美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

東洋・日本 陶磁の至宝

出光美術館の「東洋・日本 陶磁の至宝」展に二度ばかり出向いた。
副題「豊麗なる美の競演」というのも納得の内容である。

そもそもやきものに対し偏愛の念を抱くわたしにとって、出光コレクションのやきものといえばまさに垂涎もので、これまでの展覧会で出会ったやきものに対しては愛情とときめきとを多大に懐いたままでいる。
新しいものに出会えるのではという期待よりも、懐かしく・慕わしく・愛しいかれらに再会できる喜びに震えながら出向いた。

純粋な鑑賞を楽しむ。
設えのいい展示空間、ガラスケースの向こうで光るやきものたち。
一目でわかる仁清の壺、青の美を味わえる景徳鎮の壺、そして最愛の高麗青磁象嵌の浄瓶などなど、出だしから良いものがずらりと並ぶ、このインパクト。
ああ、すばらしい。

魅力的な作品を更に楽しませてくれる解説や予告のようなパネルの設置がまたいい。
それらはやきものを見るのによい導きと言うだけでなく、違う国・違う時代・違う技法・異なる美意識・異なる存在理由などを伝えてくれるのだ。

古九谷、色鍋島、古伊万里、柿右衛門様式…
日本の色絵の代表ともいえる磁器が並ぶ。優雅なやきものの背景はごくシンプルで、やきものの存在を邪魔するようなことはしない。

明の永楽年間の青花と元代の青花の色の違い、清の臙脂色の龍の描かれた瓶…
なんて楽しいのだろう、見ることの歓びはいよいよ高まってゆく。
そして鑑賞は次第に別な状態へ向かう…

見て愛でるだけのつもりが、やはりメモを取り始めた。
眼だけでなく指にもこの喜びを感じてほしい。書くことで脳に更にこの喜びを強く刻みたい。

わたしはまた元へ戻ると、高麗の青磁象嵌浄瓶の前に立った。
蒲柳水禽唐子文、柳の木を中心に白鷺らしき水禽がそこかしこにいる。飛ぶ鷺もいる。
瓶の肩の辺りにその羽ばたきが見える。静謐な世界に小さな飛行の音。
唐子も楽しそうに遊びながらもとても静かな中にいる。

古伊万里の美人図屏風のある大皿、その屏風の向かって左隣の小さな椿鉢がとてもいい。美人たちと椿と。閉ざされた空間の歓び。ここにある限り永遠の幸せが約束されているのだ。

黒地に白の大きな水玉を全身に鏤めたのは古伊万里の唐獅子だった。四頭いるがみんな名前は「獅子丸」に決まっている。ブサカワとは面白い言葉だ。

古伊万里だけでなく柿右衛門の獅子も可愛い。花鳥文の蓋物のその抓みとして鎮座ましましている。下の丼には叭叭鳥がいて上をなんとなく妙ににらんでいるが、この獅子はそんなことはどうでもよく、ただただひたすらな眼を空へ向けている。
両目の感覚は少しばかり開いているが、それが可愛いものの、あくまでもきりりとした姿勢を崩そうとしない。なにかを待っているのか祈っているのか…

柿右衛門の鳥は横顔を見せるだけではない。何を思ったか、真っ向からこちらへ飛んでくる鳥もいる。頬をふくらませて大きな目を見開いて飛んできた。

150cmの楼閣がある。漢代の楼閣で、弓で警護する兵もいる。大きな明器。
しかしいつみても鬼太郎の妖怪城のようではある。

華やかな唐の時代には西域からの文化も流れ込み、アンフォラ型の水指も生まれた。
両脇から天辺の注ぎ口に顔を埋める二頭の龍、注ぎ口を完全に覆ったような龍もいる。

時代はずっと後のものなのに、そちらの方が前の時代の何かに似ているのではなく、前の時代のものの方が後の時代の何かを髣髴とさせる、という逆転現象がままあると思う。
金襴手孔雀文盞瓶のその中央の赤地に金の孔雀がいる。ホイットニーの孔雀かと思った…

再び日本へ戻る。
志野の二匹の魚、織部の蓋の上のウサギ、絵唐津葦文大鉢がどう見てもガレー船のようだった…

乾山の特集もある。とても嬉しい。
龍田川に紅葉ががんばって這い上がろうとする鉢、定家の和歌に沿う絵を描いた角皿などは特に小鳥たちの愛らしさが素晴らしいし、鮮やかな緑地に白椿がいくつも落ちている鉢などは何時も欲しくなる。

茶道具では禾目天目、ノンコウの黒樂「此花」のいいのをみた。
景徳鎮のウズラたち、柿右衛門の唐子と仲良しな獅子と美人、面白いものはいくらでもある。
最後は板谷波山。あえて艶消しを狙った葆光彩磁花卉文花瓶に描かれたモクレンやサザンカ。

すばらしい展示。
なじみのものも視点を変えれば全く違う表情を見せる。新発見再発見多数。
これは迂闊な見過ごしではなく、新たにその美を認識したということなのだ。
本当に再訪してよかった。9/25まで。



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