美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ボッティチェリ展に行った

東京都美術館では4/2まで「ボッティチェリ」展を開催している。
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二度も行ったが何故かこんな終盤になっても書けないままだった。
いくら泰西名画がニガテだというても程がある。
「カラヴァッジョ」展はスイスイと機嫌よく書けたのに、なぜかこちらは苦しい。
別に期待されているわけでもないのに勝手にプレッシャーに圧されていたのだ。
考えれば、わたしの書くボッティチェリ展の感想が誰かに何かに影響を与えるわけでもないので、自分の記憶と記録のために簡単に書けばいいのだった。

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第1章|ボッティチェリの時代のフィレンツェ|Florence in Botticelli’s Time
タイトルなどはリストからお借りする。

ピエトロ・トッリジャーノ(帰属)ロレンツォ・イル・マニーフィコの胸像 1515-20 多彩色テラコッタ フィレンツェ、サルヴァドーリ・コレクション
この大きな胸像、かっこよかった。オカッパの前髪の下の鋭いまなざし。鼻は怖いような形ですな。かぶってる頭巾はフィレンツェ独自の形だと説明がある。ちょっとばかり「クリスマス・キャロル」のスクルージが寝るときに被るあれに似ているなと思ったり。
これはなんでも「マッツォッキオ」というそうだ。ボッティチェリに「マッツォッキオをかぶった若い男の肖像」Portrait of a Young Man in Mazzocchioという作品があり、この後に出てきて納得したのだった。

この彫像はパッツイ家による暗殺未遂事件の直後のものらしい。剛毅な感じがさすが、イル・マニーフィコ。台座に刻まれた花文様もいい。

中央アジア製 杯 15世紀(?)ヒスイ(緑閃石)Jade actinolite フィレンツェ、自然史博物館、鉱物学部門、フィレンツェ大学
翡翠は尊いものです。黒光りする翡翠。イル・マニーフィコの銘がある。
かっこいいなあ。
中世欧州における宝石・貴石の位づけってどうなっているのだろう。知りたいな。

ヨーロッパ製 杯 14-15世紀(?)石英、アメシスト、碧玉Quartz, amethyst and jasper
フィレンツェ、自然史博物館、鉱物学部門、フィレンツェ大学
蓋らしいね。肌色と赤との取り合わせか。

ヨハネス・アルギュロプロス アリストテレス『論理学』のラテン語翻訳 1465-78年 彩色写本 フィレンツェ、メディチェア・ラウレンツィアーナ図書館
とても綺麗な本。この時代の書物はとても貴重だから、当時鎖付されていた。

ベルトルド・ディ・ジョヴァンニ 「パッツィ家の陰謀」のメダル Medal Commemorating the Pazzi Cospiracy 1478 ブロンズ、鋳造Cast bronze フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館
これを見ると「ハンニバル」の映画を思い出すね。ジャンカルロ・ジャンニーニ演じるパッツイ捜査官に、偽名を使いフィレンツェの司書になろうとしたレクター博士が「ご先祖の事件をこの町の人は忘れはしないでしょう?」と微笑みながら話しかけたり、自分を売った捜査官をご先祖同様に宮殿の壁に逆さ吊りにして処刑したり。
ドキドキするのにはそんな理由がある。

フラ・アンブロージョ(本名フランチェスコ・デッラ・ロッビア)ジローラモ・サヴォナローラのメダル 1497 ブロンズ、鋳造 フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館
こちらは修道士風の頭巾ですな。
サヴォナローラといえば総領冬実の連載にもとうとう出てきたが、それ以前は森川久美がサヴォナローラ側からの物語を描いたのがあるくらいだったはず。

トスカーナ製 聖杯Chalice 15世紀末-16世紀初頭 陰刻・打出し・鍍金を施した銅、ニエロを施した銀(小板);旋盤で削り出し、部分的に鍍金を施した銀(杯)フィレンツェ、シヴィエロ邸博物館
サー・ガラハッドの聖杯探究の話を思いだす一方、個人的には「インディ・ジョーンズ」の三作目を思い出すわ。インディ君がどの杯を選ぶかドキドキしながらバスの中で見ていたら、「ハイ着きました」でビデオを消されたのだった。
この杯はさすがに綺麗なつくりです。

イタリア製(フィレンツェ)(あるいはスペイン製?)方形の布地 Rectangular fabric 15世紀 紋ビロード Textured velvet フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館
産地も二つどちらか。パイル織で薊のような花文様。赤と金の絡まり合い。

イタリア製(フィレンツェ?)布地の断片Fragment of Textile 15世紀半ば 紋ビロード
フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館
縦型に残る。小さい。かっこいい。

アントニオ・デル・ポッライオーロ(本名アントニオ・ディ・ヤコポ・ダントニオ・ベンチ)竜と戦う大天使ミカエル 1465年以前 油彩/カンヴァス フィレンツェ、ステーファノ・バルディーニ美術館
甲冑姿のミカエル。黒ビロードの服に貴石のついた上衣を着る。ドラゴンの鱗と歯が印象的。

アントニオ・デル・ポッライオーロ 10人の裸の男たちの争い 1465年頃 ビュランによる銅版画、II/2ステートEngraving, state II/2 フィレンツェ、ウフィツィ素描版画室
森の中で争う十人。素敵なメールヌードの群れを見ました。

アントニオ・デル・ポッライオーロ ヘラクレスとアンタイオス 1478年頃 ブロンズ
フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館
これまた力強い造形。相手は苦しさに口を開けている。胴を挟み込んで持ち上げる。
おおー。全然関係ないが大友康平の「ff」のPVにもこんなシーンがあったな。着衣だが。

ピエロ・デル・ポッライオーロ(本名ピエロ・ディ・ヤコポ・ダントニオ・ベンチ)
ガレアッツォ・マリア・スフォルツァの肖像 1471 テンペラ/板 フィレンツェ、ウフィツィ美術館
強い形の鼻曲がりの男。横顔だからとてもはっきりわかる。大きいルビーをつけている。
この人は残忍なところがあり、後に暗殺されたそうだが、庶子のカテリーナ・スフォルツァの逸話の方がわたしには親しい。カテリーナはどの兄弟よりも父親に似たのではないだろうか。

アンドレア・デル・ヴェロッキオ(本名アンドレア・ディ・ミケーレ・ディ・フランチェスコ・チオーニ)と工房 聖母子 15世紀後半 大理石 フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館
大理石でもむっちり赤ん坊。

アンドレア・デル・ヴェロッキオ 聖ヒエロニムスの頭部のための習作 1465年頃 油彩/紙、板に貼付 フィレンツェ、パラティーナ美術館
うむ、爺さんである。リアル。

第2章|フィリッポ・リッピ、ボッティチェリの師|Filippo Lippi and His Workshop

実は今回の展覧会で秘かに喜んだのがこのコーナー。リッピをこれだけたくさん日本で一度に見たのは初めて。よかったわ。

フィリッポ・リッピ(本名フィリッポ・ディ・トンマーゾ・リッピ)
聖母子 1436年頃 テンペラ/板(新支持体に移し替え)ヴィチェンツァ市民銀行
ママの顎を持ち上げてつくづく顔を打ち眺める幼子。古い絵がこうした保存のされ方をするのもいいな。

聖母子と天使たちおよび聖人たちと寄進者 1435-37年頃 テンペラ/板 ヴェネツィア、チーニ邸美術館(ジョルジョ・チーニ財団)
なんとなく全体的に不穏な…なんででしょうね。

ピエタ 1440年頃 テンペラ/板 ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館
灰色の谷で、「よいしょ」と持ち上げるわけです。

1.セルキオ川の流れを変える聖フレディアヌスSaint Fridianus Changing the Course of theSerchio,
2.聖母の死の告知Announcement of the Death of theVirgin
3.聖アウグスティヌスの幻視Vision of St Augustine
(《バルバドーリ祭壇画》の裾絵)(Predella of the Barbadori Altarpiece) 
1438年頃 テンペラ/板 フィレンツェ、ウフィツィ美術館
三連の絵画で1はみんなのリアクションがいい。手が「パー」の形になっている。
2はひざまずく天使たちがいる。3は胸に三本の矢が刺さる坊さんが書き物中。
聖母の死というのを見ると、「聖☆おにいさん」でブッダとイエスが聖母をサイゼリアに誘ったところへ呼ばれた、殉教しなかった(雷兄弟の弟の方の)ヨハネが「殉教しませんでしたよ!」とキレると、聖母が「殉教が何です!わたしの晩年の世話をしてくれたのはヨハネちゃんだけ!」と言うシーンがあって、みんなぐさっときてシーンとなるのしか思い出さない。
正直なことを言うとそのシーンを読むまで、聖母の死というものを一度も考えたことがなかったのだった。

対になっている作品四点がある。どちらもウフィツィ美術館所蔵で以前から好きなもの。1450-55年頃。
受胎告知のマリア、大修道院長聖アントニウス
大天使ガブリエル、洗礼者聖ヨハネ
金の枠に収められていて向き合いつつも視線は決して交わらない。

第3章|サンドロ・ボッティチェリ、人そして芸術家|Sandro Botticelli, the Man and
いよいよ登場。
サンドロ・ボッティチェリ(本名アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ)

バラ園の聖母 1468-69年頃 テンペラ/板 フィレンツェ、ウフィツィ美術館
「ママ、何を考えてるの」と見上げる幼子が可愛らしい。
聖なる存在でありつつ、幼児として愛らしいのだ。

愛の勝利(フランチェスコ・ペトラルカ『カンツォニエーレおよび勝利』に収録)1470年代初頭 ペン、インク(尖筆の上に?)、茶色の水彩、青とスミレ色の顔料、羊皮紙
ラヴェンナ、クラッセンセ図書館
「本」という形態の中で様々な存在が閉じ込められている…

シモンの家の宴 1470年代初頭 テンペラ/板 フィラデルフィア美術館
¬ の形のテーブルにいる人々。不思議な静けさがある。

ノリ・メ・タンゲレ(我に触れるな)“Noli me tangere” 1470年代初頭 テンペラ/板 フィラデルフィア美術館
こちらもそう、とても静か。マグダラのマリアを拒絶するシーン。しかしマリアにももう光の輪が浮かんでいる。なにかシュールな空気感がある。

ラーマ家の東方三博士の礼拝 1475-76年頃 テンペラ/板 フィレンツェ、ウフィツィ美術館
実在の人々を巧みに配置する。メディチ家の人々と画家本人と。
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挿絵を見る。
バッチョ・バルディーニ(おそらくサンドロ・ボッティチェリの下絵に基づく)
猛獣たちに驚くダンテ(『神曲』「地獄篇」第1歌の挿絵)
ダンテにベアトリーチェの出現を示すウェルギリウス(『神曲』「地獄篇」第2歌の挿絵)
1480-81年頃 エングレーヴィングによる銅版画と活版印刷によるテクスト フィレンツェ、ウフィツィ素描版画室
狼がわんわんっと林の中で。次のは「ほーら、あれあれ!!」そんな声が聴こえそう。


サンドロ・ボッティチェリ 聖母子(書物の聖母)1482-83年頃 テンペラ/板 ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館
青衣と金の対比の美しさ。

洗礼者聖ヨハネ 1484-90年頃 ペンとインク、絵筆と薄めたインク、鉛白、尖筆または石墨の痕跡、部分的にピンク色で塗られた紙の上にペンとインクで縁取り、裏打ちあり フィレンツェ、ウフィツィ素描版画室
立派に成人したヨハネ。立派なふくらはぎ。

聖母子、洗礼者聖ヨハネ、大天使ミカエルと大天使ガブリエル 1485年頃 テンペラ/板 フィレンツェ、パラティーナ美術館
トンド ○ という円形フォーマットの中に描かれた彼ら。聖ヨハネの美少年ぶりに目が見開かされた。毛皮のワンピース(!)の可愛いこと。天使たち、幼子、彼らの誰にも増して綺麗な少年。ドキドキした。

サンドロ・ボッティチェリと工房 パリスの審判 1485-88年頃 テンペラ/板 ヴェネツィア、チーニ邸美術館(ジョルジョ・チーニ財団)
女神もパリスもどうでもいいが、右端の山羊が頭かいてるのが妙に可愛い。牧童パリス。
ギリシャ神話は「因果応報」がとても多い。

サンドロ・ボッティチェリと工房 聖母子と4人の天使(バラの聖母)1490年代 テンペラ/板 フィレンツェ、パラティーナ美術館
天使たちの仲間内の馴染んだ様子が可愛い。「なぁなぁ」と話しかける顔のリアルなこと。あるある。一方で澄ました子は目が死んでるな。

サンドロ・ボッティチェリ 美しきシモネッタの肖像 1480-85年頃 テンペラ/板 丸紅株式会社
日本で唯一のボッティチェリ。何度も丸紅コレクション展で見ているが、とても優美でいい。衣裳も綺麗だし。日本にあってくれてとても嬉しい。

アペレスの誹謗(ラ・カルンニア)1494-96年頃 テンペラ/板 フィレンツェ、ウフィツィ美術館
もめてる。登場人物たちは全員が何らかの比喩の人格化らしい。彫像の方もひとくさい。
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サンドロ・ボッティチェリ工房 福音書記者聖ヨハネの奇跡 1494-1500年頃 絹、ペンとインク パリ、ルーヴル美術館、素描版画部門
毒から復活の人々。近世風俗画風な顔つきが面白い。

フィレンツェの織物製作所(サンドロ・ボッティチェリの原寸大下絵に基づく)カズラ(ミサ聖祭用上衣)Chasuble 1490年頃 ブロケード織りのビロード、金糸による刺繍 ルーマニア、シビウ、ブルケンタル国立博物館
聖人の縫い取りがある。そうなんだ。

フランスのタペストリー製作所(ボッティチェリの原寸大下絵による)温和なミネルウァ(女神パラス)1494-1500年頃 羊毛の経糸と羊毛および絹の緯糸 個人蔵
引っかけられているメデュウサの首がまた…
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サンドロ・ボッティチェリ ホロフェルネスの頭部を持つユディト 1500-10年頃 テンペラ/板 アムステルダム国立美術館
剣を持ちながら出てきた女。赤がとても目立つ。ちょっと寺島しのぶを思い出した侍女。

第4章|フィリッピーノ・リッピ、ボッティチェリの弟子からライバルへ|Filippino Lippi: from Botticelli’s Pupil to His Rival

フィリッピーノ・リッピ 幼児キリストを礼拝する聖母 1478年頃 テンペラ/板 フィレンツェ、ウフィツィ美術館

二階のベランダでの。花も咲いているガーデン。

フィリッピーノ・リッピ 聖母子、洗礼者聖ヨハネと天使たち(コルシーニ家の円形)テンペラ/板 フィレンツェ、フィレンツェ貯蓄銀行コレクション
ああ、これもとても綺麗。現代ならきたのじゅんこしか描けないような美少年が並ぶ。
ヨハネ兄さんもいい。とても綺麗な少年たち…

フィリッピーノ・リッピ(ボッティチェリに基づく?)足から吊り下げられた男(おそらくナポレオーネ・フランツェージ)の習作 およそ1494年以前 ペンとインク、筆と希釈されたインク/転写のために目打ちされたブルーグレーの紙、輪郭線に沿って切り取られ台紙に貼られた人物像 パリ、ルーヴル美術館、素描版画部門
これあれだわ、パッツィさんですな。

フィリッピーノ・リッピ (ヴァローリ三連画の両翼画)1497年頃 テンペラ/板
フィレンツェ、アカデミア美術館
洗礼者聖ヨハネ
マグダラのマリア
二人ともホネホネ。殆ど幽霊状態。

フィリッピーノ・リッピ 聖母子と聖ステファヌス、洗礼者聖ヨハネ(「引見の間」のための祭壇画)1503年 テンペラ/板 プラート市立美術館
アタマに石載せてるーーー!アトリビュート。石でどつき殺されたから仕方ないが、ラリッた眼の幼子、貧相な人、となにやらすごいな…

ああ、勝手なことを書き散らしたが、やっぱり面白かったです。
4/3までなのにもうこんな日になっている。
でも書けてよかった…
もうこんなに大規模なボッティチェリ展はなかなか見れないと思うので二度も見れてよかった。
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