がいちばんいい。ぞわぞわする。
「ファウスト」もあるが、魂の救済どころか一直線で地獄行きの様相を呈している。

4.モノトーンの幻想
「月映」三人衆にはじまりRRRまで。

田中恭吉 和歌山城 不明門付近 ペン画 魅力的な図。暗い気持ちになる、そこがたまらなくいい。
道の果てには何もないようにしか思えない。それに沿う雑草または笹の生い茂る道はその歩道に寄り添う影のようにも思われる。松の根元に固まる赤い花はつつじかもしれないが、花と言うより吐いた血が花の形に残ってしまった、そんな風にも見えた。

田中恭吉 毒いちご 女のスカートのように広がる葉っぱとイチゴ。毒イチゴと言うのはこの女を差しているのだろう。しかし女は楽しそうににんまりしている。
それが「毒いちご」と田中に名付けられる所以なのかもしれない。
イメージ (50)

藤森静雄 亡びゆく肉 これを見るといつもある種の嗜虐的な歓びを感じる。
青年の全身にべたべたと浮かび上がる黒い手、青年がその手に犯されていることを想像する。死へ向かうよりもっとたちの悪い状況へ向かえばいい、と思っている。

長谷川潔のマニエール・ノワールは素晴らしいのだが、実は若い頃の木版画の方がわたしは好きだ。これは嗜好の問題。

長谷川潔 風(イェーツの詩に寄す)
イメージ (47)
これを最初に見たのは京都国立近代美術館で。(この作品も京近美所蔵から)
当時「ボヘミアの建築」展をみて、その帰りにショップでこの絵ハガキを購入したのだ。
わたしの絵ハガキコレクションのなかでも、この作品を封じた巻は特に好きなものばかりで占められている。
イェイツの詩…様々なときめきがこの一枚に含まれている。

長谷川潔 日夏耿之介「轉身の頌」 装幀・挿画 とても魅力的な本の一冊。金がたまらなく似合う一冊。

永瀬義郎 池畔 裸婦と白鳥のキス。これはゼウスの変身なのか、それとも。

橘小夢の作品が三点出ていた。いずれも決して忘れることのない作品。
安珍と清姫 ぐるぐるにまきつかれる安珍。
嫉妬 かるかや道心に発心をさせた二人の妻の姿。しかし悪いのは男なのだ。
水魔 この絵は心理学の問題としてドイツの専門書にも紹介されているそうだ。
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谷中の「妄想」シリーズが並ぶ。兵庫県美でもいくつか出ている。

そして武井武雄「地上の祭」「宇宙説」がある。
もうこのときには「RRR」ではなくなった武井武雄。
そしてこの二冊の作品集は本当にかっこいい。
詩と抽象的な表現・幾何学的な表現はなぜこんなにも心地よいのだろう。

5.カットからデザインへ

まさかこんなにも多くの山六郎作品を観ることが出来るとは思いもしなかった。
小野高裕さんと言う方のコレクションである。
山六郎の作品を探しておられるクラブコスメチックス文化資料室にもお伝えしなくては。

プラトン社での作品が並ぶのをみる。はっきりとビアズリーの影響を受けているのを感じさせる作品ばかりだが、無論それだけではなく、そこにどこか新しさもあるのは、やはり1920年代と言う時代のせいか。

山名文夫 「吉祥天女の像」 不思議な腕の延ばし方。素敵だ。これを見て思い出すのはダルクローズの腕の延ばし方を取り入れた初代猿翁の「黒塚」。

それにしてもプラトン社の出す「女性」にしても「苦楽」にしてもどうしてこんなにも魅力的なのだろう。いや、蠱惑的というべきか。
わたしが1920年代に憧れを募らせているのは間違いなく、プラトン社の「苦楽」、講談社の「少年倶楽部」が刊行されていたとからというのもある。

岩田専太郎 山路健「蛇責め」 これも「苦楽」から。前にこれと違うバージョンのを見ている。浅尾が責め殺される話のあれ。エロとグロなのだが、岩田のこの時代の妖艶な絵に惹かれてしまうばかり。

山六郎と山名文夫のコラボによる里見弴「四葉のクローバー」、山六郎の「今年竹」の装幀がうらやましい。
わたしは里見弴のファンで、「今年竹」は持っているが例の全集のうちからのバラものなのだ。山六郎の装幀のが欲しいなあ。

山六郎は鈴木泉三郎の戯曲全集の装幀もしている。「生きてゐる小平次」が蘇ってくる…

内藤良治のカット原画がまた魅力的である。
中国少女などがたまらなくいい。この人の絵は初めて見た。弥生美術館、またこの人の特集をお願いしたい…
銀盆のヨカナーンの首にキスするサロメの絵もある。

雪岱の資生堂の仕事も紹介されている。雪岱から十年後に山名。
そして資生堂の包装紙などの図案や意匠を考えていた矢部季の作品もある。

矢部季 資生堂図案集より
イメージ (52)
かっこいいな。

小林かいちの四枚組シリーズが三点。せつなさがたまらなくいい。哀愁が漂う。

最後に自分が思い出した日本の作家によるビアズリー模写について。
川西英なども「サロメとヨカナーン」をそっくり写して描いていた。
それからマンガ家魔夜峰央はビアズリーの影響を受けたことをはっきりと語っている。
かれの美麗にして妖艶なキャラ達よりもむしろ背景画にその傾向が強く残っているように思う。

こちらはまた別な作品の中でのビアズリーの画の引用。
壁面装飾として使われている。
イメージ (56) イメージ (55)
こんな邸宅があれば怖いが、ひそかに憧れもする。

手塚治虫「MW」ではサロメとヨカナーンを主人公二人に置き換えている。
わたしが最初に知ったサロメはこれだった。
背徳的な作品にふさわしい引用だと思っている。

忘れがたい展覧会だった。
3/27まで。

追記:石川県美のチラシ
イメージ (74)

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