美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

蘆雪潑剌

和歌山県立博物館で「蘆雪潑剌」展の前期をみた。今はもう後期展示になった。
展示は和歌山での蘆雪の仕事に限られていて、そういうくくり方をするのもいいなと思う。
副題は「草堂寺と紀南の至宝」。
絵だけでなく各寺に伝わる資料などの展示もある。
イメージ (58)

1.蘆雪溌溂 ―草堂寺の応挙と蘆雪―
草堂寺の障壁画を並べて再現がなされている。
天明6-7年(1786-1787)の蘆雪の仕事である。

群猿図 屏風 白と黒、一匹と複数と。さすがに上手い。イキイキしている。それはやはり目に活気があるからか。みんなイキイキ。行動もまちまち。
イメージ (60)
この絵は十年前の奈良県美「応挙と蘆雪」展で見ている。

ここからは本堂の位置の再現がされている。
下間一之間 
竹鶴図 トボケた鶴たちがいる。丸い目がやはり表情にとんでいる。とはいえ複雑なことを考えているのではなく、どうやら一つのことに集中しているようである。
隣の鶴たちはそれぞれ違うことを考えているようである。
さてその鶴の視点の先には…

蛙図 端にいる二匹。可愛らしい。
実は我々観客のほかにも蛙を見る目がある。それはL字型に隣接する鶴だった…
蛙、ヤバし!!

室中之間
虎図その1 向かい合う虎図となっている。室内の右手の虎から見る。
可愛らしい虎。べったり座っている。太い手足に小さい耳の可愛い奴。ただし目は案外鋭い。何かを見ている…

虎図その2 室内左手の虎たち。
こちらはドラマチックな背景の中にいる。
風雨が激しいようでその中で水分を十分に吸うた虎の毛皮の質感がいい、水上がりのような感じ。可愛いし面白い。
太い手足がやっぱり可愛い。
「風邪引きなや」と声をかけてやると「うるさいわ」くらい言いそうな元気さがある。

枯木に鳩図 虎たちを左右にして中央にある襖にいる二羽の白鳩。12面の細い襖の中央にいて、二羽だけの世界を保っているかのように見えるのだが、実は狙われているのだ、両サイドから。

こういうところが蘆雪の面白さで、個別に見ても楽しいが、全体で見るとニヤリとなるのだ。

上間一之間 ここは応挙先生の絵が三点ある。そして弟子より一年早い天明5年の作である。
雪梅図 10面。ウグイスもいた。襖の白地を雪の後の曇天に見立てふんわりした世界になっている。ただし細い梅の枝がはっきりした存在感をみせている。

松月図 天袋四面。金地に月と松。きれい。きらきら。引き手は真っ向のウサギ。
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下間二之間 ここは室中の虎図と背中合わせにある。
後期にでている牛図などがある。
蘆雪の牛もよいから後期も見たいものである。

この再現は本当によかった。
襖絵はやはりそうでないと魅力が半減する。
名古屋での応挙展、東京芸大の金比羅さんでもそうだった。

最後に朝顔に鼬図 これが思ったより小さいもので、しかしとても丁寧に描きこまれていた。鮮やかに咲く朝顔を見る小さなイタチ。後ろ足で立ち、短い前足を胸の前で垂らして花を見ている。大きさの対比は正確ではないが、そこがまたいい。
この構図を見て思い出すのは佐藤さとるの童話、イタチが前足をあげて化かすというもの。ファンキーなイタチの可愛さがよくでている。間違ってもこいつは白イタチのノロイ様の手下にはならないだろう。

2.約束と復興 ―応挙を招いた僧と災害―
応挙が行けなくなったので蘆雪に自分の絵を持たせて紀州へ遣ったわけだが、その時の草堂寺の再建棟札などをみる。他のお寺もその年に再建されているし、それ以前のもあるがいずれも遠い過去の話ではなく、応挙にとっては近いものだったことがわかる。
たとえばその天明6年の8月には海を挟んだ四国でもかなり大きな地震があったようだし、影響もあったろうと思われる。
日本は地震国なのだ。

仏涅槃図 黒猫もいるが、なんと蟹なども来ていた。そこらが海の近い方の和歌山だと実感する。

3.約束の地 ―草堂寺のはじまり―
このお寺の扁額、お坊さんたちの肖像画、創建由来などがある。
大檀那になるのか、紀州富田中岩さんの系図や中岩五郎左衛門坐像もある。
大庄屋さん。藤原北家の系統のようだ。

4.花開く信仰と文化 ―草堂寺に集まった文物―
平安時代の木造の観音菩薩像、地蔵菩薩像、描かれた不動と二童子図など仏像・仏画が集まっていた。
中でも魚籃観音像は明代の絵で、唐美人が籠を置いて立膝でくつろぐもの。
綺麗だった。

ここのコーナーには岸駒の東方朔・山水図、望月玉川の関羽、若冲の鸚鵡やトウモロコシの絵が出ていた。
草堂寺、色々持ってはるわけです。
しかし今回の展示はあくまでも「蘆雪潑溂」。
若冲が目玉になったらタイトルも「ロセツ・ハツラツ」から「ロセツハ・ツライヨ」になる予定間違いなし。

5.受け継がれる蘆雪 ―草堂寺への伝来と保存運動
蘆雪の絵を色々見る。

四睡図 これはいつもの四人(頭)組の雑魚寝というか寄り添い眠りなんだが、配置が違うのがいかにも蘆雪らしくて面白い。
虎が立って豊干に凭れて寝る一方、爺さんの肘はちびっこ寒山拾得の背中についているという、妙な様子。楽しいわ。

蝦蟇・鉄拐図 芸をさせようとする仙人をじーっと見てるだけで特に何も動かない蝦蟇。知らん顔に仙人も「アチャー」な手。その様子を隣の幅から笠背負いながら見る鉄拐。
けっこう日常の1シーンぽいのがいい。

黄安仙図 月僊とのコラボ 亀に乗る仙人を墨絵で。

虎のような鍾馗図や達磨や維摩居士の絵もある。
 
唐人物風俗図 群衆とまでは言わないが色んな人が寄り集まったりバラバラでなんだかんだ好きなことをするのを捉えた図。
クンクンな犬もいるし、甕に水を移したり、とある日の様子。

明治になってからの草堂寺の日々の様子を記した資料が出ている。明細とか寄付金の芳名帳とか鑑査状など。
昭和になるともっとアクティブになり名画保存会の働きの様子もわかってくる。
展覧会もしていたようだし。

6. 紀南の至宝 ―蘆雪の足あと―
最後に他のお寺に残る蘆雪の絵を見る。

竹虎図 成就寺 剥落が激しく、すっかり白虎になっている。

寒山拾得図 高山寺 これはいつ以来かな、大きく描かれた二人の顔のアップ。

柳に鳥図 高山寺 可愛い!カラスがいる。丸い目玉の可愛い子がいる。
カラスも近代絵画まではいい素材だったが、いつからかただの憎まれ者になってしまった。

最後にすごく可愛いのが来た。
唐獅子図 成就寺 唐獅子たちの色んな様子が描かれていて、それがもお可愛いのなんの。
滝ゴォゴォでもグーグー寝る獅子もおれば、何が癇に障ったのかブギャォーッッと喚いて小さい怪獣みたいに飛び起きる獅子もいるし、その様子にあわてて飛んでくる二頭は多分、この獅子の弟分かな。右で吠える獅子のもとへ左からサーっと来たけど、みんなブサカワ。
「兄貴、どうしました!」くらい言いそうな口元。この二頭がまた絶妙な阿吽なのもいい。
寝てる獅子はゴクラクゴクラクな顔つき。

天明6―7年、和歌山は蘆雪絵てんこもりでしたなあ。

後期は雀や牛にわんこに、曹操の絵などもあるよう。
お隣の和歌山近美もいい展覧会が始まっているので、ぜひぜひ。
11/23まで。
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