美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

上島鳳山と近代大阪の画家たち

泉屋博古館で「上島鳳山と近代大阪の画家たち」展をみた。前期後期共によいものが出ていて、大変楽しく見て回れた。
イメージ (56)

以前から時折見かけることはあってもなかなか全貌を見る機会はなかった。
今回はその意味ではとてもいい展覧会だと思う。

そもそも画壇というものがない。
強いて「大阪画壇」というても東京や京都のような組織だったものではなく、「君は君、我は我、されど仲良き」でやっている。
絵を買うのはパトロンが多く、市民が喜んで買うための絵がメイン。
それが結局このようにいい画家であっても作品を見る機会が失われる原因になっているのだが。

近年になり菅楯彦、北野恒富、木谷千種、島成園らの回顧展が行われ、少しずつ知られるようになっているが、今回は上島鳳山の作品とほかの画家の作品も共に見ることが出来てよかった。

最初に菅楯彦の六歌仙の扇面絵が出てきた。
みんなすごくにこにこ。楽しそう。
大体菅楯彦の人物はご機嫌なのが多いが、ほんまにこれは六人揃ってにこにこ。

そして次にこの住友家の当主・春翠から信頼を受けていた表具師であり色々とプロデューサー的な役目を担っていた井口邨セン宛の書簡集があった。
それは上島からのいろんな便りで構成されていた。
住友家に依頼された「十二月美人図」の制作状況や借金についての書簡をまとめたもの。
ここから上島の人となりもみてとれる。

さていよいよ上島鳳山の絵。
百福図 髪を唐輪にした遊女の立ち姿。群青色の打掛にお多福さんが百人ずらり。着ているのは瓜実顔の遊女。
唐輪の遊女は近世風俗画以外では暁斎のそれが思い浮かぶが、こちらも艶やかな姐さん。
二十歳でこんな女を描いているわけです。

緑陰美人遊興之図 ブランコで遊ぶ唐美人たち。妖艶極まりない目つき。袖が翻る程度のスピードを出してブランコを揺らす手・・・濃厚な美人。どこか明治初期の石版画に手彩色を施したような顔つきの、妙に印象深い女。

イメージ (57)

十二月美人図 前後期6幅ずつ展示。
一月 子日  平安。檜扇に松葉
二月 羅浮仙  座る。
三月 観桜   髪飾りの綺麗なのをつけた女と
四月 郭公   声を聴く。
五月 青楓  島田娘がかたつむりをみる。薬玉振袖。
六月 青簾  黒い団扇を持ち、胸をくつろげ風を。鼈甲の櫛がいい。
イメージ (63)

七月 七夕  坊やがまといついて七夕飾りを触りたがる。
八月 姮娥  唐美人。月へ行った女。
九月 菊花  桃割れ娘が菊花の間に立つ。
十月 紅葉  紅葉狩りを楽しむ。
十一月 茶花   切ろうとしゃがむ女。
十二月 雪路  きりりとした目元の鋭い娘が傘を窄めている。 
イメージ (64)

それぞれの月次美人画が楽しい。

西王母 笠岡でのチラシ。イメージ (58)
ねっとりした美人。雲鬢花顔とはこういうことをいうのだ。

笠岡での展覧会とは構成は異なるようで、出ている・いない絵がいくつか。

源琦 楊貴妃  応挙門下の唐美人の名手だけあって、優美。海棠の下に屏風を立て、そこでくつろぐ楊貴妃。脇息は赤い台。
140年後に京都の松園さんが楊貴妃を描く下地、というか土壌というものもここにはある。

円山応震 西王母  応挙の孫もいい絵が多い。この西王母は桃を持つ美人。桃で唐美人と言えば西王母と大体は決まっている。

西山完瑛 和美人図  すっくと立つ女。明治の女らしい、今から思えば寸足らずだが、きちんと身ごなしもいい女。
薄い桃色がまぶたからうなじに及ぶ。

イメージ (59)

上島鳳山 白拍子之図  袖を翻しながら舞うところ。美人。

上島鳳山 官女図  欄干に凭れて二人の官女が池の杜若をみる。二人の親しさがわかるような構図。

姫島竹外 王母八千歳図  桃の枝を引いている。足元には桃の実が置かれている。まだ採ろうと言うのか。どこか小悪魔風なところもある。

上島鳳山 虎渓三笑之図  三人そろってにたぁと笑っているところ。わはは、ではない。

上島鳳山 雲中寿老図  左下へ向かって飛んでいるところ。鹿・悪爺・ボーイのセット。
寿老人は身長90cmらしい。鹿の目が可愛い。角が霊芝風。

上島鳳山 菊慈童  ハッとなるような美少年ではないが、ざんばら髪の可愛い少年。年を取ることを停止しているが、爪は伸び放題。足も手もすごい爪長である。
この二枚、このチラシのように並んで展示されているので、菊慈童が三人組を「・・・元気やな」と見ている図にも思える。

イメージ (65)

上島鳳山 白猿  一曲屏風の左上にだけ絵があり、木に登る猿がいる。これで完成なのか未完成なのをこの形にしたのかはわからない。

上島鳳山 白衣大士像  遠目には男性、近づくと女性の顔をした白衣観音。モデルは女性だろうという。体は男性的。岩に座す。南宗画風な雰囲気がある。 

上島鳳山 楊陰洗馬図  眉間星の黒馬。柳の木陰で笊を手にしているのが馬の飼い主か。
なごやかな午後。

木村貫山 四季花  秋海棠、黄雛菊、ピンクの河原撫子、アザミ、ぐるぐる緑の葉の鉄線、紫の女郎花などなど。明るい花絵巻。

森関山 秋草  白と青の朝顔が咲き、ススキが伸びる。朝顔は命が長い。

深田直城 春秋花鳥之図  春・・・山桜の下に岩と渓流があり、キジがいる。上には珍しいムギマキという鳥がいる。白梅も愛らしい。
秋・・・月に薄。ウズラが6羽ばかり集まる。

あっさりとした花鳥画より、色彩の濃い花鳥画の方が多めにあった。
長崎の影響を受けたような花鳥画で、しかし諄くはない。

山田秋坪 柘榴花白鸚鵡図  濃いわ―赤い花に白い鳥に青い岩。はっきりした色彩。
蝶々も小鳥もいるしタンポポも咲くが、まず中心に目が引き寄せられる。

山田秋坪 夏草雀図  鬼百合と薮甘草が咲く。梔子も見える。雀が気持ちよく飛ぶ。

庭山耕園 野薔薇鴫図  白花がたくさん生える。こちらを向くシギ。思えばシギは上村淳之さんの専売のようになっているが、時にはこうしてシギを見る。

武部白鳳 雨樹栖鷲図  西山完瑛の弟子で、武部本一郎の父。身づくろい中の鷲。雨に濡れては翼も重くなります。
ここの師弟や父子については以前にも書いてます。こちら
なお、この絵について詳しい解説の載るサイトはこちら

兄弟の絵がある。大阪・北堀江で生まれた彼らの行きやすそうな観光地である。
いずれも時間帯は夜に設定されているようだ。
武部白鳳 三都名所雪月花真景(住吉) 太鼓橋もしぃんとしている。
武部秋畦 三都名所雪月花真景(奈良) 春日大社を選ぶ。
武部秋畦 三都名所雪月花真景(嵐山) 山も静かに。

坂田耕雪 元禄美人  唐輪ではないが、こちらの髪型も凝っている。打掛は水車に七つ道具の文様。

金森観陽 夕暮図  墨絵で蝙蝠と山家を描く。

岡本大更 読書美人  行燈のそばで寝そべりながら読書する女。寝そべるというよりうずくまりながら、というべきか。顔だちは松園さん風。煉瓦色に孔雀柄の着物。髷は大きく輪を描く。

北野恒富 思出  大きな青桐の葉の下に白い顔の女。もう一方の大阪の美人。
白い着物には枠に鳥の絵がいくつか。豊かな黒髪。ふわふわしている。
なにかを思い出すその目、口元、みんなとても甘い。
・・・女が主体で書いたが、実はそうではなく、誰かの記憶の中の女の姿なのかもしれないな。

星野更園 童女  大更の義妹。おかっぱ頭の愛らしい童女がちんまり座る。黒地に麻の葉柄か、存外おとなびた浴衣を着ている。
手元には本が三冊ばかり。

前掲の井口は刀根山か桜井谷のあたりに「三笑庵」という別業を持っていた。
大昔は豊島(てしま)郡の桜井郷と呼ばれてもいた土地。
わたしは同じく豊島(てしま)の人なので、かつての地名や現況との違いを想った。

庭山耕園 三笑庵  広々とした土地。茶会中。池もあり、くつろいでいる人々。掛け茶屋風な拵え。それらをロングで捉える。
ここに来た人々が楽しんでその場で絵を描いたものが画帖として残されていた。

伊藤渓水 四季花鳥画帖  この人の展覧会を随分前に池田市立民俗歴史資料館で見た。
懐かしい。華やかな花鳥画である。鶯に松、文鳥に白梅、瑠璃鳥に桜、菖蒲に蛍、朝顔に蝶、他にも萩、睡蓮、薔薇、オウムなどが色々。

森琴石 花卉小禽  翡翠と花
これらのように花鳥画のよいのがたくさんあった。
春翠も参加した豆本もある。

最後に西山の浪華名所画帖がある。
天満の天神さん、谷町の武家屋敷、桜宮と大川、葭屋橋の店屋、北野の鬼子母神、戎橋の人通り・・・

面白い、珍しい、印象深い絵が集まっていて、とてもよかった。
この先もこのような展覧会があちらこちらで開催されることを心の底から願っている。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア