美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

山水 理想郷への旅

大和文華館に山水画を見に行った。
2/26から4/10の会期だから梅から桜までの時期である。
ここの庭園は大和文華苑というて県下でも名高い花の多いところで、その花の時期に渋い山水画とはこれはまたシブイ(カッコいいの意味の死語。今ならヤバイがそれにあたる)選択だと思った。
イメージ (56)

二十代の頃は山水画の「淋しさ」というか「わびさび」風味に飛んで逃げてたが、三十代のある日不意に「これはこれでええな」と思い至り、今ではいそいそとお出かけする。
とはいえ、現実には山中遊行など以ての外で、わたしはやっぱり巷ハイカイ、下界遊行で十分である。
要するに山水画に心をあそばせる、という心境には一向に至らず、近世風俗画の名所図、浮世絵の宿場のにぎわいを見て「ここなら行きたいな」と思うのであった。
わたしは自分の実感と主観だけで感想を書いているのでこんなことを思うのだった。

イメージ (57)

山水図屏風 伝・周文 室町 右から左、←に見てゆくが、やはり目についたのはこのわんこ岩。なんとかいう種類の洋犬にしか見えぬな。可愛いわい。
左では舟を漕ぐ人もいて、友人所へ歩いてゆく高士と少年も発見。
イメージ (59)
脚本家の大野木さんの愛犬に似ている…

奔湍図 伝・狩野元信 室町 ゴォゴォ~~~と音をたてて流れている。カッコいい急流。解説によると福岡県美術館にある粉本からこの絵はもともとは襖絵だったそうな。今は軸装。はみだしそうな勢いがいいな。

瀑布図 伝・狩野元信 室町 これまた水飛沫、はねるはねる。「とっても大きなスプラッシュ」はデヴィッド・ホックニー。

唐絵手鑑 伝・狩野安信 江戸前期 56図のうち4面が出ていた。南宋院体画風。
牛がのんびりしてたり、水田で働く牛とか、大年とサイン入りの林の中の家の絵とか、妙にいい感じ。のんびり和やか。

金地山水図屏風 渡辺始興 江戸中期 墨の濃淡でわりに大きな気分で描いたような感じがある。右1下にロバを連れた人がいたり、右6に高士と琴持ちと言うよりボード持ち少年の二人組もいる。
山中にもけっこうたくさん家があり里のようだった。左1には小さい滝があり、働く人も見える。滝はやがて川へと向かう。流れがそちらへ向かうのがいい。
左5の岩がどうも猫耳ですな。川では小舟で働く人々がいる。若いのも従事してました。

東山三絶図 応挙 1786 この絵は前々から大好きな絵で、応挙の実体験だというのがいい。僧の六如、書家の永田観鵞の三人が東山で宴会。窓も大きく開けられて芸妓が三味線弾くのも見える。塀の形もいい。左の奥には東寺の塔もみえる。
イメージ (58)

練りに練った絵もいいが酔余の絵や即興の絵や素描もとても好きだ。気軽さとライブ感がいい。

四季山水図屏風(秋、冬) 応挙 1787 秋は山の端に月が出る、冬は雪山。重苦しさのない平明さが心地いい。

東山第一楼勝会図画帖 原在中ほか多数 1799 これもページを変えて色々見てきたが、今回は在中の頁が出ていた。「秦岳図」。奇岩に霞がかかっている。

暑中芙蓉峰図 森徹山/鄭嘉訓・賛 江戸後期 富士山。これは琉球の古波蔵親方の書だが、詩自体は名護親方のものを写す。ところで親方は琉球語では「うぇーかた」と読むのだがここでは「べーちん」とルビがある。中国語読みの方なのかな。
真是群山祖 扶桑第一尊 満頭生白髪 護国鎮児孫
こうあるが、鎮児やなくて本当は護児だそうだ。

澗泉松声図 浦上玉堂 江戸後期 山水画は心穏やかで、という解説がウソだと思うのは玉堂の絵を見るときに思うこと。
なんか過激やなあ。
イメージ (61)

秋渓訪友図 岡田半江 1843 川から来た友人。秋で赤くなった木の葉が先に顔を出す。主人はベッドでお休み中。

高士観瀑図 梅逸 1851 光を透け込んだ紙に描かれているのか、と思ったほどの光沢を感じた。普通の紙本。しかしとても艶やかな水墨画。自然の中で。
表具もまた綺麗。絖か綸子かに蝶々と蕙のパターン。

京畿遊歴図画冊 江戸後期 リアルな写生画帖。クヌギノカワメウスシ、などという書き込みも多い。

中国、朝鮮の山水画も色々あるのだが、今回は圧倒的に日本の方に惹かれた。

紫竹庵図 管道昇 元 1296 女性である。名高かった人の作である。あまり見ていない絵だが、内藤湖南の旧蔵品だったそうだ。
2006年の「文人たちの東アジア」展にも出ているようだが、ちょっと記憶がない。
元というより京都のどこぞにありましたな。

賞楓図 張風 清 1660 崖から垂れる楓を見る人。妙にリアルな雰囲気の坊主頭のヒト。辮髪ではなく五分刈りくらいのおじさん。
この絵は「東北の貴公子」張学良旧蔵品。張学良は100歳まで生きていたなあ。

聴松図巻 王翬・楊晋合作 清 1700 いつみてもそんな300年前の絵とは思えないリアルな顔立ち。むしろ今なら谷口ジローが描きそうなタイプ。
林の中で松の音を聴いている。松籟か。

山水図册 楊晋 清 1700 12図。けっこうわやわやした空気。冬は賑やかで、少年が提灯持って走ってるのも可愛い。色んなシーンはまるでムーミン谷の四季のようでもある。

山水図册 方士庶 清1728 12図。シュールな風景がある。深山幽谷を行く人々の姿。そこにはなにもない…

雲山図 朝鮮前期 複数の人の絵をまとめている。中でいいのは、小さい小岩の島がいくつも浮かぶ湾内に煙る山、曲がりの多い道が長々と続く道を行く人々、川に架かる橋…
米法山水という分類にはいる。
その川に架かる橋の図を見たように思ったが、丁度ベランダからみえる蛙股池に架かる橋、あれによく似ている。

版画がいくつか。
大岡春卜、椿椿山らの関わった本には中国の山水画が掲載されている。その模写なども。

池大雅のファンの人が大雅の絵を木版にして自分の友人らに配布したのも出ている。
「秋林云々」どうもあと2文字がわからん。「狸謡」と書いてるのかな、ちょっと読めない隷書体。
モコモコと小さくて可愛い絵。そりゃこんなの持ってたら、皆に見せてあげたくなるわな。

台湾征討図巻 清 1787-89 乾隆帝の台湾征討戦勝記念版画。これだけの点数を見たのは初めて。4図ある。
けっこう細かい描写。辮髪の人々が闘う。あの帽子もかぶってる。濠に落ちるのもいる。進軍する清軍。ダーッ。対する台湾軍は楕円形の盾を持っているが、彼らは高砂の人なのかな。海からは清の大きなジャンクが押し寄せてくる。戦場で死ぬ人の顔がはっきり。
なかなかな迫力だが、わたしとしては台湾がんばれ、と思うのだった。

茉莉花歌図 蘇州版画 清 「茉莉花歌」という流行歌の分野があり、そのうちの12曲を絵画化して一枚に収めた。恋愛歌か。あまり関心が湧かないが、春らしさがあっていい。

4/10まで。
水墨画の後はお庭の三春の滝桜、椿などを愉しんだ。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア