美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

講談社の絵本原画展 2016年秋

今年の講談社の絵本原画展は4年前のそれと構成がよく似ていたので、同じ作品には前回のを引用する。
元の感想はこちら
引用文は色を変える。
今回のチラシは猿蟹合戦
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絵本原画をみる。
広川操一 鉢かつぎ姫 1938 
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母の元気なころは家族で参拝に行く。紅梅の頃には父は琵琶を母は琴を弾く。しかしついに死を覚悟した母は姫のアタマに宝を乗せ、そこへ鉢をかぶせる。いじめられた姫が入水しようとする。女郎花と芙蓉が咲いている川のほとり。親切な人が姫を救い、生きながらえた姫はとある貴族の下働きとなり、懸命に働く。
糸瓜のある湯殿。仲良くなったこの屋敷の三男と共に仏に祈るや、ついに鉢が割れ、母が収めた以上の宝がザクザク。姫の成長の年月に合わせ、お宝も増したらしい。
姫は着飾り、立派な嫁として姿を現す。

鰭崎英朋 花咲爺 1937 白梅・紅梅の咲くころにシロのお墓。一夜で巨大な松に。
やがて「枯れ木に花を咲かせましょう」となり、信賞必罰で悪い爺は捕まる。
鰭崎は挿絵画家として清方と共に人気が高かった。当時の「風流線」の口絵の素晴らしさは今の世にも知られている。晩年も相撲の絵で人気が高かった。

笠松 一寸法師 1937 
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住吉さんに申し子する老夫婦。一寸法師を授かるが、子は五月五日に旅立つ。船を乗り継ぎ京へ出た。お屋敷に住み込みよく働く。花見の頃では姫の短冊をいい位置に結び付けたり。一方論語も読める。そして打ち出の小槌で立派な侍になる。

笠松紫浪の木版画を見る機会は殆どないが、このように講談社が絵本原画を見せてくれるので、彼の画の雅さを楽しむことが出来るのは幸いだ。

近藤紫雲 牛若丸 1937 
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3点出ていた。鞍馬で天狗から鍛えられる・五条橋での邂逅・黄瀬川での兄弟対面。
動きは少ないが優雅な絵。

石井滴水 宮本武蔵 1937 
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こちらも3点。けっこう劇画調。入浴、塚原卜伝に鍋蓋でやられるところ、おっさんの佐々木厳流にジャンプしてるところ。
この三枚目が幼少期の横尾忠則に強い感銘を与えたそうで、かれはこの構図を引用して自作に登場させている。

神保朋世 四十七士 1936 
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・松の廊下で止められてるところ・門を打ち破り討ち入り中・炭小屋でみつけたー
神保の回顧展も以前に弥生美術館で開催されている。

富田千秋 孝女白菊 1937 
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琴を弾く白菊とそれを聴く両親。娘となり門外で佇む白菊。
顔を隠す青年僧に救われる白菊。
よく「孝女白菊」というのは聞いても話を知らんのでラウンジで絵本を読んで色々納得。
薩摩の人でいろいろ苦労をするのだ。西南戦争の頃。
菊などはけっこう様式的な表現。

日本画の基礎のある人々の絵だからか、いずれも四季折々の花や木が描かれ、情緒纏綿たる表現。こういうのが好きな人には本当にいい。わたしは嬉しくてならない。

宮尾しげを 一休さん 1938 ユーモア漫画で高名な宮尾しげを。ここでもペン画で自在に描き、とても楽しい。
このヒトで一番好きなのはこれ。
あんま
ころす
もちや
「あんころもち・ますや」の看板の字の配列。

須藤重 安寿姫と厨子王 1939 
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道を尋ね尋ねして橋の下で一休みするところへ悪人が。姉弟のつれて行かれた山椒太夫の屋敷は寺の門をもしのぐ豪壮な門をもつ。辛い日々の中、念持仏の功徳により助かる二人。
やがて逮捕される山椒太夫。母を探し当て、再会を喜ぶ。
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抒情画の名手による美しく哀しい物語。

川上四郎 童謡画集 1937 ・七つの子 子らのイメージと親鴉と ・あの町この町 田舎で遊ぶ子らと山裾の町の様子と。ほかにもあわて床屋などがあるが、童画家・川上らしい優しく温かな絵が可愛い。

布施長春 曽我兄弟 1937 ・父射殺・幼い兄弟も斬首寸前・仇討
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この絵本をみると先代勘九郎の「役者の青春」を思い出す。
おかあさんが孫にあたる当代勘九郎、七之助のために「曽我兄弟」の絵本を捜し歩いてもみつけられず、という話があったのだ。

須藤重 海の女神 1929 乙姫。やや未完風だが綺麗。

笠松紫浪 浦島太郎 昭和12年 6点。
浦島太郎 (新・講談社の絵本)浦島太郎 (新・講談社の絵本)
(2001/07/18)
笠松 紫浪


竜宮では月琴を弾く少女もいる。月琴は明治から大正にかけて随分流行した。昭和初期になるとだんだん廃れてきたが、それでも異国情緒をかもし出す楽器として、人々の意識に刻まれている。
海底の竜宮とはいえ庭には牡丹も咲き、梅や藤も姿を見せる。珊瑚は当然そこかしこに赤枝を伸ばす。水仙も愛らしく咲く。
太郎はいまだ漁師スタイルであるが、鼻のすっとした美男子として描かれ、乙姫とのむつまじい暮らしを想像させる。
紫浪は鏑木清方の弟子で、木版画によいものを残しているが、さすがに清方の弟子だけに美しい絵を描いている。

今回気づいたが、浦島太郎が亀を救ったのは春も浅い頃だった。
薄紅梅に菜の花の咲く家に太郎は老いた両親と同居している。
井筒もある家で、そこから海へ通っている。救われた亀は首を挙げて太郎をみつめていた。
太郎はその時のことを父母に話すが、母の持つ籠には美味しそうな筍が入っている。
やがて海の底の竜宮へ向かう太郎。彼の到着を喜ぶように共についてくるのはトビウオ、シマダイ、カニ、カツオ、カレイだった。
そしてワカメのカーテンを越える。
宮殿の侍女たちはみな頭上にそれぞれの魚介類を飾りとして付けていた。
太郎に供されるのは桃、ザクロ、葡萄、柿、無花果。


鴨下晁湖 舌切雀 昭和12年 10点。
舌切雀 (新・講談社の絵本)舌切雀 (新・講談社の絵本)
(2001/07/18)
鴨下 晁湖


おじいさんが雀が倒れているのを救うところから始まる。愛らしい丸頭に三角の羽の雀。しかしおばあさんのこしらえた糊(米を水浸しにして拵えるから、当時としては貴重だということを弁えねばならない)を食べたために舌を切られ泣いて逃げ去る雀。
おばあさんは右手に鋏を持ったまま、強い目でそれを見ている。いじわるではあるが、立ち姿がなにやらかっこいいのは確かである。タンポポにアザミの頃。椿もある。
おじいさんは雀に会いに林へ入る。既に異界なので、行き合う雀たちは大きくなり、着物を着ている。竹に黄色と白の蝶たちが舞う。山桜の頃。
色とりどりの可愛らしい提灯の下がる雀のお宿。愉しい語らい。雀踊りなどなど。
やがて土産におじいさんは小さなつづらを背負って帰る。
今度はおばあさんが雀のお宿を訪ねる。藤が咲いている。
重いつづらを背負って帰るが、当然ながら寄る年波で一息では帰れない。つづらを下ろすと、中から様々な化け物が飛びだす。入道、一つ目の雀娘、轆轤首など。
晁湖は後年、柴田錬三郎「眠狂四郎」の挿絵を描き、一世を風靡した。弥生美術館での回顧展では主にモノクロームの美を堪能した。

春におじいさんは雀を救う。梅、蕨、八重山吹の咲く家。子供らも楽しそうに雀を見に来る。
雀がノリを食べるシーン、アザミと蒲公英が大きくクローズアップされていた。この花たちはじかの目撃者なのだ。
雀を求めてお宿にたどり着くお爺さんを出迎える娘スズメとその両親。
婆さんは我から乗り込むが、茶菓のもてなしすら拒否して葛篭を所望する。
その様子を見てヒソヒソ話をする雀の家のものたち。
やがて化け物に脅かされる婆さんだが、帰宅した後は反省している。外には雀の影が見える。



織田観潮 竹取物語かぐや姫 昭和14年 26点。全頁の原画が出ている。
かぐや姫 (新・講談社の絵本)かぐや姫 (新・講談社の絵本)
(2001/04/17)
織田 観潮


秋のある日、柿とススキの見える家。竹に雀もいる。そこでのかぐや姫の発見。
やがて桃の花の頃、姫のもとへ求婚者たちが訪れる。
それぞれの顛末が描かれてゆく。鹿の毛皮をつけた公達は水中で苦しみ、燕の巣を得ようとした公達は空の星の前で目を回す。そこには星が「☆」で表現されていた。細い線描でふくらみはないが、江戸時代までの「○」表現ではない、明治以降の☆表現である。
そして月を懐かしむ姫の前には山吹が咲く。
帝の軍勢が月よりの使者に負ける。黄色い楓の頃、姫は月へと帰還する。
丸一年ほどの物語なのである。姫が去るその後姿に嘆く老夫婦。文章は西条八十。
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この絵本は実際それがあったかどうかは知らぬが、村上もとか「龍RON」で「はめえ」としても現れる。姫の顔のピースを隠す少年の心模様が描かれていた。

四季がよく描けている。だからこそ情緒が濃い。桜の頃に贈り物が届く?というのも時間の経過を示している。そして早くも山吹の頃には月を見ているのだ。新緑を過ぎるともうかぐや姫はいてもたってもいられない。
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米内穂豊 鼠の嫁入り 昭和15年 9点。
鼠の嫁入と文福茶釜 (新・講談社の絵本)鼠の嫁入と文福茶釜 (新・講談社の絵本)
(2002/04/19)
米内 穂豊、石井 滴水 他


裕福な家柄だけに座敷の掛け軸は大黒様である。大黒様は鼠のお主でもある。赤ら顔の大入道の雲のもとへという話で泣く娘、古代装束の太陽にも嫌がる娘、風神も壁も向かない。やがて鼠は鼠同士の良縁が定まる。白い顔が初々しい。

桃太郎は齋藤五百枝、金太郎は先の米内による。
桃太郎 (新・講談社の絵本)桃太郎 (新・講談社の絵本)
(2001/05/18)
齋藤 五百枝


桃太郎の飛び出す桃の内側がなんとなく微妙に官能的な色合いにも見えるのは、こちらの目のせい。桜の頃に旅立ち、黍団子を与えて家来を作る。

盥を持ち上げる桃太郎。旅立ちの後、老夫婦は小さな祠に桃太郎のことを祈る。
サルと犬のケンカ。犬の肉球がリアル。舟の帆には黒い桃が。ブラックピーチ号。
どう見ても強盗である。鬼たちはお宝を巻き上げられた後、ああこのくらいの被害で済んでよかった、と思っていそう。
手を振って帰りを見送るのにそれが表れている。


金太郎 (新・講談社の絵本)金太郎 (新・講談社の絵本)
(2002/02/18)
米内 穂豊


金太郎は秋の物語として描かれる。クマやウサギやサルや鹿らと楽しく相撲をとる金太郎を見つける武士一行。橋のない谷では木を切り倒してわたってゆく。熊も驚く力持ちである。帰宅するやお供の動物たちもにこにこしている。母の山姥は若い女で、鬘帯をしている。富士山の見える山中で、ススキに囲まれた家。
五百枝は佐藤紅緑の少年小説「あ〵玉杯に花うけて」の挿絵などでも有名。

頼光に仕えた最初の仕事は鈴鹿山の鬼退治。そして桜の頃に故郷に錦を飾るが、クマ、シカ、サル、ウサギみんな大喜び。

尾竹国観 かちかち山 昭和13年 8点。
かちかち山 (新・講談社の絵本)かちかち山 (新・講談社の絵本)
(2001/05/18)
尾竹 國観


何と言うても婆殺しの場のよさが目に残る。
蕗は緑をなし、外には小さな鬼百合が咲く。その中での惨劇。自由の身になった狸が身をよじって婆を襲う。
アジサイの頃、仏壇に向かう爺と、やってきた兎。
桔梗咲く頃にはかちかち山でやられた狸の傷もだいぶ治りつつある。
復讐は海上である。狸の悲しい顔つきが可哀想である。婆に逆襲するときのかっこよさも目に残るが、仕方のない話である。
やがて兎が帰還した頃には茄子がなっている。
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そもそもタヌキは何をしたか。爺さんの集めた蕗を盗んだのだ。
今回の展示はこのかちかち山とぶんぶく茶釜を上下に並べていた。


石井滴水 文福茶釜  秋の野に罠にかかったタヌキがいた。茶釜に化けてお寺に入りアッチッチ。そこから興行デビュー。
「文福丈」ののぼりまで立てられている。そしてお寺にも寄付。

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井川洗厓 猿蟹合戦 昭和12年 8点。よく出てくる原画だか、やはり愉しい。
猿蟹合戦 (新・講談社の絵本)猿蟹合戦 (新・講談社の絵本)
(2001/06/20)
井川 洗がい


なにしろこのサルや蜂や蟹のリアルさに比べて、栗のまん丸な目が可愛くて可愛くて。
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よくよくみたら蟹父あほですな。しかしそんな男をだまくらかすだけでなく暴力をふるうのはやっぱり罪よ。
サルの目つきが暗いのが特徴的。サルは皆にフルボッコされたあと、寝込む蟹父のもとへ謝罪させられにゆく。


本田庄太郎 孫悟空 昭和14年 6点。本田らしい可愛いくりくりした絵で物語が進む。
孫悟空 (新・講談社の絵本)孫悟空 (新・講談社の絵本)
(2002/04/19)
本田 庄太郎


桃を盗む・お釈迦様の指の周りを飛ぶ・とらわれる・・・改心の末に旅立つ。
敵には自分の毛で拵えた小さな化身たちと共に立ち向かう、とみどころたっぷりの絵本。
本田は「コドモノクニ」などで大活躍した絵本画家で、特に幼年向けの作品が素晴らしい。
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この文章、宇野浩二だったのだ。

笠松の十二か月式紙が出ていた。
本業は木版画家とはいえ清方の弟子だけに美人画もうまい。
1939年のそれらは少女のふとした日常の中の様子を描いている。
羽子板を持つ、雪見窓を開ける、スカートでテニスをする、校庭で仲良しさんと一緒、若葉の下での読書、水辺で可愛らしい洋装で写生中、宵になり提灯をつける、赤い水着で飛び込み、ワンピース姿でブドウを取る朝、一輪挿しに菊をいける、ピアノを弾くとき指輪も嵌めてワンピース姿で、そしてミントグリーン色のコートを着て師走の夕もやの中をおでかけ。
もしかすると「少女倶楽部」の読者を念頭に置いていたのかもしれない。
(現代とは違うのだよ、対象は)

織田観潮の十二か月式紙は庭先や室内にあるものがメイン。
メジロに南天、淡雪の中に歩く三羽のシギ、桃の節句の日に磯遊びのサザエ、貝、花ビラ。
白い木瓜に鶯、キイチゴに蛙、青梅に小雀、露草にコオロギ。
メロン、金魚、茄子の花と実…

井川洗厓の風俗図が四点。
天平、鎌倉、大正12年、昭和初期。
紅葉の下の天平美人、鎌倉の白拍子、震災後の様子、江戸城皇居の前で愛国婦人会の提灯行列。
時代風俗を捉えている。前2点は想像と学習からだろうが、後2点は現実にみたものをモデルに描いているのだろう。

雑誌「キング」の口絵二点
鴨下晁湖 海上の月 唐の文官と武官とが共に海面を眺める。
尾竹国観 白虎隊 飯盛城炎上と見誤り、自刃する少年たち…

国観の十二か月式紙もある。節句ものとその月の名物ものとが描かれている。
蛍狩りに必死になる母子などは面白かった。
お宮参りの幸せそうな母子、そして両国橋の雪。

鴨下のは時代風俗を描いたもの。桃山風俗の女たちの春、竹やりを構える尚武、御簾越しから黄ばむ梅をみる女人、勾欄から月を見返る女、機織りの女の家の外の柿、旅の女のそばに枯れた蓮。

毎回本当にいいものを見せてくれて嬉しい。
12/18まで。
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