美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

双六でたどる戦中・戦後

既に終了したが、とても好みの展覧会を昭和館で見た。
ここでの企画展は大概自分の好みに合うので、やっぱり昭和の<楽しみ>が身についているなと思う。
尤も、ええなと思うのは全て戦前のものばかりなのだが。

「双六でたどる戦中・戦後」展。
わたしは前期に行けず、後期の「憧れ・流行り物を中心に」展を見た。
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これまで双六展といえば、江戸博の「大すごろく展」、それから弥生美術館に姫路の兵庫県立歴史博物館の入江コレクションなどくらいでしか見ていない。
いずれも明治大正昭和がメイン。
江戸時代の双六は浮世絵展でたまにチラチラ。楽しいからもっと見たいのだが、チラチラしか見せてもらえない。無念。
今回はしかしその無念さを飛ばすほどの濃い内容で、たいへんよかった。

双六はなにも子供向けというわけではなく、大人向けのものもあり、人生双六、名所双六、歌舞伎双六、大宇宙双六…などと色んな種類のものがあり、本当に面白い。
大抵は新聞、雑誌の付録で正月号の目玉になっている。

展示も蛇行するように動線が敷かれていた。飛びや一休みはないがこれは双六の歩み方と同じなのだった。
ゴールは一つでも向かうスピードは人それぞれ。
楽しみながら見歩いた。

世界旅行双六がいい。
三越双六世界一周飛行競争 1929  三越から世界へ向かう。ベルリン、パリと言った地名の他に当時標準的に使用されていた「モスコー」もある。
モスコーはモスクワの英語読みだが、戦前までは「モスコー」と呼びならわされていた。
そしてモスコーと口にしたり、その地名を見る度に、不思議な陶酔が生まれる。

共栄圏仲良シ双六 1943  共栄圏、それから五族協和、それらを体現しようとしているようにも思えた。
満州、内蒙古、上海、香港、海南島、フィリピン、仏印、タイ、マレー、昭南島(シンガポール)、インドの地を進む。

これら戦前・戦中の二点をみていると大日本帝国がどこまで広がってるかを知ることにもなる。
旅行双六は国内線もある。

東京新名所双六 1928 報知新聞の元旦付録。これは都内の名所を絵ではなく写真で紹介。

中部日本教育旅行双六 1930 杉本健吉  範囲が広い。大阪もあれば諏訪もある。愛知だけではない。

敗戦後の占領下ではタイトルも英語の双六が出る。TOKYOからTAKARADUKAまである。

良い子の旅双六 1950 「ぎんのすず」付録 ここでは甲子園の野球、そして原爆から五年後の広島を「立ち上がっている」と表記している。勇気を持たせようとする表現である。

温泉双六 1951 「温泉」付録 …いろんな雑誌が乱立の時期だからなあ。案は編集局、絵はユーモアマンガの宮尾しげを。
色んな温泉を紹介しているのだが、一つ物凄いのがあった。それは温泉ではない地域なのだが、戦時中に当局が大弾圧を加えた新興宗教の本場についての表記が「邪教の本場の土地」そしてそこにコマが進めば出た数だけ「逆戻り」。
1951年でまだこんなことが通っていたのだ…

東京観光バス双六 1952 バス会社と自動車メーカー協賛の双六。こんなのも面白い。

ディズニースターの日本めぐり大すごろく 1955~ 大丸  さすがに天下の大丸だけにきちんとディズニーの許可を取っている。決してパチもんではない。著作権侵害でもない。

乗り物をメインにした双六もいい。
幼いテツ向けの双六が並んでいた。
乗り物競争のパターンが多い。
が、未来を夢みたSF仕立ての双六もある。

ニコニコ新初夢双六 1932  「将来実用化されたら」として様々な製品が並ぶが、中にはソーラーカーがあった。
実現しているが半世紀後の話なのだ。

戦後すぐには大宇宙探検双六、科学力時代双六などがあり、ガラスハウスでの野菜栽培などが描かれている。

流行物は時代相を写しているので資料として見るのも面白い。
戦時中は翼賛、皇軍慰問川柳マンガなど。米の配給とか砂糖の切符とかが見える。
そらこんなんで戦争したかて物資ないねんからあかんわな、と後世の人は口にしてしまう内容である。

ノンキナトーサン、サザエさん、赤胴鈴之助、ピーターパン、アラーの使者…
赤胴鈴之助の双六はマンガの原作に沿っていて、ちゃんと神田お玉が池の千葉周作門下に入門するところ、母上との再会、必殺技の真空斬りなどが描かれている。絵は作者の武内つなよし。

テレビスリラー双六 1955~  これは当時のTVヒーローものを集めたもので、わたしはこの時代のヒーローもの、お子様時代劇に憧れがあるので、とても楽しかった。
少年ジェット、豹(ジャガー)の眼、月光仮面、ハリマオ・・・

他にも人気番組「二十の扉」をはじめエノケン、ロッパ、ひばり、そして映画スター、歌舞伎双六などなど。

動物園の双六は主に小学館の学年雑誌の付録。
1930年のは武井武雄風、1938年のは立派な動物園、1951年はリアリズム…
それぞれの特性があるのが面白い。作家性と言うより時代性の違いである。

大人向けの双六は講談社「キング」の付録と言うこともある。
万人熱狂キング双六 1927 岡本帰一  桃太郎+飛行機… これをみると国産長編アニメの嚆矢「桃太郎 海の神兵」はやっぱり生まれるべくして生まれたのかなあ。

戦時中には「愛国軍歌双六」も。軍歌と言えば♪月月火水木金金とか♪同期の桜くらいしか知らんなあ。
ダンチョネ節やモンテンルパの夜は更けてはまた違うものな。
童謡双六もあった。歌詞カードなくても当時の子供らはどの歌も大体歌えたそうだ。

親指姫双六 1950 「ひまわり」 松本かつぢ  可愛いなあ。どのコマも可愛い。

小四そん四くうすごろく 1953 「小学四年生」 山根一二三  孫悟空ならぬそんよんくうか。こういうセンスすきなの、わたしw
作者の山根一二三は何かで見たような気もするがわすからない。山根赤鬼青鬼とは無縁。

おとぎの国双六 1954 「家の光」 人魚、龍宮、眠りの森、お菓子の家、ジャックと豆の木、ガラスの山…何気に楽しい。

スポーツものもある。
新案スポーツ双六 博文館 「朝日」  おお、美少年たちがいっぱい!!ときめくなあ♪

少女ベビーゴルフ双六 「少女の友」  林唯一・加藤まさを・中村修二・深谷美保子 合作もなかなかいいもので三人の美少女が楽しそうにゴルフをしている。

コドモオリムピック双六 1937  …この翌年にオリンピックを返上したそうな。

冒険双六はけっこう人気だが、ここでは三点ばかり。
北極探検大双六 1932 「少年倶楽部」
これは以前にも野間あたりで見ている。力が入るわーーー
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他にも宝島双六、幼女しりとり双六(なにやらこれはまた)などなど。

そしてお正月らしいおもちゃなどもあり、とても楽しい展覧会だった。
またいつかこんな展覧会が見たいものだと思っている。
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