美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

川端康成コレクション 伝統とモダニズム

東京ステーションギャラリーで開催中の「川端康成コレクション 伝統とモダニズム」展を見た。
川端と日本画家との交流をテーマにした展覧会も少なくない。
彼のコレクションもこれまで数度見ている。
素晴らしい内容である。
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わたしのブログで主だったところと言えばこの二つの展覧会の感想がある。
いずれも当時の感想へリンク付。
「川端康成と東山魁夷」京都文化博物館 

「大和し美し 川端康成と安田靭彦」千葉市美術館

それで魁夷、靫彦らの展覧会を追想しつつ、川端のあの眼が観たもの・愉しんだものをわたしも後追いしようと思う。

1.川端コレクション モダニズムへの憧憬
村上肥出夫という画家は今回初めて知った。1933年生まれの人で放浪の中で絵を描き、一時期とても人気があったとか。厚塗りで、とにかく厚塗りで、わたしらは形のわからない絵が二点。川端のなくなる少し前の絵がある。画家の最新作をリアルタイムで購入していたのだ。
キャナル・グランデと カモメの二点は本当に厚塗りだった。
この画家はお気の毒に火事が元で精神に異常をきたしてしまったそうだ。
それでもう今では描けないそうだが、もし、ということをいくつも考えてしまう。

ベル・串田 センチメンタル・ジャニー ―神と共に 1967 こちらもリアルタイムの現代アートである。三彩風な色合い。ノートルダムだろうか。

草間彌生もある。こちらは1950年代のだが、川端は同時代の人の作品を観て、買う人なのだ。

昔の友人の古賀春江の絵がいくつも並ぶ。
シュールなものから童画風なものまでいろいろ。
名を挙げるとクレー風なものから初山滋風なものまで。
茨木の川端記念室で見て以来20年ぶりの「孔雀」もあった。
構図は当時必死でメモったので忘れてはいないが、配色が記憶のそれとは全く違った。
緑色の羽根、低木の薔薇など。
古賀春江のいい絵をかなり持っているのだ。

ルノワール、ピカソの絵もある。前者はスケッチ、後者は新古典主義の頃の小品。
どちらもやさしげな女性図である。

ロダンの彫刻が二つ。女の手とユゴー像である。
前者はチラシのそれ。
「ただ見てゐる」
しかし川端の視る眼はやはり恐ろしく、更には彼の作中での「手」の存在価値を思うと、妄想はいくらでも膨らむ。
谷崎は足フェチだが、川端は手への執着が深いように思う。
そして谷崎の小説は笑えるが、川端のそれは笑うところが一つもない。

魁夷のいい絵を見て歩く。キモチが和む。
薬物中毒の治癒への見舞品にと描かれた絵もある。それが後に「古都」に使われたそうだ。
そういえば「古都」でも薬物中毒になった男が出てきた。ただ、その男が川端と同一化というとそうでもなさそうである。

梅原の桃、中澤弘光の舞妓、劉生の南画風な麗子におまつらしき絵もある。
猪熊のクレパスによるモダンな女の像、岩崎勝平の式根島の島娘などなど。
熊谷守一の蟻がいいアクセントになった。

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2.川端文学、文壇デビュー
パネル展示されていた「掌の小説」のいくつかを読む。
正直きもちよくない。

実はわたしは子供の頃、親から「川端、谷崎、乱歩、三島は読むな」と戒められた。
しかしその頃すでに谷崎と乱歩は読んでいたので手遅れ。
三島は文章が自分に合わずパス、川端はあの眼が怖くてとうとう高校まで本当に読まずに来た。
高校の教科書に「掌の小説」の一篇が入っていて、それでやっと読んだのだ。
あと、川端記念室の展覧会で小磯良平の「古都」の挿絵を見に行き、そこで「古都」を読んだくらい。
今思えば「浅草紅団」「眠れる美女」などは非常にわたし好みなのだが、いまだに読まないでいる。

ここではフラレた相手の書簡の紹介もある。…やっぱりいやですわ。
そういえば後の川端の愛人が川端のために歯を全部抜いた、という話を思い出した。とても怖い。
極論すれば、えろとブキミの大家ですな。
同じく官能を追及してても谷崎には滑稽さがある分救われる。

面白かったのは浅草のチラシやバンフなど。
「エロの夕べ」おお、浅草らしくていいな。カジノフォーリー、初音館のビラ、美少女・諏訪子根自子の紹介記事、花やしきの案内MAP、熊娘の見世物…
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これは古い昔の絵ハガキだったそうだ。ネットで拾った。

3.川端コレクション 伝統美への憧憬

可愛らしい鳥の埴輪、にっと笑う縄文娘…なとなど。
またアフガニスタンでみつけた白塗りのきれいなガンダーラ風の仏頭。
朝鮮の民画に明の絵師の絵、それから黒田辰秋の漆芸品。
わたしは特に螺鈿ものにときめいた。

池大雅と蕪村の競演「十便図」がある。
期間によりページ替え。
京文博で見たときの記憶が蘇る。
可愛くていいなあ、二人とも。

4.川端文学「雪国」以降

明恵上人の「夢記」の断片、ノーベル賞のグッズ色々。
魯山人のやきもの、愛用の織部で鷺のいる硯などなど。
むしろ素朴な美しさがある。

川端の著作の装幀、口絵などの作品が集まっている。
古径「千羽鶴」装幀原画、杉山寧はその挿絵、山本丘人「山の音」装幀、岡鹿之助「舞姫」、そして勅使河原霞「女であること」。
靫彦による全集装幀もすばらしい。
本当に贅沢だ。

巡回があるのかどうかは知らないが、今回もこうしてみることが出来てよかった。
6/19まで。




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