パリを愛した画家たち展を見に行く。既に東京で開催された洋画展だが、大分県の病院所蔵だと聞いている。
四人連れで来たが、皆マチマチな意見や見方を言うのでそれが面白い。
ルイ・ヴァルタの座る裸婦がまず目についた。横向きの女の肌は青白く、細い面は笑っているように見える。彼の母子像は赤いドレスを着て元気そうだ。更紗風の布が見える。
ボナールはやはり都会的な女がいい。白いコルサージュの女。透けて見える赤いなにか。微笑む女。シチュエーションはこれで決まったな。
ラウル・デュフィが二枚あるが、来週からこの心斎橋でデュフィ展がある。わたしは彼にあまり関心はないが、それでも素敵な作品に出会うと、それだけで嬉しい。
『シャンデリアのあるアトリエ』
ヌードモデルなのか、ただそこに裸婦がいるのか。明るい画面を見ると楽しくなる。
『モーツァルト』
その楽譜がある。ピンク色。なんの曲かわからない。しかしそれを見たときに、このコレクションが病院のものだということを改めて思い起こさせられた。
モーツァルトは世界中で愛されているが、癒しの音楽という認識が今では一般的だ。デュフィの明るい絵に描かれているモーツァルト。
患者さんのためにはとてもよいのではなかろうか。
デュフィはオーケストラの絵などもよく描いているが(鎌倉の大谷美術館などにある黄色い絵)モーツァルトとはっきり題された絵がここに選ばれたのはやはりそうした理由からではなかろうか。―――などとわたしは想像するのである。
ドランの『黒い犬を連れたディアーヌ』は黒髪の裸婦の立像だが、くりくりしたアタマの上に小さな月がついていなければわからない、可愛いようなヒトだ。この彼女には水浴をのぞいてしまったアクタイオンを鹿に変えて猟犬に齧らせる残酷性は、見えない。
ヴラマンク『雪景色』
暗い空の下の雪道は汚れていた。杉並木。なにか恐るべき予感が・・・いつもそんな気持ちになる。
マルケが二枚ある。叔父がマルケファンなのだが、わたしはそうでもない。しかしここにある港や船の絵は悪くない。
『マルセイユ港の冬景色』
グレーのトーンが優しい。たくさんの船が帆を降ろして停泊している。
寒いが寂しくはない。乗組員は多分、酒場や宿屋や店にいるのだろう。
『ポルクロールの小船』
青い海に浮かぶ小さな船。港も山も見える。本当のじょうけいがそこにある。マチスは彼を『フランスの北斎』と評したと解説にあるが、納得できる。
ピエール・ラプラード『アルルカンとパオン』
なにか劇場の緞帳のような感じがする。真ん中に孔雀がいて、左の木の陰に赤い服のアルルカンがたたずむ。右の華やかな花々をいけた鉢は大きく、寓意画と言われればそうかもしれないが、やはり横長と言うだけでなく、緞帳のように思える。うかつなことにパオンが孔雀だと初めて気づいた。髪の染め粉の名前は孔雀だったのだ。
大好きなドンゲンが二枚あるが、『白い衣装の女』はなにやらえぐそうだ。社交界で人気者になった頃の作品なので、これにはモデルもいてるのだろう。しかしながらどうもえぐい。
一方『競馬場』は時計回りの走り方で、ターフは青々と緑も濃く、赤馬たちが疾走している。なんだか楽しそうだ。
アンリ・マンギャンの裸婦は、小出風の室内に静かな身体を晒している。卓上にはフルーツや白い陶器のカップなどがある。女の胸の形がきれいだと思った。仄朱いぐみの実がかわいい。
エコール・ド・パリの作品が多い。
キスリングのミモザは病院によく合うと思った。ぷつぷつと盛り上がるミモザの花。いいなあ。いろんな種類のミモザを見たが、これはいいような感じがする。
ローランサンの娘たちもいい。というよりも、ローランサンもルノワールも幸せを一番に感じる。好悪を越えて。
キスリングの婦人像は色彩がいかにもキスリングらしく、かっきりしていた。あいまいさのない分割。
それと違うのがパスキンだ。もやもやしている。『カシスのナナ』彼女はナナという名なのだろうが、一瞬エミール・ゾラのナナを思い出した。スカートをはいて気だるく座っている。
スーチン。奈良そごうで回顧展を見て以来スーチンのファンだ。赤い女の肖像。寝入ってます。
これは後で出てくる梅原の女の顔と対比すると、面白かった。あとは中川一政も対比できるかもしれない。
シャガールの『母と子』を見ていて面白いことがあった。友人たちの反応と言うか感想というか。家々の立ち並ぶ中に母子がいるが、その家々が『男の子の顔みたいやわー』なのである。
なるほどーと言う感じ。これは田辺三重松の『霞沢岳と梓川』でも同じで、モアイが寝てる、と言う。モアイというよりムンクの叫び山もあるよ。えっどれどれ、あっホンマ。
モアイには見えないが、ハニワ顔の山にみえる。面白かった。
ユトリロの『オルジャン通り』は坂道で、冬枯れの景色だった。彼の絵は仲間を持たない絵だと思う。
フジタの裸婦をみると、筋肉を感じてしまう。いつもそうだ。腹筋が割れている。強そうだなぁ。
『犬』
屏風絵の墨絵の犬たち。動きは『争闘』の猫たちと同じ。野良犬に見えるが、なんだか楽しそうだ。わんわん物語。
ピカソ『アンチープの風景』
これを見たとき、病院の待合室にどーんと飾られているのを想像した。太い線で色んな緑をどどーんと。・・・なんだかいいなあ。
コンスタンティン・テレスコヴィッヒ
ロシア出身で舞台装置や衣装も担当したと言うのが、よくわかるような感じがする。
黄色地に花を生けた静物画。花の壷には人物がいる。そして並びには青い壷がある。これは中国のものかもしれない。
『人形と少女たち――マントンにて』
海の見えるテラスにいる無表情な少女たちと、その間にいるにっこりした人形。時に人形の方が豊かな表情を見せてくれることがある。
現存の画家たちの絵も多い。
カシニョール『ニコル』帽子をかぶったん女の横顔はきれいだと思うし、フェーエルの『風景』も緑の中に置き去りにされたようでぽつんと佇む影もまた緑に染まるのが好ましい。
ポール・ギアマン『サーカス』赤い絵だ。これは照明が赤なのかもしれない。馬の背に立ち、輪くぐりをしようとする。いけるか、いけるか。
アイズビリ『ベニス』青く晴れた空。ライトブルーの空。わたしが行った時もこんな空色だった。
ルシェールの静物画は全面オレンジ色で、これはアイスの乗っかったパフェと三宝柑だと意見がまとまった。いや実においしそうに見える。作者の意図を離れて、アジアの片隅・・・大阪の真ん中で四人の女が『おいしそー!!!』と叫んだのだ。えらい。それだけでもえらい。
日本人の画家へ視線を移す。
アメリカの画家と言うイメージの強い国吉康雄の『二つの洋梨』変な変換で『二つのような死』と出た。なんとなく、遠くはない変換のように思う。国吉の憂愁とよく言われるが、このなにがなしの物哀しさがそういうことなのだと感じる。
前田寛治『海の見える風景』遠くに青い海が見える。本当に青い。みかんの木々がある。
山口薫『サントロッペ風景』瀬戸内海のようだ。山の藍色が目にしみる。小さい山なのに。
里見勝蔵『高原』ヴラマンクの弟子だと実感する絵だと思う。人物画より風景の方がよいように思う。
三岸節子の魚の静物画をみて、またまた・・・
「鯛焼きに見える」「えー、アジの開きやでー」「化石ちゃうん」「えーこれ魚なんかー」四人とも、健全やなあ。
浅井閑右衛門はこれまで京都市立美術館で赤ん坊の立った姿しか見たことがなく、近年まで存命していたと言うのも、初めて知った画家だ。これがすこぶる評判がいい。ピンクのきれいな薔薇がマヨルカ壷に活けられている。みんな言うこと一緒。「きれーきれーきれー」欲しいのよ、こんな薔薇が。児島の鋭い百合やミモザより、中川の濃い薔薇より、林武の薔薇よりも。
しかしわたしは個人で気には、林の群青色の鋭い線を見せる背景と、黄色と赤の骨太そうな薔薇も好きなのだ。
牛島の『晴日』橋の影がのびていて、釣りをする人もいる。ぼんやり・のんびりしている。ここではないどこかの風景。
宮本三郎の舞妓はかんざしを直している。この構図は小磯良平にもある。
よい展覧会だった。
たまにはこんな愉しみ方をしてもいい。
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TBありがとうございました。
4人で行かれたのですか。
それはまた違った楽しみ方できますね。
一人で行くのもいいですし
大勢で行くのも楽しいですよね。
特にこういった一見散漫な展覧会は
大勢で行って色んな意見を聞くと
新鮮な感動得られます。
実際楽しかったです。
仕事帰りに集合して見学したからか、おなかが減っていてやたらおいしそーとか言うてました。
そばしゃぶ食べて幸せです。
愛される価値が本当にありますよね。特に芸術を志す人にとってはさらに大きいものだと思います。
出来ることなら暫く住んでみたい都市。
ところで
♪チャーンチャチャチャチャッチャッチャッチャチャチャチャー
パリで“サンテレビ”映るんでしょうか?映らないとこれからの季節、困る人いると思うんですが・・・
昨夜から耳の奥でこの♪チャーンチャチャチャチャッチャッチャッチャチャチャチャーが ず〜っと鳴っているんです。
“パリ”をとるか“サンテレビ”か・・・
遊行さんならどちらを選ぶんでしょかね?
金村は面白いけれど。
寒々とした感じになるという。
デュフィの絵はその反対ですね。
作品名がSymphonie zu 4 handenとなっているのに気づかれましたか?
東京ではトップがシャガールだったんですよ、展覧会チラシもシャガールだし、チラシを見る限りでは現代作家まで射程が及んでいるとは感じられませんでした。
さてさて四月です、「ぐるっとパス」です、大倉の「播磨の画家たち」の展覧会でパス購入予定の本日。
これね、モーツァルトにあるのでしょうか。
わたしはよく知らないのですが、ケッヘルnoはどれなのでしょうか。
そういうことについつい拘ってしまいます。
チラシは大丸の同一製作なので変化はないですが、並べ方は違います。
以前ムーミン展でも大阪と京都では違いました。
並べ方が変わると味わい方も異なるので、楽しいです。
パスに山種も参加したのが嬉しいです。
今年の花見は地元関西の花を見ることにしましたので、隅田川も千鳥が淵も馬込村も上野公園もパスです。
今のところ6月まで東下りの予定がないのですが、突発的に出てゆくかもしれません。
わたしをそそる展覧会があれば、ですが。
楽しまれてる雰囲気がぐいぐい伝わってきて
こちらも楽しく拝読させて戴きました☆
この展覧会、行けそうもないのでこちらで詳細な雰囲気を感じられて有難いです。
ミモザとアジの開き、観たかったです。。
体調崩すわ、期末で仕事は忙しいわ、で
blogはほったらかし、でした。あは。
数日前、日帰りで大原に行ってきたのですが、
カリエールは蔵の中、ということでお目にかかれませんでした。。。。そんなん、アリ?
ムンクもシャガールもなかったです。
4月は歌舞伎に二回、行って来ます!
ラブリンの伊勢音頭・貢と、富十郎さんの船弁慶です。
こちらはなんと屋外ですのでお天気が心配。。
長々と失礼しました。
桜、早く咲くといいですねーー
今年は一日会社サボってのんびり京都、です。
なかなかな展覧会でした。病院所蔵と言う視点で眺めると、またいつもと違う考えが湧いてきて、客観性のある楽しみ方が出来ました。
今月末に大原へ行くつもりでしたが、そのお嘆きを聞いてちょっと予定変更しようかなと・・・
彼の貢はニザリー指導ですから、すっごく期待できますね。
わたしは奈良漫遊しましたので氷室神社の枝垂れ桜や奈良公園の梅を堪能しました。
★酒徒さん
全く生憎なことに今日は一日機嫌よく遊んだ上、『王の帰還』を見ていたので、世間の風はわたしに届かなかったようです。
寧楽と大和文華館に行き損ねたことが残念・・・
風が吹かねば『なかった』も同然なのです。