美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

専修大学図書館コレクション展を娯しむ

専修大学図書館コレクション展をたばこと塩の博物館で見た。
江戸時代の戯作本のよいのがずらーっとあり、夢中になってしまった。

源氏物語、古今和歌集などもあったのだが、とんでしまった。
やっぱりわたしはこういうもっとあれな作風の方が好きなんだなあ。
能狂言より歌舞伎・文楽、時代物より世話物、こういう人間がこういう所に来たから戯作三昧になりますがなw

七夕のさうし これは丁度二人が天の座敷にいるところの場が出ていたが、絵の構図そのものはサントリー本と同じ。

さて雅俗に分けられての展示だが、雅で惹かれたのより俗ものに大いに惹かれた。
早速戯作三昧へとゆこう。
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古朽木 1780 桃太郎が生まれ変わり江戸の住人になった、という話。(桃太郎は室町の人)
まあ桃太郎も金太郎も浦島太郎も平成の世の中で仲良くしてるしね。
こういうのはほんと、みんな好きなんだわ。

古今狂歌袋 1787 宿屋飯盛(石川雅望) 表紙は居眠り男の絵。のほほんとしたムードがいいな。

春窓秘辞 1813 淇澳堂主人編・序文は蜀山人 馬琴や蜀山人らも。これは九大にも所蔵されている。わたしは立命館で見ている。
「近世春本・春画とそのコンテクスト展」当時の感想はこちら

嗚呼奇々羅金ケイ1789 山東京伝 楽しそうな様子がいいなあ。

曲亭一風京伝張 1801 馬琴 京伝の煙草屋の店先から逃げ出した煙管と煙草入れの夫婦(!)が色々あって生き別れし、やがて再会するという話。
なかなか波乱万丈だなあ。

化物太平記 1804 十返舎一九 小蛇が秀吉・ナメクジが信長・河童が蜂須賀小六。
人気だったのだが、やっぱりお上の禁忌に触れて一九は手鎖50日。
これとは違うのだが、「手鎖心中」を思い出した。
芝居の「浮かれ心中」の原作は井上ひさし「手鎖心中」、芝居ではミッキーマウスのテーマに乗って「ちゅう乗り」するが、小説のラストシーンは死んだ若旦那の轍を踏まず、なんとか戯作者の道を歩き続けようとする連中の決意表明がある。
あのラストはとてもよかった。

仇報孝行車 1804 南仙笑楚満人 妾に夫を殺されたと思い込んだ本妻が、妾を閉じ込める。ようやく息子に助け出されるが足が萎えてしまう妾。息子の引く車に乗り、なんとか仇討をする。
男が足萎えになり、女が土車を引くというのは小栗判官照手姫の昔からあるが、母の乗るのを引く息子というのはあまり見ないな。

雷太郎強悪物語 1806 式亭三馬 歌川豊国 人気の一作だったそうな。いかづちたろう・ごうあくものがたり。ワルモノの雷太郎が無理太郎と共に悪を重ね諸国を回るが、主人を彼らに殺された商家万屋の一族が浅草観音の利益により彼らを敵討する。
勧善懲悪。ラストで悪が滅びるためには前半から中期に掛けてはとにかく悪の魅力を発揮しなくてはいかん。そうでないと面白くないもんです。
ああ、読んでみたいなあ。
と思ったら、国立国会図書館のデジタルコレクションで公開されていた。こちら

ちょっとピラピラ見てみたところ、早速見開き5-6ページ目で二人を殺してますがな。
やるねえ。

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於六櫛木曾仇討 1807 京伝 幽霊の絵が壁に長く伸びている、という図。主君の妻に横恋慕した挙句、殺害した男に対し、家の下僕が仇討をする話。

ほかにも馬琴、一九、三馬、京山らのいかにも面白そうな読み本がずらりと並んでいた。表紙は大抵が歌川派。

冬編笠由縁月影 1815 京山 2世田之助似の娘と5世半四郎似の女とが豊国と国直の噂話をしている絵がある。

三蟲拇戦 1819 柳亭種彦 むしけん、と読む。蛇・蛙・蛞蝓がそれぞれ兄・妹・弟に顕現して仇討をする。
なんかもういかにもではあるが、むしろこういうのは平成の今の方が売れるように思う。

偐紫田舎源氏 1829-1842 種彦 長編だが未完。絵は国貞。これが大ヒット。内容は国立国会図書館のデジタルアーカイヴで読める。こちら

そういえばこの作品の春本を永青文庫で見たな…
とにかくどのカラー口絵も綺麗で今に至るまで田舎源氏の浮世絵は観る機会が少なくない。

朧月猫草紙 1842-1849 京山 国芳 このコンビで「おこまの冒険」を描きまくったのだ。
21世紀の今、復刻絵本として世にある。
なお中身については現在「にゃんたって猫」展に出ているので、愛媛で行くことをおススメします。

殺生石後日恠談 馬琴 1825-1833  恠は怪と同じ意味で、挿絵の中には「怪談」と記すページもある。
これは美女・紫の悪の姿を描いたもの。絵も凝ったものがだった。
ここでハタと気づいたが、木原敏江「白妖の娘」はこれを原典にしているのではないか。
木原さんは江戸文学に造詣が深い方なので多分そうだ。

邯鄲諸国物語  1834-1856 種彦他 国貞他  途中で作者も継いだりなんだかんだあったようだ。
絵が虫食いに遭っていて、それが鼻の辺りにあるので木の鼻が伸びたように見える。

さていよいよ八犬伝である。原本と抄録本、派生した本や錦絵が華やかでいい。
南総里見八犬伝 1814-1842 馬琴
雪梅芳譚犬の草紙 1848-1881 
仮名読八犬伝 1814-1842 2世為永春水、鳳蕭琴童(滝沢お路)

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いずれもよく出来た本ばかり。モノクロの無数の犬の絵と極彩色の錦絵とを合せたり、困り顔の雪だるまの前にいる二匹のわんこなど。原本の南総も106冊勢揃い。28年の連載は本当に凄い。
わたしは「新八犬伝」が至上なのだが、原作も好きで、今だと八犬伝botをいつも見ている。
抄録ものに口述筆記で八犬伝を世に送ったお路がペンネームをつけて活躍したのもいい。
春水が途中でなくなったので彼女が継いだそうな。

こちらは二世国貞描く「八犬伝犬の草紙」のうちから妙椿尼mir908-1.jpg
何も知らない時に梅田の古書店でこの絵葉書を見つけたが、本当にカッコイイよなあ。妖美凄艶で。
ほかの10枚もいいのだが、道節が百日鬘、信乃が細面というのも人形を思い出す。

絵本玉藻譚 1805 岡田玉山 上方の本。絵がまたいい。華陽夫人は自ら刀を持ち、玉藻の前は野で琴を弾くがその裾には骸骨が倒れ、群鴉がいる。かっこいいな、本当に。

霜夜星 1808 種彦 北斎 「四谷怪談」と似た設定の怪談。書き換えかな。

斐弾匠物語 1809 六樹園飯盛 北斎 口絵、いいな。左は闇の中の匠、右は男の裾にすがる女。

浮牡丹全伝 1804 京伝 歌川豊広 網干兵衛の助けたのは悪人だった。その男に網干兵衛は殺され、更に男は悪事を繰り返す。網干兵衛の遺族は男を追い求め、ついには仇を討つ。

京伝の戯作はけっこうわたし好みのが多いのですよ。
それにしても文化文政の出版状況にはただただ溺れるね。

月氷奇縁 1804 馬琴 流光斎如圭 大坂の絵師。聞いたことのある名だと思ったら梨園書画の人か。上巻を彼が、下巻を耳鳥斎が担当したあれ。
復讐の話。友人の妻の妹に恋したまではよかったが、その友人の妻がなくなり、友人は妻の妹と再婚したことで、大いに憎まれた。ソロレート婚は当時はよくあったが、男にすれば腹の立つ状況で、ついにその友人を殺して彼女と婚姻する。
なにやら狐の怪異もあるようで、挿絵も面白い。
とはいえ馬琴の小説は字の使い方があれですから、リンク先を見てもらえばわかるように、やたらとルビが多いし、その字にこれを当てるか、というのも多い。
その意味では、たがみよしひさは馬琴の系譜に立つ作家かも知れない。

頼豪阿闍梨恠鼠伝 1808 馬琴 北斎 恠は怪と意味は同じ。激怒してネズミに化身したあの高僧の話というより、木曾義高が生き延びて頼朝を狙う話のようだ。北斎の挿絵が迫力たっぷりでいい。大鼠をあやつる義高の絵がある。

芝居案内本もある。役者の素顔を活写とか、忙しい舞台裏探検みたいな内容である。

戯子名所図会 1800 馬琴 こちらは歌舞伎国の名所案内。
夏乃富士 1828 京伝 素顔の役者たちのカラーグラビア。
劇場一觀顕微鏡 1831 黙々漁隠(木村黙老) 国貞  高松藩の家老で芝居好き・馬琴好きの人が記した本。 タイトルがもう本当にそのまま。

国貞の三枚続きの中村座舞台裏の図、豊国の芝居大繁盛図といった錦絵も花を添える。

吉原細見 ををを!出ました、現物を見るのは初めてかな。これを知ったのは石森章太郎(当時)の吉原の始末屋稼業を描いた「さんだらぼっち」。それから司馬遼太郎「峠」で河井継之助が憮然とした表情で吉原細見を熟読し、更に自分の感想を◎・〇・△などと書き記しているのが面白くて仕方なかった。

児雷也豪傑譚 1839-1865 4人の作者に書き継がれた。(デューンかコナンみたいやな…)錦絵もいいが、芝居の方のもとてもいい。わたしが好きなのは八世團十郎の児雷也の絵。国貞の挿絵がこれまた素敵。

いよいよ満を持して「白縫譚」の登場。
こちらで本の挿絵が全部見られる。
わたしの持つ絵葉書の元のシーンもいくつか見えた。
大体、仇討ちを志して世を転覆させようとする、妖術使いの姫がお大尽に変装して吉原で豪遊する、相手をする花魁は実は女装した敵とか、もう好きで仕方ない設定だ。
思えば石川淳「狂風記」のヒメも白縫譚の若菜姫と一脈通じるところがあるな。

本の表紙は案外おとなしい。団扇や麻の葉文様のがあり、何巻か、姫が大蜘蛛の上に立つのがあるくらい。
白縫の双六もあるのね。こういう物語を追体験できる双六はとても楽しい。

来年正月に国立劇場で通し狂言をやるのでとてもわくわくしている。いい席が取れますように。
チラシが素敵。こちら

最後は清玄桜姫。
桜姫全伝曙草紙 1805 京伝  実はわたしのアタマは鶴谷南北の芝居「桜姫東文章」と「女清玄」とで占められてるので、原作のこれはどうも入ってこないのですよ。物語自体はむしろ桜姫の母の野分の前が主人公らしい、と解説にある。
そうするとやっぱり皆川博子の小説はこちらを踏まえて読んだ方がより面白いわね。
野分の前vs玉琴。玉琴の無念の死とタタリ。

姥桜女清玄 1809 馬琴 そう、尼のストーカー。女清玄は福助ので見たんだったかな。しかし意識に活きるのは写真でしか見たことのない歌右衛門のそれ。

折琴姫清玄・婚礼累箪笥 1812 京伝 7年後に作者自ら別バージョンを上梓したか。こちらは挿絵は国直。

江戸桜清水清玄 1859 柳水亭種清 亡霊になった清玄がぼーっと…

清玄は気の毒と言うかなんというか…
でもまぁあんまり同情できないのよね、わたしは。

芳年の「雪月花」の錦絵もある。1890 月が毛剃、花が五郎蔵、そして雪が百日鬘になってる清玄。
1887年の画帖には清玄堕落之図もある。桜姫の残した着物を抱きしめるみじめな清玄、残り香から立ち上る(イメージの)桜姫。
うーむ、憐れだのう。

ああ、1982年末だったか、孝夫・玉三郎コンビの「桜姫東文章」の魅力はいまだにわたしを捉えて離さないよ…

たいへん面白かった。それにしても江戸末期の戯作は面白すぎる。だからこそ明治になっても版を重ねたのだが、平成の今でもウケそうなものが少なくない。

いつかまた戯作三昧してみたい…

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