美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

「童画の国から ―物語・子ども・夢」展を見る

目黒区美術館で「童画の国から ―物語・子ども・夢」展を見た。
ほぼ武井武雄と初山滋の二人展という様相を呈しているが、非常に豊かな世界に入り込んだように思う。

もともとわたしは武井武雄が好きで、「大きな湖のほとりの」岡谷市・イルフ童画館にも喜んで出かけてもいる。
初山滋もちひろ美術館で回顧展があった時、ムリを押して出かけた。
とても好きな二人の作家の作品に囲まれてたいへん楽しかった。

ただ、先に言わせてもらえば、会場の構成とリストの順や配置がよくわからず、その点では手間取った。
これは目黒区美術館の特徴だろうし、作品自体は展示状況・配列など関係なしにいいので、リストは参考程度にして見歩くことをおすすめする。

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戦後の作品からみる。
・物語
まず初山から。

「雪の女王」を思わせる二枚の水彩画がある。原題は不明なので絵から物語を読み取ると、その物語が思い浮かんだ。黒に白のシルエットで情景が描かれる。
馬に乗りウサギ、リス、フクロウら小動物と話す少年または少女の姿。
これは少年カイを求めるゲルダにみえた。

アンデルセンは童画家たちの絵心を強く刺激した。
「にんぎょひめ」の原画が並ぶ。初山作品の中でも特に人気の高い作品である。
水彩で繊細に描かれた、儚い美しさが際立つ絵。文は与田準一。
竪琴を弾く人魚姫、姉妹たちから海へ帰っておいでと誘われて、そこに立ち尽くす少女。

絵を見ていて、初めて気づいたことがある。王子様は最初から最後まで全く人魚姫に対して「親切なヒト」でしかないのである。王子様は彼女の片思いを全く気付くことなく、ただただ親切に紳士的に振舞い、姫に優しく微笑み、馬に乗せてあげたりして気を遣う。
絵からは王子様が親切な善人だということが伝わるばかりなのだ。
人魚姫の想いは永遠に届かない。
水仙月の四日 宮沢賢治の童話を描いている。二頭のゾウと、踊る白い娘と、歩く赤の娘と、陽の下の少年と。
物語がイーハートーブからまた別な国へ移ったようである。

武井武雄をみる。
二種の「おやゆびひめ」がある。1954年の「よいこのくに」、1955年の「幼稚園」に掲載された作品。
おなじアンデルセン童話でも武井・初山の個性の違いが際立っているので、全く違う世界のようだ。
武井がベルベットだとすれば初山はオーガンジーのようなイメージがある。
どちらもとても心地よく魅力的。

「ながぐつをはいたねこ」のその猫の面構えを見ると、いたずら好きで愛くるしく、しかもとても賢そうなのである。カラバ公爵(!)を捏造するのも王様を騙くらかすのも巨人を喰ってしまうのも、本当に簡単そうで、この猫に敵うやつはなかなかいないぞと思うのだ。

5枚の「おっぺるとぞう」がある。これは「おつべる」で今日は通っているが、実際は本当の読み方・呼び方は知れない。
ゾウの純朴そうな様子もいいが、おっぺる(まま)の何があってもへこたれないぞなツラツキもわるくない。
・出会い・水運び・童子に手紙を・碁に夢中なゾウ達・襲撃と救助
水彩、クレヨン、色鉛筆などで活気のあるいい童画。

武井オリジナルもある。
「ことりのしろちゃん」 水彩、クレヨン、色鉛筆
六羽の鳥が対になる。ライム色の卵からカラフルな羽を拾う鳥たち。それをつけてみる鳥たち。

・子ども
初山作品は原題不明のものが多いが、タイトルはわからずとも絵から状況は読み取れるし、好きなタイトルを勝手につけるのも楽しい。

少女が千代紙で遊んでいたようで、姉様人形もそこにある。懐かしい。
姉様人形の着せ替えを千代紙で拵えるのだ。
この絵を見ていて、自分もこの女の子のように遊びたくなってきた。
しかしこの子は途中であきたか、姉様人形を手放した。
なんとなく物憂いような、そんな感情の流れも見える。

武井の子供らの元気な様子が好きだ。タイトルと描かれた情景とが微妙に乖離しているときもあり、それがまた面白くもある。
観覧車になぜお地蔵さんまで…?不思議な楽しさがある。

武井作品から動物が主人公の絵ばかり集めたコーナーがあった。
すずめのがっこう、かえるのがくたい、むしのおんがくかい…
みんな生き生きしている。気取った奴やちょっとズレてるのもいたりで面白い。

チラシにもあるが、ソフトクリームの絵がいくつかあり、コーンの部分に「TAKE OUT」とある。持ち帰りの意味でとるべきか、彼の名前の「TAKEO」に「 UT」がくっついているとみれなくも、ない。

時期に合わせてか、夏の童画を集めてもいる。
七夕やプールなどの絵である。
このうちプールの絵は以前「サライ」の武井特集でも出ていた。幼児用の瓢箪型プールで先生がにこやかに子供らの様子を見守っている。

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戦前―童画の始まり
二人の戦前の作品を観る。

初山のアールヌーボー風な作品が出ていた。
星の十字架 これは弥生美術館で見ていた。モノクロで非常に繊細なアラベスクを紡ぎだしている。
真夜中の墓場に一人蹲る少女。顔を挙げてはいるが、彼女がなぜそこにいるのかがわからず、とても気になる。

不思議の国のアリス これも曲線の美。初山の絵をみていると、戦前は線描の繊細な魅力を突き詰め、戦後は色彩の美を追求した、そんな風に思われる。

武井の分身、いや、生まれる前の存在たる「ラムラム王」が現れた。
フンヌエスト・ガーマネスト・エコエコ・ズンダラー・ラムラム王。
とても嬉しい。わたしはやっぱり「ラムラム王」が一番好きだ。

二人が活躍した雑誌「コドモノクニ」がずらりと並ぶ。
そしてそれぞれが関わった単行本も。
原画もいいが、印刷された時に完成品になる絵だけに、その印刷物の良さもすばらしい。
たとえ経年劣化による破損や褪色があったとしても、それでも素晴らしい。

武井は版画にも大変凝って、歴史に残る名品も残している。
その中には蔵書票も加わる。
20年以上前か、ちひろ美術館で武井の蔵書票ばかり集めた展覧会があった。
あの時のチラシは今も大事にしているが、それでわたしはエクスリブリスの世界に魅了されたのだった。

最後に二人を慕い、童画の世界へ入った秋岡芳夫の作品が紹介される。
/以前にもここで彼の展示を見ている。当時の感想はこちら
あの時は解説不足で多少意味不明な展示だったが、今回は研究も進んだのか、以前と違いとてもわかりやすい内容になっていた。

いいものばかりを見れて本当に楽しかった。
しかし残念なことに図録は、ない。
いつもの「まだ出来てません」ではなく、市販本でどうぞということらしい。
それもわるくないが、この展覧会を髣髴とさせてくれる取り合わせの図録、それが欲しいのだった。

秋岡の絵ハガキがあったので買った。
にんぎょひめ。可愛らしい。
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9/4まで。
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