美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

ダリ版画展 もう一つの顔

京都文化博物館でダリの版画ばかりを集めた展覧会が開催されている。
初日に行ったのに閉幕間際に感想を挙げることになるとは、自分の怠惰にジクジたる思いでいっぱいである。

イメージ (55)

ダリの絵のうまさはわかっている。基礎がいいからこそなんでも描けるのだ。
そのダリが物語を版画にしている。挿絵も物語絵もどちらもそこにときめきがなくてはならない。
ダリの絵にはそのときめきがあった。

選ばれた物語はダンテの神曲である。
地獄篇、煉獄篇、天国篇が100シーンで構成されている。
それからマゾッホ「毛皮を着たヴィーナス」、「トリスタンとイズー」「雅歌」などが続く。
版画の技法も物語により変えている。
丁寧な仕事を前にして、わたしはダリの新たな魅力を知る。

この「神曲」は1963年に木口木版で刊行されている。本来はフランス語版で1950~52年にかけて水彩画で制作された。
それを1959年~63年にかけてレ・ズールクレール社が版画化したそうだ。

正直なところ、わたしは地獄篇の前半部分までしか読んでいない。しかし本文は読まずとも様々な媒体から物語の概要をいつの間にか知るようにはなっていた。

このダリの作品のおかげで物語にいよいよ深く迫ることになっていった。
(がんばって本文を読もう)

旅をするダンテはパブリック・イメージから離れることはない。
地獄めぐりをするダンテ、行く先々で見る現象はダリの中のイメージである。
本当の地獄など誰も見てはいないのだ。むろん煉獄も天国もまた。

ダリの不思議な世界観がダンテの詠う地獄・煉獄・天獄を露わにする。
ケルベロスは@@@@と四つの渦巻きを持つ狛犬のような風貌を見せていた。
美しい女たちは美しいなりにどこかおぞましさをみせる。

煉獄篇の作品が最もシュールだと思う。
そしてイキイキと想像力がひろがる。

天国篇は案外退屈なのだが、ところどころ先人・ウィリアム・ブレイクの描く様子を踏まえたような作品が見受けられた。
「神曲」の中での天国のイメージはそうなのかもしれない。

イメージ (56)

「15の版画集」は動物たちの絵とダリが好きな芸術家の肖像で構成されている。
ダリは「天才日記」のヒトで自分が世界一だと言いはしても、他に好きな人・リスペクトする人も少なくはない。

犀 装甲機獣としかいいようがない。
象 でた、あしながさん。

ナルキッソス 顔は見せないが美しい少年の身体を描く。花咲く美少年。

ロートレック、ダ・ヴィンチ、ゴッホ、ミケランジェロ、レンブラントら先人の他にシャガール、ピカソといった同時代人の絵もある。
映画「ダリ 天才日記」ではピカソもダリの才能に嫉妬する、だったが、ダリはルーブルに行く前にピカソに会いに行き、ピカソも喜んで迎えたそうだ。尤もどこまで本当なのかは知らない。

柔らかい時計  これを私と友人らは「めたった時計」と呼んでいる。
どこの方言か知らんが飴ちゃんが溶けてしもたのを「めたる」というそうで、あまりに語感がピッタリなのでわたしもお気に入りの言葉。そう、めたった時計。

「毛皮を着たヴィーナス」はエングレーヴィング。1968年、ダリは版画でいい作品を次々に生み出している。
官能性はむしろ薄い。男の悲哀感が漂う作品になっている。

中世の悲恋物語「トリスタンとイズー」はわたしも好きなのだが、全編フランス語か、ちょっとイメージが違う感じもある。
わたしのなかではやはりラファエル前派のイメージが強いからかもしれない。またはビアズレーの。
しかしところどころで妙なゆるキャラめいたものがいるのも楽しい。

いちばん綺麗だったのは「雅歌」である。
エッチングとステンシル。金粉もかかり、豪華な拵えになっている。
とても綺麗。「雅歌」というばモローのイメージが強いが、こちらもまた目の覚めるような美麗さがある。

シュルレアリスムの思い出 技術を凝らした作品で、内容はわからなくても蝶やダリの不思議な肖像など面白味のある連作。

他に妙に気になったのが「日本の民話」1976年のなにやらすごいようなもの。
花咲じじい 撒いてるわ。赤ずきんで。

湖山長者 これはまた珍しい。鳥取の民話で面白いのだが、よくダリもこんな話を知っていたものだ。
蝶ネクタイのオヤジと言うのも面白い。
山越の阿弥陀像を思い出した。

六地蔵 △○○の連中がキターーー

他にもたくさん興味深い作品がある。
面白い展覧会だった。9/4まで。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア