頴川美術館で春らしい展覧会が開かれている。
「花鳥賞玩」展である。

山本梅逸の「柳桃黄色鳥図」がチラシに選ばれているが、この絵はもう本当に何度みてもいつみてもいい。
緑・桃・黄色の三色を中心に高麗鶯が飛び交う和やかな世界。この色の取り合わせが本当に春らしい。「少年行」の詩歌と共通する色彩がいい。
芭蕉野菊図 薄墨で破れ芭蕉を描き、そこに太湖石を配し、縁の青い黄野菊、土筆らしき草花を咲かせる。そして身をのけぞらせ、或いは止まって歌うツグミを描く。
なにも豪奢な花が花ばかりではない。こうした慎ましい草花や野の花の愛らしさを梅逸はよく知っている。
中林竹洞の花鳥画は二点、
長春錦鶏鳥図 「周之冕倣」とある。笹か細竹かわからぬが緑の笹の葉が揺れ、長春花(バラ)が咲き乱れ、カクカクした緑色の岩の上にキンケイチョウのつがいがいる。
背景はあえて何も塗られていない。そこに漢詩が入ってもおかしくはない。
花卉双鳩図 こちらも華やかな配色で春らしい明るい気持ちになる絵。
花海棠、白木蓮、牡丹、これらで「玉堂富貴」の吉祥画となる。それらの下方には薄青のシャガ、石竹、愛らしい撫子などが咲いている。そして白鳩と柄鳩、彼らの上に瑠璃鳥。太湖石もいい。
元は六曲一双だったのを一枚一枚の軸物にした花鳥画があった。
長谷川等雪の淡彩。
バラにヤマドリ、松にキンケイチョウ、芦に鶴、椿にフクロウ、蓮に白鷺、梅にキジ。
その中で目立つのは丸いアタマのフクロウ。大きな丸い目をむいて何事かを集まってきた他の鳥たちに話しているような様子である。言えば怪談話をしていて、自らがお化けの様子を演じているかのようだった。
他の鳥たちもそれぞれ温和なようでいて何やら悩み事でもありそうだったり、なんだかんだと喋っているようだった。
応挙 鯉鮒図 この水中にはほかにアユが六匹いて、みんなそれぞれ相手を気にする風もなくスイスイ泳いでいた。なんというか、水中での自在さがここちいい。
狙仙 雨中五匹猿図 やはり春にはこのモンキーたちの出番がないとね。
この絵とあとの屏風は共に松濤美術館に御開帳にゆくのだ。
このチラシをよくごらんください。

そして土佐光起の春秋花鳥図屏風。これらが松濤にゆくのだ。
チラシは右の3,4扇面。可愛いツバメたちがおるなあ、秋には楓が咲いてこちらもとてもいい。
あと蠣崎波響のトリの絵があるが、わたしは見ない。みんぱくで今彼の絵が出ているのだったかな。
司馬江南、柳沢淇園の長崎派を学んだ成果の作品もある。
「果実に鳥図」「果物籠図」。
彩色が他と違い、この二枚だけが文字通り異彩を放つ。共通する果物はザクロに野イチゴと梨。
やきものも三種。
呉須葡萄文合子、菊蒔絵棗、それから三世清風与平の「色絵百花錦文茶碗」十客分がある。与平、草花をモチーフにした可憐な薄茶碗を作っている。
この展覧会は3/21まで。
なお松濤美術館に大挙して頴川美術館の名品が行くのは4/5から5/15まで。
お楽しみに。
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