美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

大和撫子のおしゃれ/ファッション史の愉しみ

先般、おしゃれをテーマにした二つの展覧会を見た。
1つは「大和撫子のおしゃれ 櫛・簪・粋な女性たち」
1つは「ファッション史の愉しみ 石山彰ブック・コレクションより」
どちらもよい内容で、わたしのようにおしゃれから遠く離れた者はただただ呆然と眺めるばかりだった。

前者は鎌倉の源吉兆庵美術館で3/21まで、後者は世田谷美術館で4/10まで開催。
終了した方から先に感想を挙げる。

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まずこのチラシにどきっとする。
守屋多々志えがく明治の少女の愛らしさに目が開かれるのである。
橙地に鹿の子で梅文様。愛らしい少女の手には扇子らしきものがある。
わたしはこの少女を見て大仏次郎のえがいた明治の少女を思い出すのだ。
万年青と兎を飼うのが流行った時代に生きた健気な少女。
あの小説の少女に似ている、と勝手に思っている。

全く珍しいというか、初めてみたのが芳幾の美人画。名所+美人と言う旧幕時代から引き続く様式のもので深川両国界隈か。
芳幾の無残絵や新聞絵とはまた違う情緒のあるいい絵。

水野年方えがくあらゆる時代の婦人相。連作物で「三十六佳撰時代婦人図」。全シーンが出ているのは嬉しい。高貴な女人から辻君、庶民、武家の奥方まで時代時代の代表するファッションの様子を捉える。
昨秋神戸ファッション美術館でみた「日本衣装絵巻 ―卑弥呼から篤姫の時代まで」展を思い出した。当時の感想はこちら

昭和六年からのこのパレードを年方は無論知らないわけだし、東京住まいの彼が京都の時代祭を見たかどうかも知らぬが、亡くなる十年ほど前には時代祭も始まっている。

この版画はよく売れたようでここの他には、郵政博物館と東京都立図書館が所蔵するものがネットで検索できる。

明治天皇と昭憲皇后の雛人形などもある。
そうそう、ここではないがつい先般、薩長と岩倉らをモデルにした人形を見てぎゃっとなった。

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他に櫛笄簪のセットがたくさん並んでいた。
鼈甲や象牙のものより、螺鈿や蒔絵の方がわたしは好きだな。
セルロイドのものもあった。時代が生んだもの。

魯山人の器も色々と見ることが出来たのは嬉しい。椿の鉢や雲錦鉢がやはり好きだ。
それで偶然にも次の「ファッション史の」と同じ世田谷美術館でも魯山人のそれらを見たのだった。

こちらは前期のポスター。

どちらもよろしいなあ。
ここの所蔵する美人画をしんみりと愛でたいと思っている。


「ファッション史の愉しみ 石山彰ブック・コレクションより」
世田谷美術館でみた。
こらもチラシの威力にやられた。
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ファッションブックと浮世絵からピックアップされた群衆。
わたしは特に右下に注目したよw
トリカゴさんとギョッな人と。

最初のホールに何やら見知った方々がおいでやなと思ったら、神戸ファッション美術館ホマレのマネキンの皆さん方がずらり。いつもと並び方が違うから新鮮な雰囲気がある。
今回はどうやら大挙してこちらにいらしたようね。

マネキンが展示室の真ん中に集まり、その周囲の壁面にずらりと石山コレクションの膨大なファッションプレートが。これがもう凄かった。
時代の流れに沿って展示されているから、少しずつ様式が変化してゆくのがわかるのだが、わたしはただただ「うわーすごいすごいすごい」ばかりで意匠の細かい意味などは理解していないし、注意力散漫だから見ていても完全に見えているかどうかわからないが、とにかく優雅で素敵。
わたしは日本の服飾史はまだなんとか追えるけれど、ヨーロッパ、特にフランスの流行を追うには息切れするので、解説を読んで何とか理解しようとしている。
ロココ全盛期のマリー=アントワネットらの衣裳については「ベルばら」の昔から今の「イノサン」「第三のギデオン」などで勉強させてもらっているが、実際、この時代の貴婦人のファッションてムチャクチャですなあ。価値観が違いすぎてただただ驚くだけ。
そしてその反動が来るのがナポレオンの時代で、ジョゼフィーヌがファッションリーダーとして、体が楽で、ちょっとばかりゆるいような古代ギリシャ=ローマ風の衣裳を流行らせたのはやっぱり池田理代子「エロイカ 皇帝ナポレオン」で見知ったのだったが、展示されているプレートを見ても本当に随分な大変化だった。
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こういう帽子を見ると「アデルの恋の物語」を思い出す。イザベル・アジャーニのアデル・ユゴーは正気の頃はきちんと帽子をつけていた。

大体好きなのは1920年代以降。だからバルビエ、シャルル・マルタン、ジョルジュ・ルパープ、アンドレ・E・マルティらのファッションプレートにドキドキするのだ。
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とか言いながら日本のバッスルスタイルも楽しい。鹿鳴館スタイル。
マンガで鹿鳴館を描いたのを見たのは、上村一夫「修羅雪姫」だけだ。
あのマンガでは明治中期の婦人の洋装・和装、下着の形などもよく描けていた。
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フェルナン・シメオンのモード画を見ると、同時代の蕗谷虹児の絵を思い出す。
同じ時代の空気をパリで吸っていたのだ。かっこいいなあ。
やっぱりわたしは1920-1930年代のファッションがベストだ。
帽子もワンピースも靴の形も外套も何もかも。

コスプレをしたいのはこの時代と、それから飛鳥から天平まで。
膨大な資料にうっとりしているところは、やっぱりこんなわたしでも憧れがあるからだ。
「素敵やわぁ」と思いながら見て歩く楽しさは大きい。
とはいえ、自分の身に合うものは何一つないので、やはり虚構にすぎないと意識の底では思っているのだが。
醒めながら酔う心地よさ。
ファッションの展覧会にはそれがある。

わたしのサイズに合うように調整してくれるのなら、ポール・ポワレのデイ・ドレスを着てみたいと思っている。
間違ってもクリノリンに閉じ込められたくはない。
実物を見ながら薄い夢を想う。

錦絵もたくさん出ている。
おしゃれな明治の浮世絵を多く描いた周延、芳年の「風俗三十二相」シリーズ、年方の「開化好男子」シリーズ…
一部ずつではあるが、花を添えている。

年方の「開化好男子」は上級官吏、医者、豪商、紳士、法学博士、学生、若旦那、代議士、壮士などである。
壮士は麦わら帽子に高下駄に手ぬぐいをぶらさげているが、勇ましくてかっこいい。

楽しい展覧会だった。
それにしても石山彰という人は凄いコレクターだったのだなあ……
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