美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

「松本零士・牧美也子 夫婦コラボ」展

神戸ゆかりの美術館で「松本零士・牧美也子 夫婦コラボ」展が開催されている。もっと早く行きたかったがこんなに遅れ、終了。
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チラシは上部にヤマトのスターシャ。
下に少女マンガの頃の牧さんの可愛い女の子。
牧美也子と言えば「悪女聖書」を筆頭に「源氏物語」に至るまで大人のロマンスを描いていた人だという認識が小さい頃からあったが、そう、彼女は初代リカちゃん人形の監修者なのだ、実は彼女こそ本当のリカちゃんのママなのだ!!
要するに牧さんのキャラから人形が生まれたようだった。

中へ入ると写真コーナーもあった。



さて最初は松本零士から。
1. 初期から宇宙戦艦ヤマトまで
少女マンガ家・松本あきらの作品もあった。

ナターシャ なかよし 1968  名前からもわかるようにロシアの少女で、衣裳はメーテルとそっくり。横広の頬の少女、幼女風メーテルのようだと思った。
手には大きな光る緑色の石。

1970年代初頭、長期連載しヒットした「男おいどん」の表紙絵が並ぶ。
実はわたしはほぼ読んだことがないのだが、60歳前後の会社のオジサンたちはよく覚えていて、よくこの話を聞くので概要は知っている。
だからこそ書く。
出たーーーっサルマタケ!トリさん!ラーメンライス!
女からの絶縁状を読むくだりが出ていた。気の毒だが仕方ないぞ。
将来性がないという理由が泣ける…

セクサロイド 1968 漫画ゴラク  あ、ゴラクで連載してたのか。
わたしはこの作品はかなり好きで、今も遠いものではない。
水彩画の表紙絵が二点。このレベルの高さ、水彩画だったのか。
他に色っぽい姿のものもある。
女性型アンドロイド・セクサロイドのユキとG局のコードネームG3ことシマの二人が様々な計画を護ったり陰謀に巻き込まれたりなんだかんだバタバタする話で、ラストは未来の明るさを思わせるものだった。

この作品で描かれた2222年のメガロポリス東京のイメージが強く焼き付いていて、わたしは都心の高層ビルの夜景を見る度にメガロポリス東京を思い出すのだった。

甲虫、蜘蛛、蟻とタイトルがある絵には、それぞれの昆虫と裸婦のセットで、漂う隠微さがよかった。これらは1970年のアクションでの連載作から。
そう、松本零士は昆虫好きなのだ。

1992年のヤマトの絵がある。古代進と森雪の2ショットが二枚。
はっ となった。この古代君はキムタクに似ている。キムタクが実写版で演じたのはもう少し後年だが、この絵の古代君とキムタクはよく似ている。

1975年のヤマトのマンガの原稿も並ぶ。古代君と真田さんの会話。
1976年の続編「永遠のジュラ編」というのもある。
デスラーの娘ジュラの孤独な彷徨の物語。
父が母でなくイスカンダルのスターシャに惹かれていることから母と共に母の故郷の星で暮らす娘ジュラが、母の死後に宇宙へ出る。
孤独な中での彼女の言葉に惹かれる。

ここで松本零士の絵について想うことを書く。

メカの美しさ・荘厳さにはやはり今もときめく。
建造物全てがコンピューターで構成されているかのような表現もいい。
空間こそ宇宙だ。Space is Space

松本零士の美女は松本零士式美女として、夢二式美人と同様に誰にも同類はいない。追随してもオリジナルが素晴らしいので誰もかなわず、また個性が強いので、誰かと張り合うこともない。
変える必要も変わる必要もない美女たち。

しかし絵だけでなく、松本零士の描く孤高の女たちはとても魅力がある。
男に寄り添う女もいいが、実は孤独を守り孤高に生きる女たちの魅力の深さについて、もっと知られてよいと思っている。
孤高の女たちのモノローグにはとても影響された。
深い孤独を抱えながらも毅然と生きる彼女たちの姿は容姿以上に美しいものがあった。

ヤマトのセル画が出た。
背後からのヤマトの絵にシビレた。煙を挙げながら航行している。攻撃されたのかもしれない。ドキドキする絵だった。

多くのセル画を見たが、ヤマトのアニメを思うと必ず中学の友人を思い出す。
彼女はヤマトのファンで、とうとうそれが昂じてヤマトの交響曲を演奏したいからと吹奏楽の方へ向かった。
今も二年に一度の同窓会で会う度にヤマトへの愛が持続していることを知る。

2. 銀河鉄道999から現代作品まで
受付でいただいたメーテルの絵ハガキ、その原画があった。
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とても綺麗な絵である。
わたしは原作の中でメーテルが小さな銀河系を手の中に大事に守りながら宇宙の話をするシーンがとても好きだった。
今もあのシーンをよく思い出す。星雲について考えるとき、必ず。

原作よりTVアニメより実は映画をよく見た。
あれは多分金田伊功の動きとか、ちょっと美少年になった鉄郎とか、ゴダイゴの主題歌やメアリー・マクレガーの「SAYONARA」の影響もあると思う。

1998年の「999 クルミ割り人形」は全く知らなかったが、28ページ分全部の原稿が展示されていた。
大好きなエメラルダスも登場してくるし、物語もとても面白かった。

999号は必ずステーションに停車する。
それがどのような環境であろうとも存在するならば停車する。その星の停車時間は1分半。たった三人だけの乗客を乗せた後はもの凄いスピードでその星から遠ざかろうとする999。いつもは動かない予備の機関車までが必死で後押しをする。それを見た車掌さんは「もうこうなった999に匹敵できるのはアルカディア号、クィーン・エメラルダス号、宇宙戦艦ヤマトだけです」と鉄郎に言うのだ。
その勢いで走り去ったのも道理で、惑星は999が安全圏に逃れた時に中心部から爆発を起こし、割れてしまうのだ。
999からの警告も住人たちは聞き流し、状況を知る女大統領だけが二人の我が子をつれて脱出したのだ。
それをメーテルが責める。そこへエメラルダスもやってきて責任を問い、次の駅で下車することになる。

こうしたエピソードが一つ二つではなく、限りなくある。
松本零士の作品は決して幸せな環境を描くことはない。ユートピアはなくディストピアばかりだと言ってもいい。

セル画でよかったのは珍しくエメラルダスがふっと意識を失って倒れかけるシーン。とても綺麗だった。
メーテルの温泉入浴シーンもいい。

1971年から1977年の週刊漫画ゴラクの表紙絵が出ていた。
いずれもいかにも70年代らしいお色気ショットな絵で、可愛い娘から婀娜なお姐さんまで49回登場したそうな。大体が黒猫も一緒なのがいい。
松本零士はこの頃ここで「恐竜荘物語」を連載している。
他の連載はとみると「野望の王国」に「若い貴族たち」などがあった。
わたしは80年代の「バイオレンスジャック」の連載の頃と、この十年間は愛読者だが、さすがにその時代のは知らないです。

1000年女王 これは実は本当に見ていないのだが、今回初めてヒロインが実はプロメシュームだと知ってびっくりした。
冠や勾玉などは古代風ではあるが、やはりSF風なのがはっきりしている。

エメラルダス 非常に綺麗な絵がある。
松本式美女の中でも特に静かな迫力のある彼女の顔が空間の中に輪郭線を無くして浮かんでいたり、白の中に白く浮かんでいたり、と丁寧な作画がなされていて、見蕩れた。

キャプテンハーロックが現れた。
どうしてもこの作品を観ると水木一郎の歌声が脳内再生される。
作詞・保富康午だから心に響く歌詞なのは当然かもしれない。
ハーロックの現れる物語は全て絶望的な状況の中にある。
そう、歌詞の通りハーロックは「命を捨てて俺は生きる」のだ。

ハーロックは様々な作品に現れるが、時には機械化人と戦うために本人の身体の大半も機械化されていたり、去勢されていたり、と色々と悲痛な状況であることも多い。
「ガンフロンティア」でのハーロックくらいが存外つきあいやすいかもしれない。

ところで松本零士キャラで重要な人物がここではあまり紹介されていない。
セル画で一枚あっただけだ。
大山トチローである。
わたしはトチローさんが大好きだ。
彼の出る作品は特に好きだ。
「大不倫伝」などはセリフを覚えているくらいだが、彼がSF作品ではエメラルダスと仲良しさんなのはとても嬉しく思っている。
エメラルダスの為にもいいことだし、トチローさんの良さがますます伝わってくる。

ケースハード 原稿が展示されている。「戦場ロマン」シリーズを思い出す。
この独特のタイポがいいのだ。
わたしは松本零士作品は長編より短編、または連作短編こそ真骨頂だと思っている。
だからここでは紹介されていないが「帰らざる時の物語」「四次元世界」そして「銀河鉄道の夜」「グスコーブドリの伝記」などが本当に素晴らしい。

少女マンガの「トラジマのミーめ」も出ていた。そう、松本零士はとても猫を愛する人だったのだ。

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個人的なことを言うと、わたしが松本零士を知ったのは「宇宙戦艦ヤマト」からではあるが、それ以前にそうと知らず「松本あきら」作品は知っていた。
同一人物だと知ったのはヤマトの頃だと思う。
ヤマトの第一次ブームの時に「惑星ロボ ダンガードA」「SF西遊記スタージンガー」そして特撮の「光速エスパー」も松本零士の原作だと知り、同時に松本あきら=松本零士だと知った。
古い話だが1975年にオジが自分が大事にしていた松本あきらのカラーマンガ「銀のきのこ」を雑誌から抜き取りしたものをくれた。
哀しく切ない物語で、わたしはそのレトロなカラーのマンガを大事にしていた。
切り抜きではなく、オジは雑誌をほどいて保存していたのだ。
わたしは同時期、大好きだった三原順「はみだしっ子」の「そして門の鍵」のカラー表紙絵などと共に保存していた。
年が一ケタの頃からその意味では収集癖が相当強かったのである。
で、77年に家の改築に取り紛れて紛失した。あまりの衝撃で40年近く経った今もそのことに対して大きな罪の意識を持ち、後悔と反省の念に苛まれている。
それに拍車をかけたのが松本零士ブーム第二期として「銀河鉄道999」が1979年に映画化され、同時に初期の少女マンガの自選本が出て、巻頭にカラーが再現されず見づらい絵のまま掲載された「銀のきのこ」があったからだった。
今もわたしは自戒の念を込めて決してその本を処分せず、大事なものをなくしてしまった不注意を責めるために、手元に置いている。
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3. 牧美也子
彼女の少女漫画やイラストが並ぶが、ところどころに後年のレディスコミックを思わせるキャラもいたり、まだアシスタントに来ていないはずなのに新谷かおるが描きそうなキャラの後姿を見出したりした。

1960年の「小学1年生」での絵物語がすばらしい。
おやゆびひめ これは松本あきらとの合作だが、色彩設計もよく、半世紀以上を過ぎても鮮やかで、とても愛らしい。

同年頃の「小学4年生」には「赤いろうそくと人魚」があるが、母人魚の表現が既に大人向けの絵だった。そして人魚少女の着物の裾から鰭が出ているのは少しばかりショックだった。

花のコーラス 1966 チラシにもある空港で送る絵 この背を向けて並ぶ人々が新谷かおるが描いたような様子に見えて仕方ない。振り向いたら全員が新谷キャラだった!というような妄想に囚われる。

りぼんで活躍された時代の少女マンガは総じて悲しさが伴うものだったか。
この時期の牧美也子を現在「フイチン再見」で村上もとかが描いている。
夢みる眼をした美少女・マキミヤとして現れ、主人公・とし子に可愛がられていた。
この時代にがんばった女性漫画家の皆さんの血のにじむ努力とがんばりのおかげで後の隆盛が訪れたと思うと、胸がいっぱいになる。

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1960年代の少女たちの絵はいずれも背景に花またはフルーツ、そして大きな目には星が描かれている。

物語を絵にしたものが並ぶ。
そう、わたしが子供のころまでは名作をこのように綺麗な絵で再現・紹介してくれた。それで興味を持って原作を読むということが多かったのだ。

エルザ姫が兄たちを白鳥から人間へ戻すために夜中に墓場のイラクサを摘みに行ったり、夏祭の美登里が微笑んでいたりする。
蝶々夫人、ロミオとジュリエット、道成寺、若草物語…

やがて1970年代、いよいよ大人向けの作品が本格的に始まる。
音楽夜話 團伊玖磨エッセイ挿絵 女性自身 蝶々夫人などがあるがいずれも甘いものではない。

そしてこの作品に非常に惹かれた。
千本松原情死考 1973 とても魅力的だ。


やはり情死はこうでなくてはならない。

官能的な作品に非常に惹かれた。
わたしが牧美也子を知ったのはそもそも小学館文庫などの最後の頁での本の紹介欄からだった。
「緋紋の女」「星座の女」などのタイトルを見るだけでなんだかドキドキしていた。
やがて「恋人岬」「真昼ららばい」を知り、そして長期連載「悪女聖書」が出現したのだ。
業子の激しくも官能的な人生を追うのは面白かった。
続編もよく読んだ。
いずれもレディスコミックであり、この分野の第一人者として次々にいい作品を世に送り出してくれた。

ところで作画の中でいつも感心したのが、牧美也子描くキャラたちの箸遣いの美しさなど食事のマナーのよさである。
短編でもよいのがあり、それを見て「なるほど」と納得したり覚えたり。
松本零士がラーメンとステーキばかりなのに、牧美也子のキャラたちはおいしそうにお魚を食べている。その箸遣いのよさは特に挙げたいと思う。

源氏物語 これもかなり長く続いた。原作に忠実な作品で、確か名作を原文の雰囲気を壊さずに漫画化するのが目的で生み出されたのではなかったかな。
青銅鏡、十二単の文様などなど細部まで美しく描かれている。

平家物語もそのように古典名作のシリーズか。

12の星座の物語 これは一枚絵の良さを堪能した。
それぞれの星座の女たちの艶めかしさ・したたかさがカッコいい。

シリーズ秘め絵の女 この連作もいい。官能的で綺麗な女たち。
女の欲望は女の内側から現れるのだ。

最後にまさかのリカちゃんハウスがあった。
とても嬉しい。こういうのを見ると久しぶりに遊びたくなる。

御夫婦共に本当に素晴らしい作品を多く世に送り出してくださったことを改めて知る。
今後はもう新作は望めないかもしれないが、それでもあえて言う。
松本零士さん、牧美也子さん、これからもよい作品をお願いします。

ああ、見に行けて本当に良かった。
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