美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

古代への憧憬 ―近代に花開いた古典の美―

万葉文化館は遠い地にあると思っていた。
明日香村はわたしには遠い地だった。7歳の時、25歳の時、それから今回と三回しか行った記憶がない。
そこへ行くのにはかなり気合が行った。


そう、このチラシさえ見なければ諦められたのに。

ところが意外な位に「飛鳥」が近いことにえっ!となった。
阿倍野から小一時間ではないですか。
これなら今度からわりと気楽に行ける。ただし「明日香村一日」ということになるが。
レンタルサイクルで向かった。あちこち見て回って楽しい気分で到着すると、とても立派な、立派過ぎるくらい立派な施設だった。
地下は無料の常設展示で、ここでは天平時代の人々の生活を等身大の人形たちが演じていたり、立派なシアターで柿本人麻呂の望郷の念を見せてくれたり。

今回は特別展「古代への憧憬 ―近代に花開いた古典の美―」
絵そのものに文芸性・物語性があるものを偏愛するわたしにとっては、これ以上ない佳い展覧会。
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江戸時代の人麻呂像が二点。壮年のものと老年のものとが全く同じポーズで描かれている。
人麻呂の極めポーズは坐してなお筆を持つものだが、これは立ち姿で組んだ両手に筆を持つもの。

江戸人も万葉集に関心を持つ人が少なくなかった。
山上憶良の貧窮問答歌を描いたものも山辺赤人を描いた絵も並ぶ。

明治には菊池容斎が古典もののキャラの手本ともなる「前賢故実」を刊行している。 
ここでは厩戸皇子が紹介されていた。




他に松本楓湖、安達吟行の歴史画もある。
そして19世紀末に出たチリメン本もたくさん。
わたしは「しっぺいたろう」の凶悪猫たちが好きなんだけどね。
こちらで全頁画像も見れます。

歌垣 川崎小虎 1912  この絵は小虎の先生の結城素明が右隻を、和田英作が左隻を購入し、それで現在は岐阜県美・浜松市美に分納されていて、こうして再会するのはめでたい。
天平美人四人の合唱。一人は箜篌を持っている。
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大伴旅人卿羨酒壺 菅楯彦  さすが菅楯彦だけにご機嫌さんな旅人を描く。白梅をさし添えた酒壺を開けて嬉しそうに杓を持っている。
そこには旅人の酒の歌が記されている。
「中々に人とあらずは酒壷に成りてしかも酒に染みなむ」
酒壺になってどーのこーのって、おっちゃんホンマにお酒好きですねんなあ。

天平美人 関根正二 1917 久しぶりに会った絵。立ったまま月琴演奏中。どことなくアールヌーヴォー風なのがまたとてもよい。
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譽謝女王 平福百穂 ふっくらと愛らしい天平美人。思えば百穂の美人画と言うものはあまり見ていない。

吉川霊華のカラフルな絵とモノクロの絵とを楽しむ。どちらも東近美。
・羽衣翻飜 立派な東屋に一人の貴女が座り、七人の舞う娘たちを眺めている。
娘たちは下衣は同色だが上衣は二手にわかれている。
・役小角 こちらは線描の美を楽しむモノクロ。錫杖を持つ小角の前に孔雀明王が出現するその瞬間を描く。
どちらにもとても惹かれる。

チラシに選ばれた多至波奈大郎女 吉村忠夫 1926 法隆寺  綺麗な絵。橘大郎女の背後にあるのは天寿国繍帖。そして黄金の幡には飛天。実物はかなり大きい絵なので細かく楽しめた。
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万葉春秋 富田渓仙  椿、白馬酔木、一重の山吹などに小鳥たちがいるという、まことによい風景というか情景と言うか。
こうした絵は遠目にも佳いが間近で眺めるのもまたとても楽しい。
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万葉には椿。。イメージ (90)

歌留多があった。1928の書家・画家たちの素晴らしい仕事。
書は尾上柴舟、絵は百穂・靫彦・古径・青邨・九甫ら。
それぞれの個性が良く表れていて楽しい。

ふとみれば武人埴輪がいた。天理参考館の「土人形 武装した人」二人である。



旧知にあったようで嬉しくなる。

洋画も出てきた。
前回挙げた中之島の公会堂の天井画を描いた松岡壽の仁徳天皇である。
民の家のある辺りをじーっと見ている。
仁徳天皇は税を獲るのを停止した仁政の帝と言う話だが、一方で家庭内はよくなかったのだ。

神宮徴古館にはよい絵が多いな。
いつか見に行きたい。
これらの絵もそこから。
矢澤弦月 舎人親王 後ろの衝立がいい。
小泉勝爾 中大兄皇子と中臣鎌足 沓を渡すところ。蹴鞠の最中のな。
長谷川路可 和気清麻呂 左上に道鏡がいるから、丁度言い合いになっているのね。

天理大の図書館に飾られている中山正實の絵もきた。
違うところで見ると味わいも変わる。

大亦観風 万葉集画撰 1940 一大連作物が現れた。歌をモチーフにした絵がずらり。
和歌と絵とを交互に見ながら楽しむ。

菊池契月 光明皇后 この絵も久しぶり。ゆったりと美しい立姿。

吉村忠夫 麻須良乎 おお、古代のかっこいい佇まい。
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そして戦後の古代を描いた絵をみる。
小倉遊亀の薬師寺に奉納した絵もあれば、松篁さんの「額田女王」の口絵もある。
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チラシの堂本印象「太子降誕」は1947.
わたしは印象は古代をモチーフにしたものや宗教をモチーフにしたものが特に好ましい。

森田りえ子 撫子 1999 三人のこじゃれた天平美人が闊歩する。現代的な意識が心地いい。
いつの時代も若い娘は元気に闊歩しなくては。

いい企画展に常設展に。
また来ようと思っている。

ところで随分前にわたしもここでミニ企画「天平の面影」をしたことがある。
かぶることが少ないので紹介する。
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