美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

涼を呼ぶ美術 ―滝・鯉・龍―

大和文華館に涼を求めに行った。
何しろ出かけた日は32度だった。空梅雨かと思いながらじわじわと暑さにやられ、門にたどり着いた時にはベロの一枚や二枚くらい口外に出ていそうだった。
四季折々の植物を楽しませてくれる文華苑も花はなく緑一色、なのにツモれないみたいな状況で、日傘差しながらふらふら歩き、ようよう建物の中に入った。
ああしんど。

それで「涼を呼ぶ美術」を見ようとおもうわけです。
副題が「滝・鯉・龍」とあるからこれは吉祥やなと。登竜門の故事を思い出し・・・もせず、早速展示室に入った。
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妙見菩薩図像 鎌倉 個人蔵の横長の墨書き。真ん中に妙見菩薩(北極星=北辰)がいて、四本腕で上2本の掌には日月、下2本で筆と巻物を持っている。これは過去帳らしい。
おお、ある意味デスノート。その妙見さんが龍の上に立っている図。傍らにはゆるふんの鬼、小さ目の眷属がいて、指示待ち状態。
その妙見さんを中心に向かって右隣りには円内に囲まれて菩薩、左は頭に数匹の蛇をつけた、これまた巻物手にするおやじ。ええと、この神仏は誰に当たるのだったか。
「暗黒神話」を思い出そうとしているわたし・・・
そうそう、妙見さんといえば、わたしには能勢の妙見山が親しい。滝もあるし、お江戸の妙見講では水垢離もしたようだし、やはり水と親しい存在なのだと庶民レベルで実感しているのだった。

白磁蟠龍博山炉 隋―唐 久しぶりに見ると、2匹の龍が巻いていたのか。胴体に手を当てて身を起こそうとしているらしい。
白磁というよりセメントをかぶせてそのまま素焼きにしたような感じである。

請雨経曼荼羅 室町 大阪市美術館蔵 2シーンが出ている。どちらも波間に佛や竜王などが。永禄十年(1567)には成立していたようだ。
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けっこう可愛い感じもある。波間に沈むる、ではなく波間に浮かび上がるという様子。
干乾びては困るので雨乞い。それは民間レベルの祈祷ではなく国家レベルのもの。拝んだのに雨が降らないのは為政者に穢れがあるから・・・といったことをちょっと思い出した。

川の流れが大事な絵巻が2点出ていた。
長谷寺縁起絵巻 江戸後期  つい先般もよそでいいのを見た。人気の縁起絵巻。ダイナミックだしなあ。こちらは文字も比較的読みやすい。
継体天皇11年に洪水が起きて、近江の霊木が流されてくるという事態が出来。絵は素朴でむしろ室町風かな。木に蓮が咲いている。寄生木ではなく霊木の証拠。
その流される霊木の行方を見守る神仏の眷属たち。風神雷神も固唾をのむ。
やがて木が止まったのは大津。そこでなんと70年も停滞。何も知らん大津の里人は「こらええわ」で伐ろうとしてはタタリを受けてぐんにゃり。
「霊木です、仏像彫刻用です」とは記されていないからなあ。
見守るだけの神仏も言うてやればいいのに沈黙。
注意喚起の義務を怠った・・・とは言えない事情もあるか。
でもようやくみんな納得して木を曳く。エイコラエイ。
出ているのはここまで。

道成寺縁起絵巻 江戸後期 こちらは以前から見ているここのとは別物ではないかな。
絵が違う。
必死のパッチで逃げる安珍。追いかける清姫。まだ物語の最中なのに既に「清姫草履塚」が建っている不思議。蛇身というより龍ですな、そちらに変身して川を渡る。
「八幡山」とは一体・・・近江、宇都宮にその名があるほか、京王沿線の駅、明大ラグビー部のグラウンドがある地。
さて道成寺に駆け込む安珍。話を聞く僧侶の内、一人は安珍レベルの白面だが、あとはどうでもいい感じで、そのみんなで必死で重たい鐘を動かして中へ隠す。
ここまで。

ガラスケースの中に可愛い小さなやきものが居並ぶ。青木木米の赤絵龍文盃、明代のそれもあれば五彩双龍文小壺、合子、清の紫釉雨龍盃などなど。
最後のは紫釉がガラスのように見え、その下の支え部分が絡み合う木の根のようだった。
こうした愛らしいものを集めたのを見るのは楽しい。

今回はやっぱり暑いので水墨画が気持ちいい。
とはいえ季節はずれの雪や白梅図を見ても今のキモチとしてはあんまり清々しくない。

雪村の花鳥図屏風は初見。白梅の下の木や岩に叭叭鳥、川辺に鴛鴦、鴨、鶺鴒も飛んでくる右隻。左は体をくねらせて降りてくる鷺や、何かを見ているその仲間。柳には燕、飛んでゆくのも燕、小さな白い腹を見せるのも愛らしい。蓮には蝶々。

竜ではやはり涼しくならなかったが、滝や墨絵の花鳥画では気持ちも凪いで来るようだ。
伝・狩野元信の奔湍図、瀑布図あたりで耳の後ろ位が涼しくなってくる。
他に狩野派の叭叭鳥も可愛い。

そして応挙登場。
これが本当にいっぺんに涼しくなる絵。

応挙 双鯉図 泉屋博古館 おみやげに。チラシより本物はもっと色が薄く涼しい。
これをみると鏡花「高野聖」で若い僧が山を下りてきて、滝の前で再会した親仁の持つ鯉を思い出す。
「鱗は金色なる、溌剌として尾の動きそうな、鮮しい、その丈三尺ばかりなのを、顋に藁を通して、ぶらりと提げていた」
これですな。

渡邊南岳鯉図 黒川古文化研究所 モノクロだが画像がある。鱗も生き生きと三匹とも元気そうで、しかもとても涼やか。松の幹も鱗。

ああ、やっと涼しくなった。さすが応挙先生とその弟子。
この絵は黒川家で天神祭のときに出された屏風。古い大阪の商家にはそうした風習もあったのだ。
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紅型衣裳が四点並ぶ。ここには六点あるそうで、そのうちの四着。縹色地、黄地、などの上に明るい花柄や小鳥などの意匠。暑い地でも元気に暮らすためにはこれくらい明るい色調のものを見にまとわないと。

鎌倉彫、堆黒、漆絵といった手の込んだものがいくつも並ぶ。
カニのモチーフ、見返る小鳥図、一つ目親仁にしか見えない達磨大師の葦葉乗り、波乗り兎・・・民芸調のナマズ顔の魚の盆もある。

薩摩切子もある。細かい切子で見るからに涼しげな鉢、藍色の綺麗な色、赤のもいい。
オランダの萌黄色ガラスも可愛い。金彩で花卉文が施され、緑と金の絡み合う様子がいい。
他にも飴色ガラスに蝶々、東インド会社の帆船が刻まれたガラスなどなど。

他に応挙の絵が三点。
席画会で描かれたか、即興的な線のタラ図、この軸の上下には刺繍で白桔梗。
八景図を換骨奪胎した四季山水図屏風、日本的な情緒が漂い、特に白砂青松の様子が素晴らしい。蕪村ではないがのたりのたりの海とその向こうの白帆・・・いいなあ。
雪に立つ鴨カプもいい。

南岳 殿様蛙行列図屏風 大名行列を蛙で戯画化。いつみても面白い。赤ススキの隙間をゆく行列。

キモチよくなって館外へ出るとやはり暑い。庭園を下りてゆくが、アジサイもササユリもなかった。
珍しく本当に緑一色。

次回も楽しみに出かけよう。7/3まで。
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