美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

国芳ヒーローズ 後期展を楽しむ

前期に続いて後期も楽しい「国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃の巻」
実際、こういう企画展って本当に大好き。
わたしは絵に文芸性・物語性を求めてしまうので、嬉しい所へ大好きな国芳、大好きな水滸伝ですからなあ。
八犬伝と水滸伝と五十三次などの名所図が好き、というだけで大体どういう方面のシュミかがモロばれですな。

さて今回は前期と大幅に入れ替わった好漢たちの雄姿を拝見します。
もう本当にかっこいい。
全身に鮮やかな、いや、古語で言う「鮮らかな」彫り物を雪膚に展開する好漢たち、その煌めく姿、そして力強い人殺しの最中の小気味よさ。
殺人も暴力も現実のものは拒絶したいが、芝居と錦絵だけは別で、「残酷の美」に打ち震えるばかりなりよ。

国芳は勇み肌だが健全なヒトで、無惨絵ではなく、暴力が「力の見せ場」になるような絵を描く。これは稀有なことだと思う。他のものが描くと陰惨だが、国芳の場合はただただかっこよく見えたり、あるいは笑ってしまうこともある。

水滸伝の好漢たちは原作の言葉を借りれば中には「生まれながらの人殺し、何より好きなは」というのもいるが、総じて嫌悪感はなく、ただもうムヤミヤタラとかっこよく見えるのだが、これはもう完全に国芳の力業のおかげ。

わたしがもつ平凡社刊水滸伝は120回本で挿絵は昔の中国の版のを使用していて、なんというか面白味に欠ける。
だから水滸伝を読むときは国芳の好漢たちの絵を見ながらでないと、気分が乗らないこと甚だしい。

大方の絵は壁面展示、それを見ながら移動する。極彩色の暴力沙汰にときめき、血が沸き立つのは、国芳の絵だから。それ以外にはない。
ああ、本当にカッコイイ。

前回は燕青、阮小五、孔明らにときめいたが、今回は九紋龍史進と張横、張順兄弟の鯔背さにドキドキした。
元々好きなキャラ達だが、今回は特にいい絵が多くて改めて惚れ直した。

三枚続きの中央にいる史進、染付が肉の張りを得たような美しさを見せている。
単独でもいいが、他のキャラと一緒にいるとその白さと刺青の青の美とが際立つ。

他の好漢たちの魁偉さもいい。
不義の妻と相手の男を殺す楊雄、変な兜の李忠、歯並びだけは綺麗な段景住。
脂の濃さを感じる。絵では決してそれはいやではない。

三枚続きに四人ほどいる絵の中に北京の豪商・盧俊義が白い顔を見せている。
中国では特に白い顔であることが大切で、押し出しも立派な盧俊義はそのことでも将に推されていた。
このヒトが燕青の雪白の膚を「綺羅に飾」ることを決めたのだ。
松田修「刺青・性・死」を思い出す。
盧俊義も史進の父・史太公も「後進」わかいもの―の膚に刺青を施させる。
己はあくまでも鑑賞者なのである。

一枚のみフジョシを喜ばせる絵があった。
解宝と雛潤、この二人が密着するアップ。なんだかときめくぞ。やたらといちゃいちゃ♪
国芳師匠もたまにはこんなサービスをしたのですね。
まあ平安頃既にフジョシはおったようですしw

混世魔王樊瑞とオバケ。大体仇名そのものが「混世魔王」ですからなあ。
空から来るオバケたちをぱぱぱんぱーんっとやっつけてしまうのだが、そのオバケたちが可愛いのがさすが国芳。にやりとしながらの戦い。

大分晩年になってきたが武者絵の良さは衰えない。
1845年のシリーズでの史進は柳に風が吹く中、きりっと立つ。目元の涼しさがとてもいい。

松田修の論を読んでいてなるほどと思ったのだが、史進は梁山泊の好漢たちの中でも特に重要という存在ではない。しかしながら彼の絵が多いのは、やはりあの刺青のよさにあるという説だった。雪白の膚に九紋龍。背中から全身を絡め取る龍たち。

国芳のこの水滸伝の好漢たちの絵が世に出たことで、刺青の方向性も変わったという。
わたしも国芳風な刺青をじっくりと「鑑賞」したい。
そう、わたしも松田修も盧俊義も史太公も己は傷つかず、若い者の膚に針を刺し、血の玉滴と染付の美とを待ち望むばかりなのだ。

嘉永年間の国芳は中風を患ってはいたが、それでもいい武者絵を描いている。
水中での戦いに勝ち、刀を咥えながらようよう岩に這い上がる阮小七、水中には沈みつつある敵の遺骸。
首斬り役人だったが、女の生首を持ち、そばには弾けたザクロも見える楊雄の図。
行者武松が月下の丘で一休み。それだけなのに胸に来る図。かっこいい。
張順の水門破り、これは本当に人気のある図柄で、今でもこの図を背中にしょった人の写真を時に見ることもある。
実はこの時張順は戦死するのだが、その魂は兄・張横に宿り、彼が水中から這い出て腰布を絞っているときにはその傍らに陰火が燃えている。

全員登場のシリーズもいい。
カッコイイ方のも狂画の方も魅力的。
戯画の楽しさも国芳の大きな魅力。かば焼き屋、河童釣り、はみがきもある。
面白いなあ。

面白かったのは和漢準源氏シリーズの史進。
それは太田記念美術館の公式ツイッターで紹介されている。




本当にこれ、可愛いなあ。わたしも欲しいわ。

安政年間になっても絵が出ている。
松本喜三郎の生人形を描いたものがある。
この独特の人形らしさ・硬さが面白い。

地下では本朝水滸伝などを楽しむ。
碁盤忠信があった。これは初見。おお、かっこいいな。
オオナムチの狂気ぶりは怖い。

風俗女水滸伝でも史進がいい。ニョタではなく、女の行動を準えるわけです。
こういうのも面白い。

本の方では春本「当盛水滸伝」が少しばかり。
それに「稗史水滸伝」もある。藩金蓮が亭主の弟の武松の元へきて口説くところ。
いい絵。
水滸伝ではこのあとさっさと金蓮は殺されるのだが、「金瓶梅」では大活躍。
二次創作の面白さ爆発だった。

国芳ヒーローズ、後期も大いに楽しませてもらいました。
本当にかっこよかった。
来月の水野年方展も非常に楽しみ。
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