美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展

板橋区立美術館の 描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社「子供之友」原画展はとてもいい展覧会だった。
1910年代から1940年代の日本の子供たちを喜ばせ、新たな知識を与え、暖かな希望を持たせた本。
わたしもこれまで何度もこの時代の童画の展覧会に行っては幸せな気持ちになった。
今回もとても嬉しい。
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1.『子供之友』の誕生と歩み
北澤楽天の活躍をスルーすることは出来ない。
1910年代は北澤楽天あっての『子供之友』だったのだ。
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表紙絵のこのわんことにゃんこは別な月にも登場していた。

明るく楽しい絵の多い楽天。
誌上で人気のキャラクターを作った。
優秀な子の甲子・上太郎、普通の子の乙子・中太郎、悪い子の丙子・下太郎。
この三組の子供らの活動を面白おかしく描いている。

表紙絵がずらりを並ぶのを見ながら明るい楽しさを見出した。
そしてその同時代、竹久夢二が愛らしい童画をよせている。

1920年代になると村山知義の台頭がある。
オシャレでシャープな村山。
そして亀高文子、小寺健吉も登場する。
1930年代には再び夢二が登場する。
だが雪道を行く少女を描いたその表紙絵が世に出たその年、夢二は世を去る。

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2.北澤楽天
このコーナーでは1910年代の『子供之友』で大活躍した楽天の特集をみる。

ダックスフントの「ポンコ」のユーモア漫画が掲載され、ちょっとどんくさいポンコは人気者となる。
「ポンコはおあずけ」をみると、食欲旺盛なポンコは自らのドジの落とし前をつけるためおあずけを喰らい、しょぼんとしてとうとう泣いてしまう。可愛いなあ。

猫の子の行水  懐かしい。この絵は1991年の西宮大谷記念美術館「子どもの本 1920年代」展で初めて見たのだ。絵葉書は今も手元にある。百年前の子供らへ明るい笑いを贈る楽天。

ユーモア作家の楽天の絵は可愛らしさの方が先に立つ。

ネコの国の幼稚園 これも可愛いなあ。この絵葉書も前に手に入れたもの。

楽天は猫ばかりではない。
うさ吉と狼、ねずみの学校、熊太郎の花火などなど…
どうぶつばかりというわけでもない。

胡瓜と糸瓜のけんか  キュウリとヘチマのケンカ、ですがなwいいなあ。
関係ないがユーリ・ノルシュテイン「アオサギと鶴」を思い出した。

所々にポンコの奮闘する姿も見える。「ポンコと鯉」「ポンコのちえなし」などなどポンコのドジや懸命な姿がいい。

クマのお正月、うぐいすのコーラスも可愛い。この二枚とはもう四半世紀の付き合いなのだ。
リスの宿屋も泊まってみたい。
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一方で歴史や伝記ものも描く。
ジュリアス・シーザーの凱旋、立太子礼、子供の頃の道真…
ちょっと前までの子供向けの本には必ずこうした歴史もののグラビアなどがあった。

この時代は大大阪時代でもあり、煤煙を繁栄の標とも見ていた。
だからか「星の子を案内しました」で日本各地を描いた中で大阪は煙だらけになっていた。
いかんのう。

最後に1919年の12月号。
動物の町の年の暮  ここでは数の子、ごまめなどを売り買いするどうぶつたちの姿がみえる。
ウサギの餅などは浮世絵時代どころか古代からそう認識されている。
年の瀬の買い物のあわただしさとわくわくする気持ちがよく出ている。

3.竹久夢二
夢二の美人画よりわたしは童画の方が好きだ。童画とグラフィックアートが素晴らしいと思っている。
夢二も子供の読者のためにいい作品を多く世に送った。

水族館を描いた絵には枠外に印刷業者に対して色指定を細かく指示しており、丁寧な仕事ぶりがよくわかる。

夢二の童画には美人画同様どこかせつなさが漂う。
金の馬と兎馬 うさぎ馬とはロバの事。どこか哀しいような目をしている。

ところで第一展示室と第二展示室の間の広間では子供のマネキンが立っていて、それぞれ愛らしい洋服を纏っている。中には大人のわたしが欲しいと思うようなのもあった。
それらは夢二、村山知義の描いたモダンな洋服を立体化したものだった。
2人ともおしゃれなセンスを持っている。

4.創刊から1920年代初めまで
季節に合わせた絵が集まっていた。

楽天「サンタクロース」、夢二「お雛様」、栗原玉葉「かるた会」、岡落葉「落葉たき」、亀高文子「春の音楽会」、嶺田弘「ツツジの名所 日比谷公園」、田中良「ふゆの子どもたち」などなど。
田中良は「第二の接吻」の挿絵などでも有名。
近藤浩一路「江戸の大火事」、君嶋柳三(太田三郎)「お花見」といった高名な画家たちもいい絵を描いている。
いずれも水彩。

「子供之友」では仕掛け絵本もたくさんあった。
その様子を映像でもみれる。
今浦島、猫のレース、三保の松原の天女などなど…
羽衣を見つけた男の台詞がいい「エライキレヘナキモノダナ」

5.大正13年3月号
1924年のこの号の特集である。
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(この表紙絵は近年の復刻の際にも使われていた)

村山知義が表紙・裏表紙絵を描いている。
この号ではほかに数点のカラーものを描いている。
中でも「東京のまちの馬」はこどもがおもちゃの馬を引いて歩く姿を鳥瞰的視点でとらえ、面白い。
亀高文子、武井武雄、岡本帰一、本田庄太郎、ルビエンスキーらの優しい絵はいずれも水彩とインクの併用で描かれている。

6.武井武雄
いよいよRRRの登場である。
不条理で、そのくせきちんとした(だからこそシュール)作品群が集まっている。

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1926年からRRRサインが入りだす。
そういえば「ラムラム王」はどこの雑誌で連載されたのだろう。

1920年代の武井の絵は村山と共に非常にシャープでモダンなものだった。
上に挙げたのは「リンゴの皮むき」と「ゲベルベット」。

1937年に描かれた「すねてるお靴」は与田準一の詩にあわせたもの。
絵がだいぶ変わっている。

7.村山知義
以前からこのブログ上で何度も言明しているように、わたしは村山知義の童画ファンである。
童画の次に彼の小説「忍びの者」が好きで、次が彼のモダンダンス。マヴォはそれより後。
「すべての僕が沸騰する」展でもやっぱり童画を第一に楽しみにしていた。
当時の感想はこちら
やっぱり今と同じことを書いている。

今回も「三匹の小熊さん」、「リボンと狐とゴムまり」、「あめがふってくりゃ」など親しい作品が集まっている。
こぐまさんの映像がないのは残念だが仕方ない。

「川へおちたたまねぎさん」は妻のかずこの童話にあわせた絵。
わたしは童心社「おはなし、だいすき」でこの話を知ったが、今に至るまで好きな童話の一つ。
尤もその本での挿絵は北田卓史で、そちらもとてもよかった。

ああ、やっぱり村山知義は「TOM」さんの作品がいちばんいい。

8.1924年から1943年まで
多くの画家が参加している。

清水良雄、深澤紅子、山本鼎、三岸節子、川上四郎らの絵が並ぶ。
山本鼎は版画家、節子は洋画家で、節子は当時は生活のためになんでも頑張っていた頃だった。
とはいえ手を抜くようなことはせず、子供相手の本だからと自分の画を変えることもない。その見識は偉いと思う。

川上四郎の田舎の絵、本田庄太郎の可愛らしいサンタさんの絵、ノスタルジーに胸を噛まれる。
RRR、TOMにはないそのノスタルジー。

雑誌の最後を飾る時代の絵たちはいずれもよいものばかりだった。

9.甲子・上太郎
冒頭に挙げたあの「よいこ・ふつうのこ・わるいこ」のシリーズである。
楽天、帰一、村山、紅子、河目悌二らが描いている。
遠足、お風呂などの様子も三組ずつ丁寧に違いが描かれていて面白い。

付録もいくつか並んでいた。
楽天の桃太郎双六では鬼が島植民地万歳という笑えぬ言葉も入り、君嶋の空中旅行双六にはビキニスタイルの織姫も現れ、夢二のおとぎの国廻り双六ではウサギとカメの地名が「亀原」などとつけられていたりで、とても楽しかった。

展覧会は3/27まで。
なおこの後、刈谷市美術館、兵庫県立歴史博物館に巡回する。
いずこも少しずつ変わるという噂があるので、三館ともまわってみたいところである。
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