美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

俺たちの国芳 わたしの国貞

ブンカムラで「俺たちの国芳 わたしの国貞」展が大繁盛だという。
当たり前かもしれない、なにしろ面白すぎる。
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内覧会にいそいそと出向くと、早めに来たはずなのに物凄い混雑で、ご挨拶で主催者の意気込みを聴いたり、場内に入って映像を見たり、章ごとのタイトルを見ただけで、今後の大繁盛が軽く予想できた。
いやもぉとにかく凄い、スゴい、すごい内容。何が凄いてまず色がめちゃくちゃ綺麗。
ボストン美術館からやってきた350点の国芳と国貞の浮世絵は、アメリカに流出した瞬間から時を止めたかのように、鮮やかな色を保っていた。
それらがわかりやすくてソソラレるタイトルごとに分類されて、ドヤ顔でグングン来るのだ。
こっちをみたら国芳、あっちを向いたら国貞、どこまでいっても国芳国貞のカッコイイ絵が並んでいるのだ。
これで何にも感じないというなら、そら淋しい限りですがな。

内覧会には中村七之助丈のご挨拶もあった。
今回の音声ガイドは七之助丈で、それだけでもわくわくする。
わたしは前々から七之助丈は叔父上の中村福助丈同様、南北のキャラや江戸の市井に活きる女が似合うと思っているので、国芳国貞えがく江戸の女を音声ガイドで語る、というのを知ってときめいたなあ!

実際お借りしたら七之助丈のいい声が流れてきて、しかも作品によってはその描かれたキャラになりきって語るので、平成の世でありながらお江戸にスライディングしたような心持になりましたわ♪
やっぱりこういうときには連綿と続く歌舞伎役者でないとねー。

実は音声ガイドにはB’zの 松本孝弘さんの「Ups and Downs」が収録されてて、わたしはついつい数回再生してしまったのでした。

中に入ると、映像が現れる。飛び出す猫!
こればかりはここに行かないと見れないので、ぜひ。
いきなりこういうのから始まるのって楽しいなあ。

ところで個人的なことを言うと、わたしは今でこそ国芳がベストなのだが、中学高校の頃は国貞の方が好きだった。
理由は国貞の芝居絵。
当時既に物語性のある絵が好きだったので、国貞の絵が芝居の場面だと知って、それでわりと惹かれたのだ。
ついでにいうと、1980年代は浮世絵は国芳を見るのが結構難しかった。広重は安易にみれたのだが。
それに鏡花の短編「国貞ゑがく」でわたしの中での国貞の好感度が増していた。
国芳が好きになったのは、松田修の著書で水滸伝の浪子燕青の絵を見たのと、同時期に梅田の古書街で「珠取り」を見たからだと思う。
なんせあの武者絵の刺青の美麗さにどきっっとなって、それから水滸伝にハマったのですから。
猫の絵もその頃から。
一気にのめりこんだなあ。

国芳は1990年代から大きい展覧会が開かれるようになり、今では研究も進んだが、わたしの手元にある昭和40年代に出た集英社の浮世絵画集の解説で国芳は不当な評価しか与えられてなかった。それに比べて国貞はいいように書かれていたなあ。
しかし今日では人気も完全に逆転している。

この展覧会で初めて国貞を知る人も少なくないと思う。
歌川豊国の弟子の国貞と国芳。兄弟子の国貞は生涯にわたって安定した人気作家だった。
余りに数が多すぎて晩年のは濫作とも言われたけれど、お客が何に喜ぶかをよく知っていて、それに沿う作品を描き続けた。
国芳は長く不遇の時代が続いたが、武者絵が爆発的に売れて、戯画の面白さ、発想の愉快さ、豪儀さにお客も大いに喜んだ。
弟子も多くいて、その流れを引いたのが鏑木清方だったりする。
清方の血脈を引くのも多いから、二百年前も案外近いなと感じたりするね。

さてさて、この展覧会の面白いところは、もちろん作品の素晴らしさという一次的なものと、発色の良さ・その保存の良さという二次的なものと、それらの見せ方のよさという三次的なところまで続く。
元から浮世絵好きな人も大いに楽しめるけど、浮世絵に関心のない人もこの展覧会で「をを!」となるに違いない。
「江戸時代って面白いな」と思わせてくれる構造にはまり込んでしまう。

この展覧会のタイトル「俺たちの国芳 わたしの国貞」というのもわたしは好き。
普段はジェンダーとか色々考えているけど、そういうのとはまた別に「おう!」と手をグーにして同意したくなるつけ方やと思う。

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一幕目の一 髑髏彫物伊達男 スカル&タトゥー・クールガイ
国芳の「通俗水滸伝」から短冥次郎阮小吾、浪裡白跳張順、花和尚魯知深が出ている。
力強くてエネルギッシュで、その刺青の鮮やかなこと!
ほんまにかっこええ。
このシリーズで一気に刺青の絵柄を国芳風なのにしてくれという若い衆が増加したそうな。
背中をバッと見せていなせな男ぶりを見せて活躍するがえん、火消、鳶の人らの肌を彩る国芳の絵。
かっこええなあ。

チラシのスカル好きの代表のひとは一休さんのお弟子の野晒悟助。
きもののスカルが猫髑髏なのがまたいいよねー。

国芳は特定のモデルなしで自分の絵柄で描くけれど、兄弟子の国貞は同じ男伊達を描くのでも、更にそこに役者の見立てをも入れる。
「当世好男子傳」シリーズ。このタイトルの読ませ方がまたいい。
「とうせい・すいこでん」いいヨミですなー。
それで九紋竜史進に比す悟助、三代目市川市蔵、花和尚魯知深に比す朝比奈藤兵衛、初代中村福助、行者武松に比す腕の喜三郎、初代河原崎権十郎・・・
などと言う風に二重三重の楽しみをよこしてくれる。

一幕の二 怪物退治英雄譚 モンスターハンター&ヒーロー
巨大髑髏の出てくる相馬の古内裏には妖術使いの滝夜叉姫とそれに対抗する大宅太郎がいて、もうこの大がかりなところにシビレルわけです。

天狗から武道を教わる遮那王牛若丸、後の義経を最後まで守る弁慶の子供時代のエピソード、それらの絵もここにある。

当時の大ベストセラー「八犬伝」はもともとは彼らの上の世代の北斎が凄くいい挿絵をつけたのだけど、時代が下がってくにくに時代になると、今度は二人が競っていい八犬士の絵を描きまくった。

国貞の八犬士は特によくて、芳流閣を舞台に八人を集結させるという、ありえないけれどお客が喜ぶ大きな絵を描いた。
なんしか8枚続きという大作ですがな。

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一幕目の三 畏怖大海原 ホラー・オブ・ウォーター
このね、巨大なワニザメは実は敵ではないのです。魔界に住まう讃岐院こと崇徳院が自分の家来の為朝一家とその家来を助けるために遣わした救い手なわけで、白い影の天狗たちは崇徳院の命を受けた救助隊なのです。
残念ながら奥さんの白縫姫だけ救われない悲劇もあるけれど、この荒波ではなあ…

ほかにも源平の海戦に由来する絵もあり、海ってやっぱりすごいなと思う迫力があるのでした。

一幕目の四 異世界魑魅魍魎 ゴースト&ファントム
国芳のオバケシリーズ「木曾街道六十九次」が並ぶ。
これは怖い&楽しいのシリーズでわたしなんぞは大好きで大好きで。

国貞では大ストーカー清玄の絵がある。天下の美男・八代目団十郎演ずるところの清玄。
死んでなお桜姫にまといつく憐れな清玄…

二幕目の一 三角関係世話物 トライアングル・オブ・ラブ
うわぁ、昼ドラ。
これはもうやっぱり国貞先生のハリキるところでございます。
いずれも芝居絵で役者のいい絵を描いている。
このあたりの「芝居がわからない」と言う方には七之助丈の音声ガイドが、ものすごく強い味方になってくれます。
七之助丈、なりきるなりきる。
そしてお芝居を知らない人にこそ、音声ガイドを聴いていただきたい。
この耳からの「芝居」を聴くことと、目の前の芝居絵とでぜひ歌舞伎に興味を持ってもらいたい、と思ったりします。
世話物の面白さはハマると抜けられないのよー

二幕目の二 千両役者揃続絵 カブキスター・コレクション
これぞ国貞の独擅場!!
役者絵はやっぱり国芳は国貞には及ばない。
とはいえ、八代目団十郎の死に絵のような創作ものは、やっぱり国芳の力業が光っている。

鏡花「国貞ゑがく」に現れる役者絵はやっぱりこのあたりの作品ではないかなと思ったりもしている。
昔の役者をじかには見れないが、国貞の絵で偲ぶことが出来るのは幸いだ。

二幕目の三 楽屋裏素顔夢想 オフステージ
これは芝居好きな人にはたまらない面白さがある。
国貞えがく楽屋のバタバタドタバタが細部まできちんと楽しく描かれていて、嬉しくなってくる。
そんな作品がずらり。

二幕目の四 痛快機知娯楽絵 ザッツ・エンターテインメント
戯画、判じ物でたっぷり楽しめる。
特に私が好きなのは国芳の「狂画水滸伝」で、梁山泊の好漢たちがそれぞれのエピソードに絡むものを商売にしているところ。
大蛇の蒲焼売ったり、トラの飛脚と武松が喋ったり、もともと漁師の張順がエイを売ったりなどなど、とても楽しい。

国貞は役者の判じ絵で、これは当時のファンには大喜びだった模様。

二幕目の五 滑稽面白相 ファニー・ピープル
国芳描くけったいな人々や子供らのわいわい働く様子や見世物芸人の姿などなど。

二幕目の六 今様江戸女子姿 エドガールズ・コレクション
国貞国芳の美人画を堪能する!!
ここは本当にずらーっっっっと可愛い子からカッコいい人まで。

二幕目の七 四季行楽案内図 フォーシーズン・レジャーガイド
江戸の人はよく出歩いた。
また365日、いや昔は太陰暦だからまたちょっと日数が違うか。
とりあえず毎日毎日なんだかんだとあるわけです。
仏教系の日もあれば神道系の日もあるし他のことにかこつけてのなんだかんだ・・・
花見も紅葉狩りも雪見もせんならんし、花火の日には両国に行かないといけないし、蛍狩りは宇治が有名だし、雪が積もれば巨大な猫の雪だるまも作らないと・・・作らなくても別にいいか。

愉しい江戸ライフの絵。

二幕目の八 当世艶姿考 アデモード・スタイル
国貞美人がずらり。
そしてありがたいことにこのあたり、期間限定ではあるが写真撮影可能、もちろんノーフラッシュだけど、本当にこれは嬉しい。

ここではわたしの大好きな凄艶なおねえさまもいた。
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お久しぶりです。2008年のボストン浮世絵展以来の再会。

ほんと、カッコよかった。
「俺たちの国芳 わたしの国貞」

ボストン美術館から来たこれらの作品は6/10まで。
あと五年は全作品がお休みするので、本当に貴重な機会。

なお、この展覧会で国芳とその血脈をもっと知りたいと思った方は練馬区美術館「国芳イズム」展へぜひ!
4/10までですが、本当にあの展覧会もいい。
個人コレクションであそこまでの名品が、という凄い内容。

また国貞に関心がわいた方はぜひとも浮世絵太田記念美術館の国貞展へ。
「歌川国貞~和の暮らし、和の着こなし」展。こちらにお出かけを。

ああ、また行くぞ、わたし。




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