美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想 後期の感想

府中市美術館の「ファンティスティック 江戸絵画の夢と空想」後期展の感想を挙げる。
前期のはこちら
挙げるにあたって美術館のサイトにゆくと、図録完売の案内。
おー、やっぱりな。買いましたが、前にもこういうことがあったもんねえ。
だからわたしは必ず前期に行った時に購入することにしている。

森一鳳 満月図  うっすらと金泥が月の上部に刷かれている。どことなく「月の繭」を思い出した。「もぉかるいっぽう」の月の絵。

柴田是真 三日月図  下弦の月。その裾に黒雲を置くところに不思議な予感を感じさせる。

山本琴谷 中秋観月図  小舟に乗る人々が月を見上げる。彼らは酔狂で舟を浮かべているのではなく、漁民である。そんな彼らを照らし出す月。ふと仕事の手を止めて見上げる人々。そばの陸には細竹の林がある。月に林に風。

円山応挙 残月牽牛花図   墨絵で仲良しの釈六如の漢詩がつく。残月の残るようなこんな早暁なのに、もう朝顔が目覚めた…という意味の漢詩と絵。

月僊 虹山水図  岩と岩の向こうに虹がかかっている。解説には「完全な丸い虹かも」という意味のことがあったが、そういえばわたしは虹は半円形か縦かとばかり思っていて、円周を描く可能性は考えたこともなかったな。

円山応挙 雲峰図  「うーん」と唸ってしまった。なんだか凄い絵である。雲だけ。飛行機に乗っていると見ることのできる光景。ふわぁぁと湧き起る雲の峰。それをどこで見たのだろうか。…京では無理やわな。
竹田城を見たのだろうか。応挙は豊岡方面のヒトだし…

高橋草坪 風雨山水図  点描と言うか筆先の点々で世界が構成されている。桐の中に現れる屋敷。なにやら惨劇かもしくは神秘的な事態が待っていそうである。

仙厓義梵 柳に牛図  これはまた面白い描法で、筆をシャッシャッシャッと動かして牛の後姿を描き、そこに柳の風を。抽象的でもあるが、とてもよく伝わる。
 
司馬江漢 月下柴門美人図 摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託) 風情のある女が佇んでいる。女にのみ絵具。そして浮世絵風。他はすべて違う。その違和感が女をより風情のある女に仕立て上げている。

亜欧堂田善 ヨシハラトテノケイ(吉原土堤の景) 須賀川市立博物館  この日本堤というのか、えらく長いというのがよくわかる。駕籠がゆく。吉原に入れる駕籠屋は確か三軒だけだと決まっていたな。

田中訥言 嵐山図 敦賀市立博物館  左手前に橋と桜を置き、あとの空間処理もいい。

伊年印 四季草花図屛風  金屏風に芥子、黍、朝顔、蒲公英、撫子、桔梗、花菖蒲、沢瀉などが放埓に咲き乱れる。その放胆さがとてもいい。最後は丸茄子で〆。
後日根津美術館でも伊年印の同じような屏風を見るが、それもとてもよかった。

高橋草坪 松渓聴泉図  前掲の霧の中の屋敷のヒトのフルカラーは南画だった。

谷文晁 夏山霽靄図 府中市美術館  青山あり。岩上に松がある。小さな家もある。
たまに文人画で青い山を見ていると、誤りを承知で「人間到る処青山あり」ということを考える。行き倒れて墓地=青山に埋められてとかなんとか。
なんかもうそういうのが入り混じった妄想が楽しい。

東東洋 松浜図屛風 東北歴史博物館  遠近感がいい。白帆が浮かぶ。遠くはシルエットになっている。白砂に松並木。ぽとんぽとんと松ぼっくりも落ちてゐる。曇天だが気持ちいいある日。

岡本秋暉 日々歓喜図 摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託)  これは不思議な絵だと思う。タイトルがまず江戸時代にこれか?!と思うものだし、描かれたのは海を渡る白い蝶の群れなのだ。
韃靼海峡を渡ったのは一匹の蝶だった。「てふてふが一匹韃靼海峡を渡っていった」と詩人が歌っている。
しかしここの蝶は群れて波を渡る。波はS字型にうねり、その上を蝶の群れはZ字型で編隊を組んでわたってゆく。日々歓喜図。不思議な魅力が絵にタイトルにもある。

円山応挙 群鳥図  燕などの小型の鳥たちが飛び立ってゆく。どこへ向かうのかは知らない。

黒田稲皐 親子牛図 摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託)  山中で水を飲む牛の親子。ミレーやコローぽい雰囲気。

天体関連の資料というのか、面白い展示が出てきた。
北斗七星図  七人の女が北斗七星としてそこに立つ。赤い上着に青い裳裾で顔立ちも一人ずつ違う。彼女らは雲の上にいて北斗七星は白描で表現される。
絵自体は稚拙な可愛らしさがある。

司馬江漢が描いた天球図とその解説が面白くてしょうがない。
司馬江漢 天球全図 京都大学附属図書館 /司馬江漢 天球図 京都大学附属図書館
二枚とも元ネタはどこか外国のものなのだろうが、中国ではなく西洋の星座の配置や名称となっている。
文中で「コペルニクスは正しい」とか「地動説は正しい」と言った意味のことがある。
中華主義の考えをディスッている。
白羊宮、金牛宮、巨蟹宮…磨羯宮、宝瓶宮などといった名称で黄道十二星座が記されていて、それぞれゆかりのイラストが着く。
まぁわたしなどはついつい黄金聖闘士のメンバーを思い出してしまうのですが。
ガニュメデスなどの絵もあるのが楽しい。
妙に面白すぎる天球図だった。

司馬江漢原図 色絵軽気球図皿 早稲田大学 會津八一記念博物館  わざわざ有田焼か。その方でも将に「ファンタスティック!」ですな。

河野栄寿 昇天竜図 徳島市立徳島城博物館  上に夢の話。絵の左端に赤い気が。
先般徳島城に行ったとき、ここの所蔵品なかなか面白いなと思ったが、本当に面白い絵が多くて、それが違う場所でこうして展示されるとよくわかる。

狩野芳崖 鷹雀図  波の上で一羽の猛禽たる鷹と群雀。キリキリ舞いしているようだ。波はあくまでも静か。人の見た夢を絵にしたからかシュール。
しかし狩野芳崖とは思わなかった。ちょっと子供の絵のようだった。

鳥文斎栄之 芥川図 墨田区・回向院  花魁が伊勢物語を読みながら寝ていて、その夢に『芥川』を見るわけです。しかし遊女が駆け落ちの絵を夢みるのも憐れではある。

ガラス絵が来ていた。今度ここでガラス絵の展覧会をするからその前哨戦。
洋館と中国人男女の図 浜松市美術館
異国風景図
なんだかシュールで面白い。ガラス絵は一発で極めないとダメなのだ。
小出楢重がガラス絵の技法についての本を刊行している。

南蛮人を思って描いた絵も色々。
船楽図、洋人図  いずれも遠い世界のよう。

司馬江漢 異国風景図  墨絵と言うより青インクで描かれたような風景。
司馬江漢 西洋風景図   こちらはがっしりした塔が描かれていた。中世欧州の塔。

狩野古信 朝鮮通信使舞踏図  前に見た三幅対。左右は少年。中は獅子舞が鞨鼓を打つ。少年らもそれぞれ演奏したり。

高嵩谷 源義経一の谷・須磨・明石図  一の谷を中に左右が須磨・明石。しかしどちらがどうかはわからない。須磨の方が都に近い…春と秋。

曽我蕭白 後醍醐帝笠置潜逃図  うわっ 後醍醐天皇が裸足ですやん。白い狩衣に白い顔色。桜花の下、居眠る家来たち。なんとなくゲッセマネのようだと思った。
ところで笠置山にはかつて案内猫の通称・かさやんという猫が何代かいた。
わたしはチョコレート色の毛並みのかさやんに案内してもらった。
後醍醐天皇御一行も神武天皇の金鵄同様、かさやんに案内してもらえたらよかったのに。

酒井鶯蒲 浦島図 敦賀市立博物館  松の幹に座って一休み。そこへ海の底からじわじわとカメが近づいてくる…けっこうホラーやな。

鳥居清長 金太郎 墨田区・回向院  可愛いわ。ちびっこ烏天狗のお相撲の行事をする。傍らには熊もいて勝負をまじめに見守っている。

金太郎と熊 墨田区・回向院  三匹のちゃんちゃんこを着たクマたちが金太郎に団子をもらっている。ちょっと猫ぽい仕草のクマたちである。

魚屋北渓 山姥金時図 摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託)  おっぱいをあげているのだが、その足の長く細く綺麗なこと。覗いている気になる構図。

長沢蘆雪 諸葛孔明図  ゆったりと机に向かっている。その机の下には侍童がいて眠りこけている。
この様子はダイ△ハウスの竹ノ内豊のCMみたい。
「嘘だ、俺は今嘘をついている。俺は本当は机の下とか狭いところが好きなんだ」

狩野惟信 菊慈童図  白衣で白菊を持つ。周囲には赤菊も黄菊も咲く。筆を持つ菊慈童。とても愛らしい。

鳥文斎栄之 孟宗図  左右は竹林図。中で「やったー!!筍みつけたー!感謝―っっ」の図。

田中抱二 竜頭観音図  モノクロ。白衣観音が座る。ちょっとばかり小栗旬に似ている。

東東洋 蓮池図 東北歴史博物館  抱一風な蓮がパカッと開き、妙に明るい。

逸見一純 十六羅漢図  虎と羅漢がいい。羅漢が虎の耳掃除をしていて、トラがもう気持ちよさそうでにゃあとした顔を見せている。可愛い喃。

河鍋暁斎 波乗り観音図屛風 府中市美術館寄託  タイトルだけだとサーフィンだけど、これは鯉に乗って花瓶を持つ美人さん。右手に赤衣美人と鬼が追いかけてゆく。

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伊藤若冲 亀図  墨の濃淡だけで甕を描いているなあ。

田公実 竜・虎・鷹・鯉図  四面並ぶ。スプラッシュ挙げる竜と鯉。手ぬぐい4本セットみたいでいいな。

歌川国芳 一休和尚と地獄太夫  髑髏飾り簪に畳のヘリも髑髏、あちこちスカル。ファンキーな地獄図。

閻魔王遊興図  ヘタウマと言うのか。三味線の大王、待機する女たちに見る鬼の獄卒。そばには楓を担ぐ女。けっこう俗っぽい大王様。

河鍋暁斎 狸砧図 敦賀市立博物館  美人がトントントントン…ヒノノニトンではない、とんとんと砧を打つが、あらあら尻尾が。そして草陰にはもう一匹キヌタならぬタヌキが隠れている。
全然関係ないが阿波の金長タヌキの話ではキヌタ姫と言う狸も出てくる。

歌川国芳 道外化もの夕涼  これは好きな絵でここでの国芳展の時にも見ている。可愛いなあ。化け狗に至るまで。そしてこの化け物たちが明治を越え大正、やがて昭和になると宮沢賢治に引っ張り出されて「ペンネンネンネン・ネネム」の化け物世界の住人になるのだ。

高井鴻山 妖怪図  なんとなく家全体がオバケぽいな…

柳橋水車図屛風  金の波。宇治橋から仏の世界へ向かうようだ。酸化した月。

土佐光貞 吉野・竜田図 敦賀市立博物館  ああ、枝振りが面白い。

東東洋 富士・足柄山・武蔵野図 仙台市博物館  足柄山で花。武蔵野で鹿ップル。

広東港内の景 浜松市美術館  アンリ・ルソーぽい風景。想像が現実を歪めそうだ。

東東洋 煙霞山水図  黄砂かPM2.5かというようなのが飛んできてそうである。

曽我蕭白 月夜山水図  流れの音しかない、非常に静寂な空間。

伊藤若冲 乗興舟  高浜から鳥飼までが出ていた。

長沢蘆雪 朧月図  皆川淇園の詩がある。青い夜。月がぽっかりと浮かぶ。

池大雅 秋景山水図  こちらは柳沢淇園の詩がある。

東東洋 酒呑童子図屛風 東北歴史博物館  非常に抑制のきいた屏風絵で←という動きをやめて→という形で物語が進む。一行が山中に来たところ、到着、純朴そうな鬼たちによるおもてなし。丸々と肥えたウサギや雉を調理しようとしている。秋草の庭の表現がいい。戦の支度をしていることも知らずに、親切な鬼が夜にお茶を運んでくる。
戦闘シーンはなし、首が飛ぶのもナシ。鬼たちの首が寿司桶のようなのに入れられて都へ運ばれる。鬼たちの顔はいずれも静謐。
正直、鬼たちが気の毒な図であるし、ここの解説がまた鬼は無実な方に立っているのも印象的だった。

円山応挙 地獄変相図 杉並区・眞盛寺  三井家の菩提寺だという。その縁であるのかもしれない。真面目に地獄を描いている。見ていないものをも描くしかない応挙。

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酒井抱一 地獄図  こちらは淡い色とは言えカラフル。

釜から出る駕籠図  江戸時代、幽霊は逆さに出てくるというのが定説だった。応挙以降ではまた話は変わるが。それで地獄の釜から案内人らしき女と駕籠かきらが出てくるが、その上方では逆さの人々がいる。わざと彼岸と此岸の人々とを逆の位置で描いたのかもしれない。

小泉斐 竜に馬師皇図屛風 栃木県指定文化財 大田原市・明王寺  …なんですか、この人。馬の医者で天才的な人だというけれど、なんですか、この人。
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長沢蘆雪 蓬萊山図  松の並木の列があるリズムを湛えている。
左端の橋を往く仙人たち。鶴の群れ、よく見ると乗る人もいる。立って乗っている。そして亀はぞろぞろ…
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非常にファンタスティックな選択で楽しい展覧会だった。
毎年ご苦労様です。とても楽しめました。
終了日に挙げるしかなかったが、楽しかった。
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