美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

山本二三展 リターンズ

神戸ゆかりの美術館で「山本二三展」が開催されている。五年ぶりの開催と言うことで正式名称は「山本二三展 リターンズ」そして副題は「日本のアニメーション美術の創造者」。更にそこに作品タイトルが列挙されている。
天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女
そう、この名作群の美術を担当された山本二三さんの作品展なのだ。
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近年映像作品を観る機会が減っている。アニメも特撮も洋画も関係なしに時間が取れない。ところがこうした展覧会だと喜んで出かけるし、そこで映像が流れているのを見ると、ドキドキする。もっとそのドキドキを持続させるためにも映像を見なくてはならない。

五島列島の福江島出身の山本さん。素晴らしい教会が残っているところ。
そこから東京に出て、24歳の若さで「未来少年コナン」の背景美術を担当している。
わたしは本放送は見ていないが、再放送がある度に熱心に見ている。
宮崎さんの関わったすべての作品はその背景の美術が素晴らしく、それらは自分の中では素晴らしい風景画だという認識がある。
椋尾篁、男鹿和雄、山本二三。
素晴らしい背景画があふれている。

1.日本アニメーション史の金字塔

展示はコナンから始まる。
インダストリアのコアブロックの角の部分、そう地下の住人たちのいるところ。薄茶色の空間、人物はいないが、ここからどうなるのかを思い出すと、それだけでドキドキする。

ギガントコントロールルーム  チラシにもある、丸い窓のたくさんあるあの空間。
ここでレプカたちが…そう思うと悪の巣窟に見えてくるではないか。

ラピュタの背景画が並ぶ。こちらにはところどころセルもついていて、いよいよ1シーンを目の当たりにするという実感がある。
炭鉱、坑道、荒廃したラピュタ…ロボットがぼてんと転がるシーンがある。
どんどん見るうち心の中で「バルス!!」と言ってしまっていた…

もののけ姫では大変な苦心をしたそうで、けっこうコワイ言葉を口にしている。
これは競作と言うか共作というか、一人で担当しているわけではない。
この映画が世に出る直前NHKのインタビューで色指定の女性が緑だけで何十色もの使い分けをしている、ということを話されているのを忘れない。
それを聞いてから映画館でその圧倒的な緑の奥深さに胸を貫かれたのだ。

コダマの道、シシ神の森の素晴らしさ。湿気と葉緑素と酸素とそのほかの諸々のものが肺に入ってきそうだ。
シシ神様がぬばぁぁぁぁぁっと伸び上がる姿が見えてくる…
コダマの道も夜露に濡れて光っていて、コダマはいないのに隠れているとしか思えなかった。
そしてシダの美しさ。何という緑だろうか。すばらしい緑。

2. 名作文学の背景
時をかける少女から始まる。2006年のあの作品。つい先だっても舞台の一つとなったトーハクで上映会が行われた。
グラウンド、家庭科実習室、理科実験室、坂道、踏切…
あの坂道のある町の様子が本当にいい。実際に住むにはとても大変そうだが。

主人公真琴の家がとても魅力的。正面側のガーデニングがスゴイ。しかしわたしとしては中庭のゴーヤ棚の辺り、こちらがとても好きだ。和洋折衷のとても暮らしやすい家。
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最後に東博本館のあの階段が現れる。茶色く描かれていて、少し階段が少なく見えるが、あの優雅な空間がここにある。

あらしのよるに おや、2005年の作品だったか。早いものだ。

グスコーブドリの伝記  これはますむらひろしの猫キャラで話が進む。まだ公式サイトが保たれていた。
この作品は冷害で苦しむ人々のために火山の噴火を誘発させ温暖化を招こうとする、しかしその作業をすることでどうしても生きて帰れないブドリの生涯の物語。
作者宮沢賢治の頃は「寒さの夏はおろおろ歩き」だったのだが、現代では逆に温暖化が深刻な状況なので、絵画化する時にとても悩んだそうだ。
そうしたところに山本さんの誠実な人間性を感じる。

わたしの知らない作品がいくつもある。
中で93年の「狼と七匹の仔山羊」はキャラを森康二さんが担当したもので、可愛い山羊の子らにわたしも嬉しくなった。
わたしも森さんの可愛い動物キャラが大好きで、だからわたしのツイッターのヘッダー?バナー?は森さんの絵なのだった。



火垂るの墓 …神戸が舞台ということでは「神戸ゆかりの美術館」での開催にとてもふさわしい。
イメージボードがたくさん並ぶ。ドロップの空き缶と火垂るが舞うもの、ブリキの金魚の忘れ物、横たわる節子…
大勢のお客さんが来ていたのだが、やはり皆さんこのコーナーに来ると、せつなさ・つらさにうちふるえるようだった。

阪神電車のホームの柱、清太の実家のええ欄間、防空壕、そしてそこに舞う火垂る、空襲…
見ているだけで胸が痛い。
決して忘れてはならない作品。

長崎の風景を描いた作品がある。グラバー亭、大浦天主堂、眼鏡橋。もう長らく行ってない。行きたくなってくる。
五島列島の風景も素晴らしい。
ああ、行かなくては。

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3.山本二三ライブラリー

ルパン三世2の「死の翼アルバトロス」の背景が二つ。
「名探偵ホームズ」もアジト、金貨製造工場、夜のベーカー街が出ていた。
「リトル・ニモ」もある。

なかむらたかしと組んだ「ファンタジックチルドレン」の背景は現実の世界の名所だった。
ヨーロッパとアジアと。なかでもガジュマルの木にくるみ取られた仏頭の絵が凄かった。

1981年の「じゃりン子チエ」の背景も山本さんだったのか。
監督の高畑さんと共に舞台になる辺りの木賃宿に泊まりホルモン焼き屋さんを巡り、大阪の下町の空気感を感得したそうな。
同じ大阪府民ではあるが、阪急王国民(!)のわたしは放送当時まだ子供で、大阪市内の下町に行くことはなかった。
だからこそとても興味深く見ていた。
結局このアニメーションが素晴らしすぎて、わたしは原作をその後から読み、一気に引き込まれ、本を買い続け、全巻を揃えた。
今もしばしば読み返すが、その時、キャラたちの台詞は全てあのアニメの時の声で脳に入ってくる。

未公開作品「かちかち山」は黒澤の「七人の侍」ぽい構成だそうだ。復讐に燃える爺さんがいた。

ゲーム作品もあれば、小説の挿絵もある。
歩き屋フリルとチョコレートきしだん この挿絵はヨーロッパのそれのように、と描いたそうだが、東欧から帝政ロシア時代の美麗な挿絵を思わせてくれる。
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山本さんは繋温泉や鶯宿温泉のポスターも拵えている。いずれも緑が豊かである。
そして教科書用の挿絵もある。三内丸山遺跡など。

最後に描き下ろし新作。
文月の神戸
御影公会堂
ああ、どちらも今の光景だ…

いい展覧会だった。
9/4まで。


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