美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **自宅でログイン出来ないので、現在「遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う」で感想を挙げています。

小田野直武と秋田蘭画 世界に挑んだ7年 その1

サントリー美術館の「小田野直武と秋田蘭画 世界に挑んだ7年」展を二度ばかり見た。
四期に分かれているうちの一期目と四期目である。

サントリー美術館は「よくぞ」と感嘆する展覧会がとても多い。
この「秋田蘭画」もそう。250年ほど前の、言うたら不思議なムーブメント(といっていいものか)の作品をよくここまで集めて展示しはったな、とまずそのことに感銘を受けた。
展示品の所蔵先を見てもばらばら。これは所蔵先を完全に調査しきれていて、バラバラでも何とかなる、というものではないと思う。
凄い努力の賜物を我々観客は労せずに味わっているのですね。
うーむうーむ、そのことを踏まえて、感謝しつつ作品を眺めよう。

ところで今回の「秋田蘭画」の主な作者は小田野直武、彼の主君にあたる佐竹曙山、佐竹義躬。
その秋田蘭画の人々と南蘋派の人、別な蘭画の人等々の作品でこの展覧会は構成されている。

秋田蘭画の三人は歳が近いのばかり。
小田野直武 1749-1780
佐竹曙山 1748-1785
佐竹義躬 1749-1800
さらに小田野直武に決定的な影響を与えた平賀源内は彼より21歳年長で没年は同じ。
源内の友達で「解体新書」の杉田玄白は1733-1817と長命。

第一章 蘭画前夜
小田野直武がそこに行くまでの修業時代の絵などを見る。

神農図 1760  12歳でこんなに巧いのを描くわけです。始まりは狩野派。粉本主義だからこそ、<真似る=学ぶ>技能が見て取れる。

大威徳明王図 1765 秋田・大威徳明王神社  17歳、もう本当に巧すぎる。
炎上しつつ矢を射る大威徳明王の迫力ある姿。

花下美人画 1766 秋田・角館總鎮守・神明社  花魁と禿よりもう少し歳のいった少女とが花を楽しむ。板画なので変色と剥落はあるがわるくはない。

他の絵師の絵や、粉本などもある。
相思図 石川豊信 サントリー美  2幅の左は文を書く女で右は鼓を持つ男。白梅と紅梅と。近代的な線だと思った。大正の美人画のような感じがある。

鍾馗、黄初平などの絵もうまく真似て描いている。
基礎がしっかりしているからこその<その後>が楽しみになる。

第二章 「解体新書」の時代 ―未知との遭遇―
映画のテーマ曲が脳内再生されるよ。
そう、本当に「未知との遭遇」だったろう。
イメージ (12)

「解体新書」も「ターヘル・アナトミア」も「蘭学事始」も教科書で見たのが最初だったと思う。
おおー!という感じ。
「解体新書」で挿絵として人体図を描く小田野直武。脳髄などもある。

国内初の腑分けを山脇東洋が京都でしてから、江戸で杉田玄白、前野良沢が強く刺激を受けたそうだが、この辺りを時代劇ギャグマンガ「江戸むらさき特急」が妙な迫力で描いていたのを思い出す。

「六物新志」という本が紹介されている。大槻玄沢、杉田伯玄 1786 
この内容については東大付属図書館の特別展示のサイトにこう紹介されている。
「六物」とは、一角(ウニコウル)、夫藍(サフラン)、肉豆蒄(ニクズク)、木乃伊(ミイラ)、噎浦里哥(エブリコ)、人魚の6種の薬物のこと。そして、これらについて天明6(1786)年、大槻玄沢が蘭書に基づいて考証したのが「六物新志」。人魚の肉を皮膚の黒色斑上に貼ればそれを消し、その骨には止血の効力があり霊薬だと記しており、玄沢は薬用としての人魚とその実在を信じていた。

そういえば「新志」Xinzhi といえば他にも「虞初新志」「中国有毒及薬用魚類新志」と言ったものがあるから、なんとなく意味は通じるが、本当の言葉の意味は知らない。

阿蘭陀の博物学の本や謎なのが現れ、妙に面白い。
国芳に至るまで影響を与えた、というより、種本になった「ヨンストン動物図譜」もあるではないか。ライオンや蝶や蛇の絵が開かれていたが、ほどほどのリアルさがある。

18世紀の日本はけっこう西洋の風にときめく人が多かったのだということを知ったよ。
そしてそれを取り込んで咀嚼し、吐き出した時にはメイド・イン・ジャパンにしている。
浮絵、眼鏡絵などで見たこともない諸外国の町の様子を描いたり、南蛮渡りの美人画を真似したりと、みんな意欲的。
博物学もさかんだったし、大坂には木村蒹葭堂のようなヒトもいたしで、まったく面白い時代やなあ。

第三章 大陸からのニューウェーブ ―江戸と秋田の南蘋派―
ここに現れる絵師たちの大半はこれまで見てきた展覧会を通じて知った人々ばかり。
まことにありがたいことです。
展覧会に行かなかったら知らないままだったかもしれない。

虎図 諸葛監 千葉市美  おう、久しぶり。白い太い眉が可愛い。手も立派。可愛らしすぎる虎。

水揚叭叭鳥 松林山人 1780  墨絵で叭叭鳥が可愛らしく描かれている。

笹鯉図 佐々木原善 1813  「釣られてもぉたー」と声が聞こえてきそうな鯉の絵。

名花十友図 佐々木原善  ちょっと以前にこんなツイートをしている。
「名花十二客」という言葉を知った。調べた。
「宋の張景修が十二の名花を一二種の客にたとえたもの。牡丹を貴客,梅を清客,菊を寿客,瑞香(沈丁花)を佳客,丁香(丁子)を素客,蘭を幽客,蓮を静客,酴釄(とび)を雅客,桂を仙客,薔薇を野客,茉莉(まつり)を遠客,芍薬を近客とする」

12人のお客のうち、友達は10人だったらしい…

長くなるので今回はここまで。
次、いよいよ秋田蘭画へ。
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