美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

立体妖怪図鑑 妖怪天国ニッポンpart2

姫路の兵庫県立歴史博物館の展覧会は、ハズレがない。
わたしが行った時たまたまそうだったのかもしれないが、どの時も必ず面白いので、これはもうここのレベルがとても高いということになるのではないか。
なにしろ1992年からの話である。
「風呂の聖と俗」、「洛中洛外のプリマドンナ」、「庶民の地獄絵」などの昔から近年の「博物館はおばけ屋敷」に至るまで、本当に面白いものばかりなのだ。

今回はこちら。
「立体妖怪図鑑 妖怪天国ニッポンpart2」
玄関前の幟の揺らぎが何ともよろしい。


第一部 描かれた妖怪
絵巻と浮世絵からおばけが集まっている。

百鬼夜行、百器夜行、とモノノケたちの行列が楽しい。
稲生物怪録、大ミミズクが可愛い兵六物語、といいのが続く。

国芳の三枚続の妖怪絵も、大どくろに土蜘蛛ら人気メンバー。
弟子たちの絵もありにぎやか。
芳艶の袴垂の幻術で大蛇とツキノワグマの戦いを見る人々、芳虎の加藤清正が退治するのは蝦蟇に蝙蝠に猫!

「西洋では蝙蝠と言えば吸血鬼の手下のように思われていますが、東洋では吉祥動物です」とさる学芸員さんが書かれていたが、この展覧会に出演する蝙蝠たちは到底吉祥動物ではなく「吸血鬼の手下」のクチですなw

芳年のバケモノ絵も色々。旧幕時代のは言えば無邪気な(!)オバケたちばかり。
「怖い浮世絵」でも見た絵が重複していて、その当時の人気ぶりがわかる。
虎ニンニンの西遊記・百鬼夜行図も来ている。玉園という絵師はほぼ知らないが、この虎が忍術の印を組んでいる虎ニンニンは可愛くて忘れられない。
そして北斎の百物語からは小平次。これは日本のオバケ絵の中でも特上の一品。

石燕の妖怪図鑑もある。
姑獲鳥、元興寺、玉藻の前、ぬらりひょん、長壁姫と蝙蝠。
それから石燕オリジナルのオバケ図鑑もある。創作オバケ、いいねえ。

草双紙もオバケものは人気で、わたしだって全部簡易に読みこなせたら、しつこく何度も読み返すよ、山東京伝あたりは特に好き。

双六もいい。地域特有のオバケも選ばれている。
芳員「中河内・雪女郎」というのをみつけて「エ?」となった。
中河内でもそんな雪積もったのか?
ここでサイコロを振り、3が出たら「山彦」のもとへゆく。

オバケの絵のおもちゃもとても楽しい。仕掛けモノがあるのがいい。
「幽霊・妖怪画大全集」展の時にオバケカルタを購入したわたしです。

第二部 立体妖怪の存在感
今回の展覧会のメインはこちらですな。

大阪市立美術館のカザール・コレクションから根付のオバケたちが出陣していた。
大阪市美で観るときより、こうした本性を発揮できる場で見ると、嬉しそうに見えるなあ。
道成寺の釣鐘、鬼、般若、白蔵主、狸のお坊さん、烏天狗、一角獣、人魚、風神雷神、髑髏、舌切り雀・・・
鬼も様々で鍾馗に捕まるもの、大津絵の鬼の念仏、鬼やらい、木魚ぽくぽくなど。
楽しいねえ。

淡路人形のカシラもある。天狗久や大江順の人形。九尾の狐本体もある。ただし金毛ではなく白狐。・・・これて尻尾の数を減らしたら葛の葉狐にもなれるな。
赤鬼、青鬼、黒鬼。
お岩さんの人形もある。江戸のお話だが人形浄瑠璃ではお岩さんの芝居がある。芝居にしやすいわな。
以前に入江泰吉先生が撮られた文楽の写真展の時、やはりお岩さんをみた。
非常に怖かったなあ、あれはモノクロだからこそ怖さが増幅していたのだ。

江戸時代のオバケ屋敷の紹介。
浮世絵の次に現役のオバケ人形師・中田市男さんの人形が登場する。
井戸の怨霊、三つ目入道、ベロだし、長壁姫の眷属、口裂け女、骨女。
骨女は顔の半面は美人、半面は髑髏でライトが当たると・・・
長壁姫の眷属の腰元は、江戸の判じ絵の馬顔の女「ウマニ」の姉妹の様だ。
そして今年の新作は河童と応挙の幽霊だった。
掛軸の向こうに美人で淋しい幽霊がゐる。
90歳の中田さん、これからも長生きして怖いオバケ人形を拵えてください。

見世物もある。
人魚の引き札は案外可愛いが、人魚のミイラは骨の唐揚げのようだった。下半身はオコゼのようだったな。
そしてこの人魚のミイラの物語を紙芝居で上演したようで、台詞なしの絵だけだが展示されているのもよかった。

カーテンで仕切られている空間へ入る。そこには「件 くだん」の剥製があった。
どうもぬいぐるみのようにも見えるが本当のところはわからない。
「くだんのはは」「五色の舟」を思い出す。

姫路の大切なお祭り「三ツ山大祭」の作り物がことしも出ていた。
前回の展覧会では入り口そばに井戸から飛び出すお菊さんだった。
今回はこの中で、やはり井戸から飛び出すお菊さんなのだが、蝶々の表現がとても綺麗で、しかもこのお菊さんは既に井戸を飛び出して宙に浮いていて、染付のお皿が9枚あちこちに浮いている。それを見て二人の武士がひっくり返っている。
香寺高校の生徒さんらの力作。
そういえばお菊さんの割ったお皿というのは、高麗青磁や明の青花など諸説ある。
いずれも大切なお皿ではある。

このお菊人形を見ていて谷山浩子の不思議な歌「まもるくん」の替え歌も可能だなと思った。
♪播州のお屋敷の井戸から飛び出すお菊さん 井戸から飛び出して斜めに飛んで笑ってる
・・・こわっ

イメージ (21)

第三部 郷土玩具と妖怪
意外と郷土玩具も古いものではないものが出ていた。

びっくりしたのは、洋画家・金山平三の河童人形。これ、遺愛の品とリストにはあるが、どうやらご本人が拵えたみたい。
金山は大石田の風景を愛して多くの絵を描いたが、楽しみとして芝居絵を大量に描いている。わたしなんぞは金山の仕事の中でもその芝居絵が特に好きで、兵庫県美の前身の兵庫近美のときに絵葉書をセットで購入して以来、今も喜んで時折眺めている。
金山、牛島憲之ら洋画家、清方、朝倉摂らの芝居絵を集めた展覧会をどこかで開催してくれないだろうかなあ。

さて郷土玩具。
伏見人形、今戸の土人形などの古いものもある一方で、昭和どころか平成になってから拵えられた張子ものもある。猩々や河童など。
そうそう伏見人形と言えば人形屋・鵤幸右衛門が始めたという伝承もあった。

黒い神戸人形もぞろりと並ぶ。
古いのは明治の三輪車のみであとはみんな昭和50年代のもの。
わたしは昭和50年代は大阪の小学生なので神戸人形は無縁でしたなあ。
スイカ喰い、木魚叩きと手妻(手品)、オバケ井戸、棺桶車、ロクロ首、鬼の舟遊び、オバケの館、月見の宴会(みんなでスイカ食べてるぞ)
可愛くてファンキー。この展覧会で初めて神戸人形もオバケの仲間だったことを知ったよ。

地方地方に伝承・伝説・民話があり、それをカタチにしたものが並ぶ。
昭和初期の朝鮮の将軍標。天下大将軍地下女将軍のあれね。ミニチュアだから可愛い。
これを最初に知ったのは夢野久作「犬神博士」に紹介されてたからだが、作中では「天下女将軍」となっていた。尤もそれは作中でのギャグなのかもしれない。
厚かましく強引な女とそれに拉がれている男を指しているので。
現物は天理参考館にある。みんぱくにはミニチュアがあったように思う。

鳥取張子人形が何種も出ている。
「島根は神の国、鳥取は妖怪の国だ!」とはわが社の島根出身者の弁。

河童のブームがあったそうだ。清水崑のマンガに始まったようで、その同時代の河童人形がいろいろ並ぶ。
福岡県で「海御前 あまごぜ」と呼ばれる人形があり、これは壇ノ浦に沈んだ平教経の北の方の後身だという。
侍たちは平家ガニになったが、女人はまた別らしい。

コロボックル、文福茶釜、天狗、なぜか静岡のヌエもの、山姥、化け狸、しばてん、キジムナーなども顔を見せていた。

チラシを飾る妖怪たちは荒井良氏の妖怪張り子もの。
京極夏彦さんのコレクションだというのも納得。
イメージ (20)
ウブメ、塗仏、五徳猫、豆腐小僧・・・
豆腐小僧をみて甲南大の田中貴子教授の愛猫きなこちゃんのコスプレを思い出した。

第四部 現代の妖怪造形
ウルトラマンの怪獣ソフビたちから現代のフィギュアまで、素晴らしい作品群が百点ばかりあった。
造形師の人々の才能・熱情にただただ感心するばかり。
いやもぉ本当に素晴らしい。海洋堂の名品だけでなく、地方で開催されたコンテストなどに出た作品群もずらり。
本当に細部まで丁寧に作り込まれていて、ただただ絶句。
いやースゴいわ、ニッポン。

妖怪の国に生まれ育ってよかった!!と思った展覧会でした。9/11まで。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア