美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「エミール・ガレ 生誕170周年」展をみる 

アールヌーヴォーの工芸品の展覧会が二つばかり都内で開催されている。
・エミール・ガレ サントリー美術館
・アールヌーヴォーの装飾磁器 三井記念美術館
相互割引などの連携もあるそうだ。

アールヌーヴォーの真髄はやはり「綺麗である」ということだと思う。
素材が何であれ、テーマがどのようなものであろうと、やはり一目見て抱く感情は「綺麗」ということになる。
爬虫類などをモチーフにした多少のグロテスクさを見せるものであっても、やはりそこには「綺麗」がある。
二つの展覧会で存分に「綺麗」な工芸品を味わった。

先に見たのはガレ展なのでそちらから書く。
オルセー美術館特別協力とある。サントリーの所蔵品とオルセーのコレクションと個人コレクションとで成り立つ展覧会である。

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1.ガレと祖国
アルザス・ロレーヌ地方の歴史については普仏戦争以前からの問題を含めて考えねばならないので、ここでは省く。ドイツの領土であった頃はロートリンゲンと称され、小沢俊夫編による「世界の民話」ではロートリンゲン表記となっている。
しかしこの地はフランスだという強い気持ちを示した文学があり、ガレもロレーヌを象徴する作品を生み出している。

父親の工場を譲られたガレの奮戦がこの章で読み取れる。
作品を並べてガレの美を堪能させるのではなく、ガレがどのような立ち位置にいて何を願って仕事をしていたかが伝わる構成なのだ。
これは今までにない展示内容だった。
作品を通してガレの想いを目の当たりにする、ということは。

「海神」と名付けられた花器には棍棒を持ったヘラクレスとトリトンの戦いが刻まれている。そこから面を動かすとイルカに乗った女がみえる。彼女は二人の争いを見守っているのだ。
また「戦闘」瓶にはジャンヌ・ダルクが刻まれている。騎馬のジャンヌと徒歩の裸夫たち。
これが何を意味するのかは分からないが、それでも想像する余地がある。

珍しくガレの絵があった。
1889年万博ポスターである。綺麗な女の絵だった。

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2.ガレと異国
ガレが目にしたもの、外国からの到来物に開かれるガレの目。

西洋において昆虫の<価値>というものは決して高いものではなかった。
しかし東アジアでの昆虫の愛され方が書物や浮世絵を通じて届けられると、昆虫を見る眼が変わっていった。

バッタやカエルのモチーフの作品がここにはいくつも集められている。
そしてガレが所有していた宮川香山のやきものもある。鯉をモチーフにした綺麗なやきものである。
それを見ながらガレがどのようなときめきを覚えたかを想像する。
日本製のガラスは他にもいくつか見出せる。
ガレの憧れが形をとるのを予感する。

エッチングの綺麗な小物入れがある。孔雀と猟犬のもの。とても綺麗。こうしたものを見ると、耳の奥にポリフォン社のオルゴールの音色が流れてくる。

ふと所有者をみればダルビッシュ・ギャラリー・コレクションとある。
神戸のダルビッシュ・ギャラリーといえば、あのダルパパのお店か。
ダルパパは素敵な作品をコレクションしていたのだ。

3.ガレと植物学
ガレは「植物学者」でもあった。
しかしここで彼の魅力的な言葉が紹介されている。
「学術的に再現された博物学者の記録資料は、どれほど精緻なものであっても感動はさせられない。そこには人間の魂が抜け落ちているから」
とても得心のゆく言葉だった。

ガレの拵えた植物モチーフの花器や鉢などを眺める。
あの言葉を胸に抱きながら作品を見ると、味わいが一層深くなる。

木工品が出てきた。飾り棚などである。木の象嵌などで素晴らしい効果を挙げている。
形そのものはやはりうねっていて、そこに植物の文様を嵌め込んでいる。
とても魅力的だった。

4.ガレと生物学
植物学者であるガレの正確さはここでも生きているが、それ以上に情緒が大事にされていた。
先ほどの植物学関連の作品同様すばらしい。
作品そのものの美に痺れつつ、背後にある学問について考える。

階段を下りるとガラスをのぞき込む設えがあった。
写真を置いている。それをのぞき込む。
巧い構成だと思う。

5.ガレと文学
物語性のある作品を集めている、と解釈していいか。
「アモルは黒い蝶を追う」といったガラス作品をはじめ習作が色々。
葡萄の蔓、六枚の枯葉、など。

そして最後にガレの作品中最も高名な「ひとよ茸」ランプが現れた。
とても納得する。
サントリーの口上が素晴らしい。
「幕とさせていただきます」
やられた、というキモチがある。ああ、よかった。

8/28まで。
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