美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

三代 樂道入・ノンカウ展

三代 樂道入・ノンカウ展
樂家歴代の第一の名手と謳われる道入。
わたしはかれのやきものが好きでならない。

道入はノンカウと通称されるひとで、現代の表記では発音に合わせて「ノンコウ」となる。
これまでこのブログでもノンコウと書いてきたが、今回の展覧会に合わせ、ここではノンカウと記す。

イメージ (17)

樂美術館でノンカウの展覧会が開催されている。
これまで彼だけの展覧会というものはなかった。
あったとしてもわたしは見ていない。
逸る胸を抑えて中立売で下車し、よろめきながら美術館へ向かう。
ノンカウだけの展覧会は25年ぶりだという。そうなのか、すごいな。

展示室内に入ると、最初に見えるガラスケースに黒樂茶碗がある。
大抵いつもここには当代の吉左衛門さんのがあるが、今回は初代の長次郎の黒樂茶碗があった。
万代屋黒 文叔・啐啄斎書付 艶のない実直なやきものである。
モズヤくろ、と読む。「かせた黒釉」だと解説にある。
わたしはこの初代の「かせた黒釉」、侘びた境地というものに、深い鬱屈を感じる。 だから離れる。

イメージ (18)

さていよいよノンカウである。
目を転じた瞬間に煌めくものが視界の隅から中心へ入り込み、目を覆ってゆく。
ああ、なんて綺麗でときめくものばかりが並ぶのだろう。
わたしは心の中で勝手に歌を作って歌いだす。
ノンカウ・ノンカウ・ノンカウ…勝手な歌なのに名曲だ、彼の仇名を連呼しているだけなのに。

なんというても黒樂の美に惹かれる。
黒樂茶碗  閑居  元伯宗旦・啐啄斎書付  キラキラしてはいるがどこか大人しい。宗旦はノンカウの美点より、長次郎ラブの人だからそうしたところよりも、長次郎風の形であることを喜んだに違いない。

黒樂茶碗  無一 元伯宗旦・文叔・一指斎書付  こちらも形は長次郎風。しかしとてもキラキラしている。

黒樂茶碗  山ノ端 了々斎・惺斎書付  二つ目のチラシ左端。先に薄黄色の傷をつける。そこへ黒を流し込む。無数の星々が内外に活きる。山の端は星空の中で白々と夜明けを待つ。

笹之絵黒樂茶碗  四方形に二枚の笹片。薄黄色い笹片が二枚、肌に浮かぶ。

赤樂茶碗 僧正 了々斎書付  二枚目チラシ右端。サーモン色の可愛い地に四角い黄色の模様が三つ。

黒樂茶碗  残雪 了々斎書付  口元に厚めに掛けた黒が白と混ざりあって溶けて流れるのを蛇蝎釉と言うたそうなが、これはノンカウ・オリジナルだとか。

黒樂茶碗  獅子 如心斎書付  薄黄色の傷は「イ」の字に見える。元々は橋を浮かび上がらせるはずが、このカタチになった。それが何故「獅子」なのかはわからない。
そういえば初めてNHKがTV放映する時に画面に浮かび出たものは「イ」の字だったそうだ。イロハのイ。

次々と華麗な黒樂茶碗が登場する。
その壮麗な美貌にときめくばかりで、何を見てもどれを見ても嬉しくてならない。
烏帽子、小鷹、若緑と銘打たれた黒樂茶碗たちの魅力の深さ。
こんなにも見ていられるとは。
そしてどうかするとわたしは黒樂という字を見て黒髪を想い、その美しさをも併せて楽しんでいるような気がする。

階上へ。

赤樂灰匙が妙に愛らしい。小さなスコップのようだ。これでバニラアイスを食べるのもよさそう。

白樂虎蓋香炉 俳優の遠藤憲一似のコワモテだが愛嬌もんの虎。雷文と唐草が周りを這う。

赤樂獅子香炉 わぁ可愛い。ブサカワでとても愛嬌がある。ぱっ と楽しそうな表情の獅子。可愛いなあ、挨拶してくれてるの。ええ子やなあ。
撫でで「よしよし」と可愛がりたくなる。

緑釉割山椒向付 これはもう昔から好きな器で、本当に可愛い。北村のだが、湯木でも見たような気もするが、とにかく可愛い。
 
置灯籠 八面にそれぞれ異なる文様の透かしが入っている。いいなあ、菊花、火花、△などなど。

形もどんどん自由自在になる。

筆洗形黒樂茶碗 いさり舟 啐啄斎・了々斎書付  キラキラした小舟。この船でどこか遠くへ行く。行き先は舟が知っている。

黒樂四方馬上盃形茶碗 スソ野 碌々斎書付  見る角度で表情が変わる。
馬の疾駆する様子にも見えるし、山々にも見える。

黒樂平茶碗 燕児 覚々斎書付  蛇蝎釉まじりの綺麗な茶碗。見込みいっぱいに白い花が咲いているように見える。

赤樂兎香合 おお久しぶり。ちまちました目鼻のうさぎどん。

黒樂茶碗  青山 今回、重要文化財に指定されたもの。チラシ1の右のもの。黄色のあれはわたしの好みの形ではない。銘菓「ひよこ」を思い出す。色も形も。妙に美味しそう過ぎる。

赤樂茶碗  鵺 覚々斎・久田宗悦書付  もう一つの重要文化財。不穏さからの命名。
  
樂茶碗 寒菊 一燈・不見斎書付  複雑な色調の肌。魅力的な艶がある。

黒樂茶碗  小鷹 如心斎書付  この色合い、須田国太郎ならば再現できるのではないかと思った。彼の重厚な油彩でなら…

黒樂茶碗  唐衣 大谷達如上人書付  薄さがいい。内側に朱色が散る。彼岸花がぽつんぽつんと咲くようだ。

黒樂茶碗  荒磯 一燈書付  蛇蝎釉が荒磯を表現する。

最後に本阿弥光悦 白樂茶碗  冠雪がある。
茶碗そのものは道入に影響を与えなかったが、その精神に多大な影響を与えた芸術家・光悦。16歳の少年吉兵衛と58歳の老境に入ったばかりの光悦との深い関係。
光悦は吉兵衛の才能を愛し、彼の不遇を少しでも良くしようと活躍する。
彼の書いたものが吉兵衛を注目させることになる。
「先代よりも不如意の様子也」しかし名人はそうなのだと続ける。
光悦からの温かな愛。
ときめく。

16歳から38歳まで光悦と身近に接し、美意識と眼とを鍛えられた道入。
このことを想うだけでわたしはときめく。
深い愛情が活きている二人。

日々妄想の中で生きていると、色々と余計な、しかし個人的には楽しい状況がよく訪れる。
わたしは光悦とノンカウの愛を想ってときめいている。
光悦の死後に子を得るということにもまた。
そしてその子が父の作風から逃れるように初代へ向かうのもまた。

先祖に始まり師匠で終わる。
三代 樂道入・ノンカウ
この名を見るだけでも全身に光が行き渡るようだ。

展示替えもあるのでまた出向きたい。
11/27まで。


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