美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

「台北国立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆」を観る

まずこのチラシから。
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「人類史上最高のやきもの」
そういう言葉がある。
わたしなどは「えっそんな強引な」と思うのだが、それはやはりわたしが高麗青磁を偏愛しているからだという理由がある。
ほぼ同時代の朝鮮の高麗青磁を措いて、北宋の汝窯の青磁の水仙盆を「人類史上最高」と認めるにはいささか抵抗をしたい。
それがわたしの高麗青磁への愛の証になると思った。

展示室は階段を上がった右手のあの部屋である。
そこへ入る前にもう一度チラシを見ると、下に小さく書いてある一文に気付く。
「もう二度と出会えないかもしれないたった6点、世紀の展覧会」
…大上段+脅し文句で攻めてきている。

今回の展示は北宋汝窯の水仙盆が6点。それが主役である。
世界に数点しかないそうだが、そのうちの5点と乾隆帝がオマージュとして世に出した水仙盆とが一堂に会している。
それだけでも凄い。それは確かだ。

ラインナップを挙げる。
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安宅コレクションの一点がある。
覆輪をつけたもの。
「伝世 汝窯青磁の日本代表」
…そうか、そうだわな。日本にこの1点があるからこそ台北の故宮博物院だって海を渡らせたのだよな。
世界にたった数点、そのうちの1点が安宅英一の所蔵だったのだ。
物凄い眼。そのことに改めて打たれる。
鉄斑が1つ覆輪の下にある。「てへっ」な愛嬌もんだと思う。
愛い奴よの、という感じ。

次に現れたのは「天青色の極み」である。こちらも覆輪をしている。
なるほど色の綺麗さというものが途轍もない。
釉溜りのところなど見惚れるほどだ。
本当に凄い色が出ている。

「最大サイズの水仙盆」 ああ、数ミリ・数センチ分大きい。覆輪がないだけでなく、こちらは足が埋もれている。
足がないように見える。(あとで解説を読むと削ったらしい)
ゆったりと大きな器。

そして「人類史上最高のやきもの」が現れた。青磁無紋水仙盆。
なんと貫入がない。
見出せないレベルである。凄いな。
これを「人類史上最高のやきもの」ではない、ということはやはり出来そうにない。
滑らかなその肌に何ら瑕もないというのは凄い…

「無銘の帝王」もいる。これは唯一乾隆帝による詩が刻まれていないからだ。
乾隆帝は数百年前のこれら美貌の器たちの底面裏に詩を刻んでいる。
そんなことが出来るのは皇帝ただ一人だけであり、それも乾隆帝くらいでないとやれないことなのだ。

付属品もある。紫檀に細工した非常に丁寧な作りの台座である。
その台座には抽斗があり、中からどう見ても位牌に見えるものが出て来たり、王羲之の書の模写の模写をした乾隆帝の書もある。
絵もある。
本当に大事にされて世に伝えられたことがよくわかる。

最後に乾隆帝の時代に作り出された水仙盆が出てきた。
「汝窯青磁水仙盆へのオマージュ」とある。
人類至上最高のやきものを手本にしたのか、よく似ている。
清朝は倣古ブームがあり、殷周の青銅器をモチーフにしたものも拵えている。
技術力が高い時代なので、失われた技術も再現出来たのか。

・・・高麗青磁の「翡色」を愛するわたしもこの展示に「そんな大げさな」とは言えなくなってきた。
これはこれでなるほど「人類史上最高」なのは間違いない。
ううむううむ、綺麗は綺麗なのだ、嘘はつきたくない。
ただ、あれもいいがこれもいい、とは言いたい。

チラシも各品の色の違いをよく出していると思う。
なにしろ六田知弘さんだ。
しかし実物を見てほしい。
実物よりチラシがいい時は、そのカメラマンの眼と技能の高さにこちらが負けたということになる。
今回はチラシもとてもいいが、実物は更にいいのだ。
カメラマンの目より、観客の目より、実物がはるかに気高いのだ。
それをぜひとも東洋陶磁美術館で確認してほしい。

常設展にゆくと真っ先に愛する高麗青磁が待ってくれている。
なんだかもうぐだぐだな気持ちで「ごめんよーごめんよー」と思いながら対する。
ああ、やっぱり綺麗なあ。

しかしこの気持ちは実は粉青沙器で一旦閉じるのだ。
時代が変わり、わたしの愛するやきものが失われたのだ。
未練が強く、どうしてもこの粉青たちを可愛がられない。
独立していれば愛せるのに。
そう、むしろここで宋磁の美を味わいたい。
そんなわがままなことを思う。

今回、所蔵の「宋磁の美」という企画展もある。
南宋を代表する油滴天目を眺め、それから青磁を愛でる。
可愛らしいやきものをみて和む。

李さんのコレクションをみる。
名前が難しくてきちんと変換されそうにないので李さんコレクションと書いておく。
可愛い高麗青磁を楽しむ。

それから安宅コレクションの法花や唐美人の俑などを眺める。
いついかなるときもいいものはいい。

ああ、いいものをみた、いや、見てしまった。

最後に一つ思ったことがある。
アオリ文句、あれを見て司馬さんの「韃靼疾風録」の女真族の習いを思い出した。
人への呼びかけ、それがとてもいい言葉・褒め言葉だという決まりがあるそうだ。
ここにある北宋汝窯青磁水仙盆、各品への褒め言葉は全く嘘がないと思う。
大げさではなかった。
これが展示を見終えたわたしの正直なキモチなのは確かだ。言い切ろう。

3/26まで。
こんな機会、もう他にないと思っている。

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