美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想 前期

府中市美術館、春の恒例江戸絵画祭、今年は「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」展。前後期完全入れ替えだから二度ばかり行かねばならんわけです。
前期は4/10で終了。後期は12日から開始。
というわけでその隙間の日に前期の感想を挙げるつもりだったが間に合わず、時間が延びてしまった。
ま、完全に自分の記憶と記録のための感想文だから、それでもいいか。

いつも新鮮な驚きのラインナップである。
学芸員さんらスタッフの皆さんに先にお礼を申しあげよう。
よくぞこれだけの絵を集め、そしてこうした絵があることを教えてくれて、ありがとうございます。
享受するばかりで申し訳ないですが、本当にいつも楽しみにしております。
というわけで例によって楽しく拝見いたしましたがな。

松村景文 月・山桜小禽・山茶花鴛鴦図 敦賀市立博物館  三幅対で満月を中に右に山桜、左に山茶花。少し季節の推移がある。初春から春爛漫へ。
柔らかみのある左右の花。薄紅の雪持ち山茶花も山桜も、どちらも温厚な良さがある。

東東洋 蘆間吹笛図 仙台市博物館  小さい亭で釣り糸を垂れたままの少年。しかし獲物はなかなか取れぬようで少年は笛を吹き始めている。三つも籠があるがそれを満たすことはあるのだろうか。そんなことを思うのも楽しい。

岡本秋暉 波間月痕図 摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託)  指頭画だそうでなるほどそれも納得がゆくような水に浮かぶ月。

円山応挙 雪中月図   花びらのような雪が降る。月はいよいよ煌めく。きれいな空。写生を第一にする応挙であっても、この絵の美しさは幻想的なものなのだ。

柴田是真 呉剛伐桂図   罪を購わねばならない。この男は桂(=月桂樹)の木を切り倒さねばならないのだが、しかしとんでもないトラップがあった。罪障消滅を願うて、懲役として働いているのだが、実はこの木は切られても切られても死なない木だったのだ。
月で働くこの男の衣服が月の風に揺れている。
ちょっと一息ついているところ。ギリシャ神話のシジフォスを思い出す。

円山応挙 元旦図   山の端から昇る日に向かい、じっ と立つ裃姿の男。
日本人にとって初日の出というものがどんなに尊いものかがしみじみと伝わってくる。

森狙仙 猿図  ほわっとした毛並みのサルが蔓草の生える岩のあたりにいる。薄い日もあがる。
サルとても何かしら物思いに耽る日もあるのだ。狙仙の狙の字はサルの意味だというのを知ってから、狙仙のサルを見ると、狙仙のサルたちへの愛情の深さを強く感じるようになった。

ファンタスティックという言葉を実感するには、わたしの場合だともう少し現実から離れたものでなければならない。

高嵩渓 宝樽船図   無人の宝船が帆を張り、大海を行く。船には「松泉」の菰樽が五段積みとも東アジア共通のお宝が足の踏み場もないほど満載。
日の出、そして舞う鶴。
これが「ファンタスティック」な情景だ。
うむ、間違いない。
 
亜欧堂田善 品川月夜図 須賀川市立博物館   絵の枠内がそのまま座敷になっている。開け放たれた座敷、遊女が一人海を見る。品川の遊郭のにぎわいも消え果てた時間。一人佇む女。
「鐘の岬」がどこかから聞こえてきそうな情景である。
こうした作品に会えるからこそ、府中市美術館の春の祭りになにがあっても参加したくなるのだ。
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松本保居 四条川原夕涼之図 府中市美術館   こちらの版画は位置から考えると四条から下がって五条の手前くらいか、そこの二階から四条河原のにぎわいをみる。虹まで出て東山三十六峰にかかる。
正直な話、こんなのを見ると「早よ夏になって、どこぞの二階か床でごはん食べたいワ」と言う気になる。

山口素絢 四条河原夕涼図屛風  こちらはカラフルな夕涼みにぎわい図で、まぁ実に多彩な情景が広がっている。楽しいて仕方ない。
化け物顔の人魚の見世物、猿芝居、麦湯、西瓜の屋台、夏のことやから腕まくりして歩く人も多い。力士もいるし、暑いので身だしなみの崩れた女もいて、まことににぎやか。
木屋町あたりはシルエットで表現されている。楽しいそぞろ歩き、わたしもしぃたい。

観桜・紅葉に鹿図屛風   「鳴く鹿の紅葉かきわけ大出現」では俳句にも和歌にもならないが、ファンキーな顔をした鹿たちがおるのでした。
一方、花見で盛り上がるご一同、なんと男しかいない。一人カムロみたいなのがいるが、あれだけか、女は。
京博に寄託されている「賀茂競馬図屏風」をホーフツとさせてくれますなw

東東洋 鳥居図 東北歴史博物館   上賀茂神社の片岡御子神社の鳥居が描かれている。川の流れがあり、杜鵑が飛ぶ。
杉と松がシルエットに近い。
なにかしら宗教的畏怖感と言うものを少しばかり感じる。

立原杏所 袋田瀑布図   これがあの滝か、と絵を見て思うわけです。なんしか知らないし所の滝ですからなあ。
気分は観光客。

伊達綱宗 波に燕図 仙台市博物館   横長の画面に波とその上を飛ぶツバメたちの姿がリズミカルに描かれている。
綱宗といえばわたしなどは「高尾殺し」の話を思い出すが、21歳で隠居させられた後にこうして芸術三昧の暮らしが来たことを思うと、謀略説に傾きもする。

司馬江漢・鏑木梅渓 草花群鳥虫図   二枚共に花は開き、水中生物も元気に泳ぎ、鳥類も虫類も活きることに一所懸命なのが伝わる。濃すぎはしないが鮮やかな配色の絵。

小泉斐 弁財天三星図   弁天さんが赤ん坊を抱っこしているのを寿星、福星、縁星の三人がそれぞれあやしている。
こうもり、かめを手にしているが、坊やはコウモリに惹かれたようである。

星は続く。
菊田伊洲 魁星図 仙台市博物館   怪異な魁星が両膝を豹の毛皮にかじらせている。かぶりつく二頭の豹の毛皮。

森一鳳 星図   薄い夜空に星座が上っている。中国の星座。

原鵬雲 気球図 徳島市立徳島城博物館  ぷあーと昇る気球。三人ほどがくつろいでいる。その下では黒船が停船中。実景だったそうだ。こういうのをみると昭和初期のツェッペリン号の来日を思い出す。

松本保居 唐船入津 菩薩上陸 府中市美術館   行列する一行。しかし妙に時間が止まっているように見える。シュールな光景である。

松本保居 祇園社神輿あらいねりもの 府中市美術館  これもまた妙な空気感がある。にぎやかな1シーンなのに人々のざわめきは遠い。

蹄斎北馬 竜口対客・上野下馬・桔梗下馬図   物凄いモブ、モブ、モブ・シーンー!!これは老中面会待ちの人々らしい。
こういうのを見ると一ノ関圭「鼻紙写楽」の中の一編を思い出す。老中田沼意次とそっくりな武士が老中の代わりに陳情を聴くという話。

池田孤邨 石清水八幡神・八幡太郎義家・新羅三郎義光図   それぞれのエピソードを見守る八幡神。

高嵩谷 呉織漢織図   ご近所池田に伝わる物語である。刺繍をする、機織りに精を出す、天へ向かって弓を向ける稽古をする。

英一蝶 かぐや姫図  成人した姫が竹からゆらーっと・・・

鳥居清長 行司を務める金太郎 墨田区・回向院   お相撲を取るのは小鬼たち。なかなか面白い顔の小鬼たちである。

へんな神様ばっかりが続く。
滝和亭 関羽読書図 白澤庵
小泉斐 竹林七賢図
酒井抱一ほか 七福神図
小泉斐 七福神図
原在照 菅神影向図 敦賀市立博物館
中には凶悪犯にしか見えない神様もいる。

原在中 飛竜図   鯉の身体に龍のアタマと羽が出現している。まずいな、これでどちらにもなれなかったらアウトですな。

歌川国芳 地獄図   にぎやかでいいが、地獄図は弟子筋の暁斎の方がいいな。

堀田正民 骸骨図   にんまりと笑う骸骨である。なにやらナマナマシイ。

河鍋暁斎・董玉 地獄図   笑ってしまった。美人に抱き着かれる閻魔さん。浄玻璃の鏡に映る顔がすごーい。

歌川国芳 百人一首之内 大納言経信   青んぶくれのオバケが出てきて詩を吟ずる。

歌川国芳 道外化もの百物がたり   この絵はここで前に出てきたなあ。大好きな一枚。おばけまみれ。

次は国貞のシリーズものでとても好きなもの。
「俺たちの国芳 わたしの国貞」にもあればよかったのになあ。
鮮やかでドラマチックでとても好きな絵。豊国揮毫奇術競
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後期に出る人もいるがまあいいや。

柳橋水車図屛風 徳島県指定文化財 徳島市立徳島城博物館   この絵は先般見たばかり。いい絵でした。
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狩野永岳 唐人物図屛風   高士が何かを見上げる図。家の前の松の幹によって。少年、心配中。

岡本秋暉 鹿渡河図 摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託)  鹿の渡河図は結構多いが、この鹿は賢そうな顔立ちでかっこいい。

青服を着た中国婦人図 浜松市美術館  ガラス絵である。浜松はガラス絵をたくさん持っているというから、今度の府中市のガラス絵展もそこのコレクションが多く来そうで楽しみ。
清朝の美人が優しく微笑む図。

司馬江漢 三囲雪景図   笠の二人が道に佇む。鳥居も雪がつもる。これではホームレスの清玄も三囲神社にはいられない。
桜姫も到底来てはくれまい。遠くの田んぼには鷺か何かがいる。シーンとしている。
皆川博子「花闇」のラストシーンを思い出すような情景だった。

墨江武禅 月下山水図 府中市美術館  この人は前に大阪歴博での展覧会で随分たくさん見た。「唐画もん 武禅に閬苑、若冲も」 この山のありようなどは将にファンタスティックだと思う。

狩野探幽 八尾狐図   手足の太い狐さんには8つのしっぽがある。9つだと妖狐だが8つだと縁起がいいらしい。
去年か家光の描いた絵がみつかったとか言うてたな。

巨野泉祐 月中之竜図 桑名市・照源寺   本当に月の中に影がうごめく・・・缶バッヂとかにしたらかっこええような。
月蝕の中に龍が潜む…

河鍋暁斎 蛙の大名行列図   さすが名うてのカエル好き。肉筆のカエルの大名行列。
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可愛いなあ。

与謝蕪村 虎図 摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託)  いやもぉほんまに可愛い。
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そういえば蕪村の雅号に「謝寅」というのもあったな。
謝る虎、というわけでもないけれど。

竜虎図押絵貼屛風   ちょっと朝鮮風な感じもある。豹のような子供を連れた虎。少し上にカササギもいる。鵲と虎のモチーフは朝鮮ぽいよね。吉祥文でも特に好まれる・そうでもないというのあるやろし。

最後はやっぱり蕭白の変な仙人図屏風。当然ながら変な仙人ばっかり。

全体としてところどころに「ファンタスティック!!」というのを感じた、それでいいと思う。
何も全部が全部でなくていいもの。
それにしても本当に面白い絵を集めて来やはるなあ。
充実の府中市美術館。

またGWに後期を見に行きます♪
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