美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

呉越国 西湖に育まれた文化の精粋

大和文華館の秋の特別展「呉越国 西湖に育まれた文化の精粋」展は、千年前の素晴らしい文物とその歴史的価値の高さとに感嘆する展覧会だった。
開幕式に呼んでいただき、喜んで式の模様を見ていると、かつて呉越のあった地、現代の浙江省の博物館館長さんらのお話なども聞くことができ、たいへん貴重な時間を過ごさせてもらった。
「天に天堂あり 地に蘇杭あり」と謳われたその蘇州・杭州のうち杭州を中心とした地である。
Wikiによるとこう説明されている。
「呉越(ごえつ 907年 - 978年)は中国・五代十国時代に現在の杭州を中心に浙江省と江蘇省の一部を支配した国。」
「歴代の呉越王は仏教を信仰すること篤く、銭俶は仏塔を8万4千基作って経典を封じて領内に配った。一部は日本にも伝来し、宝篋印塔のモデルとなっている。
またこの土地の陶磁器の窯元である越州窯を後援し、栄えさせた。」

わたしが習ったのも概ねこんな感じであった。
1500年前の呉国と越国との話ではない。
こちらは唐の滅亡から北宋誕生までの間に存在した王国である。

副題にある「西湖」は現在も景勝地として愛され、世界遺産にも選ばれている。
実際に行ったことのない江戸時代の人々も西湖の絵を見て「ここに雷峰塔がある」と認識し、美しい情景を想っていた。
それは室町時代の水墨画の遺産によるものだったろう。

イメージ (48)

1.呉越国と西湖
西湖図 如寄 室町 天寧寺  西湖の景観を描いている。雷峰塔が建ち、小さく説明文字もある。そして湖水を舟がゆく。

この後は全て浙江省博物館からの出品である。

銀製の文字の書かれた簡がある。呉越国三代にわたる銭家の人の簡。木簡はよく見るが銀簡は初めて見たかもしれない。藍地に文字が美しい浮かび上がる。
66歳、53歳、21歳の三人の銀簡

竜が二体。
金製と銀製と。金の竜は爪が三本、鱗は魚子仕立て。四足で自立する。銀は同ポーズながらも尻尾はにゃんこ風。足もそう。可愛い。

新建風山霊徳王廟記(拓本)原碑:931年 採拓:民国  142x77.5のなかなか大きな拓本である。
なんと書いてあるのかは知らないが、一行目に「幽霊」の文字がある。
中国では「幽霊」は「鬼」と表現するから違う意味だと思うが、前後の文の意味があまりよくわからない。
最後のサインがいい。「天下都之帥呉越国王」
素敵だ。

銭俶墓誌(拓本) 北宋のもので採拓はやはり民国になってから。こちらは92x93.やや小文字である。

ところで以前は墓誌などの拓本には関心がなかったのだが、近年安彦良和の「天の血脈」から俄然興味が湧いている。あの作品では吉林省の好太王碑の拓本をめぐる混乱に始まるが、そこに絡む人々の思惑が面白いのだ。

2.呉越国の工芸 越窯青磁と金銀器、玉製品
そう、前掲の通りここでは越州窯の美麗なやきもの、そして精緻な工芸品の数々が展示されていた。
作品は一つを除いてすべて臨安市文物館の所蔵品。

唐代の美麗な櫛、凝ったお碗、香炉などの良いものが並んでいた。
白玉に刻まれた鴨なども愛らしいし、
輪花皿の縁周りが銀のため酸化して黒くなっているのも奥ゆかしい。
花弁は12弁、黒い縁に守られている。

やがて五代十国時代になり呉越国から生まれた工芸品が集まる。
雲竜型の飾りは@@@で表現され、鳳凰唐草文の簪は…


ごめんなさいごめんなさい。

他にも多くの名品を飽きずに眺めた。
越州窯青磁の愛らしいもの、銀製鍍金飾の小さなもの…

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3.呉越国の仏教事績
こちらは全て浙江省博物館の所蔵品。

なんといっても目を惹いたのは銀製のアショカ王塔(阿育王塔)。
展示室の入った最初のコーナーにある。
とても精巧で細部まで手の込んだ綺麗な建物空間のドールハウス???

仏像がずらり。
開幕式からこちらへスライディングしたままの体勢でガラス前に貼りついて、熱心に凝視するお坊さんの姿に打たれた。
モノスゴク懸命に仏像に対峙してはる。
印象深い姿だった。

銅製と鉄製の仏像たちはいずれも小さなものたちだが、一体一体全て静かな態度を示していた。

4.呉越国の余波 東アジアの中で
福岡の鴻臚館の遺跡から出土した青磁の数々がある。
日本に来たときのおみやげ、普段遣い、などなど。
そんなことを想うのも楽しいようなやきものたち。

阿育王塔もいくつかあるがいずれも日本の所蔵品。
これらはいずれも955年に造られたもので、前掲の「銭俶は仏塔を8万4千基作って経典を封じて領内に配った。一部は日本にも伝来し」というクチだと思う。

そして宝篋印陀羅尼経などもある。
嵯峨の清凉寺の木造釈迦如来の胎内納入物。
こちらのお釈迦様の不思議な様相を思い出す。

とても印象深い展覧会だった。
11/13までなので、正倉院展と共に観ることが出来る。



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