美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

月 ―夜を彩る清けき光

松濤美術館「月 ―夜を彩る清けき光」展に行った。
月光の美しさを愛でてきた東アジアの人々の感性。
月光に狂気を見出す思想もあるが、やはり月の美を愛でたい。
「月がとっても青いから遠回りして帰ろう」と歌う声もあった。
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【1】名所の月
1-1《瀟湘八景と近江八景》
瀟湘八景 是庵 室町時代 16世紀 京都国立博物館  とても静かな情景。風景に情緒が入り込んでの情景。

浮世絵の月もいい。
浮絵近江八景「石山秋ノ月」 喜多川歌麿 寛政4-7年(1792-95) 太田記念美術館  あっさりと描かれた石山の月が優しい。

近江八景之内「石山秋月」 歌川広重 文化12-天保13年(1815-42) 和泉市久保惣記念美術館  やはり風景画は広重に尽きるように思えた。

1-2《江戸時代の名所》
広重の江戸百がある。
名所江戸百景 永代橋佃しま 歌川広重 安政3-6年(1856-59) 和泉市久保惣記念美術館
名所江戸百景 月の岬 歌川広重 安政3-6年(1856-59) 和泉市久保惣記念美術館
この「月の岬」は影の使い方が巧いなといつも思う。

甲陽猿橋之図 歌川広重 天保13年(1842) 太田記念美術館  縦に描かれたことで橋の位置と川との関係性がよくわかる。月は猿橋より下にある。

【2】文学と月 ~詩歌・物語・随筆など~
2-1《詩歌》
ここでもわたしは浮世絵の月に惹かれる。国芳、春信の描く月に照らされた人。

武蔵野図屏風 江戸時代 18世紀 東京富士美術館  ああ、いい。ススキに隠れるように咲く桔梗の愛らしさ。武蔵野の月は都のそれよりずっと大きい。
「竹芝」の古伝説の姫君もまた武蔵野の月の美しさに惹かれた人なのだ。

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2-2《物語・随筆と月》
竹取物語絵巻(ハイド氏旧蔵本) 寛文・延宝期(1661-81) 國學院大学図書館 1巻  以前に見に行ったとき栞を貰ったなあ。さてここで出ているのは求婚シーン。どの貴公子かは分からない。

伊勢物語図色紙「西の対」 伝 俵屋宗達 江戸時代 17世紀 MOA美術館  縁先で寝そべるところ。随分前にこの色紙も和泉市の久保惣で見た。
昔の人はやはり「月が綺麗ですね」なのが多いね。

源氏物語図「浮舟」 江戸時代 17世紀 泉屋博古館  銀の月が黒くなっている。しかしそれはそれでいい。

紫式部・黄蜀葵・菊図 狩野常信 江戸時代 18世紀 泉屋博古館  湖面に映る月の絵がいい。

徒然草絵巻 海北友雪 江戸時代 17世紀 サントリー美術館 巻3  32段。「妻戸をいま少し押し開けて、月見るけしきなり」のシーンを描く。いてた人が帰った後もなお月を見る婦人の良さを書いている。それを見る、というのもまた面白いのですが。少年が可愛い。

雪月花の内 月 市川三升毛剃九右衛門 月岡芳年 明治23年(1890)刊行 徳川美術館  ぐっと力の入った毛剃、かっこいいよな。

【3】信仰と月
月天(十二天像の内) 鎌倉時代 13世紀 奈良国立博物館  久しぶりに再会。やはり綺麗。常に下弦の月がある。

【4】月と組む

4-1《月と日》
日月図屏風 田中訥言 江戸時代 19世紀 名古屋市博物館  金屏風、日月、皓皓たる月光に薄緑の波。世界が切り取られている。

4-3《月と鳥獣》
月にほととぎす 徳川斉荘 江戸時代 19世紀 個人蔵  殿様芸とはいえいい感じ。
月に鹿 伝 俵屋宗達 江戸時代 18世紀 個人蔵  月下に口を開ける鹿。
月に雁 歌川広重 江戸時代 19世紀 和泉市久保惣記念美術館  切手にもなった名画。
印判が二匹の鹿というのもいいな。季節バージョンぽくて。

4-4《月と山水・草花》
波間月痕図 岡本秋暉 安政元年(1854) 摘水軒記念文化振興財団  月が波間に揺らぐさまをこのように描く。近代的精神にも、情緒の顕現にも、どちらにも見える。

秋夜景図 松村景文 江戸時代 19世紀 頴川美術館  すすきが風に揺れる。
頴川美術館は月の絵が多いなと改めて想う。

4-5《月夜の営み》
人が働いたり布袋さんが笑っていたり。

【5】月の画師 - 芳年
月百姿 貼込帖(月百姿100点揃) 月岡芳年 明治22年(1889) 徳川美術館  えらいもんだ。
こうしたコレクターは本当にえらい。
月と言えばやはり芳年にツキるな。

【6】月の意匠 - 武具・工芸品
6-1《武具》
波に日月図鉄鍔、月に時鳥図小柄、月下雁図、田毎の月図鐔、猿猴捉月三所物 (目貫・笄)、
頼政鵺退治図三所物
月と関わる題のものがずらりと並び、感じいい。
太陽は屏風以外では日本の場合、あまり工芸品にはならない。
旭は描かれるが、それは吉祥画などが多く、やはり月の方が様々な場面で愛でられる。

6-2《工芸品》
ここでも月のある情景が展開される。

萩薄蒔絵硯箱、水辺景蒔絵文台、野々宮蒔絵硯箱
夜景の美しさと淋しいような心持とが好まれる。

染付吹墨月兎文皿 好きなお皿。ウサギは月と関係が深い。
染付山水文皿  雲も岩も林も月下にある。皿が地になり月にもなる。

【7】時のあゆみと月 
定家詠十二ヵ月和歌花鳥図角皿 尾形乾山 元禄15年(1702) MOA美術館 これはいつみてもいいもの。
そう、ムーンだけが月ではなく、月次もまた月なのだった。

後期展示は明日から。
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