美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

日本美術と高島屋

高島屋史料館の所蔵品が東京日本橋高島屋で展示されている。
普段は大阪日本橋の史料館で展示の日を待つ作品群である。
展覧会のタイトルは「日本美術と高島屋」である。
イメージ (62)
今の日本橋の史料館では「静かなる動物園」が開催中で、その感想は前期がこちら、後期がこちら
ニッポンバシからニホンバシへ旅した名品のうち、今回特別展示として豊田家・飯田家の寄贈品も加わっている。

最初に現れるのは大観の戦後早くの大作「蓬莱山」である。大観と高島屋との関係の深さについても記されている。

高島屋にとって重要な作家といえば栖鳳がいる。その若き頃の勤務表がある。
輸出業に勤しんでいた高島屋にとって京都画壇の日本画家たちはいい仕事を期待できる存在だった。
千總もそうだが、京都の日本画家たちは企業のためにいい仕事をしていた。

アレ夕立に 明治末の栖鳳の名作。この絵も最初から高島屋入りが決まっていた。

こちらは名古屋でのチラシイメージ (63)

立派な鯉が二匹、真っ赤なお皿からはみ出す様子を描いた絵は栖鳳が文化勲章を大観とともに授与された後に描いたもので、タイトルは「国瑞」。喜びがこの絵となり、そして高島屋に納められた。

輸出業に邁進していた高島屋は万国博覧会にも積極的に作品を出し、それらは商品として海外に出ていった。
雪月花の三幅対として今も世に残るのは20世紀初頭の「吉野の桜」「ベニスの月」「ロッキーの雪」の大きな作品である。
これらは繊維製品の原画として世に出、今では貴重な遺産となっている。
雪は雄大な山岳を得意とした春挙、月は欧州旅行で世界が広がったばかりの栖鳳、花は柔らかで優美な華香が担当した。
適材適所、よく残ってくれた。

繊維作品の現物もある。
金地虎の図 下絵:岸竹堂、友禅:村上嘉兵衛 ビロード友禅というもので怖そうな親虎が水を飲む子虎を見守る図なのだが、虎の毛並みの質感が再現されていて、いい作品だ。

友禅はこの村上嘉兵衛の手によるものが多く、唐織は伊達弥助による。

幸野楳嶺えがく「厳島紅葉渓図」は鹿たちが機嫌良くのこのこ現れてくつろぐ絵だが、これを原画として友禅仕立てにされてもいる。
子鹿がなんとも愛らしい。

高島屋の繊維製品の調製に長けているので今も多くの劇場に緞帳を出している。
その原画がいくつかある。

青邨 みやまの四季 本当にいい絵。青邨の梅の形式を採りながら枝の隙間に様々な小鳥が暮らし、梅のほかにも藤などが入る。
とても好きだ。これは今はなき毎日ホールの緞帳の原画。

これらは先年の世田谷美術館での展覧会にも出ているので知る人も多いと思う。

イメージ (64)

高島屋の四代飯田新七の還暦や古希の祝いに多くの画家や工芸家らが見事な寄せ書きを残しているが、それらを綴ったものも出ていた。一人一人の絵が可愛い。

鉄斎の長年にわたる扇面、大観・観山・紫紅・未醒らの東海道五十三次…
龍子の巨大な潮騒図、渓仙の愛嬌もんの風神雷神、昭和も半ば過ぎてからの平山郁夫のペルセポリス炎上、遊亀の椿花などなど。
いくらでも名作が現れる。

そしてここまではわたしの場合「関西の一得」で慣れ親しんだ作品ばかりだったのだが、次からが初見。
飯田新七の娘がトヨタの豊田家に嫁ぎ、その両家から近年になって美術品や呉服の佳いものが寄贈されたそうだ。そのお披露目をみた。
イメージ (61)

チラシの右は鉄斎、左は栖鳳。
偶然か知らないが植物など自然をモチーフにしたものが多かった。

果物尽くし 華香 枇杷の木に文鳥、根元には蛇苺、百合、西瓜 ちょっと不思議な取り合わせ。

白梅 栖鳳 よく咲いた梅に目白の取り合わせ。

雪中松鹿図 櫻谷 ロングで一頭の牡鹿がさまよう様子を捉える。櫻谷らしい構図のもの。

渓山帰牧図 春挙 ああ、いかにもな大きな雪山と下に小さく人々の姿。

契月の如意輪観音の白さ、青邨の立葵の色のエグミ、それぞれの個性が出ていて面白い作品がいくつもある。

平櫛田中の愛らしい雛人形まである。次郎左衛門雛の仲間のようでもある。

素晴らしい婚礼衣装の数々。さすが高島屋の令嬢のもの、そして名古屋の婚礼の華やかさにも感心する。
ああ綺麗だった…

最後に前掲の「静かな動物園」でも出ていた日本橋店の屋上にいたゾウのたかちゃん。
彼女がどこに行ったか心配していたが、「動物園にお嫁に行きました」とのこと。
更に当時そのたかちゃんに乗った人が大きくなってから追跡調査をして絵本も出していた。
「デパートの上のたかちゃん」あらい静枝さんの本。

改めて高島屋の文化への意識の高さ、美術への愛情の深さに、こちらの胸も熱くなる。
素晴らしき高島屋。明治から現代まで変わることなく名品を守り、作家を保護し、世に大きな宝物を贈る手助けをし続けてきたのに、観客のわたしはただ嬉しくありがたいと思った。
ありがとう高島屋

24日まで。

なお関西の方々は大阪日本橋の高島屋史料館へどうぞおいでください。
水曜と日曜はお休みです。
いつも本当にいい展覧会を無料で見せてくださるのです。
そして難波の高島屋の9階のレストランフロアでも折々によい展示がありますので、ぜひ見に行きましょう。
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