汐留ミュージアムの「モードとインテリアの20世紀展 ポワレからシャネル、サンローランまで」はとても素敵な展覧会だった。
展示品は全て島根県立石見美術館のコレクション。
あの美術館は元の目黒雅叙園の美人画も集めていて、優雅なコレクションを形成していると聞くので、いつか行きたいと思っているところ。

第一章 1900―1919
ベルサイユ講和条約の年まで、か。
1900年はまだ19世紀、本当に世紀末なのだが、その世紀末の美意識は第一次世界大戦直前まで続いていたと思う。
アールヌーヴォーの時代。だからこそ衣裳も家具も何もかも優美だった。
しかしその後、アールデコの時代に入り、モダンムーヴメントへの意識が開かれた。
そこからが近代の美の始まりになった。
前世紀の美しく、ノスタルジックな写真がいくつか。
それらはファッション写真専門スタジオの設え、偽の宮殿・嘘の庭園・非実在の室内を背景にした、美しい写真だった。
宮殿内の獅子像にもたれる不思議な装飾をまとう女、行く先のない階段で見返る女、バルコニーで微笑む先には実は自身の姿しかない女。
それらが当時最先端の銀塩写真で世に残り、百年後の今もわたしたちを魅了する。
ポール・ポワレの様々なドレスと、それを記録する・もしくはファッションプレートのモチーフとして描いた絵の数々。
それらが良いリズムで並ぶ。
アイボリーの絹オーガンジーのワンピースには同じ素材で作られたバラの花のアップリケが並んで咲き、「イスファハン」と名付けられたカフタン・コートは緑の絹サテンに金糸の刺繍が入る。
マリアノ・フォルチュニィのベルベットのコート、赤い絹サテンのプリーツドレス、そこにはガラスビーズの装飾がつく。
エレガントな衣裳。この優雅さにただただときめく。
ブローチもペンダントもネックレスも、何もかもが近代的な美をみせている。
ファッションプレートを見る愉しみもここにある。
バルビエ、フェルナン・シメオン、ロジェ・ブローダーズらのポショワールの技法で作られた美しくもどこか妖しい版画の数々。
色彩もとても美麗で、現実にここまで美しく造られた服飾があったのだろうか、とすら思う。
リバティ商会のバッグがある。東洋風の刺繍の入った小さなバッグ。
それからマリア・リカルツのビーズバッグ。
実用性のない美しいバッグ。
ファッション誌「レ・モード」「ガゼット・デュ・ボン・トン」「フェミナ」。
いずれも魅惑的なイラストや写真が載る。百年後の遠い国で熱い視線を受けるファッション誌。
水着も今ではレトロと呼ばれる形をしているが、これはこれで着てみたいような形をしていた。

第二章 1920―1930
ときめきの時代。
スタイケンの写真。素敵な女の顔。そうだ、もう1920年代なのだ。
シャネルの黒シフォンのドレス、ポワレのデイ・ドレス。
ここでもファッションプレートに魅了される。
そしてツイートしたように一部撮影可能なコーナーもある。



ファッションプレートにはその場限りの物語がある。
手紙を焼く女、煙草の煙を目で追う女、金魚鉢を見る女、様々なシチュエーションにときめく。
第三章 1940-1959
第二次大戦半ばから戦後へ
本格的に女性が活動する時代がやってきた。まずはファッションから。
セシル・ビートンが「ヴォーグ」誌に挙げた写真もまたかっこいいものだった。
ディオールのスーツ、クリストバル・バレンシアガのドレス、エルメスの水着。
1920年代から遠く離れたことを感じる。
建築を学んだチャールズ・ジェームズのスパイラルドレスもいい。
第四章 1690s
それから。
ウィリアム・クラインのセンスの良さが光る写真。
クレージュの可愛いブーツ、着物を基礎にして大胆なパジャマ・ドレスを作った森英恵…
ステキな展覧会だった。
わたしはやはり1920―30年代にいちばん憧れているので、その時代のものが何もかもよく見えた。
時代時代ごとのモードの違いにシビレた。
11/23まで。
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