美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

カラヴァッジョ ルネサンスを超えた男

国立西洋美術館で「カラヴァッジョ」展を見た。
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好きな画家なので始まってすぐに見に行ったが、とても満足する展覧会だった。
で、見終えてからツイッターで知ったのは全体の1/5しかカラヴァッジョの真筆がないとか。
あとは彼の追随者たち=カラヴァジェスキの作品で占められているらしい。
おやそうでしたかな。
わたしは首をひねりながら展覧会を追想する。
リストを見ても確かに数は少ないようだが、不満はない。
これはカラヴァッジョの存在感のあまりの大きさに全体が覆われているから、不満もなにも感じないのかもしれない。

彼の追随者たちのいい絵がぞろぞろあっても、やっぱりカラヴァッジョの圧倒的な個性に消されてしまう。
最後まで印象に残るのはカラヴァッジョの絵ばかりで、しかも繊細さというものとは違う強靭さに圧倒されている。
極端な話、肉の厚みを感じさせられるのは、実際に肉を喰らうからであり、野菜や魚を食べてただけでは到底敵わないのである。

ところでわたしのカラヴァッジョのイメージと言えばやっぱりデレク・ジャーマンの映画のイメージが強い。(87年か88年かだったと思うが)
あの映画にカラヴァッジョの作品がたくさん紹介されていたのを忘れない。現物だったのかそうでないのかは今となっては分からない。
しかしそこでのカラヴァッジョがたいへんな激情家で後先考えていない、ある意味すごい元気者だというのが今も心に残るから、今回もそれを引きずりながら見ることになった。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョというのが彼の長い名前だった。
ミケーレと映画では呼ばれていた気がする。

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Ⅰ.風俗画:占い、酒場、音楽
女占い師 1597年 ローマ、カピトリーノ絵画館  どうしてもこの絵の女が友近に見えて仕方ない。それはともかくとして、肌の質感、脂の照り、目つき、肉の実感…とても写実的だ。しかも背景に何も置かないことで、描かれて人物たちが強く迫ってくる。
細かいことを書く。
この大きな絵に二人の人間がどーんといることで、色々なことが見えてしまう。たとえば男の方でいうと、福々しさ=裕福さ、芥子色の上着に肉が満々とあること、女の着衣の布質(リネンのような雰囲気がある白を着ている)、占いにかこつけて男の指から指輪を盗もうとする指の動き、その女の汚れた爪などなど…細部に至るまで手を抜くことのない描写が力となって、こちらに強く迫ってくる。

この絵の下に聖母像があったそうで、その紹介もあった。日本画ではそれは不可能だが、油彩画ではよくあることなので、そうした発見があったのは喜ばしい。

そしてさっそくカラヴァジェスキたちの作品が現れる。
カラヴァッジョ(が)好き!という呼び名にも思われる。

シモン・ヴーエ 女占い師 1618-20年 フィレンツェ、ピッティ宮パラティーナ美術館  こちらは更に状況がはっきりしてくる。口元に2つのほくろを持つジプシー娘が、さして金もなさそうな男の手を取っている。男の方もこれは女に触らせながら、占いという先の話などよりもっと近い先のことを考えている。にやけた口元からのぞく歯が汚れているのにも、男の襟口のくたびれ具合にも、そういたいやらしさがにじむ。一方男は男で油断していて、背後のジプシー婆さんにまんまとヤラレそうである。婆さんはちらりと<こちら>を見ている。

ジュゼペ・デ・リベーラ 聖ペテロの否認 1615-16年頃 ローマ、コルシーニ宮国立古典美術館  左側ではいかにも怠慢な連中がサイコロ遊びをしている。右では「おまえ、ナザレのあいつの弟子だろぉ」と言われて「知らん、知らん、知らんーーっ」と必死で否定するペテロがいる。人間喜劇の場とでもいうべきか。
ふと思ったが、鴨居玲に宗教画を描かせたら、この場を描くような気がした。

蠟燭の光の画家(ジャコモ・マッサ?) 酒場の情景 1620-40年頃 ケーリッカー・コレクション  ああ、なんか見たことのある<光>と思ったら、これは明治の油絵師(!)山本芳翠も描いた<光>だったのか。
260年後の極東でこうした<光>の後継者が世に出ることをカラヴァッジョもカラヴァジェスキらも知らなかったろうな。

クロード・ヴィニョン リュート弾き ランプロンティ画廊  …ロックなリュート弾きだな。レッチリにいてそうな…譜面見ながら弾いてるから案外あれなのかもしれないが、スゴイ顔つきですな。…大家の義太夫とはまた違うが、なんかスゴイモノ見た気がするよ。

ピエトロ・パオリーニ 合奏 ミラノ、フランチェスコ・ミケーリ・コレクション  五人で合奏中。リュートやスピネット(鍵盤の)の演奏に唄う子供に、バイオリンの人に、置かれたままのトランペット。リュートのヒト、流しぼいな。

全然関係ないが、ここにあるトランペットを見て思い出したが、白土三平「カムイ伝」で、西洋から来たラッパが殿さまのお子の宝物になったのに、カラスに盗られて家来たちが「ラッパ様探索」に必死になる、という話があった。日本にはない楽器と音色なのですよ。

II 風俗画:五感

北浜にあるスィーツ専門店、ではない。
先年、「貴婦人と一角獣」展を見たが、その時も五感が作品のテーマとして選ばれていた。
東洋では絵画においてそこまでこのテーマを大切にはしていないし、重要視もされていないように思う。
だが、洋の東西を問わず、人間に具わる感覚ではある。

カラヴァッジョ トカゲに噛まれる少年 1596-97年頃 フィレンツェ、ロベルト・ロンギ美術史財団  冒頭のチラシ。リアルな顔つき。このテーマは北イタリアに多いものだそうだ。そんなにもエビカニトカゲ類に噛まれやすかったのだろうか…
少年の髪には花が挿さり、右の中指をがぶりと噛まれている。「ぎゃっ!マジ?」という声が聴こえてきそうである。テーブルには赤いさくらんぼがあり、それだけが唯一やや明るい。少年の爪は汚れている。ガラス瓶には白い花が活けられているが、その表面に写る風景が妙に気になる。

ピエトロ・パオリーニに帰属 カニに指を挟まれる少年 1620-25年頃 ランプロンティ画廊  こちらは蟹である。黒いからイキイキと生きているのがわかる。蟹はゆでると赤くなる。
左の薬指を噛まれる。その場にはエビまであるから、下手をするとエビにもヤラレる可能性がある。サル皺が額に刻まれ、二つ割れの顎もあまり少年ぽくは見えない。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ ナルキッソス 1599年頃 ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  この絵はペヨトル工房の「美少年」特集号や須永朝彦「世紀末少年誌」にも紹介されている。憎々しい、ならぬニクニクしい少年ではなく、しかしがっしりした、欧州にしか生まれえない顔だちの少年が水面に浮かぶ自らの美貌に囚われた瞬間の絵。

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チラシではわかりにくいが、実物では水面に映る顔も綺麗に浮かび上がって見えた。

バルトロメオ・マンフレーディの追随者 ブドウを食べるファウヌス 1610年代 ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  上からみるような感じになるが、とても汚いファウヌス。汚れたおっさんである。絵は茶系統でまとめられているが、泥などがこちらにつきそうな。毛深いのはともかくとして、もっと洗っていてほしい、などと考えるのはやはり写実なバロックだからだろうか。
ブドウは二種あるようだった。

ヘンドリク・テル・ブリュッヘン 合奏(聴覚の寓意) 1629年 ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  オランダ人のカラヴァジェスキだそうで、この人が本国に広めめたとか。官能性の高い作品。薄物から胸がのぞく女、体格の良さに比べて顔は小さい。
男の方ももう…

《羊飼いへのお告げ》の画家(ジョヴァンニ・ドー?) バラの花を持つ少女 1640年代 ヴァリア、デ・ヴィート財団  ターバンを巻いた少女、彼女の眼はどこを見ているのか。
丸い額の少女は薔薇を頬につける。

III 静物
やたらとフルーツである。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 果物籠を持つ少年 1593-94年 ローマ、ボルゲーゼ美術館  六年前にボルゲーゼ美術館展が京都、東京とで開催されたが、あの時カラヴァッジョ作品で来たのは「洗礼者ヨハネ」だった。
当時の感想はこちら

この「果物籠」も来てほしいなとあの頃思っていたので、ようやく現物に出会えて嬉しい。
この少年のモデルはカラヴァッジョ本人らしいが、こうやって見ていると谷崎潤一郎や工藤公康とも相通じるような顔立ちだと思う。元気そうで、いいことにしろ良くないことにしろ「何かしでかしそうな顔」だということだ。(そんな期待を持ってしまうのよ)
とはいえ描かれた顔はいずれもどこか退嬰的でもある。
抱え込まれた籠には果物があふれんばかりに載る。桃、2種の葡萄、梨、イチヂクなどなど、泰西名画にしては珍しいほど美味しそうに見える。これも写実のおかげか。
大抵「死んだ自然」なのやメメント・モリなのばかりで、本当に美味しそうな果物の出現はカラヴァッジョまでなかったのだ。
ありがとう、カラヴァッジョと言いたい。
(とはいえやっぱり絵だから食べれはしませんが)

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ バッカス 1597-98年頃 フィレンツェ、ウフィツィ美術館  
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2000年にウフィツィに行った時、何とかこれは見たのだが、あの当時購入した2001年版カレンダー(カラヴァッジョ版)ではこれが表紙だった。
それをお土産にオジにあげたところ、16年後の今も書斎にあるので、なんとなく嬉しい気もする。
ワインもアタマの果物もみんながみんなどこかネクタレている。不健康な肌色、肉と骨の間に広がる脂肪がこちらにも押し寄せてきそうでもある。

パンフィロ・ヌヴォローネ 果物籠 1610年頃 ランプロンティ画廊  ザクロ、ブドウ、ナシ。

ハートフォードの静物の画家 戸外に置かれた果物と野菜 ランプロンティ画廊  セロリ、今にも花が咲きそうである。キャベツは殆ど葉牡丹化している。キノコも独楽に変身寸前、人参の様子もどこかおかしい。唯一まともなのはチェリーくらいか。いちごもある。
トカゲ、カタツムリが這うている。なんだか危ない…

バルトロメオ・カヴァロッツィ アミンタの嘆き 1615年以前 個人蔵  芝居のキャラの名前だそうである。左には笛を吹く人、机上には葡萄、右にはタンバリンとぐったり少年。

アクアヴェッラの静物の画家 桃の入った籠と少年 1630年頃 ランプロンティ画廊  巨大な籠、汁気のなさそうな桃、これはあれだ、川中島の桃に似ている。荒川の桃や福島の桃とは違う、堅めの桃。他のもどうなんだ。右にいる少年、幼いが面白い顔をしている。

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それにしてもリコーダーを吹く人が多い。
「ピューと吹くジャガー」の先達かもしれない。

IV 肖像

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ マッフェオ・バルベリーニの肖像 1596年頃 個人蔵  28歳のヒト。後に教皇になるそうだ。清の高官のような顔をしている。

作者不詳 カラヴァッジョの肖像 1617年頃 ローマ、サン・ルカ国立アカデミー  うわ、凶悪そう。素でエグイ。下のカルトューシュにカラヴァッジョの名がある。悪人面だ。

ジョヴァンニ・バリオーネ 自画像 1606年 マドリード、コロメール・コレクション  仲の悪い人らしい。キリスト・ナイツに入団した時の様子で描かれている。ちょっとエエカッコシィな感じがする。

アンティヴェドゥート・グラマティカ 自画像 1625年頃 フィレンツェ、ウフィツィ美術館  ピアスしてはる。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ 教皇ウルバヌス8世の肖像 1632年頃 ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  カラヴァッジョの描いた人の35年後の姿。もうすっかりおじいさんだが、温厚な雰囲気の緋衣のヒト。この教皇はベルニーニのパトロンで、彼を応援した。

V 光

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ エマオの晩餐 1606年 ミラノ、ブレラ絵画館  ローマで殺人を犯してトンズラしたときの作品。食卓に着くキリストは死後三日目の復活後。そうと皆気づかずイエスを招き「あんた、俺の師匠に似てるよ、おごるよ」とでも言いそうな様子。
最近どうも「聖☆おにいさん」の影響が強すぎるのか、なんだか身近な人に感じてしまう。

バルトロメオ・マンフレーディ キリストの捕縛 1613-15年 東京、国立西洋美術館  放心状態というより諦念に満ち満ちている。「もぉあかんな」とでも言う雰囲気。

オラツィオ・ジェンティレスキ  スピネットを弾く聖カエキリア 1618-21年 ペルージャ、ウンブリア国立美術館  小さいキーボードである。「合奏」にも出ていたあれ。綺麗な手をした聖女。花冠に朱色のドレス。天使が譜面めくりかな。椿のような花が可愛い。

ジョヴァンニ・ランフランコ 牢獄で聖アガタを癒す聖ペテロ 1615年頃 ローマ、コルシーニ宮国立古典美術館  「知らん知らん知らん知らん」のあとで「しもた」となったペテロが獄につながれたが、そこで聖女の膚に浮かぶ酷い傷を癒す奇跡の業をみせるわけです。天使も薬を持ってきた。牢の見張りがのぞいてくる。

関係ないが薬師如来の薬も天使の薬もオオナムチに与えられた薬も、みんなどんな成分なんだろう。オオナムチの方のはちょっとは分かっているのだが…

ヘリット・ファン・ホントホルスト キリストの降誕 1620年頃 フィレンツェ、ウフィツィ美術館  発光源が幼子イエス。左に二人の天使。一人は美しく、一人は親しみやすい顔立ち。とても嬉しそうににこにこ。御母もにっこり。ちょっと斜めに立つ老いた義父も黙って微笑んで見守る。みんなリアルな表情。

蠟燭の光の画家(ジャコモ・マッサ?) キリストの嘲弄 1620年頃 ペーザロ市立美術館  あー、これはいじめですよ。赤い衣のイエスの顎を掴んで…どこかじじむさい。

蠟燭の光の画家(ジャコモ・マッサ?) 聖ヒエロニムス ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  長いひげの爺さんとはいえ肩肌脱ぎの身体の立派なこと。ペンを持ってるのが剣を持つより勇ましく見えますな。蝋燭の光が高島野十郎ぽい。

マティアス・ストーム 牢獄の聖ペテロ 1633-40年頃 ランプロンティ画廊  物思いにふける髯じい。お、形の違う鍵二つ。爪が汚い。
ごめん、どうしても「聖☆おにいさん」のペトロを思い出して、「鍵失くしなや」と声を掛けそうになる。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 煙草を吸う男 1646年 東京富士美術館  あれ、松明で煙管に火をつけた、わけですよね。決してこの松明が煙草と言うわけやないよね。
この絵の続き、一服吸ってからおもむろにこちらを向き“speak lark!”とか言いそうやん。

VI 斬首
つい先日、サロメの絵をじっくり見たところ。斬首ブームが続いている。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ メドゥーサ 1597-98年頃 個人蔵
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これは複数枚あるそうで、わたしも前にどこかで見ている。盾に使われるという話に合わせて、絵の板の形も円状というのがいい。ある意味騙し絵。迫力ある写実。七宝焼きを思い出す質感。血はドバー 
この顔も作者本人の似顔絵かな。しかし歯並びは綺麗。

オラツィオ・ボルジャンニ ダヴィデとゴリアテ 1609-10年頃 マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館  ウォッ!チカラギッシュ!!物凄い迫力でダヴィデ少年がゴリアテオヤジの首を後ろから押し斬りかかっているところ!
ゴリアテ、歯並び悪いなー

バルトロメオ・マンフレーディ ユディトと侍女 1617-18年 フィレンツェ、ガレリア・コルシーニ  こちらは豪胆な美人という描かれっぷり。真ん中で分けた髪を後ろで一旦一つにまとめた後、左右に流している。きりりとした顔。
袋に首を入れようとする。その袋を持つ侍女が北林谷栄そっくり。

シモン・ヴーエ ゴリアテの首を持つダヴィデ 1621年 ジェノヴァ、ストラーダ・ヌオーヴァ美術館ビアンコ宮  こちらは若くて可愛いダヴィデ。肩肌脱ぎで←方向に目を向ける、薄いひげが生えかかっている少年。可愛いなあ♪

マッシモ・スタンツィオーネ アレクサンドリアの聖カタリナの頭部 ナポリ、ポルチーニ画廊  エジプトの王家も落ち目の三度笠で、しかしながらローマからの求婚を蹴ったのはかっこいいが、殉教。青白い首がどんっと置いてある。パールや王冠が見える。薄く目を開けた生首。血と乳とが迸っている。

グエルチーノ(本名 ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ) ゴリアテの首を持つダヴィデ 1650年頃 東京、国立西洋美術館  こちらはまた美青年風で、天へ向けて。

VII 聖母と聖人の新たな図像

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 洗礼者聖ヨハネ 1602年 ローマ、コルシーニ宮国立古典美術館
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大好きな絵。赤いマントから白い肌を露わにした美少年が半身を起こす。これまでのニクニクした体ではない。
美少年ヨハネ。いつか実物を目の当たりにしたいと思っていたので大満足。
とはいえ、今回は初めて知ったが、腹肉がなにやら…

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョに帰属 仔羊の世話をする洗礼者聖ヨハネ 個人蔵  こちらのは髪もペタンのヨハネ君。真筆かどうかははっきりとは言えないらしい。優しそうな青年で、仔羊もなついている。いい腿に膝。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 法悦のマグダラのマリア 1606年 個人蔵  これが今回世界初公開と言う絵。英文でのタイトル“Mary Magdalene in Ecstasy”上方に何やら赤い光があるがあれはなんだろう。

商売をしているときは決してこんな歓びなんて得られなかったろう。いちいち達してたら商売にならない。
そこから遠く離れたときにこれがくる…

ジョヴァンニ・フランチェスコ・グエリエーリ 悔悛のマグダラのマリア 1611年 ファーノ貯蓄銀行財団サン・ドメニコ絵画館  顔を赤くしている。悔悛用の自分撃ちの鞭もある。豊かすぎる胸。これはこれで…

アルテミジア・ジェンティレスキ 悔悛のマグダラのマリア 1640年代中頃–50年代初頭 ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  こちらも香油。喪葬のときのものか。
例の自打ち鞭には赤いリボンがつけられているのでつけ毛のようだ。

グエルチーノ 手紙に封をする聖ヒエロニムス 1617-18年 ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  これまた力強そうな。ずーっと向こうのくねる道を同居のライオンが歩いてやってくる。

カルロ・サラチェーニと工房 アッシジの聖フランチェスコ 1620年頃 ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館  「あっと驚くタメゴロー」のような顔つきで、掌にはちゃんと聖痕示現。シバキ鞭あり。

タンツィオ・ダ・ヴァラッロ 長崎におけるフランシスコ会福者たちの殉教 ミラノ、ブレラ絵画館  群像図である。しかも構図が未来派風なのだ。処刑準備されたところ。十字架の並び方が本当に近代的。まぁ未来派もイタリアだしな。
日本人の描写、ちょんまげがないなと思う一方、いやいやそうではなく、あれはわざとかも、などといろいろ考えるのだった。

ミニ・セクション:エッケ・ホモ
「この人を、みよ」

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ エッケ・ホモ 1605年頃 ジェノヴァ、ストラーダ・ヌオーヴァ美術館ビアンコ宮  ピラトはエグイ顔をしているが、これでも彼は「無罪にしたってくれ」と民衆に声をかけているのだ。イエスは前で手を縛られている。イエスの背後にいるものはイエスから布を剥がそうとしているのか掛けようとしているのか。

チゴリ(本名 ルドヴィコ・カルディ) エッケ・ホモ 1607年 フィレンツェ、ピッティ宮パラティーナ美術館  こちらはあからさまにイエスから布を剥いでさらし者にしようとしている。まるで女衒のようで、悪い市場のようにさえ見える。そしてイエスの背後に立つ兵たち、妙に暗い中にいるからとはいえ、なにやらアヤシイ雰囲気がある。

史料・資料も面白い。
ローマでのカラヴァッジョの足跡を追っている。
面白すぎるよ。
それから警察関係の調書などなど。
doc. 1 ピエトロパオロ・ペッレグリーニの証言(1597年7月11日) ローマ国立古文書館  「28歳くらいのがっしりした、黒いあごひげをちょっと生やした男」といわれたカラヴァッジョ。

doc. 2 刀剣の不法所持(1598年5月4日) ローマ国立古文書館  「おれはデルモンテ枢機卿に仕えてるからいいんだ」という意味のことを言うたらしい。
ところで「仕えてる」というたようだが、解説文は「使えてる」になってた。指摘しづらかったのでここで書いておく。

doc. 3 バリオーネ裁判(1603年9月13日) ローマ国立古文書館  例のキリストナイツに入った仲の悪いバリオーネのことですな。

doc. 4 食堂でのアーティチョーク事件(1604年4月24日) ローマ国立古文書館  油炒めとバター炒めと、そんなんでもめなやと思うが、もめる奴はなんでももめるわな。

doc. 5 カラヴァッジョの借家(1604年5月8日) ローマ国立古文書館  大きな作品を拵えるのでちょっとぶち抜きさせてくださいと言う話。仕事自体は懸命。

doc. 6 刀剣の不法所持(1605年5月28日) ローマ国立古文書館  …まだまだ出てくるでしょうなぁ…

年表見てたら、個人的に「おお」だったのが、まだ14歳の時にシクストゥス5世になったこと。山本鈴美香「七つの黄金郷」と同時代なのだということに気付いて嬉しくなった。そしてその前の教皇グレゴリウス13世がローマ少年使節と対面した人なのかと今更ながらに…
重篤な状態で次の教皇が決まってたな。
「この世の栄光は儚し」というのを思い出すよ。

大満足した。10点ばかりだとしても、圧倒的な力業にやられたわ。
やはりこれは「カラヴァッジョ」展だとしか言いようがない。
とてもよかった。
久しぶりにイタリアに行きたくなってきたよ…
6/12まで。
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